院試hub

大阪大学 院試 過去問 解答例

阪大 情報科学研究科 専門科目(情報工学) 2022年度 院試 過去問 解答例・解説(全7問)

全7問。情報2問・数学1問・電磁気学・回路1問。テーマタグは4件(伝達関数・ラプラス変換・RC回路の過渡応答)。2021年度と共通のテーマは伝達関数・RC回路の過渡応答。

最終更新:

収録5年度分の解答PDF:大阪大学 情報科学研究科 専門科目(情報工学)(¥3,200・紙面見本あり)

このページで公開
解説7問と大問1問の途中式・最終答(全7問)
解答PDFに収録
途中式と最終答(最終答つき7問)
問題本文
非収録

阪大 専門科目(情報工学) 2022年度 院試 過去問の出題内容(全7問)

この7問の分野は情報2問・数学1問・電磁気学・回路1問です。

大問分野主題解説の小見出し最終答
第1問情報アルゴリズムとプログラミング基準値の位置に注目する / 交換回数の数え方あり
第2問情報計算機システムとシステムプログラムセマフォ値の符号 / 競合による更新消失あり
第3問—離散構造グラフ化して考える / 極限評価の勘所あり
第4問—計算理論スタックの意味を決める / 空スタック受理と prefix-freeあり
第5問—ネットワーク距離ベクトルの伝播 / prefix code と一意復号可能性あり
第6問電磁気学・回路電子回路と論理設計相互インダクタンスはT型へ直す / 位相条件の読み方あり
第7問数学数学解析と信号処理部分分数分解の意味 / IIR と FIR の違いあり

2022年度の出題テーマと、同じテーマを出した他大学・他年度

この年度は3問に4テーマが出ています。

前年度(2021年度)との違い

大問数
2021年度 7問 → 2022年度 7問
両年度に出たテーマ
伝達関数・RC回路の過渡応答
2022年度で新しく出たテーマ
ラプラス変換・計算量理論
2021年度のページを見る

第1問 — アルゴリズムとプログラミング

基準値の位置に注目する

この実装は降順整列であり, 条件が `>' である点が重要である. 基準値と等しい要素は左側へ移されないので, 同じキーを持つデータの相対順序が基準値交換で壊れ得る.

交換回数の数え方

自己交換も関数 `swap' の呼び出しであるため, 回数に含める. 最悪入力で長さ mm の分割ごとに mm 回呼ばれることを押さえると, 合計は等差数列の和として一気に求められる.

解答

(1) 整列法

関数 `sort' は, 配列の右端要素を基準値として用いる quick sort である. 具体的には, 基準値より大きい要素を左側へ集めてから基準値をその直後に置き, 左右の部分配列へ再帰している.

(2) 3回目の交換直後

初期データの得点を (60,99,59,78,100) (60,99,59,78,100) と書く. 最初の呼び出しでは基準値が 100100 なので, ループ中の交換は起こらず, 最後の交換で (100,99,59,78,60) (100,99,59,78,60) となる. 次の再帰呼び出しでは部分配列 (99,59,78,60)(99,59,78,60) の基準値が 6060 である. 99>6099>60 により2回目の交換, 78>6078>60 により3回目の交換が起こる. 3回目の交換直後の得点列は (100,99,78,59,60) (100,99,78,59,60) である.

(3) 安定でないことを示す書き換え

例えば, 先頭データの得点を 100100 に書き換える. このとき, 先頭データと最後のデータは同じキーを持つが, 最初の分割で最後のデータが先頭へ移動する. したがって, 同じ得点 100100 のデータの相対順序が反転し, 安定でないことが出力から分かる.

(4) 交換回数を最大にする順序

この実装では, 各部分配列の右端要素がその部分配列の最小値であると, ループ中にすべての要素について交換が実行され, 最後の基準値交換も実行される. したがって, 得点を降順に並べる (5,100), (2,99), (4,78), (1,60), (3,59) (5,100),\ (2,99),\ (4,78),\ (1,60),\ (3,59) が交換回数を最大にする一例である.

長さ mm の部分配列では m−1m-1 回のループ内交換と1回の基準値交換が起こるため, 交換回数は mm 回である. よって全体では 5+4+3+2=14 5+4+3+2=14 回である.

(5) 最悪時間計算量

分割処理は長さ mm の部分配列に対して Θ(m)\Theta(m) 時間を要する. 右端要素が常に最大値または最小値になる場合, 再帰呼び出しは長さ m−1m-1 の片側だけに偏るので T(m)=T(m−1)+Θ(m) T(m)=T(m-1)+\Theta(m) である. これを解くと T(N)=Θ(N2) T(N)=\Theta(N^2) となる.

最終答

整列法は quick sort. 3回目の交換直後の得点列は (100,99,78,59,60)(100,99,78,59,60). 安定でないことは先頭得点を 100100 に変えれば示せる. 最大交換回数は降順入力で 1414 回. 最悪時間計算量は Θ(N2)\Theta(N^2).

第2問 — 計算機システムとシステムプログラム

セマフォ値の符号

セマフォを整数として実装すると, 正の値はすぐ利用できる資源数を表し, 負の値はその絶対値だけ待ちプロセスがいることを表す. PP 操作で負になったプロセスは待ち, VV 操作で待ちプロセスが1つ起こされる.

競合による更新消失

n=2n+3n=2n+3 は1つの代入文に見えるが, 機械的には読み出し, 演算, 書き込みに分かれる. 排他制御がないと, 2つのプロセスが同じ値から同じ新値を作り, 片方の更新が結果に反映されない. これが f2f_2 で n1n_1 を超えない理由である.

計算機システムとシステムプログラムの途中式・最終答をPDFで見る

第3問 — 離散構造

グラフ化して考える

この問題では「共通約数を持つ」を辺に置き換えると見通しがよい. 偶数全体は必ず clique になるため下界に使いやすく, 共通約数ごとに倍数集合を数えると上界に使いやすい.

極限評価の勘所

m(k)m(k) はおおよそ k2k^2 の量なので, ∑k≤nm(k)\sum_{k\le n}m(k) は n3n^3 の量になる. したがって, m(k)m(k) の2次の係数だけを押さえれば, ana_n の極限の上下界が得られる.

離散構造の途中式・最終答をPDFで見る

第4問 — 計算理論

スタックの意味を決める

PDAの遷移は暗記で埋めるより, スタックトップを「どちらの記号が何個余っているか」と読むと自然に決まる. 反対側の記号を読めば pop, 同じ側の記号を読めば push である.

空スタック受理と prefix-free

決定性PDAの空スタック受理では, ある語を受理した瞬間にスタックが空になる. その語を真の接頭辞として持つ語も受理しようとすると, 受理後にさらに計算を続ける必要があり, 決定性と空スタック受理の性質に反する. ここが問(4)の中心である.

計算理論の途中式・最終答をPDFで見る

第5問 — ネットワーク

距離ベクトルの伝播

距離ベクトル型では, 1ステップで1ホップ先の情報が伝わる. 5ノードリングではノード1から最遠のローカルネットワークまで2ホップなので, 時刻2で全宛先の最短経路がそろう.

prefix code と一意復号可能性

瞬時復号可能性は接頭辞関係だけで判定できる. 一意復号可能性はそれより弱い条件なので, prefix code でない符号も一意復号可能であり得る. C1C_1 はその例である.

ネットワークの途中式・最終答をPDFで見る

第6問 — 電子回路と論理設計

相互インダクタンスはT型へ直す

結合インダクタをそのまま扱うと節点方程式が見えにくい. T型等価回路へ置き換えると, 今回は L1−M=0L_1-M=0 となり, 節点 aa 側と bb 側が独立な一次回路として読める.

位相条件の読み方

aa と bb の電位が等しくなる条件は, 2つの分圧比が等しいことに尽きる. その条件で入力電流をまとめると一次遅れの形になり, 45度条件は ωL=R1\omega L=R_1 とすぐ分かる.

電子回路と論理設計の途中式・最終答をPDFで見る

第7問 — 数学解析と信号処理

部分分数分解の意味

各項 1s−λk\frac{1}{s-\lambda_k} は時間領域では eλkte^{\lambda_k t} に対応する. したがって, 部分分数分解はフィルタを一次モードの和に分けていると見ればよい.

IIR と FIR の違い

IIR は過去出力を再利用するので少ない次数で鋭い特性を出しやすい. 一方で, フィードバックがあるため安定性と量子化誤差が問題になる. FIR は次数が大きくなりがちだが, 実装上の頑健さを説明できる点が答案の要点である.

数学解析と信号処理の途中式・最終答をPDFで見る

阪大 専門科目(情報工学) 院試 過去問の収録5年度

  • 2025年度(全7問)

    アルゴリズムとプログラミング(二分ヒープ) / 計算機システムとシステムプログラム(パイプライン) / 離散構造(グラフ彩色と削除・縮約)

  • 2024年度(全7問)

    アルゴリズムとプログラミング(挿入ソート) / 計算機システムとシステムプログラム(メモリ管理) / 離散構造

  • 2023年度(全7問)

    アルゴリズムとプログラミング / 計算機システムとシステムプログラム / 離散構造

  • 2022年度(このページ・全7問)

    アルゴリズムとプログラミング / 計算機システムとシステムプログラム / 離散構造

  • 2021年度(全7問)

    アルゴリズムとプログラミング(キュー) / 計算機システムとシステムプログラム(HDD/ファイルシステム) / 離散構造(床関数の漸化式)