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金沢大学 院試 過去問 解答例

金沢大 自然科学研究科 数物科学専攻 数学コース 数学 2026年度 院試 過去問 解答例・解説(全6問)

全6問。微分積分・解析3問。テーマタグは4件(固有値・固有ベクトル・線形空間・基底・留数定理)。2025年度と共通のテーマは固有値・固有ベクトル・線形空間・基底・留数定理。

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解説6問と大問1問の途中式・最終答(全6問)
解答PDFに収録
途中式と最終答(最終答つき6問)
問題本文
非収録

金沢大 数学 2026年度 院試 過去問の出題内容(全6問)

この6問の分野は微分積分・解析3問です。

大問分野主題解説の小見出し最終答
第1問—Jordan標準形Jordan鎖の作り方あり
第2問—交代化写像部分空間の確認 / 核と像の読み取りあり
第3問微分積分・解析指数関数の独立性多項式が有限極限をもつ場合あり
第4問微分積分・解析極座標と広義積分境界 1 での注意 / 発散側の確認あり
第5問微分積分・解析上半円積分半円弧の評価 / 実軸部分とのつなぎ方あり
第6問—二進列の距離具体値の計算 / 距離の証明あり

この年度の解説には典型ミス3件・検算2件が付いています。

2026年度の出題テーマと、同じテーマを出した他大学・他年度

この年度は3問に4テーマが出ています。

前年度(2025年度)との違い

大問数
2025年度 6問 → 2026年度 6問
2026年度で新しく出たテーマ
ジョルダン標準形
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第1問 — Jordan標準形

方針

特性多項式が (λ−1)3(\lambda-1)^3 なので,固有値は一つしかない。 この場合は,ker⁡(A−E)\ker(A-E), ker⁡(A−E)2\ker(A-E)^2, ker⁡(A−E)3\ker(A-E)^3 の次元を見ると Jordanブロックの大きさが分かる。今回は dim⁡ker⁡(A−E)=1,dim⁡ker⁡(A−E)2=2,dim⁡ker⁡(A−E)3=3 \dim\ker(A-E)=1,\qquad \dim\ker(A-E)^2=2,\qquad \dim\ker(A-E)^3=3 なので,サイズ 33 のJordanブロックが一つある。

Jordan鎖の作り方

Jordan標準形で上三角の 11 を出すには, (A−E)p1=0,(A−E)p2=p1,(A−E)p3=p2 (A-E)p_1=0,\quad (A-E)p_2=p_1,\quad (A-E)p_3=p_2 となる順に列ベクトルを並べる。列の順序を逆にすると,Jordan行列の非対角成分の位置が変わってしまうので注意する。

検算

(A−E)3=O(A-E)^3=O かつ (A−E)2≠O(A-E)^2\neq O であるため,最小多項式は (λ−1)3(\lambda-1)^3 である。 したがってJordan標準形がサイズ 33 の一つのブロックになることと一致している。 また det⁡P=8≠0\det P=8\neq 0 を書いておくと,PP が正則であることの確認になる。

解答

与えられた行列を AA とし,EE を 33 次単位行列とする。 特性多項式を計算すると det⁡(λE−A)=λ3−3λ2+3λ−1=(λ−1)3 \det(\lambda E-A) = \lambda^3-3\lambda^2+3\lambda-1 = (\lambda-1)^3 である。したがって固有値は λ=1 \lambda=1 のみであり,代数的重複度は 33 である。

A−E=(21−1−1−1131−1) A-E= \begin{pmatrix} 2&1&-1\\ -1&-1&1\\ 3&1&-1 \end{pmatrix} より,(A−E)x=0(A-E)x=0 を解くと x=s(011)(s∈R) x=s\begin{pmatrix}0\\1\\1\end{pmatrix}\qquad (s\in\mathbb{R}) を得る。よって固有空間は W1=ker⁡(A−E)=span⁡{(011)}. W_1=\ker(A-E) = \operatorname{span} \left\{ \begin{pmatrix}0\\1\\1\end{pmatrix} \right\}.

また (A−E)2=(00021−121−1),(A−E)3=O (A-E)^2= \begin{pmatrix} 0&0&0\\ 2&1&-1\\ 2&1&-1 \end{pmatrix}, \qquad (A-E)^3=O である。したがって広義固有空間は W‾1={x∈R3∣(A−E)mx=0 となる m≥1 がある}=R3 \overline{W}_1 = \{x\in\mathbb{R}^3\mid (A-E)^m x=0\ \text{となる }m\geq 1\text{ がある}\} = \mathbb{R}^3 である。

Jordan鎖を p1=(022),p2=(2−13),p3=(100) p_1=\begin{pmatrix}0\\2\\2\end{pmatrix},\qquad p_2=\begin{pmatrix}2\\-1\\3\end{pmatrix},\qquad p_3=\begin{pmatrix}1\\0\\0\end{pmatrix} と取ると, (A−E)p1=0,(A−E)p2=p1,(A−E)p3=p2 (A-E)p_1=0,\qquad (A-E)p_2=p_1,\qquad (A-E)p_3=p_2 が成り立つ。よって P=(p1 p2 p3)=(0212−10230) P=(p_1\ p_2\ p_3) = \begin{pmatrix} 0&2&1\\ 2&-1&0\\ 2&3&0 \end{pmatrix} とおけば,det⁡P=8≠0\det P=8\neq 0 であり, P−1AP=(110011001) P^{-1}AP = \begin{pmatrix} 1&1&0\\ 0&1&1\\ 0&0&1 \end{pmatrix} となる。

最終答

固有値は 11 のみ。 W1=span⁡{(011)},W‾1=R3. W_1=\operatorname{span}\left\{\begin{pmatrix}0\\1\\1\end{pmatrix}\right\}, \qquad \overline{W}_1=\mathbb{R}^3. 一例として P=(0212−10230),P−1AP=(110011001). P= \begin{pmatrix} 0&2&1\\ 2&-1&0\\ 2&3&0 \end{pmatrix}, \qquad P^{-1}AP= \begin{pmatrix} 1&1&0\\ 0&1&1\\ 0&0&1 \end{pmatrix}.

第2問 — 交代化写像

部分空間の確認

部分空間であることは,成分表示を使って W=span⁡{E11,E13,E21,E31,E33} W=\operatorname{span}\{E_{11},E_{13},E_{21},E_{31},E_{33}\} と書くのが最短で確実である。 零行列を含むこと,加法・スカラー倍で閉じていることを個別に書いてもよいが,基底候補を明示すると次の次元計算にもつながる。

核と像の読み取り

X−tXX-{}^tX は必ず交代行列になるが,今回は定義域が WW に制限されているため,すべての 33 次交代行列が出るわけではない。 実際,(2,3)(2,3) 成分と (3,2)(3,2) 成分は常に 00 である。 ここを VV 全体上の写像と取り違えると,像の次元を 33 としてしまう。

係数で見る検算

像を読むときは f(X)=−a3(E12−E21)+(a2−a4)(E13−E31) f(X)= -a_3(E_{12}-E_{21})+(a_2-a_4)(E_{13}-E_{31}) と係数を分けておくと安全である。ここで −a3-a_3 と a2−a4a_2-a_4 は独立に任意の実数を取れるので,像は本当に2次元になる。 一方,核では a3=0, a2=a4a_3=0,\ a_2=a_4 だけが条件であり,a1,a2,a5a_1,a_2,a_5 は自由に残る。自由変数が3個残ることを確認してから基底を書くと,余分な条件を課していないか検算できる。

検算

線形写像 f ⁣:W→Vf\colon W\to V について dim⁡W=dim⁡ker⁡f+dim⁡Im⁡f \dim W=\dim\ker f+\dim\operatorname{Im}f が成り立つ。今回の答えは 5=3+2 5=3+2 となり,階数・退化次数の公式と一致している。

試験で落としやすい点

核の基底に E13E_{13} と E31E_{31} を別々に入れてはいけない。核に入るのは対称成分 E13+E31E_{13}+E_{31} であり,反対称成分 E13−E31E_{13}-E_{31} は像側に現れる。 また,値域は V=M3(R)V=M_3(\mathbb{R}) の部分空間として答えるので,像の元を WW の基底だけで表そうとする必要はない。

交代化写像の途中式・最終答をPDFで見る

第3問 — 指数関数の独立性

方針

指数関数は多項式より速く増大する。 この性質を使い,最も大きい指数 anxa^{nx} で割ると,最高指数に付いた多項式 fn(x)f_n(x) だけが極限で残る。 それが 00 に収束するため,fnf_n は零多項式でなければならない。

多項式が有限極限をもつ場合

多項式 p(x)p(x) が零多項式でないなら,最高次の項 cxdcx^d があり,d≥1d\geq 1 なら絶対値は無限大に発散する。 d=0d=0 なら定数であり,極限が 00 ならその定数も 00 である。 したがって p(x)→0p(x)\to0 から p≡0p\equiv0 が従う。

典型ミス

∑fk(x)akx=0\sum f_k(x)a^{kx}=0 だからといって,各項がただちに 00 になるわけではない。 指数の大きさで分離するために,最大の anxa^{nx} で割って極限を取る,という手順が必要である。 また,一度 fn≡0f_n\equiv0 が出たらそこで終わらず,残った和に同じ議論を適用して全ての係数多項式を消すところまで書く。

指数関数の独立性の途中式・最終答をPDFで見る

第4問 — 極座標と広義積分

方針

被積分関数も領域も原点まわりの回転対称性をもつため,極座標に変換するのが自然である。 今回の領域は r≥1r\geq1 なので,原点での特異性は問題にならない。 収束性を決めるのは r→∞r\to\infty の振る舞いだけである。

境界 r=1r=1 での注意

r=1r=1 付近では r−2ar^{-2a} は有限であり,面積要素も r dr dθr\,dr\,d\theta で通常の有限区間の積分になる。 したがって aa の条件は無限遠方だけから出る。

発散側の確認

a=1a=1 で対数発散することを書いておくと,境界値を誤って含めるミスを防げる。 a<1a<1 では 1−2a>−11-2a>-1 なので,べき積分はさらに強く発散する。 広義積分の収束条件では,不等号が厳密かどうかを最後に必ず確認する。

典型ミス

面積要素の rr を忘れて ∫1∞r−2a dr\int_1^\infty r^{-2a}\,dr としてしまうと,条件が a>1/2a>1/2 になってしまう。 正しくは r−2a⋅r=r1−2a r^{-2a}\cdot r=r^{1-2a} を積分する。

極座標と広義積分の途中式・最終答をPDFで見る

第5問 — 上半円積分

方針

上半円で囲むと,極 z=iz=i だけが内部に入る。 実軸上の積分を求めたいので,閉曲線積分を 「実軸上の積分」と「半円弧上の積分」に分け,半円弧上の積分が消えることを評価で示す。

半円弧の評価

評価の要点は ∣1+z2∣≥∣z∣2−1=M2−1 |1+z^2|\geq |z|^2-1=M^2-1 である。したがって integrand の大きさはおよそ M−2M^{-2},弧の長さはおよそ MM なので,全体はおよそ M−1M^{-1} となり 00 に収束する。 この評価では M>1M>1 を仮定している。極 z=iz=i を内部に含めるためにも,最後に M→∞M\to\infty とする議論では十分大きい MM だけを考えればよい。

実軸部分とのつなぎ方

閉曲線 C(M)C(M) が反時計回りであれば,実軸上の部分は −M-M から MM へ向かう。 そのため ∫C(M)f(z) dz=∫−MMdx1+x2+∫C2(M)f(z) dz \int_{C(M)} f(z)\,dz = \int_{-M}^{M}\frac{dx}{1+x^2} + \int_{C_2(M)} f(z)\,dz と符号を変えずに分解できる。ここで向きを逆に取ってしまうと,留数定理の右辺も実軸積分の向きも同時に変わるため,答案全体の符号管理が崩れやすい。

典型ミス

留数は 12i \frac{1}{2i} であり,これに 2πi2\pi i を掛けるので閉曲線積分は π\pi である。 符号を誤る多くの場合は,曲線の向き,または (z−i)(z+i)(z-i)(z+i) のどちらの因子を消すかを取り違えている。

別解との関係

実積分そのものは x=tan⁡θx=\tan\theta でも計算できるが,本問では複素積分の設定が与えられているので,留数定理と弧上評価を使って実積分へ戻す流れを答案に残すことが重要である。 弧上積分が消える理由まで書くと,留数定理から実積分を取り出す正当化が完結する。

上半円積分の途中式・最終答をPDFで見る

第6問 — 二進列の距離

具体値の計算

α\alpha は偶数番目だけが 11 なので, f(α)=14+116+164+⋯ f(\alpha)=\frac14+\frac1{16}+\frac1{64}+\cdots という等比級数になる。 一方,α\alpha と β\beta は各成分がすべて逆なので,距離は 12+14+18+⋯ \frac12+\frac14+\frac18+\cdots である。

距離の証明

距離の公理は,非負性,零距離なら一致,対称性,三角不等式の四つである。 この問題では各座標での絶対値の性質を使い,最後に正項級数として足し合わせればよい。 級数は各項が高々 2−k2^{-k} なので常に収束する。

連続性の見方

∣f(α)−f(β)∣≤d(α,β) |f(\alpha)-f(\beta)|\leq d(\alpha,\beta) は,単なる連続性より強いLipschitz連続性を示している。 ε\varepsilon-δ\delta で書くなら,任意の ε>0\varepsilon>0 に対して δ=ε\delta=\varepsilon とすればよい。

端点が出ない理由

f(α)=0f(\alpha)=0 になるには全成分が 00 でなければならず, f(α)=1f(\alpha)=1 になるには全成分が 11 でなければならない。 しかし XX では 00 と 11 がどちらも無限回現れるため,この二つの端点は実現しない。 二進小数では同じ実数に複数の表示があることがあるが,ここで扱っているのは表示列そのものを元とする集合 XX である。 したがって,端点判定は「列の全成分が何か」で行えばよい。

二進列の距離の途中式・最終答をPDFで見る

金沢大 数学 院試 過去問の収録3年度

  • 2026年度(このページ・全6問)

    Jordan標準形 / 交代化写像 / 指数関数の独立性

  • 2025年度(全6問)

    Jordan 標準形 / 左からの行列積 / 一様連続性

  • 2024年度(全6問)

    固有空間とJordan形 / 線形写像と核・像 / 最大値評価