院試hub

第1問 — 不変体とガロワ閉包

符号反転と置換を分ける

KK から MM へは平方根を 4 個独立に加えているだけなので,まず符号反転群 (F2)4(\mathbb F_2)^4 を見る。FF まで下げると,さらに 4 変数の置換が作用する。 この二段階を混ぜないことが重要である。

ガロワな中間体の判定

FF 上ガロワであることは,固定部分群が全ガロワ群で正規であることに対応する。 符号反転群の部分群のうち,置換で保たれるものだけを拾えばよい。

解答

(1)

x1=X, x2=Y, x3=Z, x4=Wx_1=\sqrt X,\ x_2=\sqrt Y,\ x_3=\sqrt Z,\ x_4=\sqrt W とおく。 このとき M=C(x1,x2,x3,x4) M=\mathbb C(x_1,x_2,x_3,x_4) である。実際,F=KS4F=K^{\mathfrak S_4} 上で X,Y,Z,WX,Y,Z,W は互いに共役なので, X\sqrt X の共役は ±xi (1≤i≤4)\pm x_i\ (1\le i\le4) であり,それらをすべて加えた体が ガロワ閉包になる。

M/KM/K のガロワ群は各 xix_i の符号を独立に変える群であるから Gal⁡(M/K)≃(Z/2Z)4,[M:K]=16. \operatorname{Gal}(M/K)\simeq (\mathbb Z/2\mathbb Z)^4,\qquad [M:K]=16. また u=x1+x2+x3+x4 u=x_1+x_2+x_3+x_4 とおくと,符号変換で uu を固定するものは恒等変換だけである。したがって M=K(u) M=K(u) である。

(2)

中間体の個数は,(F2)4(\mathbb F_2)^4 の部分空間の個数に等しい。よって ∑d=04[4d]2=1+15+35+15+1=67. \sum_{d=0}^4 \genfrac{[}{]}{0pt}{}{4}{d}_2 =1+15+35+15+1=67.

(3)

最後に,M/FM/F のガロワ群は (Z/2Z)4⋊S4 (\mathbb Z/2\mathbb Z)^4\rtimes \mathfrak S_4 であり,S4\mathfrak S_4 は 4 個の符号を置換する。KK と MM の間の体 E=MHE=M^H が FF 上ガロワになるための条件は,対応する H⊂(F2)4H\subset(\mathbb F_2)^4 が S4\mathfrak S_4-不変であることである。 置換加群 (F2)4(\mathbb F_2)^4 の非自明な真の不変部分空間は Δ=⟨(1,1,1,1)⟩,V0={(εi)∣ε1+ε2+ε3+ε4=0} \Delta=\langle(1,1,1,1)\rangle,\qquad V_0=\{(\varepsilon_i)\mid \varepsilon_1+\varepsilon_2+\varepsilon_3+\varepsilon_4=0\} の二つである。したがって該当する中間体は二つだけである。

具体的には E1=MΔ,E2=MV0 E_1=M^\Delta,\qquad E_2=M^{V_0} であり, y1=x1x2+2x1x3+4x1x4+8x2x3+16x2x4+32x3x4,y2=x1x2x3x4 y_1=x_1x_2+2x_1x_3+4x_1x_4+8x_2x_3+16x_2x_4+32x_3x_4, \qquad y_2=x_1x_2x_3x_4 とすれば E1=K(y1),E2=K(y2) E_1=K(y_1),\qquad E_2=K(y_2) である。y1y_1 の固定群は全符号反転だけであり,y2y_2 の固定群は偶数個の符号 反転からなる群であるためである。

最終答

[M:K]=16[M:K]=16,中間体の総数は 6767。FF 上ガロワな非自明真中間体は MΔM^\Delta と MV0M^{V_0} の二つで,それぞれ上の y1,y2y_1,y_2 で KK 上生成できる。

第2問 — 一元生成実代数

重根があると連続パラメータが出る

冪零元を持つ局所因子では,冪零元の一次係数を自由に伸縮できる。この自由度が R×\mathbb R^\times または C×\mathbb C^\times を含むため,自己同型群は有限に ならない。

重根なしなら有限エタール

重根のない因子だけなら,代数は R\mathbb R と C\mathbb C の有限直積に分解する。 残る自由度は有限個の成分の置換と複素共役だけである。

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第3問 — 半線型群の共役類

半線型群では体自己同型で類が融合する

GL⁡(2,9)\operatorname{GL}(2,9) 内の共役類を先に分類し,係数の 3 乗写像で同一視される ものを合わせる。類の大きさは,固定される場合はそのまま,固定されない場合は 二つ分になる。

後半はラング写像

A↦A(A(3))−1A\mapsto A(A^{(3)})^{-1} の像が θ\theta の共役類を与える。可換条件で F3\mathbb F_3 係数に落ち,最後は GL⁡(2,3)\operatorname{GL}(2,3) の involution の 個数に帰着する。

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第4問 — 二項式環と正規化

二項式の既約性

二項式 Xa−YbZcX^a-Y^bZ^c は,指数ベクトルが原始的なら既約である。ここでは gcd⁡(a,b,c)=1\gcd(a,b,c)=1 がその条件そのものである。

正規化の見つけ方

a=ba=b では Xa=YaZcX^a=Y^aZ^c なので,Z=VaZ=V^a,Y=WY=W,X=VcWX=V^cW と置くと 関係式がちょうど消える。残りは gcd⁡(a,c)=1\gcd(a,c)=1 により分数体が一致することと, VV が AA 上整であることを確認すればよい。

二項式環と正規化の途中式・最終答をPDFで見る

第5問 — 三次元球面上の積分不変量

独立性は H1(S3)=0H^1(S^3)=0

二つの原始形式の差は閉 1 形式であり,三次元球面では完全形式になる。あとは ストークスの定理で積分差が消える。

トーラスでは二次元性を使う

ω\omega のコホモロジー類を閉 1 形式の積で代表し,残りを完全形式に押し込む。 引き戻した 1 形式が S3S^3 上で完全になることが,最後の消滅の理由である。

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第6問 — 商空間のホモロジー

リンクを計算する

原点を除いた商空間は,半径方向により 3 次元球面上の商へ縮む。二つの Hopf 円が 同じ円に次数 2 で貼られる,というモデルに直すとホモロジー計算が素直になる。

局所ユークリッド性の否定

4 次元多様体の点なら,小球から点を抜いたもののホモロジーは S3S^3 のものに なる。ここではリンクに H1,H2H_1,H_2 が残るため,局所的に R4\mathbb R^4 ではない。

商空間のホモロジーの途中式・最終答をPDFで見る

第7問 — 面積と微分の伸縮率

面積は特異値の積

2 次元では,微分の面積拡大率は二つの特異値の積である。最小伸縮率と最大伸縮率の 二乗で挟むだけで,積分評価が得られる。

次数の整数性

平均面積倍率は符号付き次数に等しい。下から 1 を超えると,次数は絶対値 2 以上に 跳ぶため,上の伸縮率に 2\sqrt2 という下限が出る。

面積と微分の伸縮率の途中式・最終答をPDFで見る

第8問 — 双曲面上の不変面積

制限の独立性

dQdQ を掛けた 3 形式が 0 になる 2 形式は,レベル面に制限すると消える。したがって 条件をみたす 2 形式の差は MM 上では見えない。

双曲面座標で積分する

x2+y2−z2=1x^2+y^2-z^2=1 には (cosh⁡ucos⁡θ,cosh⁡usin⁡θ,sinh⁡u)(\cosh u\cos\theta,\cosh u\sin\theta,\sinh u) が自然である。特異値の対数の 制限が ∣u∣≤r|u|\le r になり,積分は一次元積分に落ちる。

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第9問 — Lqノルムの零指数極限

q→0q\to0 では幾何平均になる

∫fq=∫eqlog⁡f\int f^q=\int e^{q\log f} を 1 次展開すると,log⁡∥f∥q\log\|f\|_q は ∫log⁡f\int\log f に近づく。これは LqL^q ノルムの極限が幾何平均になるという標準事実である。

負の無限大の扱い

log⁡f\log f の正の部分は LpL^p 条件から制御される。一方,負の部分は無限大でもよい。 その場合は切り上げ fεf_\varepsilon で有限の場合に帰着する。

Lqノルムの零指数極限の途中式・最終答をPDFで見る

第10問 — 三角領域上の積分作用素

ノルムは帯で鋭くなる

評価に現れる係数は 1−y1-y で,最大値は 1 である。最大値そのものは測度 0 の境界で 取られるが,境界近くに支えを寄せれば任意に近づく。

固有値問題は二階常微分方程式

STfSTf は xx だけに依存するため,固有関数も xx だけの関数になる。二回微分で 余弦型の境界値問題に落とすのが最短である。

三角領域上の積分作用素の途中式・最終答をPDFで見る

第11問 — グラフ曲線の発展

境界条件で端点項が消える

長さの微分では部分積分を行う。端点項は ux(0,t)=ux(1,t)=0u_x(0,t)=u_x(1,t)=0 で消える。

arctan⁡\arctan に気づく

uxx1+ux2\frac{u_{xx}}{1+u_x^2} は ∂x(arctan⁡ux)\partial_x(\arctan u_x) である。保存量の計算は この一行に集約される。

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第12問 — 有界領域の正則自己写像

任意の有界領域では双曲計量を使う

円板に限らないため,初等的な Schwarz の補題をそのまま使うのではなく,双曲計量版の Schwarz--Pick を使うのが自然である。

等号の場合は回転が反例

微分の絶対値が 1 の場合は,自己同型が残る。単位円板の無理角回転だけで,反復列が 収束しない例になる。

有界領域の正則自己写像の途中式・最終答をPDFで見る

第13問 — 急増する常微分方程式

log⁡(1+x1)\log(1+x_1) で線形化

最初の方程式は log⁡(1+y)\log(1+y) を取ると v′=vv'=v になる。ここで得た二重指数的な 増大を,二つ目の方程式の上からの評価に使う。

x2\sqrt{x_2} を見る

x1x2>1x_1x_2>1 以後は,(x2)′(\sqrt{x_2})' の余分な項を x1\sqrt{x_1} で吸収できる。 この変形が最後の二重指数型上界につながる。

急増する常微分方程式の途中式・最終答をPDFで見る

第14問 — 中点公式の誤差評価

中点公式は二階微分で評価

各小区間の中点まわりに展開すると一次項が消える。残る二次項の積分が h3/24h^3/24 を与える。

端点特異性は分割して処理

(1−x)3/2(1-x)^{3/2} は二階微分が x=1x=1 で発散するため,全区間に通常評価を直接使えない。 最後の小区間だけ粗く押さえ,残りでは二階微分の上界を使う。

中点公式の誤差評価の途中式・最終答をPDFで見る

第15問 — 母関数と直交多項式

正体は Laguerre 多項式

母関数を既知の形と照合すると α=−1/2\alpha=-1/2 の Laguerre 多項式である。直交性と 三項漸化式はそのまま使える。

最後は母関数ごと積分

Im,nI_{m,n} を個別に計算するより,∑Im,nun\sum I_{m,n}u^n を先に計算する方が簡潔である。 ガンマ積分が一度出るだけで係数が決まる。

母関数と直交多項式の途中式・最終答をPDFで見る

第16問 — 連成振り子の固有振動

各ひもの水平差がばねのように効く

第 ii 番目のひもの傾きは xi−xi−1x_i-x_{i-1} で決まる。このひもより下にある N−i+1N-i+1 個のおもりの高さを変えるため,係数 N−i+1N-i+1 が付く。

固有値問題は三重対角行列

微小振動は対称三重対角行列の固有値問題になる。行列式の漸化式を取ると,そのまま 求める多項式列が得られる。

連成振り子の固有振動の途中式・最終答をPDFで見る

第17問 — 線型空間の定義可能集合

自己同型で軌道を見る

加法とスカラー倍だけの言語では,線型自己同型がそのまま構造自己同型である。固定した パラメータで生成される部分空間の外側は一つの軌道になる。

有限体なら部分空間が有限

最後の主張は,有限体上の有限生成部分空間が有限集合であることだけを追加すればよい。 定義可能集合は有限部分かその補集合が有限な部分しか作れない。

線型空間の定義可能集合の途中式・最終答をPDFで見る

第18問 — 標本自己相関の最大点

重なり項の共分散は消える

XjXj+hX_jX_{j+h} と XkXk+hX_kX_{k+h} は添字が一部重なる場合があるが,どこかに一次で現れる 平均 0 の変数が残るため,共分散は 0 になる。

mn/n→0m_n/n\to0 が効く場所

正の lag を同時に見るため union bound を使う。各分散が 1/n1/n なので,候補数 mnm_n が nn より小さいオーダーなら最大も 0 へ落ちる。

標本自己相関の最大点の途中式・最終答をPDFで見る

年度別の解答例(20年度)

2021年度の出題内容

全18問

この18問の分野は力学1問です。

大問分野主題解説の小見出し最終答
第1問—不変体とガロワ閉包符号反転と置換を分ける / ガロワな中間体の判定あり
第2問—一元生成実代数重根があると連続パラメータが出る / 重根なしなら有限エタールあり
第3問—半線型群の共役類半線型群では体自己同型で類が融合する / 後半はラング写像あり
第4問—二項式環と正規化二項式の既約性 / 正規化の見つけ方あり
第5問—三次元球面上の積分不変量独立性は H^1(S^3)=0 / トーラスでは二次元性を使うあり
第6問—商空間のホモロジーリンクを計算する / 局所ユークリッド性の否定あり
第7問—面積と微分の伸縮率面積は特異値の積 / 次数の整数性あり
第8問—双曲面上の不変面積制限の独立性 / 双曲面座標で積分するあり
第9問—Lqノルムの零指数極限q→0 では幾何平均になる / 負の無限大の扱いあり
第10問—三角領域上の積分作用素ノルムは帯で鋭くなる / 固有値問題は二階常微分方程式あり
第11問—グラフ曲線の発展境界条件で端点項が消える / \arctan に気づくあり
第12問—有界領域の正則自己写像任意の有界領域では双曲計量を使う / 等号の場合は回転が反例あり
第13問—急増する常微分方程式log(1+x_1) で線形化 / \sqrt{x_2} を見るあり
第14問—中点公式の誤差評価中点公式は二階微分で評価 / 端点特異性は分割して処理あり
第15問—母関数と直交多項式正体は Laguerre 多項式 / 最後は母関数ごと積分あり
第16問力学連成振り子の固有振動各ひもの水平差がばねのように効く / 固有値問題は三重対角行列あり
第17問—線型空間の定義可能集合自己同型で軌道を見る / 有限体なら部分空間が有限あり
第18問—標本自己相関の最大点重なり項の共分散は消える / m_n/n→0 が効く場所あり

前年度(2020年度)との違い

大問数
2020年度 18問 → 2021年度 18問
2020年度の解答例

東京大学の公式過去問

公開年度範囲
直近3年度(おおむね2020〜2022相当)
公式の解答例
非公開(問題冊子のみ)
英語の扱い
TOEIC L&R または TOEFL iBT/ITP のスコア提出。学内英語試験は実施なし。
院試hubの最終確認
2026-06-03
東京大学の公式過去問PDF