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金沢大学 院試 過去問 解答例

金沢大 自然科学研究科 数物科学専攻 数学コース 数学 2025年度 院試 解答例・解説

金沢大学 自然科学研究科 数物科学専攻 数学コース 数学 2025年度の院試 過去問について、設問ごとの解法方針と確認点を解説。全6問収録の解答・解説PDFと併用できます。問題本文は含みません。

最終更新:

設問ごとの解法方針と確認点を公開しています。

続きの途中式・最終答は解答・解説PDFに収録しています。問題本文は含まれません。

1 — Jordan 標準形

方針

固有値が重なっている場合は、特性多項式だけで止めずに、固有空間の次元と (AλI)k(A-\lambda I)^k の核を調べる。今回は固有値が 1-1 だけなので、N=A+IN=A+I を作ると Jordan 構造がそのまま NN の冪零構造になる。

途中式の見方

kerN\ker N は通常の固有空間である。一方、N3=0N^3=0 なので任意のベクトルは (A+I)3(A+I)^300 に送られる。これが広義固有空間全体が R3\mathbb{R}^3 になる理由である。さらに N20N^2\ne 0 だから、冪零指数は 33 であり、少なくとも1つの Jordan ブロックの大きさが 33 である。全体が3次元なので、可能性は 33 次ブロック1個だけに絞られる。

鎖の作り方

まず kerN\ker N の非零ベクトルとして p1=t(2,4,4)p_1={}^{t}(-2,4,4) を取る。次に Np2=p1Np_2=p_1 を満たす p2p_2 を1つ探し、さらに Np3=p2Np_3=p_2 を満たす p3p_3 を探せばよい。解は一意である必要はなく、列ベクトルが一次独立になり、上の鎖の関係式を満たしていれば同じ Jordan 標準形を与える。

検算

行列のトレースは 13+1=3-1-3+1=-3 で、固有値の和 (1)+(1)+(1)(-1)+(-1)+(-1) と一致する。また detA=1\det A=-1 で、固有値の積とも一致する。最後に Np2=p1, Np3=p2Np_2=p_1,\ Np_3=p_2detP=80\det P=8\ne0 を直接確認すれば、上の PP が正しいことを短時間で検算できる。P1APP^{-1}AP を最初から計算し切らなくても、AP=PJAP=PJ を確かめれば同じ検算になる。

典型ミス

固有空間と広義固有空間を同一視してしまうミスが多い。今回の固有空間は1次元だが、広義固有空間は3次元である。また、N3=0N^3=0 だけではなく N20N^2\ne0 まで書くことで、ブロックサイズが本当に 33 であることが示せる。Jordan 鎖の列の順序を逆にすると、標準形の 11 が下三角側に出るため、指定した標準形とは一致しない。

試験で書くべきポイント

特性多項式、ker(A+I)\ker(A+I)(A+I)3=0(A+I)^3=0、Jordan 鎖の関係式を必ず書く。最後に detP0\det P\ne0P1AP=JP^{-1}AP=J の形を示せば、基底を本当に取れていることが伝わる。

続きの解答(途中式・最終答)はPDFに収録

2 — 左からの行列積

方針

行列全体の空間 VV は4次元だが、左から AA を掛ける操作は「第1列に AA を掛ける」「第2列に AA を掛ける」という2つの同じ操作に分かれる。この列ごとの見方を使うと、表現行列も階数も自然に出る。

途中式の見方

一般の X=(x11x12x21x22) X=\begin{pmatrix}x_{11}&x_{12}\\x_{21}&x_{22}\end{pmatrix} に対して AX=(ax11+bx21ax12+bx22cx21cx22) AX= \begin{pmatrix} ax_{11}+bx_{21}&ax_{12}+bx_{22}\\ cx_{21}&cx_{22} \end{pmatrix} である。この4成分を S=(E11,E12,E21,E22)S=(E_{11},E_{12},E_{21},E_{22}) の順に並べると、表現行列の各列と一致する。

階数の意味

TAT_A の階数は、行列 AA の階数そのものではなく、4次元空間 VV 上の線形写像としての像の次元である。各列の行き先は ImA\operatorname{Im}A の中で自由に動けるため、1列あたり rr 次元、2列で 2r2r 次元になる。したがって r=0,1,2r=0,1,2 の場合に対応して、rankTA=0,2,4\operatorname{rank}T_A=0,2,4 となる。

検算

A=IA=I なら TAT_A は恒等写像であり、上の表現行列も 44 次単位行列、階数も 4=224=2\cdot2 になる。A=0A=0 なら表現行列は零行列で、階数も 0=200=2\cdot0 である。さらに rankA=1\operatorname{rank}A=1 の場合は、各列の像が1次元に制限されるので、2列分で階数が 22 になることも公式と合う。

典型ミス

基底の順序を E11,E21,E12,E22E_{11},E_{21},E_{12},E_{22} のように列優先で読んでしまうと、表現行列の行と列が入れ替わる。問題で与えられた基底順に、像の座標を縦ベクトルとして並べることが重要である。また、rankA=r\operatorname{rank}A=r からすぐに rankTA=r\operatorname{rank}T_A=r としてしまうのも誤りで、同じ写像が2本の列に独立に作用する分だけ階数が2倍になる。

試験で書くべきポイント

線形性は1行でよいので明記する。表現行列では、4つの基底ベクトルの像を先に書くと部分点を取りやすい。階数は列ごとの直和の説明を添えると、2r2r の根拠が明確になる。

続きの解答(途中式・最終答)はPDFに収録

3 — 一様連続性

方針

一様連続性を示す最短経路は、平均値の定理で Lipschitz 条件を出すことである。導関数が有界なら f(x)f(y)Cxy |f(x)-f(y)|\le C|x-y| が成り立ち、δ\deltax,yx,y の位置によらず選べる。

途中式の見方

「導関数が最大値・最小値をもつ」とは、導関数が上下から有限に抑えられているということである。連続性までは仮定されていなくても、最大値と最小値が存在するなら f|f'| の上界 LL を作れる。

検算

[a,b][a,b] 上の x2x^2 では、2max{a,b}2\max\{|a|,|b|\} が Lipschitz 定数になる。区間が原点から遠ざかるほど定数は大きくなるが、固定した有界閉区間では有限である。これに対して R\mathbb{R} 全体では 2x|2x| が有界でないため、同じ議論は使えない。

別証の見方

最後の非一様連続性は、δ\delta--ε\varepsilon で直接書く方法と、上の列 xn,ynx_n,y_n を使う方法のどちらでも示せる。答案としては直接法の方が定義に沿っていて確実だが、列の検算を添えると「大きい xx の近くでは傾きが大きすぎる」という失敗の構造がはっきりする。

典型ミス

各点で連続であることと一様連続であることを混同してはいけない。x2x^2R\mathbb{R} 上で連続だが、十分大きい xx の近くでは、同じ小さな幅でも値の差が大きくなる。また、導関数が有界であることは一様連続性の十分条件であって、必要条件ではない。導関数が有界でないから一様連続でない、とだけ書くのは一般には根拠不足である。

試験で書くべきポイント

一様連続でないことを示すときは、ε\varepsilon を1つ固定し、任意の δ\delta に対して反例となる2点を作る。今回の x=1/h, y=x+hx=1/h,\ y=x+h は、距離を hh に保ったまま値の差を 2+h22+h^2 に固定している点が要点である。

続きの解答(途中式・最終答)はPDFに収録

4 — 楕円領域の積分

方針

領域の式と被積分関数の中身が同じ二次式で決まっているので、まず楕円を円に直す。4a=(2a)24^a=(2^a)^2 に注目すると、u=2ax, v=2byu=2^a x,\ v=2^b y が自然な変数変換である。

途中式の見方

変数変換後の積分 u2+v211u2v2dudv \iint_{u^2+v^2\le1}\sqrt{1-u^2-v^2}\,du\,dv は、半径1の上半球の体積と同じ値である。極座標で計算すれば 2π3\frac{2\pi}{3} となり、残る依存性は Jacobian から来る 2(a+b)2^{-(a+b)} だけである。

検算

a=b=0a=b=0 のとき領域は単位円板であり、積分は上半球の体積 2π3\frac{2\pi}{3} になる。これは公式 f(a,b)=2π32(a+b)f(a,b)=\frac{2\pi}{3}2^{-(a+b)} に代入しても一致する。

典型ミス

Jacobian を 2a+b2^{a+b} としてしまうミスが多い。今回は x=2au, y=2bvx=2^{-a}u,\ y=2^{-b}v なので、面積要素は dxdy=2(a+b)dudvdx\,dy=2^{-(a+b)}du\,dv である。また最大最小では a2+b2=1a^2+b^2=1 上の a+ba+b の範囲を使うので、a,ba,b を独立に最大化してはいけない。

試験で書くべきポイント

変数変換、Jacobian、単位円板での極座標積分、Cauchy--Schwarz による a+ba+b の範囲を順に書く。最大点・最小点の座標まで書くと、値だけでなく等号成立条件も確認できている答案になる。

続きの解答(途中式・最終答)はPDFに収録

5 — ローラン展開

方針

分母 ez1e^z-1z=0z=0 で1次の零点をもつ。したがって逆数は1位の極をもち、ローラン展開は z1z^{-1} から始まる。係数は (ez1)f(z)=1(e^z-1)f(z)=1 の係数比較で機械的に求めるのが確実である。

途中式の見方

漸化式は、積 (z+z22!+z33!+)(a1z1+a0+a1z+) \left(z+\frac{z^2}{2!}+\frac{z^3}{3!}+\cdots\right) \left(a_{-1}z^{-1}+a_0+a_1z+\cdots\right) zpz^p になる組をすべて集めたものである。添字を ss でずらすと as1zs1zps+1(ps+1)! a_{s-1}z^{s-1}\cdot \frac{z^{p-s+1}}{(p-s+1)!} zpz^p の項になる。

検算

得られた展開 1z12+z12z3720+ \frac1z-\frac12+\frac{z}{12}-\frac{z^3}{720}+\cdots ez1=z+z22+z36+e^z-1=z+\frac{z^2}{2}+\frac{z^3}{6}+\cdots に掛けると、定数項が 11、正の次数の初項が順に消える。これが係数比較の検算になる。 係数表を横に置くと、どの漸化式からどの係数が決まったかを確認しやすい。

典型ミス

f(z)=f(z)f(-z)=-f(z) としてしまうのは誤りである。正しくは f(z)=1f(z)f(-z)=-1-f(z) であり、奇関数になるのは f(z)+12f(z)+\frac12 である。また a3a_3 を求めるには p=4p=4 の式を使う。p=3p=3 から直接 a3a_3 は出てこない。

試験で書くべきポイント

1位の極である理由、留数 a1a_{-1}、係数比較による漸化式、a0a_0、奇関数性、最後に a1,a3a_1,a_3 の計算を順に書く。特に奇関数性は「何が奇関数か」を明示することが採点上重要である。

続きの解答(途中式・最終答)はPDFに収録

6 — 閉集合と開写像

方針

閉集合の定義は補集合の開性で処理するのが最も速い。1点集合の閉性は、点 yx0y\ne x_0x0x_0 の距離が正であることから、yy のまわりに x0x_0 を含まない小球を取るだけで示せる。

途中式の見方

三角不等式から d(z,x0)d(y,x0)d(z,y) d(z,x_0)\ge d(y,x_0)-d(z,y) が出る。半径を d(y,x0)/2d(y,x_0)/2 にしておけば、球の中の点 zz は必ず x0x_0 から正の距離を保つ。これが補集合の開性の具体的な証明である。

検算

R\mathbb{R} で考えると、{0}\{0\} の補集合は (,0)(0,)(-\infty,0)\cup(0,\infty) で開集合である。一般の距離空間での証明は、この直感を距離 d(y,x0)d(y,x_0) を使って書いたものになっている。

反例の作り方

最後の設問では、連続性そのものを壊す必要はない。 必要なのは「連続であるにもかかわらず開集合の像が開でない」例である。 定数写像は全ての点を1点に潰すため、定義域全体のような明らかな開集合を取れば、像が1点集合になってすぐ反例になる。

典型ミス

連続写像について正しい一般命題は「開集合の逆像は開集合」であり、「開集合の像は開集合」ではない。この2つを取り違えると最後の設問を誤る。開集合を開集合に写す写像は、連続写像ではなく開写像という別の性質である。たとえば恒等写像や狭義単調な同相写像は開写像になるが、定数写像は連続でも開写像ではない。

別解としての距離関数

1点集合の閉性は、関数 φ:XR,φ(y)=d(y,x0) \varphi:X\to\mathbb{R},\qquad \varphi(y)=d(y,x_0) を使っても示せる。距離関数は φ(y)φ(z)d(y,z) |\varphi(y)-\varphi(z)|\le d(y,z) を満たすので連続であり、{x0}=φ1({0})\{x_0\}=\varphi^{-1}(\{0\}) である。実数直線の {0}\{0\} は閉集合だから、連続写像の閉集合の逆像として {x0}\{x_0\} は閉集合である。直接証明より少し抽象的だが、距離空間でよく使う見方である。

試験で書くべきポイント

1点集合の証明では、任意の yx0y\ne x_0 に対して半径 d(y,x0)/2d(y,x_0)/2 の球を取る、と明記する。反例では、写像が連続であること、元の集合が開であること、像が開でないことの3点をすべて書く。

続きの解答(途中式・最終答)はPDFに収録

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