静岡大学 院試 過去問 解答例
静岡大 総合科学技術研究科 理学専攻 数学コース 数学 2025年第1回募集 院試 解答例・解説
静岡大学 総合科学技術研究科 理学専攻 数学コース 数学 2025年第1回募集の院試 過去問について、設問ごとの解法方針と確認点を解説。全4問収録の解答・解説PDFと併用できます。問題本文は含みません。
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設問ごとの解法方針と確認点を公開しています。
続きの途中式・最終答は解答・解説PDFに収録しています。問題本文は含まれません。
第1問 — 英語による証明
英語証明で書くべき骨格
(1) は積の極限定理をそのまま引用するよりも,-論法を英語で書く方が安全である。 から が最終的に有界になることを先に示し,その上で を小さくする。ここで と置けば が直ちに出る。 この「一方を有界にして,他方を小さくする」という分解が積の極限の核心である。
(1) の減点されやすい点
と書くだけでは, を任意の 未満にするための の取り方が見えない。答案では,まず となる番号を取り,別に となる番号を取って,最後に大きい方を採用する,という順番を明示する。 また からは と三角不等式を使っている。英語答案でもこの一行があると論理の穴がなくなる。
論理記号を避ける
問題の指定は論理記号を使わない英語証明である。したがって のような記号を使わず, ``there is an integer'',``whenever'',``hence'' などの文章でつなぐ。 数式中の絶対値や集合演算の記号まで完全に避ける必要はないが,証明の論理構造は英文で表す。 特に ``for such '' や ``if is at least the larger of ...'' は, 複数の条件を同時に満たす番号を取ったことを自然な英語で表せる便利な言い回しである。
位相の証明の要点
(2) は開集合族の基本性質と連続写像の定義を順に使うだけである。合併と共通部分を取った後の集合が の開集合であることを明示してから,連続性により逆像が で開である,と書くと減点されにくい。 ここで使っている集合は であり, が の開集合なら,有限回の合併・共通部分で得られるので で開である。逆像の分配法則を使って と示してもよいが,その場合も最後に が で開であることを連続性から述べる必要がある。 「開集合の逆像は開集合」という定義を,どの空間での開性かまで含めて書くのが答案上の確認点である。
第2問 — 解析
(1) 反対方向の作り方
数列条件から連続性を出すときは,連続でないことを仮定して反例数列を作る。 として点を選ぶのが定石で,これにより は保証されるが, 関数値は から一定距離以上離れ続ける。 この証明で重要なのは,連続でないことの否定を正しく書くことである。 すなわち「ある が存在して,どんなに小さい近傍を取っても となる点が残る」という形にする。 ここを「ある が存在する」とだけ書くと, ごとに へ近づく点列を作る根拠にならない。
(1) の答案チェック
選んだ点列には があるので,はさみうちにより である。 一方,すべての で だから, 任意の正の数より小さくなるという収束の条件を満たさない。最後にこの二つを仮定と衝突させるところまで 書いて初めて,背理法が閉じる。
(2) 項別微分で見るべき二つの級数
関数項級数が 級であることを示すには,元の級数だけでなく導関数の級数も制御する必要がある。 この問題では全実数上で評価するため,コンパクト区間上の議論ではなく 全体で使える優級数を作る。導関数について と評価できる点が決定的である。
(2) 導関数評価の中身
である。ここで は,例えば から分かる。したがって に依存しない優級数 が得られ, Weierstrass の判定法で導関数級数の一様収束が従う。よくある誤りは, を固定した収束だけを示してしまうことである。項別微分定理に必要なのは,ここでは 全体での一様な評価である。
(2) 定理の使い方
項別微分定理を使うときは,少なくとも一点で が収束することと, が一様収束することを確認する形でもよい。本解ではさらに強く により 自体の一様収束を示しているので, 仮定の不足はない。最終的な導関数の式では,級数記号の外へ極限操作を出した根拠がこの定理であることを 一言添えると答案が安定する。
(3) 特性方向
方程式 は,方向 に沿った微分が であることを表している。 したがって はその方向には変化せず,直交する量 だけに依存する。 座標変換を明示すると,この直観をそのまま厳密な証明にできる。
(3) 座標変換の確認
新しい変数 の係数行列の行列式は である。条件 によりこれは でないので, は平面全体の座標として使える。逆変換を書いてから合成関数 を定めると,偏微分は となり,仮定から である。固定した に対して一変数関数 の導関数が 常に なので,平均値の定理により は に依存しない。 この最後の一文を省くと,「偏微分が だから定数」という部分の根拠が曖昧になりやすい。
(3) 符号ミスへの注意
の取り方を などに変えても本質は同じだが,連鎖律で出る符号が変わる。 答案では,選んだ と逆変換を一組で確認する。特に を代入して に戻ることを暗算で確認しておくと, 後半の計算ミスを防げる。
(4) 発散点の位置
原点では integrand は有限であり,問題になるのは境界 のみである。 置換後は一次元の標準形 になるので, 指数が 未満かどうかだけを判定すればよい。
(4) 極座標の係数確認
単位円板上の積分では,面積要素が になる。 この を落とすと収束条件も値も変わってしまう。置換 では なので となり,係数は ではなく に変わる。
(4) 境界ケースと検算
では が対数的に発散する。 ではそれより強く発散し, では である。検算として を代入すると積分値は単位円板の面積 になり, 得られた式 も を返す。試験ではこのような簡単な特殊値確認が, 係数の取り違えを見つけるのに有効である。
第3問 — 線形代数
(1) 計算の見通し
厳密上三角行列では,積を取るたびに非零成分が右上へ押し上げられる。 三次行列の場合,三回掛けると右上に進む余地がなくなるため になる。 一方で二回掛けた段階では 成分が残るので,指数を小さく見積もらないことが大切である。
(2) 基底への作用で示す利点
成分計算で を示すこともできるが,標準基底への作用を見る方が短い。 が 自身を含まず,より小さい添字の基底だけの線形結合になる,という一点が本質である。 この性質を 回繰り返せば必ず になる。 行列の成分で書く場合も同じ議論をしており,積 の非零成分は少なくとも 本上の対角線より上にしか現れない。 ではそのような場所が存在しない。
(3) 最小性の使いどころ
が最小であるという条件は, と同値に使える。 ここから となる を選び,その から Jordan 鎖のような を作る。一次独立性を示すときは,最高冪ではなく低い冪の係数から順に消していくため, を作用させるのが自然である。
答案で落としやすい点
から直ちに「すべての で 」とは言えない。 必要なのは少なくとも一つの の存在であり,これは線形写像 が零写像でないことから従う。 また,一次独立性の証明では係数を逆向きに消すのではなく, を順に作用させて を決めると,消える項と残る項の管理が明確になる。
第4問 — 位相
近傍条件の読み替え
位相空間での連続性は「開集合の逆像が開」と定義されることが多いが,各点で見ると 「像側の近傍を,定義域側の十分小さい近傍へ引き戻せる」という形になる。 距離空間の - 条件は,この近傍条件を開球で書いたものである。 特に (2) では,像側の開球を先に固定し,定義域側の開球がその中へ写るように半径を選ぶ。 は一般に と に依存してよく,一様連続性を示しているわけではない。
閉包の包含の向き
連続性だけで常に言えるのは である。逆向きの包含には, の像が閉であること,つまり閉写像性が必要である。 この二つの役割を混同しないことが重要である。 閉写像性は「閉集合の像が閉」であって,「開集合の像が開」ではない。ここでは が閉集合であることを明示してから使うと,論理の接続が伝わりやすい。
全単射であることの使い方
(4) の逆向きでは,閉包保存性からまず の連続性を出す。その際, から と戻すために単射性を使う。 また,閉集合 に対して となるので, が閉写像であることも分かる。 全単射かつ閉写像なら逆写像は連続であり,これで同相写像になる。
よくある誤り
から連続性を示すとき,いきなり を閉集合としてよいわけではない。 閉集合 を任意に取り,その逆像 が閉であることを示す,という順序が必要である。 また, から と戻す箇所では全単射,特に単射性が使われている。