東京大学 院試 過去問 解答例
東大 情報理工学系研究科 電子情報学専攻 専門科目 2023年度 院試 解答例・解説
東京大学 情報理工学系研究科 電子情報学専攻 専門科目 2023年度の院試 過去問について、設問ごとの解法方針と確認点を解説。全5問収録の解答・解説PDFと併用できます。問題本文は含みません。
最終更新:
設問ごとの解法方針と確認点を公開しています。
続きの途中式・最終答は解答・解説PDFに収録しています。問題本文は含まれません。
第1問 — 二端子対回路と能動フィルタ
二端子対行列は向きの約束を固定する
この問題では電流の向きが図で指定されている。直列素子では同じ電流が流れるので ,電圧だけが だけずれる。並列素子では電圧が同じで,入力電流にアドミタンス電流が加わる。この2つを混同しないことが計算の中心である。
能動回路は仮想接地で一気に処理する
理想演算増幅器なので,非反転端が接地されていれば反転端も信号的には接地である。したがって入力側と帰還側はそれぞれ接地に対するインピーダンスとして扱え,反転増幅器の公式 がそのまま使える。
一致条件は正規化した係数比較
第1の回路の伝達関数は,分子の 係数と分母の 係数が同じという特徴を持つ。第2の回路ではこの条件が になり,そこから の関係が出る。係数を丸暗記するより,分母を展開して形をそろえる方が安全である。
第2問 — 符号付き加減算器とオーバーフロー
3ビット値は必ず符号拡張する
2の補数では,ビット幅を増やすときに最上位ビットを複製する。正の数なら0が,負の数なら1が上位に伸びる。ここをゼロ拡張してしまうと,負の が正の数として扱われる。
加算器は減算器にもなる
2の補数の利点は,減算を反転と初期桁上げだけで加算に帰着できる点である。別の減算回路を作る必要はなく, 入力の前にNOTを置き,最下位の を1にすればよい。
オーバーフローは符号ビットで判定する
2の補数の範囲外に出たかどうかは,最終桁上げだけでは判定できない。加算では入力2つが同符号で結果が逆符号,減算では入力2つが異符号で結果が と逆符号,という符号ビットの条件を書くのが最も間違いにくい。
第3問 — 最大フローと二部マッチング
逆辺の意味
残余グラフの逆辺は,すでに流した量を後で取り消す自由度を表す。これがないと,先に選んだ経路が局所的に悪かった場合に修正できない。Ford--Fulkerson法の本質は,順辺で増やし,逆辺で戻せるようにして探索を続ける点にある。
最大フローの証明は切断で締める
流量23を見つけただけでは最大性の証明にならない。容量23の切断を同時に示すことで,それ以上流せない上界が得られる。下界である実際の流量と,上界である切断容量が一致するため最大といえる。
二部マッチングの容量1化
各頂点を一度しか使えないという条件は, と の容量を1にすることで表現できる。中央の 辺も容量1にしておけば,流量1が流れた辺だけを選ぶことでそのままマッチングになる。
第4問 — 経路制御
距離ベクトルとリンク状態の違い
距離ベクトルは,隣接ルーターから受け取った距離見積りをもとに経路表を更新する。ネットワーク全体の形を直接持つわけではない。リンク状態は,各ルーターがネットワーク全体のトポロジを共有し,各自で最短経路木を計算する。この違いが,無限カウント問題やフラッディング量の議論につながる。
BGPは距離の短さだけではない
BGP を単に「距離ベクトル」とだけ書くと不十分である。実際には AS path を持つパスベクトル型で,商用関係や運用ポリシーに基づいて広告・選択が制御される。経路ループ防止も AS path を見て行える。
計算量はモデルを明示する
Dijkstra の計算量は実装で変わる。また,リンク状態広告の「メッセージ総量」は,固定長メッセージとして数えるか,広告に含まれるリンク情報のサイズまで数えるかで表記が変わる。入試答案では, と の意味を明示した上で,採用したモデルを書けば筋の通った答案になる。
第5問 — 離散時間信号処理
遅延器の前後を状態にする
離散時間システムでは,遅延器に入る信号または出る信号を状態変数にすると式が一気に整理される。ここでは を加算器後の信号と見れば,フィードバックは として表せる。
は1サンプル遅延
ゼロ状態応答では, の 変換は である。この対応を使うとブロック線図から代数方程式に変換でき,伝達関数は単に として求まる。
周波数応答は単位円上の評価
複素指数入力は線形時不変システムの固有関数であり,定常状態では同じ周波数の複素指数が出力される。係数として掛かるのが である。片側入力では初期時刻の影響により過渡項も出るが,安定なら時間とともに消える。