東京大学 院試 過去問 解答例
東大 情報理工学系研究科 電子情報学専攻 専門科目 2022年度 院試 解答例・解説
東京大学 情報理工学系研究科 電子情報学専攻 専門科目 2022年度の院試 過去問について、設問ごとの解法方針と確認点を解説。全5問収録の解答・解説PDFと併用できます。問題本文は含みません。
最終更新:
設問ごとの解法方針と確認点を公開しています。
続きの途中式・最終答は解答・解説PDFに収録しています。問題本文は含まれません。
第1問 — RL回路のラプラス変換
時間移動の扱い
有限時間だけ続くランプ波は,単なる ではなく,終了後に値を へ戻す項も必要である。この項を落とすと, で入力が一定値のまま残り,電流波形の後半がまったく別のものになる。
概形の確認
では入力電圧が増えるため電流は上昇する。ただしインダクタにより立ち上がりは滑らかで, である。 以降は電源が切れるので,蓄えられた磁気エネルギーが抵抗で消費され, 型に減衰する。 で電流が連続になる点は,インダクタ電流が瞬時に飛ばないことの確認にもなる。
第2問 — 記憶階層と仮想記憶
CPIは全命令あたりでそろえる
キャッシュミス率は命令アクセス・データアクセスの種類ごとに与えられることが多い。CPIに加えるときは,必ず「1命令あたり何回そのミスが起こるか」に直す。データアクセスは全命令の一部だけなので, を掛ける点が失点しやすい。
ページテーブルの支配項
単純な1段ページテーブルは,実際に使うページ数ではなく仮想ページ番号の全範囲に比例する。32 bit 仮想空間ではまだ計算しやすいが,64 bit ではこの方式が現実的でないことが,多段化や逆引き方式の動機である。
第3問 — パターン照合アルゴリズム
素朴法の平均計算量
最悪時は各開始位置で 回近く比較するため である。しかしランダム列では早い段階で不一致が起こりやすく,1開始位置あたりの期待比較回数は等比級数で有界になる。ここでは なので,期待値が 未満に収まることが本質である。
DFAの状態の意味
状態を「何文字一致したか」とだけ覚えるのではなく,「次に利用できる最長接尾辞の長さ」として作るのがポイントである。状態 から入力 で状態 に戻るのは,すでに読んだ末尾の が新しい一致の先頭として使えるからである。
ハッシュ法の注意
ハッシュ値が一致しても列が一致するとは限らない。したがって答案では,候補をハッシュで絞ったあとに実比較で確認する,または衝突確率を評価する,という一言が必要である。
第4問 — デジタル変調と誤り率
16QAMの平均エネルギー
16QAMでは最小距離そのものではなく,各信号点の原点からの距離の二乗を平均する。格子点が にあるため,1軸平均が になる。この計算を や と誤ると,後の誤り率の引数もずれる。
最近傍近似
高SNRでは,遠い信号点へ誤判定される確率は最近傍への確率に比べて小さい。そのため最近傍だけを数えればよい。16QAMは点の位置により最近傍数が異なるので,角・辺・内側に分けて平均する。
第5問 — 矩形パルスと理想低域フィルタ
理想低域フィルタの二つの効果
は通過帯域では振幅 で,位相だけが である。これは時間領域では遅延を表す。帯域外では なので,矩形パルスの高周波成分が切られ,出力の立ち上がり・立ち下がりにリンギングが出る。
正弦積分への変形
矩形パルスのフーリエ変換は sinc 型である。帯域制限後の逆変換では有限区間で を積分するため,正弦積分関数が自然に現れる。変数を と置くと,遅延の効果を式全体の平行移動として見通しやすい。