大阪大学 院試 過去問 解答例
阪大 情報科学研究科 専門科目(情報工学) 2021年度 院試 解答例・解説
大阪大学 情報科学研究科 専門科目(情報工学) 2021年度の院試 過去問について、設問ごとの解法方針と確認点を解説。全7問収録の解答・解説PDFと併用できます。問題本文は含みません。
最終更新:
設問ごとの解法方針と確認点を公開しています。
続きの途中式・最終答は解答・解説PDFに収録しています。問題本文は含まれません。
第1問 — アルゴリズムとプログラミング(キュー)
方針 — 循環バッファとシフト計算
優先度キューを連続配列で実装する基本パターン. 挿入時のシフト数は「線形時間 in キュー長」が上限. 大量データでは二分ヒープ () が標準だが, 本問は線形版.
典型ミス
- (2-1) で (A) と (B) を逆にする (条件 で続行). 不等号方向に注意.
- (2-3) で「3 と 5 の比較」を省略. 各ステップを丁寧に.
- (2-5) で「全部挿入」と単純化すると 個で上限. それ以降の挿入と取出しの交互パターンを忘れる.
背景 — 二分ヒープと priority queue
実用の優先度キューは二分ヒープ (binary heap) で実装. 挿入 , 取出し . STL の std::priority\_queue, Python の heapq などが使う. 本問の線形版は教育的には基本だが大規模応用には不適.
第2問 — 計算機システムとシステムプログラム(HDD/ファイルシステム)
方針 — 空き領域管理の 3 方式
ファイルシステムでの空き領域管理:
- 連結リスト: 各空きブロックに「次の空きブロック」のポインタを格納. 先頭から取得. 利点: 隣接性なくても OK. 欠点: 連続領域確保が困難.
- ビットマップ: 各ブロックに 1 ビット (空き/使用中). 利点: 連続領域検索が早い. 欠点: ブロック数が多いとマップサイズが嵩む.
- Extent (階層): 大きな連続領域を 1 つのレコードで管理. 現代の ext4, NTFS など.
典型ミス
- (1-1) (え) で「テラ = 」混同. 本問は TB KB と明示. 計算結果は TB.
- (2-1) で「先頭から 4 つ」を取り違える. 連結リストの順序 () を忠実に.
- (2-2) でブロック番号順に並べたビットマップと「ファイル B のリンク」を混同しない.
背景 — トラック / シリンダ / セクタ
物理的な HDD は複数の同軸円盤 (プラッタ). プラッタの両面にヘッドがあり, 同心円状にデータが記録されたものがトラック. 各プラッタの同じ半径のトラックを束ねたものがシリンダ (ヘッド移動なしで読める単位). セクタは円弧上の最小単位 (通常 512 B 〜 4 KB).
近年は SSD への置き換えで物理機構は変わったが, ファイルシステムの抽象 (ブロック, 連結リスト/ビットマップ管理) は引き続き有効.
第3問 — 離散構造(床関数の漸化式)
方針 — 床関数と整数解探索
を含む方程式は と置いて整数 を場合分け. 制約 を使う.
(5)(6) は連分数展開やEuclid のアルゴリズムに類似の繰り返し構造. 各レベルで を考え, で次レベルへ.
典型ミス
- (3) で「全射でない」を示すには値域に穴があることを具体例で. 単に「値域が でない」では不十分.
- (4-2) 反対称性はで双方向の関係が成り立たないこと. の自明ケースは反対称性に影響しない.
- (6) で複数の 候補を検討せず, にいきなり当てない. 不等式 から の範囲を絞る.
背景 — Beatty 数列と床関数の漸化式
は階層的に増大する系列. では発散の速度が階乗的. これは無理数の連分数展開と関係し, 数論的解析が可能.
第4問 — 計算理論(文脈自由文法)
方針 — 文脈自由文法 vs 正則言語
CFG の表現力 正則言語 ( で示される). 一方, CFG の特殊形 (例: 線形 + 単一非終端再帰なし) は正則言語と一致 ().
あいまいさの解消は演算子優先順位と結合性の強制. 左再帰 () で左結合, 階層化 () で優先順位を実装.
典型ミス
- (1) で長さ 5 の文字列を網羅的に列挙し損なう. を忘れがち.
- (4) で「規則数 6 以下」制約を超える. 階層 3 段にすると 規則になり, 階層 2 段で工夫.
- (5) の Pumping 補題証明: を 1 つだけ含む文字列 を取って, で は左の括弧のみで, は左括弧過剰でバランス崩れる.
背景 — Chomsky 階層と式言語
- Type 3 (正則): DFA, 正則表現. .
- Type 2 (CFG): PDA, BNF. .
- Type 1 (文脈依存), Type 0 (チューリング機械).
四則演算式の文法は典型的な Type 2 で, 括弧バランスのために PDA (スタック) が必要.
第5問 — ネットワーク(Ethernet と BSC)
方針 — CSMA/CD と BSC 直列
イーサネットの CSMA/CD は衝突検出のための時間予算を最小フレーム長で確保. 距離は信号往復時間と帯域から決定 (信号速度 , 帯域 , 最小フレーム ).
BSC 直列はマルコフ連鎖の合成. 誤り率は (XOR 確率).
典型ミス
- (1-2-2) で「往復時間 」と書いてしまう. 本問はB が検出するだけなので片道.
- (2-1) で和の対称性 を見落とすと項数が増える.
- (2-2) で「両方の偏微分」を取って最大化する必要. 一方だけだと不十分.
背景 — Shannon の通信路容量
BSC の通信路容量 , (Shannon). 直列 BSC では が増加し が減少. 中継ホップ数が増えると容量が削られるため, 中継器でのエラー訂正が重要.
第6問 — 電子回路と論理設計
方針 — RL 過渡応答とバイナリカウンタ
(1) は1 階 RL 過渡応答. 初期値 + 終値 + 時定数で完結.
(2) はD-FF 同期式カウンタ. 状態遷移表から最小積和形を Karnaugh マップ等で導出.
典型ミス
- (1-1) で の符号. 図の矢印方向を確認.
- (1-3) で 計算. 等価抵抗は EMF を短絡 (内部抵抗 0) して 端から見る.
- (2-2) で「 も使う」と思って 3 変数 SOP を書く. 必要最小限で 2 変数に絞る.
背景 — Karnaugh マップと最小化
は SOP 標準形だと 2 項. XOR は SOP の最小化形ではないが ((0,1) と (1,0) は隣接でないので括れない), 工学的にはこの 2 項形が最簡.
第7問 — 数学解析と信号処理(Laplace 変換と畳み込み)
方針 — 畳み込み定理と相関フィルタ
LTI システムの伝達関数推定:
- 直接法 [1]: . ノイズに弱い.
- 相関法 [2]: . Wiener 最適フィルタの基礎.
これはシステム同定の標準手法. 入力 がホワイトノイズなら で がインパルス応答に直結.
典型ミス
- (1) Fubini で積分順序交換するときの領域記述. から .
- (2-1) で余分な三角関数項を消し損ねる. の項が打ち消し合うことを丁寧に確認する.
- (2-2) で を で求める標準テクニック.
背景 — システム同定とパワースペクトル密度
実用システム同定では: が周波数領域 Wiener フィルタ. 本問の式 [2] は時間領域で書いたもの. (Wiener-Khinchin 定理).