東大 数理科学研究科 数理科学専攻 専門科目B 2021年度 院試 過去問 解答例・解説(全18問)
全18問の分野は力学1問です。解説はすべて、途中式と最終答は大問1問ぶんを公開しています。残りは解答PDFに収録しています。問題本文は含みません。
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第1問 — 不変体とガロワ閉包
符号反転と置換を分ける
から へは平方根を 4 個独立に加えているだけなので,まず符号反転群 を見る。 まで下げると,さらに 4 変数の置換が作用する。 この二段階を混ぜないことが重要である。
ガロワな中間体の判定
上ガロワであることは,固定部分群が全ガロワ群で正規であることに対応する。 符号反転群の部分群のうち,置換で保たれるものだけを拾えばよい。
解答
(1)
とおく。 このとき である。実際, 上で は互いに共役なので, の共役は であり,それらをすべて加えた体が ガロワ閉包になる。
のガロワ群は各 の符号を独立に変える群であるから また とおくと,符号変換で を固定するものは恒等変換だけである。したがって である。
(2)
中間体の個数は, の部分空間の個数に等しい。よって
(3)
最後に, のガロワ群は であり, は 4 個の符号を置換する。 と の間の体 が 上ガロワになるための条件は,対応する が -不変であることである。 置換加群 の非自明な真の不変部分空間は の二つである。したがって該当する中間体は二つだけである。
具体的には であり, とすれば である。 の固定群は全符号反転だけであり, の固定群は偶数個の符号 反転からなる群であるためである。
最終答
,中間体の総数は 。 上ガロワな非自明真中間体は と の二つで,それぞれ上の で 上生成できる。
第2問 — 一元生成実代数
重根があると連続パラメータが出る
冪零元を持つ局所因子では,冪零元の一次係数を自由に伸縮できる。この自由度が または を含むため,自己同型群は有限に ならない。
重根なしなら有限エタール
重根のない因子だけなら,代数は と の有限直積に分解する。 残る自由度は有限個の成分の置換と複素共役だけである。
第3問 — 半線型群の共役類
半線型群では体自己同型で類が融合する
内の共役類を先に分類し,係数の 3 乗写像で同一視される ものを合わせる。類の大きさは,固定される場合はそのまま,固定されない場合は 二つ分になる。
後半はラング写像
の像が の共役類を与える。可換条件で 係数に落ち,最後は の involution の 個数に帰着する。
第4問 — 二項式環と正規化
二項式の既約性
二項式 は,指数ベクトルが原始的なら既約である。ここでは がその条件そのものである。
正規化の見つけ方
では なので,,, と置くと 関係式がちょうど消える。残りは により分数体が一致することと, が 上整であることを確認すればよい。
第5問 — 三次元球面上の積分不変量
独立性は
二つの原始形式の差は閉 1 形式であり,三次元球面では完全形式になる。あとは ストークスの定理で積分差が消える。
トーラスでは二次元性を使う
のコホモロジー類を閉 1 形式の積で代表し,残りを完全形式に押し込む。 引き戻した 1 形式が 上で完全になることが,最後の消滅の理由である。
第6問 — 商空間のホモロジー
リンクを計算する
原点を除いた商空間は,半径方向により 3 次元球面上の商へ縮む。二つの Hopf 円が 同じ円に次数 2 で貼られる,というモデルに直すとホモロジー計算が素直になる。
局所ユークリッド性の否定
4 次元多様体の点なら,小球から点を抜いたもののホモロジーは のものに なる。ここではリンクに が残るため,局所的に ではない。
第7問 — 面積と微分の伸縮率
面積は特異値の積
2 次元では,微分の面積拡大率は二つの特異値の積である。最小伸縮率と最大伸縮率の 二乗で挟むだけで,積分評価が得られる。
次数の整数性
平均面積倍率は符号付き次数に等しい。下から 1 を超えると,次数は絶対値 2 以上に 跳ぶため,上の伸縮率に という下限が出る。
第8問 — 双曲面上の不変面積
制限の独立性
を掛けた 3 形式が 0 になる 2 形式は,レベル面に制限すると消える。したがって 条件をみたす 2 形式の差は 上では見えない。
双曲面座標で積分する
には が自然である。特異値の対数の 制限が になり,積分は一次元積分に落ちる。
第9問 — Lqノルムの零指数極限
では幾何平均になる
を 1 次展開すると, は に近づく。これは ノルムの極限が幾何平均になるという標準事実である。
負の無限大の扱い
の正の部分は 条件から制御される。一方,負の部分は無限大でもよい。 その場合は切り上げ で有限の場合に帰着する。
第10問 — 三角領域上の積分作用素
ノルムは帯で鋭くなる
評価に現れる係数は で,最大値は 1 である。最大値そのものは測度 0 の境界で 取られるが,境界近くに支えを寄せれば任意に近づく。
固有値問題は二階常微分方程式
は だけに依存するため,固有関数も だけの関数になる。二回微分で 余弦型の境界値問題に落とすのが最短である。
第11問 — グラフ曲線の発展
境界条件で端点項が消える
長さの微分では部分積分を行う。端点項は で消える。
に気づく
は である。保存量の計算は この一行に集約される。
第12問 — 有界領域の正則自己写像
任意の有界領域では双曲計量を使う
円板に限らないため,初等的な Schwarz の補題をそのまま使うのではなく,双曲計量版の Schwarz--Pick を使うのが自然である。
等号の場合は回転が反例
微分の絶対値が 1 の場合は,自己同型が残る。単位円板の無理角回転だけで,反復列が 収束しない例になる。
第13問 — 急増する常微分方程式
で線形化
最初の方程式は を取ると になる。ここで得た二重指数的な 増大を,二つ目の方程式の上からの評価に使う。
を見る
以後は, の余分な項を で吸収できる。 この変形が最後の二重指数型上界につながる。
第14問 — 中点公式の誤差評価
中点公式は二階微分で評価
各小区間の中点まわりに展開すると一次項が消える。残る二次項の積分が を与える。
端点特異性は分割して処理
は二階微分が で発散するため,全区間に通常評価を直接使えない。 最後の小区間だけ粗く押さえ,残りでは二階微分の上界を使う。
第15問 — 母関数と直交多項式
正体は Laguerre 多項式
母関数を既知の形と照合すると の Laguerre 多項式である。直交性と 三項漸化式はそのまま使える。
最後は母関数ごと積分
を個別に計算するより, を先に計算する方が簡潔である。 ガンマ積分が一度出るだけで係数が決まる。
第16問 — 連成振り子の固有振動
各ひもの水平差がばねのように効く
第 番目のひもの傾きは で決まる。このひもより下にある 個のおもりの高さを変えるため,係数 が付く。
固有値問題は三重対角行列
微小振動は対称三重対角行列の固有値問題になる。行列式の漸化式を取ると,そのまま 求める多項式列が得られる。
第17問 — 線型空間の定義可能集合
自己同型で軌道を見る
加法とスカラー倍だけの言語では,線型自己同型がそのまま構造自己同型である。固定した パラメータで生成される部分空間の外側は一つの軌道になる。
有限体なら部分空間が有限
最後の主張は,有限体上の有限生成部分空間が有限集合であることだけを追加すればよい。 定義可能集合は有限部分かその補集合が有限な部分しか作れない。
第18問 — 標本自己相関の最大点
重なり項の共分散は消える
と は添字が一部重なる場合があるが,どこかに一次で現れる 平均 0 の変数が残るため,共分散は 0 になる。
が効く場所
正の lag を同時に見るため union bound を使う。各分散が なので,候補数 が より小さいオーダーなら最大も 0 へ落ちる。
年度別の解答例(20年度)
整行列の部分環と格子加群 / Kummer拡大と四元数群 / 上三角群と双対数環上の持ち上げ
有限推移群の derangement / 三次商環の単元群 / 自己テンソルで消える加群
冪零行列のSL共役類 / 曲線特異点とHom加群 / 切断された次数付き加群
行列成分の軌道 / 平方零イデアルによる拡大 / 多項式環の自由性
2021年度(このページ・全18問)
不変体とガロワ閉包 / 一元生成実代数 / 半線型群の共役類
Galois閉包と中間体 / 二変数多項式環の極大イデアル / 特異点の随伴次数環
余次元1の部分環 / 三項式の既約性 / 対称関数体と中間体
位数pの持ち上げ / 交叉曲線の正則性 / 尖点環上の二次曲面
部分格子と有限アーベル群 / 2重可移作用 / 二次超曲面の特異点
2016年度(全18問)最終答まで公開
巡回商をもつ群拡大 / 三直線の座標環と巡回作用 / 有理関数体のガロア閉包
2015年度(全18問)最終答まで公開
有限p群の共役類と既約表現 / 数値半群環の conductor / BGG 型複体
2014年度(全18問)最終答まで公開
Artin--Schreier拡大 / 実代数曲線の極大イデアル / ファイバーと接空間次元
2013年度(全18問)最終答まで公開
有限体上の2次一般線形群 / 3本の直線の有限被覆 / Nakayamaの補題と単項曲線
2012年度(全1問)最終答まで公開
有理関数体の不変体
2011年度(全1問)最終答まで公開
有限可換群と巡回因子
2010年度(全1問)最終答まで公開
有限環の分解と単数群
2007年度(全1問)最終答まで公開
半直積の正規部分群
2006年度(全1問)最終答まで公開
分解体と中間体
2005年度(全1問)最終答まで公開
行列の位数
2004年度(全1問)最終答まで公開
線形写像の階数
2021年度の出題内容
全18問
この18問の分野は力学1問です。
| 大問 | 分野 | 主題 | 解説の小見出し | 最終答 |
|---|---|---|---|---|
| 第1問 | — | 不変体とガロワ閉包 | 符号反転と置換を分ける / ガロワな中間体の判定 | あり |
| 第2問 | — | 一元生成実代数 | 重根があると連続パラメータが出る / 重根なしなら有限エタール | あり |
| 第3問 | — | 半線型群の共役類 | 半線型群では体自己同型で類が融合する / 後半はラング写像 | あり |
| 第4問 | — | 二項式環と正規化 | 二項式の既約性 / 正規化の見つけ方 | あり |
| 第5問 | — | 三次元球面上の積分不変量 | 独立性は H^1(S^3)=0 / トーラスでは二次元性を使う | あり |
| 第6問 | — | 商空間のホモロジー | リンクを計算する / 局所ユークリッド性の否定 | あり |
| 第7問 | — | 面積と微分の伸縮率 | 面積は特異値の積 / 次数の整数性 | あり |
| 第8問 | — | 双曲面上の不変面積 | 制限の独立性 / 双曲面座標で積分する | あり |
| 第9問 | — | Lqノルムの零指数極限 | q→0 では幾何平均になる / 負の無限大の扱い | あり |
| 第10問 | — | 三角領域上の積分作用素 | ノルムは帯で鋭くなる / 固有値問題は二階常微分方程式 | あり |
| 第11問 | — | グラフ曲線の発展 | 境界条件で端点項が消える / \arctan に気づく | あり |
| 第12問 | — | 有界領域の正則自己写像 | 任意の有界領域では双曲計量を使う / 等号の場合は回転が反例 | あり |
| 第13問 | — | 急増する常微分方程式 | log(1+x_1) で線形化 / \sqrt{x_2} を見る | あり |
| 第14問 | — | 中点公式の誤差評価 | 中点公式は二階微分で評価 / 端点特異性は分割して処理 | あり |
| 第15問 | — | 母関数と直交多項式 | 正体は Laguerre 多項式 / 最後は母関数ごと積分 | あり |
| 第16問 | 力学 | 連成振り子の固有振動 | 各ひもの水平差がばねのように効く / 固有値問題は三重対角行列 | あり |
| 第17問 | — | 線型空間の定義可能集合 | 自己同型で軌道を見る / 有限体なら部分空間が有限 | あり |
| 第18問 | — | 標本自己相関の最大点 | 重なり項の共分散は消える / m_n/n→0 が効く場所 | あり |
前年度(2020年度)との違い
- 大問数
- 2020年度 18問 → 2021年度 18問
東京大学の公式過去問
- 公開年度範囲
- 直近3年度(おおむね2020〜2022相当)
- 公式の解答例
- 非公開(問題冊子のみ)
- 英語の扱い
- TOEIC L&R または TOEFL iBT/ITP のスコア提出。学内英語試験は実施なし。
- 院試hubの最終確認
- 2026-06-03