東京大学 院試 過去問 解答例
東大 工学系研究科 社会基盤学専攻 専門科目 2026年度 院試 解答例・解説
東京大学 工学系研究科 社会基盤学専攻 専門科目 2026年度の院試 過去問について、設問ごとの解法方針と確認点を解説。全8問収録の解答・解説PDFと併用できます。問題本文は含みません。
最終更新:
設問ごとの解法方針と確認点を公開しています。
続きの途中式・最終答は解答・解説PDFに収録しています。問題本文は含まれません。
第1問 — 構造・設計
この問題の軸
変断面ではなく、断面内で が変わる梁である。したがって、通常の をそのまま使うのではなく、 を重みとする「剛性重心」と「剛性二次モーメント」を作るのが最初の一手になる。
答案で落としやすい点
中立軸位置は幾何学的な重心ではない。合力 0 の条件から出るので、 ではなく を書く必要がある。また市松断面では中立軸が中央でも、積 の重みが消えないため曲げ連成が残る。中立軸の一致と、曲げが一方向だけになることは別の条件である。
第2問 — 材料・コンクリート工学
曲げ耐力計算の見通し
この断面では、少ない鉄筋量では圧縮域がフランジ内に収まるため矩形梁として扱える。鉄筋量が大きくなると圧縮域がウェブへ入り、圧縮合力の位置をフランジ部とウェブ部に分けて求める必要がある。ここで圧縮合力位置を としてしまうと、T 形断面のレバーアームを誤る。
湿度条件の注意
炭酸化は「乾燥していれば必ず進む」現象ではない。 の気相拡散には低めの含水状態が有利だが、反応には細孔水が必要である。そのため答案では、相対湿度を単純に 0 に近づけるのではなく、飽水状態から中程度湿度へ下げる、という表現が最も安全である。
第3問 — 地盤工学
サクションと液状化の共通点
この問題では、部分飽和の効果が 2 か所に出てくる。乾燥前の砂が自立するのはメニスカスによるサクション、地下水位低下で液状化しにくくなるのは間隙空気の圧縮性と有効応力増加である。どちらも「水があるかないか」だけではなく、間隙内の水・空気が応力をどう受け持つかで説明する。
Mohr--Coulomb 式の使い方
三軸試験では全応力で装置を制御していても、破壊基準は有効応力で書く。したがって をそのまま使わず、破壊時の を差し引いて とする点が採点上の要点である。
第4問 — 水圏工学
移動座標で考える理由
段波は固定座標では非定常だが、波と同じ速度で動く座標に移ると跳水が空間的に静止して見える。この変換により、非定常な段波問題を、質量保存と運動量保存だけで扱える定常跳水問題に変換できる。
線形波と段波の違い
線形長波は微小振幅なので、波速は静水深だけで決まる。段波は水深が から へ有限量だけ変化し、圧力力と運動量流束の差が両側で釣り合う必要がある。そのため速度式に と の両方が現れる。
第5問 — 交通
図示のポイント
図には必ず 3 本を分けて描く。旅行時間関数 、社会的限界費用 、需要曲線である。利用者均衡は需要と の交点、社会的最適は需要と社会的限界費用の交点として読む。外部性は 2 本の費用曲線の縦方向の差であり、ピグー税額そのものになる。
政策答案の書き方
混雑課金は理論的には効率性政策だが、実装では公平性政策でもある。よい答案は「料金で交通量を減らす」だけで終わらず、誰が代替手段を持たないのか、課金収入をどの経路で戻せば混雑削減効果を損なわずに負担を下げられるのかまで述べる。
第6問 — 空間情報
GNSS の答案で必要な粒度
単に「衛星から位置を測る」と書くだけでは足りない。搬送波が共通でも、受信機は符号相関で衛星を分離し、搬送波位相では整数アンビギュイティを解く、という測位の中核を書くと専門科目の答案になる。
高さ変換の落とし穴
GNSS が直接与える高さは標高ではなく楕円体高である。日本の地形図や防災情報で使う標高とは基準面が異なるため、ジオイド高を引く操作が必要になる。座標系とジオイドモデルの版を混在させると、数十 cm から m 級のずれになり得る。
第7問 — 都市・景観
景観答案の作り方
景観問題では、抽象語だけでなく具体例を入れると答案が強くなる。「調和」「保全」と書くだけでは採点者に中身が伝わらない。地形、生活行為、建築スケール、材料、視点場のうち 2 つ以上を結びつけて説明すると、土木計画としての答案になる。
規制の効果は形で説明する
壁面線やゾーニングは法律名を覚える問題ではなく、空間がどう変わるかを説明する問題である。壁面線なら街路断面と連続性、ゾーニングなら用途混在・高さ・容積・活動の分布を述べると、景観形成への因果関係が明確になる。
第8問 — マネジメント・国際プロジェクト
PPP の答案で避けるべき単純化
PPP は「民間が作るから安い」という話ではない。建設、需要、政治、災害の各リスクを誰が制御できるかで配分し、契約で見える形にすることが本質である。リスクを民間へ過度に押し付けると、資金調達費用が上がったり入札者が減ったりして、結局は公共負担が増える。
PPC の読み方
公共資本の弾力性が正でも、それは全事業を無条件に進めてよいという意味ではない。平均値の背後には、地域、時代、混雑緩和、ネットワーク接続、産業構造の違いがある。途上国への応用では、限界効果が高い不足領域を選ぶことと、運営・維持管理まで含めた制度設計が必要になる。