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東北大学 院試 過去問 解答例

東北大 工学研究科 電気・情報系 基礎・専門科目 2026年3月 院試 過去問 解答例・解説(全6問)

全6問。電磁気学・回路1問。テーマタグは3件(固有値・固有ベクトル・フーリエ変換・井戸型ポテンシャル)。

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解説6問と大問1問の途中式・最終答(全6問)
解答PDFに収録
途中式と最終答(最終答つき6問)
問題本文
非収録

東北大 基礎・専門科目 2026年3月 院試 過去問の出題内容(全6問)

この6問の分野は電磁気学・回路1問です。

大問分野主題解説の小見出し最終答
第1問—電磁誘導磁束を先に置く / 向きの判定あり
第2問電磁気学・回路二端子対回路縦続行列の向き / 共振点の計算あり
第3問—全加算器とMUXMUXを真理値表として使う / 桁上がりの見方あり
第4問—関係の性質反射性は全ての点で必要 / 配列参照回数あり
第5問—井戸型ポテンシャル急な井戸幅変更の扱い / なぜ n=2 が重要かあり
第6問—線形代数と積分上三角行列 / 小半円の符号あり

この年度の解説には典型ミス1件が付いています。

2026年3月の出題テーマと、同じテーマを出した他大学・他年度

この年度は2問に3テーマが出ています。

前年度(2025年8月)との違い

大問数
2025年8月 6問 → 2026年3月 6問
2025年8月のページを見る

第1問 — 電磁誘導

磁束を先に置く

この問題は,局所的な誘導電場を直接求めるよりも,ループを貫く磁束 Φ=μ0Ia2πlog⁡r+ar \Phi=\frac{\mu_0 I a}{2\pi}\log\frac{r+a}{r} を最初に求めるのが最短である。直線電流の磁場は 1/x1/x で弱くなるため,積分結果が対数になる点が特徴である。

向きの判定

誘導電流の向きは符号計算だけでなくレンツの法則で確認する。直線電流が増加する場合は磁束の増加を打ち消す向き,ループが遠ざかる場合は磁束の減少を補う向きである。両者で誘導電流の向きが逆になるため,ここを取り違えると力の向きも逆になる。

エネルギー収支

移動する場合,磁気力は必ず運動に逆らう向きになる。外力がする仕事率がジュール熱に等しいことは,エネルギー保存の確認になっている。計算上も ∣F∣v0=(4R)IL2 |F|v_0=(4R)I_{\mathrm{L}}^2 となり,誘導電流により失われる機械的エネルギーが抵抗で熱になることが分かる。

解答

無限直線電流が作る磁束密度は,導体から距離 xx の点で B(x)=μ0I2πx B(x)=\frac{\mu_0 I}{2\pi x} であり,ループを貫く磁束は Φ=∫rr+aB(x) a dx=μ0Ia2πlog⁡r+ar \Phi=\int_r^{r+a} B(x)\,a\,dx =\frac{\mu_0 I a}{2\pi}\log\frac{r+a}{r} である。したがって相互インダクタンスは M=ΦI=μ0a2πlog⁡r+ar. M=\frac{\Phi}{I} =\frac{\mu_0 a}{2\pi}\log\frac{r+a}{r}.

  1. I=ktI=kt のとき Vi=−dΦdt=−μ0ak2πlog⁡r+ar. V_{\mathrm{i}}=-\frac{d\Phi}{dt} =-\frac{\mu_0 a k}{2\pi}\log\frac{r+a}{r}. 大きさは ∣Vi∣=μ0ak2πlog⁡r+ar. |V_{\mathrm{i}}| =\frac{\mu_0 a k}{2\pi}\log\frac{r+a}{r}. ループ全体の抵抗は 4R4R であるから,誘導電流の大きさは IL=∣Vi∣4R=μ0ak8πRlog⁡r+ar. I_{\mathrm{L}} =\frac{|V_{\mathrm{i}}|}{4R} =\frac{\mu_0 a k}{8\pi R}\log\frac{r+a}{r}. 向きは,直線電流による磁束の増加を妨げる向きである。すなわち,辺 BCBC では +z+z 方向,辺 ADAD では −z-z 方向に流れる向きである。
  2. I=I0I=I_0 一定でループが +x+x 方向に速度 v0v_0 で動くとき,rr は時間とともに増加する。磁束の時間微分は dΦdt=μ0I0a2πddr(log⁡r+ar)v0=−μ0I0a2v02πr(r+a) \frac{d\Phi}{dt} =\frac{\mu_0 I_0 a}{2\pi} \frac{d}{dr}\left(\log\frac{r+a}{r}\right)v_0 =-\frac{\mu_0 I_0 a^2 v_0}{2\pi r(r+a)} である。よって誘導起電力の大きさは ∣Vi∣=μ0I0a2v02πr(r+a). |V_{\mathrm{i}}| =\frac{\mu_0 I_0 a^2 v_0}{2\pi r(r+a)}. 誘導電流の大きさは IL=μ0I0a2v08πR r(r+a). I_{\mathrm{L}} =\frac{\mu_0 I_0 a^2 v_0}{8\pi R\,r(r+a)}. 向きは,減少する磁束を補う向きであり,辺 ADAD では +z+z 方向,辺 BCBC では −z-z 方向に流れる。 単位時間あたりのジュール熱は W1=(4R)IL2=μ02I02a4v0216π2R r2(r+a)2. W_1=(4R)I_{\mathrm{L}}^2 =\frac{\mu_0^2 I_0^2 a^4 v_0^2} {16\pi^2 R\,r^2(r+a)^2}. ループの水平な辺に働く力は zz 方向成分が互いに打ち消し合う。xx 方向の力は直線導体に近い辺と遠い辺の差で決まり, F=ILaμ0I02π(1r−1r+a)=μ0I0a22πr(r+a)IL. F =I_{\mathrm{L}}a\frac{\mu_0 I_0}{2\pi} \left(\frac1r-\frac1{r+a}\right) =\frac{\mu_0 I_0 a^2}{2\pi r(r+a)}I_{\mathrm{L}}. 向きは運動を妨げる −x-x 方向である。大きさは ∣F∣=μ02I02a4v016π2R r2(r+a)2. |F| =\frac{\mu_0^2 I_0^2 a^4 v_0} {16\pi^2 R\,r^2(r+a)^2}. 等速運動を保つ外力は +x+x 方向に同じ大きさであり,外力の単位時間あたりの仕事は W2=∣F∣v0=μ02I02a4v0216π2R r2(r+a)2. W_2=|F|v_0 =\frac{\mu_0^2 I_0^2 a^4 v_0^2} {16\pi^2 R\,r^2(r+a)^2}. したがって W2=W1 W_2=W_1 である。

最終答

M=μ0a2πlog⁡r+ar,∣Vi∣I=kt=μ0ak2πlog⁡r+ar,IL=∣Vi∣4R. M=\frac{\mu_0 a}{2\pi}\log\frac{r+a}{r},\qquad |V_{\mathrm{i}}|_{I=kt}=\frac{\mu_0 a k}{2\pi}\log\frac{r+a}{r}, \qquad I_{\mathrm{L}}=\frac{|V_{\mathrm{i}}|}{4R}. 移動時には IL=μ0I0a2v08πR r(r+a),W1=W2=μ02I02a4v0216π2R r2(r+a)2, I_{\mathrm{L}}=\frac{\mu_0 I_0 a^2 v_0}{8\pi R\,r(r+a)},\quad W_1=W_2=\frac{\mu_0^2 I_0^2 a^4 v_0^2} {16\pi^2R\,r^2(r+a)^2}, ループに働く磁気力は −x-x 方向である。

第2問 — 二端子対回路

縦続行列の向き

二端子対回路では,電流の正方向の取り方により式の見た目が変わる。本解答では負荷側電流を負荷へ流れ込む向きとして整理し,負荷条件を I2=V2/RLI_2=V_2/R_L として用いた。この約束では V1=(A+B/RL)V2 V_1=(A+B/R_L)V_2 となる。

共振点の計算

L0C0=10−12L_0C_0=10^{-12} なので ω0=106 rad/s\omega_0=10^6\,\mathrm{rad/s} である。このとき ZY=−1ZY=-1 となり AA と DD が消える。数値を代入する前にこの消去を見抜くと,H=−5jH=-5j と Zin=2 ΩZ_{\mathrm{in}}=2\,\Omega が短く求まる。

典型ミス

B=2Z+Z2YB=2Z+Z^2Y の第2項の符号を落とすと,共振点で B=j30B=j30 と誤り,後続の値が全てずれる。Z2YZ^2Y は j3=−jj^3=-j を含むため,符号を必ず確認する。

二端子対回路の途中式・最終答をPDFで見る

第3問 — 全加算器とMUX

MUXを真理値表として使う

4入力 MUX は,二つの変数を制御入力に固定すると,残り一つの変数に関する場合分け表として使える。全加算器では X,YX,Y を制御入力にし,各場合の CinC_{\mathrm{in}} 依存性をデータ入力へ入れるのが最も整理しやすい。

桁上がりの見方

CoutC_{\mathrm{out}} は多数決関数である。三入力のうち二つ以上が 11 なら桁上がりが発生するため,積和形 XY+YCin+CinX XY+YC_{\mathrm{in}}+C_{\mathrm{in}}X が自然に出る。XOR で書こうとするとかえって複雑になる。

最後の回路の考え方

二つ目の MUX を「動作モードの選択器」と見ると設計が単純になる。S2,S3S_2,S_3 で通常 MUX,XOR,OR,AND の四つを選ばせればよいので,一つ目の MUX と三つの論理ゲート出力を二つ目の MUX に入力する構成で条件を満たせる。

全加算器とMUXの途中式・最終答をPDFで見る

第4問 — 関係の性質

反射性は全ての点で必要

対称的・推移的であっても,すべての (a,a)(a,a) が含まれるとは限らない。特に {(1,1)}\{(1,1)\} は,22 や 33 に関する条件が空に近い形で成り立つため,反射性だけが壊れる好例である。

配列参照回数

反射性では B[i][i]B[i][i] だけを見ればよい。対称性では同じ組を二度調べないために i<ji<j に限定する。各組で二つの配列要素を読むので,参照回数は n(n−1)n(n-1) 回となる。

存在証明の核

最後の証明は鳩の巣原理を使う。全域性が「次の元を選べる」ことを保証し,有限集合であることが「同じ元に戻る」ことを保証し,推移性が「戻った道を一つの関係に縮める」ことを保証している。

関係の性質の途中式・最終答をPDFで見る

第5問 — 井戸型ポテンシャル

急な井戸幅変更の扱い

ポテンシャルが瞬時に変わっても,波動関数そのものは t=0t=0 で不連続にはならない。変わるのは,その後の時間発展を記述する固有関数の基底である。そのため,旧基底状態を新しい幅 2L2L の固有関数に展開する。

なぜ n=2 が重要か

新しい井戸の n=2n=2 固有関数は 1Lsin⁡πxL \sqrt{\frac1L}\sin\frac{\pi x}{L} であり,0<x<L0<x<L では旧基底状態と同じ節構造を持つ。規格化定数は異なるが関数形が一致するため,重なりが最大になる。

確率が 1 になる意味

拡張後の波動関数は複数の固有状態の重ね合わせであり,各成分の相対位相が時間とともに変化する。特定時刻に全ての関連する余弦項が同時に −1-1 になると,干渉により確率分布が右半分へ完全に移る。これは粒子が古典的に壁へ移動したという意味ではなく,有限井戸領域内の量子干渉によって検出確率が片側に集中するという意味である。

三つの極大

級数に現れる角周波数は奇数倍の組み合わせで,低次の項が主に波形を決める。基本周期の中で複数の相対位相がそろうため,単純な一山の振動ではなく,三つの極大を含む構造が現れる。

井戸型ポテンシャルの途中式・最終答をPDFで見る

第6問 — 線形代数と積分

上三角行列

行列が上三角であることから,行列式と固有値はすぐに読める。固有ベクトルだけは各 λ\lambda について (A−λI)v=0(A-\lambda I)v=0 を解く必要がある。

小半円の符号

複素積分で最も間違えやすいのは,原点を避ける小半円の向きである。この経路は上半平面を時計回りに回るため,寄与は +iπ+i\pi ではなく −iπ-i\pi になる。この符号が最終的な π/2\pi/2 を決める。

フーリエ変換による確認

矩形関数のフーリエ変換が sin⁡ω/ω\sin\omega/\omega になることを使うと,同じ積分値が反転公式からも得られる。複素積分とフーリエ解析が同じ結果を与えるため,答案ではどちらの方法でも符号と定数係数を厳密に追うことが重要である。

線形代数と積分の途中式・最終答をPDFで見る

東北大 基礎・専門科目 院試 過去問の収録6年度

  • 2026年3月(このページ・全6問)

    電磁誘導 / 二端子対回路 / 全加算器とMUX

  • 2025年8月(全6問)

    平面電磁波の反射と透過 / 線路負荷と過渡応答 / JKフリップフロップ

  • 2025年3月(全6問)

    平行導体と接地平板 / 無損失伝送線路 / 3値入力論理

  • 2024年8月(全6問)

    静電界と静電容量 / 共振回路と変圧器 / 論理式の簡単化

  • 2024年3月(全12問)

    中空円筒導体とポインティングベクトル / 交流回路と結合インダクタ / 多数決関数と中立関数

  • 2023年8月(全12問)

    同心球導体の電界と静電容量 / 並列交流回路と結合インダクタ / リード・マラー標準形