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東京大学 院試 過去問 解答例

東大 情報理工学系研究科 電子情報学専攻 専門科目 2023年度 院試 過去問 解答例・解説(全5問)

全5問。制御工学1問・電磁気学・回路1問。テーマタグは3件(伝達関数・計算量理論・オペアンプ回路)。

最終更新:

収録5年度分の解答PDF:東京大学 情報理工学系研究科 電子情報学専攻 専門科目(¥2,880・紙面見本あり)

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解説5問と大問1問の途中式・最終答(全5問)
解答PDFに収録
途中式と最終答(最終答つき5問)
問題本文
非収録

東大 専門科目 2023年度 院試 過去問の出題内容(全5問)

この5問の分野は制御工学1問・電磁気学・回路1問です。

大問分野主題解説の小見出し最終答
第1問電磁気学・回路二端子対回路と能動フィルタ二端子対行列は向きの約束を固定する / 能動回路は仮想接地で一気に処理するあり
第2問—符号付き加減算器とオーバーフロー3ビット値は必ず符号拡張する / 加算器は減算器にもなるあり
第3問—最大フローと二部マッチング逆辺の意味 / 最大フローの証明は切断で締めるあり
第4問制御工学経路制御距離ベクトルとリンク状態の違い / BGPは距離の短さだけではないあり
第5問—離散時間信号処理遅延器の前後を状態にする / 周波数応答は単位円上の評価あり

2023年度の出題テーマと、同じテーマを出した他大学・他年度

この年度は4問に3テーマが出ています。

前年度(2022年度)との違い

大問数
2022年度 5問 → 2023年度 5問
2023年度で新しく出たテーマ
伝達関数・計算量理論・オペアンプ回路
2022年度のページを見る

第1問 — 二端子対回路と能動フィルタ

二端子対行列は向きの約束を固定する

この問題では電流の向きが図で指定されている。直列素子では同じ電流が流れるので I1=I2I_1=I_2,電圧だけが ZI2Z I_2 だけずれる。並列素子では電圧が同じで,入力電流にアドミタンス電流が加わる。この2つを混同しないことが計算の中心である。

能動回路は仮想接地で一気に処理する

理想演算増幅器なので,非反転端が接地されていれば反転端も信号的には接地である。したがって入力側と帰還側はそれぞれ接地に対するインピーダンスとして扱え,反転増幅器の公式 −Zf/Zin-Z_f/Z_{\mathrm{in}} がそのまま使える。

一致条件は正規化した係数比較

第1の回路の伝達関数は,分子の ss 係数と分母の ss 係数が同じという特徴を持つ。第2の回路ではこの条件が C1R2=C1R1+C2R2C_1R_2=C_1R_1+C_2R_2 になり,そこから α,β\alpha,\beta の関係が出る。係数を丸暗記するより,分母を展開して形をそろえる方が安全である。

解答

ラプラス演算子を ss とし,インダクタ,キャパシタ,抵抗のインピーダンスをそれぞれ ZL=sL,ZC=1sC,ZR=R Z_L=sL,\qquad Z_C=\frac{1}{sC},\qquad Z_R=R とおく。

直列インピーダンス ZZ の二端子対行列は (V1I1)=(1Z01)(V2I2) \begin{pmatrix}V_1\\ I_1\end{pmatrix} = \begin{pmatrix}1&Z\\0&1\end{pmatrix} \begin{pmatrix}V_2\\ I_2\end{pmatrix} である。したがって,左から順にインダクタ,キャパシタを通る2つの直列ブロックは Fa=(1sL01),Fb=(11/(sC)01) F_a= \begin{pmatrix}1&sL\\0&1\end{pmatrix}, \qquad F_b= \begin{pmatrix}1&1/(sC)\\0&1\end{pmatrix} である。右端の抵抗は出力端に並列に入るアドミタンス Y=1/RY=1/R なので Fc=(101/R1). F_c= \begin{pmatrix}1&0\\1/R&1\end{pmatrix}. 全体の行列は F=FaFbFc=(1+sL+1/(sC)RsL+1sC1R1). F=F_aF_bF_c = \begin{pmatrix} 1+\dfrac{sL+1/(sC)}{R} & sL+\dfrac{1}{sC}\\[1.0ex] \dfrac{1}{R} & 1 \end{pmatrix}.

出力を電圧として取り出すので,負荷をつながない条件 I2=0I_2=0 で V1=F11V2 V_1=F_{11}V_2 となる。よって第1の回路の伝達関数は H1(s)=V2(s)V1(s)=1F11=sCRs2LC+sCR+1. H_1(s)=\frac{V_2(s)}{V_1(s)} =\frac{1}{F_{11}} = \frac{sCR}{s^2LC+sCR+1}.

つぎに反転増幅器型の回路を考える。理想演算増幅器より反転入力端は仮想接地である。入力側インピーダンスは Zin=R1+1sC1=1+sR1C1sC1, Z_{\mathrm{in}}=R_1+\frac{1}{sC_1} =\frac{1+sR_1C_1}{sC_1}, 帰還インピーダンスは Zf=R2∥1sC2=R21+sR2C2. Z_f=R_2\parallel \frac{1}{sC_2} = \frac{R_2}{1+sR_2C_2}. したがって H2(s)=V2(s)V1(s)=−ZfZin=−sC1R2(1+sR1C1)(1+sR2C2). H_2(s)=\frac{V_2(s)}{V_1(s)} =-\frac{Z_f}{Z_{\mathrm{in}}} = -\frac{sC_1R_2} {(1+sR_1C_1)(1+sR_2C_2)}. 振幅特性だけを見ると符号は影響しない。

α=C2C1,β=R2R1 \alpha=\frac{C_2}{C_1},\qquad \beta=\frac{R_2}{R_1} とおく。第1の回路では分母の ss 係数と分子の ss 係数が等しい。第2の回路が同じ形の帯域通過特性を持つには C1R2=C1R1+C2R2 C_1R_2=C_1R_1+C_2R_2 が必要である。両辺を C1R1C_1R_1 で割ると β=1+αβ,∴β=11−α \beta=1+\alpha\beta, \qquad \therefore\quad \beta=\frac{1}{1-\alpha} である。したがって α<1\alpha<1 が必要である。

さらに C=C1C=C_1 とする。第1の回路が第2の回路と同じ振幅特性を持つには C1R=C1R2,LC1=C1C2R1R2 C_1R=C_1R_2,\qquad LC_1=C_1C_2R_1R_2 を満たせばよい。よって R=R2,L=C2R1R2 R=R_2,\qquad L=C_2R_1R_2 である。

最終答

Fa=(1sL01),Fb=(11/(sC)01),Fc=(101/R1). F_a=\begin{pmatrix}1&sL\\0&1\end{pmatrix},\quad F_b=\begin{pmatrix}1&1/(sC)\\0&1\end{pmatrix},\quad F_c=\begin{pmatrix}1&0\\1/R&1\end{pmatrix}. H1(s)=sCRs2LC+sCR+1,H2(s)=−sC1R2(1+sR1C1)(1+sR2C2). H_1(s)=\frac{sCR}{s^2LC+sCR+1},\qquad H_2(s)=-\frac{sC_1R_2}{(1+sR_1C_1)(1+sR_2C_2)}. 振幅特性を一致させるための比は β=11−α(α<1). \beta=\frac{1}{1-\alpha}\quad(\alpha<1). さらに C=C1C=C_1 なら R=R2,L=C2R1R2. R=R_2,\qquad L=C_2R_1R_2.

第2問 — 符号付き加減算器とオーバーフロー

3ビット値は必ず符号拡張する

2の補数では,ビット幅を増やすときに最上位ビットを複製する。正の数なら0が,負の数なら1が上位に伸びる。ここをゼロ拡張してしまうと,負の BB が正の数として扱われる。

加算器は減算器にもなる

2の補数の利点は,減算を反転と初期桁上げだけで加算に帰着できる点である。別の減算回路を作る必要はなく,BB 入力の前にNOTを置き,最下位の CinC_{\mathrm{in}} を1にすればよい。

オーバーフローは符号ビットで判定する

2の補数の範囲外に出たかどうかは,最終桁上げだけでは判定できない。加算では入力2つが同符号で結果が逆符号,減算では入力2つが異符号で結果が AA と逆符号,という符号ビットの条件を書くのが最も間違いにくい。

符号付き加減算器とオーバーフローの途中式・最終答をPDFで見る

第3問 — 最大フローと二部マッチング

逆辺の意味

残余グラフの逆辺は,すでに流した量を後で取り消す自由度を表す。これがないと,先に選んだ経路が局所的に悪かった場合に修正できない。Ford--Fulkerson法の本質は,順辺で増やし,逆辺で戻せるようにして探索を続ける点にある。

最大フローの証明は切断で締める

流量23を見つけただけでは最大性の証明にならない。容量23の切断を同時に示すことで,それ以上流せない上界が得られる。下界である実際の流量と,上界である切断容量が一致するため最大といえる。

二部マッチングの容量1化

各頂点を一度しか使えないという条件は,s→Xs\to X と Y→tY\to t の容量を1にすることで表現できる。中央の X→YX\to Y 辺も容量1にしておけば,流量1が流れた辺だけを選ぶことでそのままマッチングになる。

最大フローと二部マッチングの途中式・最終答をPDFで見る

第4問 — 経路制御

距離ベクトルとリンク状態の違い

距離ベクトルは,隣接ルーターから受け取った距離見積りをもとに経路表を更新する。ネットワーク全体の形を直接持つわけではない。リンク状態は,各ルーターがネットワーク全体のトポロジを共有し,各自で最短経路木を計算する。この違いが,無限カウント問題やフラッディング量の議論につながる。

BGPは距離の短さだけではない

BGP を単に「距離ベクトル」とだけ書くと不十分である。実際には AS path を持つパスベクトル型で,商用関係や運用ポリシーに基づいて広告・選択が制御される。経路ループ防止も AS path を見て行える。

計算量はモデルを明示する

Dijkstra の計算量は実装で変わる。また,リンク状態広告の「メッセージ総量」は,固定長メッセージとして数えるか,広告に含まれるリンク情報のサイズまで数えるかで表記が変わる。入試答案では,nn と mm の意味を明示した上で,採用したモデルを書けば筋の通った答案になる。

経路制御の途中式・最終答をPDFで見る

第5問 — 離散時間信号処理

遅延器の前後を状態にする

離散時間システムでは,遅延器に入る信号または出る信号を状態変数にすると式が一気に整理される。ここでは qnq_n を加算器後の信号と見れば,フィードバックは qn−1q_{n-1} として表せる。

z−1z^{-1} は1サンプル遅延

ゼロ状態応答では,qn−1q_{n-1} の zz 変換は z−1Q(z)z^{-1}Q(z) である。この対応を使うとブロック線図から代数方程式に変換でき,伝達関数は単に Y(z)/X(z)Y(z)/X(z) として求まる。

周波数応答は単位円上の評価

複素指数入力は線形時不変システムの固有関数であり,定常状態では同じ周波数の複素指数が出力される。係数として掛かるのが H(ejωT)H(e^{j\omega T}) である。片側入力では初期時刻の影響により過渡項も出るが,安定なら時間とともに消える。

離散時間信号処理の途中式・最終答をPDFで見る

東大 専門科目 院試 過去問の収録5年度

  • 2025年度(全5問)

    交流回路と理想変圧器 / 順序回路 / 最小全域木

  • 2024年度(全5問)

    RLC直列回路 / 同期式順序回路 / 最大部分列和

  • 2023年度(このページ・全5問)

    二端子対回路と能動フィルタ / 符号付き加減算器とオーバーフロー / 最大フローと二部マッチング

  • 2022年度(全5問)

    RL回路のラプラス変換 / 記憶階層と仮想記憶 / パターン照合アルゴリズム

  • 2021年度(全5問)

    交流回路と力率改善 / 同期式順序回路 / Union-Find