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大阪大学 院試 過去問 解答例

阪大 情報科学研究科 専門科目(情報工学) 2021年度 院試 過去問 解答例・解説(全7問)

全7問。情報2問・数学1問・電磁気学・回路1問。テーマタグは4件(伝達関数・RC回路の過渡応答・正規表現・形式言語)。

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解説7問と大問1問の途中式・最終答(全7問)
解答PDFに収録
途中式と最終答(最終答つき0問)
問題本文
非収録

阪大 専門科目(情報工学) 2021年度 院試 過去問の出題内容(全7問)

この7問の分野は情報2問・数学1問・電磁気学・回路1問・微分積分・解析1問です。

大問分野主題解説の小見出し最終答
第1問情報アルゴリズムとプログラミング(キュー)方針 — 循環バッファとシフト計算 / 背景 — 二分ヒープと priority queue—
第2問情報計算機システムとシステムプログラム(HDD/ファイルシステム)方針 — 空き領域管理の 3 方式 / 背景 — トラック / シリンダ / セクタ—
第3問微分積分・解析離散構造(床関数の漸化式)方針 — 床関数と整数解探索 / 背景 — Beatty 数列と床関数の漸化式—
第4問—計算理論(文脈自由文法)方針 — 文脈自由文法 vs 正則言語 / 背景 — Chomsky 階層と式言語—
第5問—ネットワーク(Ethernet と BSC)方針 — CSMA/CD と BSC 直列 / 背景 — Shannon の通信路容量—
第6問電磁気学・回路電子回路と論理設計方針 — RL 過渡応答とバイナリカウンタ / 背景 — Karnaugh マップと最小化—
第7問数学数学解析と信号処理(Laplace 変換と畳み込み)方針 — 畳み込み定理と相関フィルタ / 背景 — システム同定とパワースペクトル密度—

この年度の解説には典型ミス7件が付いています。

2021年度の出題テーマと、同じテーマを出した他大学・他年度

この年度は4問に4テーマが出ています。

第1問 — アルゴリズムとプログラミング(キュー)

方針 — 循環バッファとシフト計算

優先度キューを連続配列で実装する基本パターン. 挿入時のシフト数は「線形時間 in キュー長」が上限. 大量データでは二分ヒープ (O(log⁡n)O(\log n)) が標準だが, 本問は線形版.

典型ミス

  • (2-1) で (A) と (B) を逆にする (条件 prev<d\text{prev}<d で続行). 不等号方向に注意.
  • (2-3) で「3 と 5 の比較」を省略. 各ステップを丁寧に.
  • (2-5) で「全部挿入」と単純化すると NMAX−1\mathtt{NMAX}-1 個で上限. それ以降の挿入と取出しの交互パターンを忘れる.

背景 — 二分ヒープと priority queue

実用の優先度キューは二分ヒープ (binary heap) で実装. 挿入 O(log⁡n)O(\log n), 取出し O(log⁡n)O(\log n). STL の std::priority\_queue, Python の heapq などが使う. 本問の線形版は教育的には基本だが大規模応用には不適.

アルゴリズムとプログラミング(キュー)の途中式・最終答をPDFで見る

第2問 — 計算機システムとシステムプログラム(HDD/ファイルシステム)

方針 — 空き領域管理の 3 方式

ファイルシステムでの空き領域管理:

  • 連結リスト: 各空きブロックに「次の空きブロック」のポインタを格納. 先頭から取得. 利点: 隣接性なくても OK. 欠点: 連続領域確保が困難.
  • ビットマップ: 各ブロックに 1 ビット (空き/使用中). 利点: 連続領域検索が早い. 欠点: ブロック数が多いとマップサイズが嵩む.
  • Extent (階層): 大きな連続領域を 1 つのレコードで管理. 現代の ext4, NTFS など.

典型ミス

  • (1-1) (え) で「テラ = 101210^{12}」混同. 本問は 11 TB =109=10^{9} KB と明示. 計算結果は0.250.25 TB.
  • (2-1) で「先頭から 4 つ」を取り違える. 連結リストの順序 (3→6→4→7→⋯3\to 6\to 4\to 7\to\cdots) を忠実に.
  • (2-2) でブロック番号順に並べたビットマップと「ファイル B のリンク」を混同しない.

背景 — トラック / シリンダ / セクタ

物理的な HDD は複数の同軸円盤 (プラッタ). プラッタの両面にヘッドがあり, 同心円状にデータが記録されたものがトラック. 各プラッタの同じ半径のトラックを束ねたものがシリンダ (ヘッド移動なしで読める単位). セクタは円弧上の最小単位 (通常 512 B 〜 4 KB).

近年は SSD への置き換えで物理機構は変わったが, ファイルシステムの抽象 (ブロック, 連結リスト/ビットマップ管理) は引き続き有効.

解答

(1-1) HDD 用語の穴埋め

(あ) 同一ディスク表面の同心円 = トラック (track) = (F).
(い) 全ディスクで同じ半径のトラック集合 = シリンダ (cylinder) = (E).
(う) 最小読み書き単位 = セクタ (sector) = (B).
(え) 容量計算: ディスク 1 枚 ×\times シリンダ 31,250 ×\times シリンダあたりトラック 2 ×\times トラックあたりセクタ 1,000 ×\times セクタあたり 4 [KB] =31,250×2×1,000×4=250,000,000 [KB]=0.25 [TB]. = 31{,}250 \times 2 \times 1{,}000 \times 4 = 250{,}000{,}000 \text{ [KB]} = 0.25 \text{ [TB]}. (1 TB=109 KB1\,\text{TB}=10^{9}\,\text{KB} より.)

(1-2) 平均回転待ち時間

回転速度 10,00010{,}000 rpm =10,000/60= 10{,}000/60 rps. 1 回転にかかる時間 T=60/10,000=6×10−3T = 60/10{,}000 = 6\times 10^{-3} 秒.

平均回転遅延 =T/2=3×10−3= T/2 = 3\times 10^{-3} 秒.

(2-1) 連結リスト方式 + 15 KB ファイル B 追加 (表 1)

15 KB =4= 4 ブロック (⌈15/4⌉=4\lceil 15/4\rceil = 4). 空き領域リスト 3→6→4→7→8→9→5→10→11→end3\to 6\to 4\to 7\to 8\to 9\to 5\to 10\to 11\to\text{end} から先頭 4 つ (3,6,4,73, 6, 4, 7) を取得.

  • ファイル B の先頭ブロック =3=3.
  • ファイル B のリンク: 3→6→4→7→end3\to 6\to 4\to 7\to\text{end}.
  • 残りの空き領域: 8→9→5→10→11→end8\to 9\to 5\to 10\to 11\to\text{end}, 先頭 =8=8.

(2-2) ビットマップ方式 + 15 KB ファイル B 追加 (表 3)

ビットマップ: 行 iiii の値 11 = 空き, 00 = 使用中. ブロック番号小から先頭 4 個 (3,4,5,63, 4, 5, 6) を取得.

ファイル B 用のリンクは表 1 と同様 (連結リスト管理): 3→4→5→6→end3\to 4\to 5\to 6\to\text{end}. ビットマップ上は 3,4,5,63,4,5,6 を「使用中 (0)」へ.

(2-3) 空きブロック探索時間の変化と理由

ビットマップ管理で「先頭から検索」する場合, ブロック番号順に走査して最初の空き (11) を探す. 空きブロックが少ない場合, ほとんどのブロックが「使用中 (00)」で, 線形に長い距離を走査する必要がある.

最終答

% (あ)=F (track), (い)=E (cylinder), (う)=B (sector), (え)=0.25=0.25.%

% 3×10−33\times 10^{-3} 秒 (=3= 3 ms).%

% ファイル A 先頭: 0, ファイル B 先頭: 3, 空き領域先頭: 8.

ii

0

1

2

3

4

5

6

7

8

9

10

11

iiii

1

2

end

6

7

10

4

end

9

5

11

end

%

%

ii

0

1

2

3

4

5

6

7

8

9

10

11

iiii

0

0

0

0

0

0

0

1

1

1

1

1

%

% 探索時間は増大する (O(使用中ブロック数)O(\text{使用中ブロック数}) 程度に比例). 理由: 空きが少ないと, 最初の空きビット (11) を見つけるまでに走査すべき「使用中 (00) のビット」が多く, 線形探索の長さが伸びるため.%

第3問 — 離散構造(床関数の漸化式)

方針 — 床関数と整数解探索

⌊⋅⌋\lfloor\cdot\rfloor を含む方程式は ⌊x⌋=n\lfloor x\rfloor=n と置いて整数 nn を場合分け. 制約 n≤x<n+1n\le x<n+1 を使う.

(5)(6) は連分数展開やEuclid のアルゴリズムに類似の繰り返し構造. 各レベルで n=⌊fk(x)⌋n=\lfloor f_{k}(x)\rfloor を考え, fk+1(x)=xnf_{k+1}(x)=xn で次レベルへ.

典型ミス

  • (3) で「全射でない」を示すには値域に穴があることを具体例で. 単に「値域が [0,∞)[0,\infty) でない」では不十分.
  • (4-2) 反対称性はk≠lk\ne lで双方向の関係が成り立たないこと. k=lk=l の自明ケースは反対称性に影響しない.
  • (6) で複数の nn 候補を検討せず, n=5n=5 にいきなり当てない. 不等式 m2≤171n<m(m+1)m^{2}\le 171n<m(m+1) から nn の範囲を絞る.

背景 — Beatty 数列と床関数の漸化式

fn+1(x)=x⌊fn(x)⌋f_{n+1}(x)=x\lfloor f_{n}(x)\rfloor は階層的に増大する系列. x>1x>1 では発散の速度が階乗的. これは無理数の連分数展開と関係し, 数論的解析が可能.

離散構造(床関数の漸化式)の途中式・最終答をPDFで見る

第4問 — 計算理論(文脈自由文法)

方針 — 文脈自由文法 vs 正則言語

CFG の表現力 ⊋\supsetneq 正則言語 (G1aG_{1a} で示される). 一方, CFG の特殊形 (例: 線形 + 単一非終端再帰なし) は正則言語と一致 (G1bG_{1b}).

あいまいさの解消は演算子優先順位と結合性の強制. 左再帰 (S→S+AS\to S+A) で左結合, 階層化 (S,A,FS, A, F) で優先順位を実装.

典型ミス

  • (1) で長さ 5 の文字列を網羅的に列挙し損なう. ((a))((a)) を忘れがち.
  • (4) で「規則数 6 以下」制約を超える. 階層 3 段にすると ≥7\ge 7 規則になり, 階層 2 段で工夫.
  • (5) G1aG_{1a} の Pumping 補題証明: aa を 1 つだけ含む文字列 (na)n(^{n}a)^{n} を取って, ∣xy∣≤N|xy|\le N で yy は左の括弧のみで, xy2zxy^{2}z は左括弧過剰でバランス崩れる.

背景 — Chomsky 階層と式言語

  • Type 3 (正則): DFA, 正則表現. L(G1b)L(G_{1b}).
  • Type 2 (CFG): PDA, BNF. L(G1a),L(G1)L(G_{1a}), L(G_{1}).
  • Type 1 (文脈依存), Type 0 (チューリング機械).

四則演算式の文法は典型的な Type 2 で, 括弧バランスのために PDA (スタック) が必要.

計算理論(文脈自由文法)の途中式・最終答をPDFで見る

第5問 — ネットワーク(Ethernet と BSC)

方針 — CSMA/CD と BSC 直列

イーサネットの CSMA/CD は衝突検出のための時間予算を最小フレーム長で確保. 距離は信号往復時間と帯域から決定 (信号速度 VV, 帯域 CC, 最小フレーム Fmin⁡F_{\min}).

BSC 直列はマルコフ連鎖の合成. 誤り率は ε=ε1+ε2−2ε1ε2\varepsilon=\varepsilon_{1}+\varepsilon_{2}-2\varepsilon_{1}\varepsilon_{2} (XOR 確率).

典型ミス

  • (1-2-2) で「往復時間 2L/V2L/V」と書いてしまう. 本問はB が検出するだけなので片道.
  • (2-1) で和の対称性 p(0∣0)=p(1∣1)p(0|0)=p(1|1) を見落とすと項数が増える.
  • (2-2) で「両方の偏微分」を取って最大化する必要. 一方だけだと不十分.

背景 — Shannon の通信路容量

BSC の通信路容量 C=1−h(ε)C=1-h(\varepsilon), h(ε)=−εlog⁡2ε−(1−ε)log⁡2(1−ε)h(\varepsilon)=-\varepsilon\log_{2}\varepsilon-(1-\varepsilon)\log_{2}(1-\varepsilon) (Shannon). 直列 BSC では ε\varepsilon が増加し CC が減少. 中継ホップ数が増えると容量が削られるため, 中継器でのエラー訂正が重要.

ネットワーク(Ethernet と BSC)の途中式・最終答をPDFで見る

第6問 — 電子回路と論理設計

方針 — RL 過渡応答とバイナリカウンタ

(1) は1 階 RL 過渡応答. 初期値 + 終値 + 時定数で完結.

(2) はD-FF 同期式カウンタ. 状態遷移表から最小積和形を Karnaugh マップ等で導出.

典型ミス

  • (1-1) で ii の符号. 図の矢印方向を確認.
  • (1-3) で τ\tau 計算. 等価抵抗は EMF を短絡 (内部抵抗 0) して LL 端から見る.
  • (2-2) で「Q2Q_{2} も使う」と思って 3 変数 SOP を書く. 必要最小限で 2 変数に絞る.

背景 — Karnaugh マップと最小化

K1=Q1⊕Q0K_{1}=Q_{1}\oplus Q_{0} は SOP 標準形だと 2 項. XOR は SOP の最小化形ではないが ((0,1) と (1,0) は隣接でないので括れない), 工学的にはこの 2 項形が最簡.

電子回路と論理設計の途中式・最終答をPDFで見る

第7問 — 数学解析と信号処理(Laplace 変換と畳み込み)

方針 — 畳み込み定理と相関フィルタ

LTI システムの伝達関数推定:

  • 直接法 [1]: H=G/FH=\mathcal G/\mathcal F. ノイズに弱い.
  • 相関法 [2]: H=L[f∗g]/L[f∗f]=Rfg/RffH=\mathcal L[f*g]/\mathcal L[f*f]=R_{fg}/R_{ff}. Wiener 最適フィルタの基礎.

これはシステム同定の標準手法. 入力 ff がホワイトノイズなら Rff∝δR_{ff}\propto\delta で HH がインパルス応答に直結.

典型ミス

  • (1) Fubini で積分順序交換するときの領域記述. 0≤τ≤t0\le\tau\le t から 0≤τ<∞,τ≤t<∞0\le\tau<\infty,\tau\le t<\infty.
  • (2-1) で余分な三角関数項を消し損ねる. sin⁡2tcos⁡t\sin^{2}t\cos t の項が打ち消し合うことを丁寧に確認する.
  • (2-2) で L[t⋅周期関数]\mathcal L[t\cdot\text{周期関数}] を −d/ds-d/ds で求める標準テクニック.

背景 — システム同定とパワースペクトル密度

実用システム同定では: H(ω)=Sfg(ω)Sff(ω)(パワースペクトル密度の比) H(\omega) = \frac{S_{fg}(\omega)}{S_{ff}(\omega)}\quad(\text{パワースペクトル密度の比}) が周波数領域 Wiener フィルタ. 本問の式 [2] は時間領域で書いたもの. Sfg=F{Rfg}S_{fg}=\mathcal F\{R_{fg}\} (Wiener-Khinchin 定理).

数学解析と信号処理(Laplace 変換と畳み込み)の途中式・最終答をPDFで見る

阪大 専門科目(情報工学) 院試 過去問の収録5年度

  • 2025年度(全7問)

    アルゴリズムとプログラミング(二分ヒープ) / 計算機システムとシステムプログラム(パイプライン) / 離散構造(グラフ彩色と削除・縮約)

  • 2024年度(全7問)

    アルゴリズムとプログラミング(挿入ソート) / 計算機システムとシステムプログラム(メモリ管理) / 離散構造

  • 2023年度(全7問)

    アルゴリズムとプログラミング / 計算機システムとシステムプログラム / 離散構造

  • 2022年度(全7問)

    アルゴリズムとプログラミング / 計算機システムとシステムプログラム / 離散構造

  • 2021年度(このページ・全7問)

    アルゴリズムとプログラミング(キュー) / 計算機システムとシステムプログラム(HDD/ファイルシステム) / 離散構造(床関数の漸化式)