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東京科学大学 院試 過去問 解答例

東京科学大 理学院 化学系 化学系 専門科目 2021年度 院試 解答例・解説

東京科学大学 理学院 化学系 化学系 専門科目 2021年度の院試 過去問について、設問ごとの解法方針と確認点を解説。全11問収録の解答・解説PDFと併用できます。問題本文は含みません。

最終更新:

設問ごとの解法方針と確認点を公開しています。

続きの途中式・最終答は解答・解説PDFに収録しています。問題本文は含まれません。

1 — 元素の性質と分子形

単体の状態

元素記号だけで問われていても、実際の単体の存在形態を考える必要がある。たとえば F は原子状フッ素ではなく F2\mathrm{F_2}、Br は Br2\mathrm{Br_2} として扱う。常温常圧で液体の元素は代表的に Hg と Br であり、ここを取り違えると a) の i), ii) を同時に落としやすい。

VSEPR の数え方

XeF4\mathrm{XeF_4} は四つの Xe--F 結合だけを見ると四配位に見えるが、Xe 上に孤立電子対が二つある。孤立電子対は互いに反対側に配置され、四つの F が同一平面上に残るため平面四角形になる。SF6\mathrm{SF_6} は孤立電子対がない六配位なので八面体である。

電気陰性度の周期傾向

同族では下に行くほど原子半径が大きく、共有電子対を引きつける力が弱くなる。同周期ではおおむね右に行くほど有効核電荷が大きくなり、電気陰性度が増す。したがってアルカリ金属では Na が最も大きく、第二周期の B, C, N では N が最も大きい。

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2 — 有機化学の基礎反応

脱離と HBr 付加の選び分け

tert-ブトキシドのようなかさ高い塩基は、立体的に取りやすい水素を引き抜き、置換度の低いアルケンを与えやすい。これに過酸化物存在下で HBr を作用させるとラジカル機構となり、Br はより置換度の低い炭素側へ入る。逆に、通常の HBr 付加ではより安定なカルボカチオンを経るため Markovnikov 則に従う。

デカリンの安定性

trans-デカリンは環反転が実質的に凍結され、二つのいす形が安定に固定される。cis-デカリンは片方の環融合水素が axial 的になり、環融合部付近の 1,3-ジアキシアル型反発やゆがみを完全には避けられない。試験では「trans が安定」とだけ書くより、いす形配座に基づく反発の差まで書くと得点が安定する。

共役塩基で酸性度を比べる

酸の強さは、プロトンを失った後の共役塩基の安定性で判断する。酢酸イオンでは二つの C--O 結合が等価化し、負電荷が酸素二つに分散する。フェノキシドでは芳香環に非局在化するが、炭素上に負電荷を置く寄与が必要になるため、酸素二つで受け持てるカルボキシラートより安定化が弱い。

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3 — 原子と気体の熱力学

第2イオン化エネルギーの落とし穴

第 2 イオン化エネルギーは中性原子から 2 個目を取る過程ではなく、一価カチオンからさらに 1 個取る過程である。Li は中性原子の第 1 イオン化エネルギーは小さいが、Li+\mathrm{Li^+} は He 型閉殻なので第 2 イオン化エネルギーは非常に大きい。この問題では Be+\mathrm{Be^+} の外殻 2s2s 電子を取るのが最も容易である。

エネルギー方程式の使い方

式に状態方程式を代入するときは、(P/T)V(\partial P/\partial T)_VVVnn を定数として扱う。ファンデルワールス式の an2/V2a n^2/V^2 項は TT を含まないため、微分後に PP を引く段階で符号が反転し、内部エネルギーの体積依存性として残る。

物理的意味

理想気体では分子間相互作用がないため、内部エネルギーは温度だけで決まる。ファンデルワールス気体では aa 項が引力を表し、有限体積では分子が互いに引き合ってポテンシャルエネルギーが低い。体積を大きくして分子を引き離すには、この引力を弱める方向にエネルギーを上げる必要がある。

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4 — 電気化学

標準還元電位の読み方

表の値はすべて還元反応として書かれている。酸化剤の強さを比べるときは、より正の標準還元電位をもつ半反応の左辺側が強い酸化剤である。反応全体の向きを判定するときに、酸化半反応の電位の符号を二重に反転してしまう誤りが多いので、常に「還元側の電位から、酸化される物質に対応する還元電位を引く」と整理するとよい。

参照電極の換算

Ag/AgCl に対する電位とは、測定対象電極と Ag/AgCl 参照電極の差である。SHE 基準に直すには、参照電極自身の SHE 基準電位を足す。今回のように負の値が与えられても、0.532+0.199-0.532+0.199 と機械的に換算すればよい。

溶解度積と電位

AgI/Ag\mathrm{AgI/Ag} 電極の電位が Ag+/Ag\mathrm{Ag^+/Ag} より低いのは、Ag+\mathrm{Ag^+} の活量が難溶性塩の溶解平衡で極めて小さく抑えられるからである。Nernst 式の対数は自然対数であり、問題で lnKsp\ln K_{\mathrm{sp}} を求める指定があるため、log10\log_{10} に変換しない。

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5 — 配位化学

CFSE は電子数から機械的に出す

まず酸化数を決め、dd 電子数を出す。水配位子は高スピンと指定されているため、d4d^4d5d^5 では対形成より先に高い軌道へ一つずつ入る。八面体 d5d^5 高スピンの CFSE が 0 になることは頻出である。

水交換の比較

この設問では、反応速度を一般的な「錯体のラビリティ」だけで答えるのではなく、八面体から四角錐形へ変わるときの CFSE 変化で説明する必要がある。V(II) では四角錐形になると CFSE が 0.200Δo0.200\Delta_\mathrm{o} だけ不利になり、律速段階の中間体形成が最も起こりにくい。

CO 伸縮と逆供与

金属から CO の π\pi^\ast 軌道へ電子が入るほど C--O 結合は弱くなり、伸縮振動数は下がる。逆に、他の配位子が強い π\pi 受容体として金属電子密度を奪うと CO への逆供与が減り、νCO\nu_{\mathrm{CO}} は高くなる。

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6 — 有機反応機構

a) の見抜き方

塩基性条件で二つのカルボニル基が同一分子内にある場合、まず分子内アルドールを疑う。生成物が「共役エノン」と指定されているため、β\beta-ヒドロキシケトンで止まらず、脱水まで進む。環化で何員環ができるかを数え、五員環または六員環を与える経路を優先するのが実戦的である。

b) の反応形式

酸化的 dearomatization で生じる o-キノール型中間体は単離しにくく、直ちに Diels--Alder 型の二量化を起こす。答案では、B を単なるサリチルアルデヒドとせず、芳香族性を失った共役ジエノン型中間体として書くことが重要である。

立体選択性の書き方

臭素のアルケン付加では、ブロモニウムイオンを経る anti 付加を基本にする。環状基質では、ブロモニウムがどちらの面にできるか、ついで Br\mathrm{Br^-} がどちらの面から開環できるかを分けて説明すると、生成物 E と F の違いを述べやすい。

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7 — 多段階合成の機構

a) は一つに固定しない

酸性加水分解で得られる糖様のヒドロキシアルデヒドは、開鎖構造だけでなくヘミアセタール環を作る。問題文が「平衡的にとりうるすべて」としているので、開鎖体、五員環または六員環ヘミアセタール、さらにアノマーの違いを落とさないことが重要である。

アセトニド形成のプロトン移動

2,2-ジメトキシプロパンは、酸によりメタノールを脱離できるアセタール等価体として働く。答案では「酸触媒で保護」とだけ書かず、プロトン化、メタノール脱離、OH の攻撃、分子内閉環、脱プロトン化の順を追うと機構問題として十分になる。

DIBAL-H の停止位置

DIBAL-H は低温でニトリルをアルデヒド段階まで部分還元できる。反応直後は遊離アルデヒドではなく、アルミニウムに結合したイミン型中間体である。水酸化ナトリウム水溶液の後処理で初めて RCHO\mathrm{RCHO} が現れる点を明記する。

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8 — 二原子分子の分子軌道と振動

MO 図で必要な情報

この問題では精密なエネルギー差ではなく、結合性・反結合性、σ/π\sigma/\pig/ug/u、電子配置を対応させることが主眼である。Li2_2 の価電子は 2 個なので、結合性 2s2s 軌道に二つ入るだけで結合次数 1 が得られる。

赤外活性の条件

赤外吸収は「振動の間に双極子モーメントが変化する」ことが条件である。分子が振動すること自体ではない。等核二原子分子は伸び縮みしても分子全体の双極子が 0 のままなので、赤外では観測されにくい。

同位体シフトの符号

重い同位体に置換すると換算質量が大きくなるため、振動数・波数は小さくなる。計算結果の符号が正になった場合は、比を μ6/μ7\sqrt{\mu_6/\mu_7} と置いたかを確認するとよい。

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9 — 連鎖反応の速度論

定常状態近似の立式

連鎖反応ではラジカル中間体の濃度は小さく、生成してもすぐ消費される。したがって「濃度が 0」ではなく「濃度の時間変化が 0」とおく。生成項と消費項を符号つきで全部書くことが、後半の代数計算の土台になる。

エタン濃度が消える理由

[CH3][\mathrm{CH_3}] は定常状態式で [C2H6][\mathrm{C_2H_6}] が両辺に共通に現れるため、速度定数だけになる。[H][\mathrm{H}] も二つの [C2H5][\mathrm{C_2H_5}] の表式を等置すると [C2H6][\mathrm{C_2H_6}] が消える。これが最終的に全体反応を一次反応にする理由である。

反応次数の判定

全体の量論式だけから反応次数は決まらない。この問題では、律速段階を一つ仮定するのではなく、与えられた素反応列と定常状態近似から C2H4\mathrm{C_2H_4} 生成速度を導き、[C2H6][\mathrm{C_2H_6}] のべきだけを見る。

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10 — 生体分子と代謝

解糖系の分岐表示

フルクトース 1,6-ビスリン酸はアルドラーゼにより DHAP と GAP に分かれる。DHAP はトリオースリン酸イソメラーゼにより GAP へ変換されるため、以後の ATP 産生段階へ進むのは GAP と考える。図で上下に分かれていても、順番は標準的な EMP 経路で整理できる。

電気泳動の向き

DNA の塩基配列や長さにかかわらず、リン酸骨格の負電荷が支配的である。したがって DNA は陰極ではなく陽極へ移動する。タンパク質では本来の電荷がアミノ酸組成や pH に依存するため、SDS で電荷密度をそろえる点が DNA との違いである。

補酵素の役割

PLP はアミノ酸の α\alpha-炭素に生じるアニオン性中間体を電子求引的に安定化する。TPP はチアゾリウム環によってアシルアニオン等価体を作る補酵素であり、通常は難しいカルボニル炭素同士の結合形成を可能にする。

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11 — 連成振動と交流回路

重心運動と相対運動に分ける

二質点が内部ばねだけでつながれているので、重心には外力が働かず等速運動する。一方、ばねの伸びは相対座標だけで決まり、角振動数 2k/m\sqrt{2k/m} の単振動になる。自然長 ll は相対座標の平衡位置を決めるだけで、最終的な x1(t)x_1(t) では初期配置と打ち消し合う。

交流回路の定常解

二階線形微分方程式の一般解は過渡解と特解の和である。抵抗 RR があるため過渡解は時間とともに減衰し、十分時間が経過した後には外部電圧と同じ角振動数の応答だけが残る。複素インピーダンス法を使うと、位相遅れを含む解を短く求められる。

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