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東京科学大学 院試 過去問 解答例

東京科学大 生命理工学院 生命理工学系 生命理工学系 専門科目 2022年度 院試 解答例・解説

東京科学大学 生命理工学院 生命理工学系 生命理工学系 専門科目 2022年度の院試 過去問について、設問ごとの解法方針と確認点を解説。全8問収録の解答・解説PDFと併用できます。問題本文は含みません。

最終更新:

設問ごとの解法方針と確認点を公開しています。

続きの途中式・最終答は解答・解説PDFに収録しています。問題本文は含まれません。

1 — ペプチド配列決定とコイルドコイル

方針

第I部は、組成分析、N末端標識、酵素切断特異性を組み合わせる古典的配列決定である。FDNBでN末端を固定し、キモトリプシン切断で芳香族残基の直後を切る、と順番に制約を置くと一意に決まる。

根拠

FDNB後に未反応 Tyr が見いだされないのは、Tyr が1残基しかなく、それがN末端としてDNP化されたことを意味する。キモトリプシンで Tyr が遊離するには Tyr のC末側が切られる必要があるので配列先頭は Tyr-である。また Phe:Gly=1:2 の断片がトリペプチドで、さらに Leu が遊離するには、その断片のC末端が Phe、全体のC末端が Leu でなければならない。

検算

得た配列 Tyr-Gly-Gly-Phe-Leu の組成は Gly が2、Tyr, Phe, Leu が各1で条件と一致する。切断は Tyr|Gly-Gly-Phe|Leu となり、消化産物の記述とも一致する。

典型ミス

キモトリプシンを「芳香族アミノ酸を含む結合ならどこでも切る」と読むと、トリペプチドの向きを誤る。問では芳香族残基のカルボキシ側切断であることが重要である。

試験で書くべきポイント

コイルドコイルでは、heptad repeat の a,d が疎水性コア、e,g が塩橋を作る、という対応を書けば十分に得点できる。結合率計算では KdK_d の単位を μM\mu\mathrm{M} にそろえ、KdCK_d\ll C から近似する過程を示すと概算問題として見通しがよい。

続きの解答(途中式・最終答)はPDFに収録

2 — エピジェネティクスとゲノム編集

方針

実験1は「変異体で発現が増えたら、その因子は野生型で抑制因子」「変異体で発現が減ったら、その因子は活性化因子」と読む。強光条件と通常条件を分け、同じ因子の役割が条件依存的かどうかを見る。

根拠

B欠損で発現が上がるため、BはA1を抑える側にある。さらにDNAメチル化がA1を抑えるという実験2の結果を加えると、Bがメチル化を促進する、またはメチル化されたプロモーター上で活性化因子の結合を妨げる、という説明は自然である。逆に、B強制発現で脱メチル化が進むとA1発現は上がるはずで、B欠損で発現が上がるという結果と反対になる。

検算

CRISPR-Cas9の設計問題では、「D1とD2が相同性の高い遺伝子で、交配しない」という条件が決定的である。片方ずつ狙う設計では二重変異体が得にくいので、保存エクソンを同時に切る設計が必要になる。

典型ミス

ノックアウトとノックダウンを混同しない。CRISPRはDNA配列そのものを変えうる技術で、RNA干渉は多くの場合mRNA量または翻訳を下げる可逆的・不完全な抑制である。

試験で書くべきポイント

空欄補充は用語だけでよいが、記述問題では指定語を必ず入れる。特に「非相同末端結合」「相同組換え」「修復」は同じ文中で関係を説明し、単語の羅列にしない。

続きの解答(途中式・最終答)はPDFに収録

3 — 分泌経路とERAD

方針

分泌タンパク質は「SRPによる翻訳一時停止と小胞体膜への誘導」「共翻訳的な小胞体内腔への移行」「糖鎖付加と品質管理」という流れで整理するとよい。ERADはその逆向きに、不良タンパク質を細胞質へ戻して分解する機構である。

根拠

N結合型糖鎖は Asn-X-Ser/Thr 配列のAsn側鎖アミド窒素に転移される。前駆体は Glc3_3Man9_9GlcNAc2_2 の14糖で、ドリコール上で組み立てられる。ここで「OH基」と答えるとO結合型糖鎖と混同していることになる。

検算

KDEL回収では、輸送方向が小胞体からゴルジ体へではなく、漏れ出たタンパク質をゴルジ体から小胞体へ戻す逆行輸送であることを確認する。COP Iはこの逆行輸送に関わる小胞である。

典型ミス

ERADでリソソームを選びたくなるが、問題文では小胞体内腔タンパク質が細胞質へ引き出され、ユビキチン化される流れである。ユビキチン化タンパク質の主要な分解装置はプロテアソームである。

試験で書くべきポイント

実験計画では、単に「電気泳動する」と書くだけでは不十分である。パルス標識で新生Xを追跡し、免疫沈降でXだけを取り出し、ERAD阻害剤との比較で分解分を評価する、という因果関係を書く。

続きの解答(途中式・最終答)はPDFに収録

4 — 受容体シグナルと膜脂質非対称性

方針

第I部は受容体の分類とオン・オフ制御、第II部は膜脂質が「合成直後は片側」「小胞体では均一化」「細胞膜では非対称化」という順に整理できる。どちらも向きとエネルギー依存性を明確にする。

根拠

RTKはリガンド結合で二量体化し、片方のキナーゼドメインが相手のチロシン残基をリン酸化するため「トランス自己リン酸化」と呼ぶ。GPCRのGタンパク質は三量体で、GTP結合型α\alphaβγ\beta\gammaの双方がシグナルを出しうる。

検算

フリップ・フロップが遅い理由は、リン脂質全体が動けないからではない。膜面内の側方拡散は速いが、親水性頭部が疎水性コアを横断する過程だけが遅い、という区別が重要である。

典型ミス

小胞体の脂質合成面を内腔側と答える誤りが多い。脂質合成酵素の活性部位は主に細胞質側にあり、そこからスクランブリングで両葉に分配される。

試験で書くべきポイント

膜非対称性の意義は、具体例を1つに絞ると書きやすい。アポトーシス時のPS露出は、名称、普段の局在、外葉露出後の認識、結果まで一続きで説明できる。

続きの解答(途中式・最終答)はPDFに収録

5 — 芳香族化合物の構造決定と合成

方針

第I部は不飽和度からベンゼン環を前提にし、置換基の炭素数を3に分割する。NMRでは積分比、分裂、対称性、酸化反応の情報を順に使う。

根拠

化合物Aの13{}^{13}C NMRが3本しかないことは、環炭素とメチル炭素が高い対称性で等価になっていることを示す。Bは酸化で無水物を与えるため、2つの側鎖が互いにオルトでなければならない。Cはクメン法そのもので、フェノールとアセトンを与える点が決定的である。

検算

o-エチルトルエンは二置換ベンゼンなので芳香族プロトンが4H、クメンは一置換ベンゼンなので芳香族プロトンが5Hである。NMRの積分と置換度が合っているかを確認すると誤答を減らせる。

典型ミス

IIIのアニリン臭素化では、アミノ基が強いo,p配向性活性化基なので、臭素水では一置換で止まらず2,4,6-トリブロモ体になりやすい。ジアゾ化、Sandmeyer反応、加水分解の順でニトリルからカルボン酸へ進む。

フェノールのスルホン化ではpara位にスルホン酸基を一時的に導入し、Friedel--Craftsアルキル化で2,6位を選択的に埋める。最後の酸処理で脱スルホン化されるため、Oの分子式はC12_{12}H18_{18}Oであり、イソプロピル基は2個である。

試験で書くべきポイント

構造式を描く問題では、置換位置が採点の中心になる。文章答案で補う場合も、o/m/p、1,2,3などの番号、縮合構造式を明示して、同分異性体のどれかが曖昧にならないようにする。

続きの解答(途中式・最終答)はPDFに収録

6 — 多段階有機合成と反応性

方針

第I部は全合成の各段階を、保護、還元、水素化、アシル化、脱保護という操作単位で読む。複雑な骨格に引きずられず、変化している官能基だけを見ると試薬選択が決まる。

根拠

Aは環化であり、メチルビニルケトン型の試薬を用いるRobinson環化が対応する。BとHはケトン保護なのでエチレングリコール酸触媒、CとIはアセタール脱保護なので酸性加水分解である。Dは二重結合の水素化、Eはケトンのヒドリド還元、Fはアルコールのアセチル化、Gは保護基の加水分解に対応する。

検算

IRは範囲で覚える。カルボニルはおおむね1700 cm1^{-1}付近なので(c)、アルコールO-Hは幅広く3200--3600 cm1^{-1}付近なので(f)である。

典型ミス

Diels--Alder反応の記述では、通常の電子需要型ではジエンに電子供与基、求ジエン体に電子求引基があると反応性が上がる。問題文の3はこの向きが逆である。またα\alpha-シアノアクリレートは水分でアニオン重合しやすく、カチオン重合ではない。

試験で書くべきポイント

立体選択性の説明では「混んでいない面から攻撃」とだけ書くより、基質のどちらか一方の面が縮環骨格やメチル基で遮蔽される、と具体的に書く。構造式を描く答案では、HBr処理の転位と硫酸処理の脱水を分けることが重要である。

続きの解答(途中式・最終答)はPDFに収録

7 — 相転移・吸光・カルノーサイクル

方針

相平衡ではΔG=0\Delta G=0、可逆熱機関では等温過程と断熱過程を分ける、という基本に戻る。数値問題は単位をJ、K、molにそろえてから概算する。

根拠

100 ℃、1 atmは水の通常沸点なので、液体と気体の化学ポテンシャルが等しい。したがって蒸発は吸熱でΔH>0\Delta H>0だが、平衡条件からΔG=0\Delta G=0であり、ΔS=ΔH/T\Delta S=\Delta H/T が成立する。

検算

100 ℃から99 ℃へ下げると蒸気圧は下がるので、ΔP\Delta P は負でなければならない。大きさも1 Kの変化で数パーセント程度なので、10210^{-2} atmの選択肢が自然である。

典型ミス

吸光度の対数は自然対数ではなく常用対数で定義される。微分方程式の積分では自然対数が出るため、最後に ln10\ln 10 で割ってモル吸光係数へ吸収する。

試験で書くべきポイント

カルノーサイクルの仕事は、全過程の仕事を個別に足してもよいが、効率 η=1Tc/Th\eta=1-T_c/T_h を使うと短い。qabq_{ab} が高温熱源から吸収する熱であることを明記する。

続きの解答(途中式・最終答)はPDFに収録

8 — NMRと結晶場理論

方針

NMRは、ゼーマン分裂で生じるエネルギー差を電磁波のエネルギー hνh\nu と等置するだけで数値が出る。文章穴埋めは、熱分布、歳差運動、緩和、FIDの流れとして読む。

根拠

問題文は ΔE=2μB0\Delta E=2\mu B_0 とし、μ=γhI/(2π)\mu=\gamma hI/(2\pi) を与えている。プロトンの I=1/2I=1/2 を代入すると、ΔE=γhB0/(2π)\Delta E=\gamma hB_0/(2\pi) となり、共鳴周波数では hh が消える。

検算

臨床用・分析用NMRで、プロトンのラーモア周波数はおよそ42.6 MHz/Tである。9.0 Tなら 42.6×938342.6\times9\simeq383 MHzなので、約390 MHzという計算結果は妥当である。

典型ミス

エネルギー差を1粒子あたりで止めるか、molあたりにするかを混同しやすい。問2はJ mol1^{-1}を求めているため、最後にアボガドロ数を掛ける必要がある。

試験で書くべきポイント

ヘモグロビンの錯体問題では、配位子の種類から詳細な電子移動論に踏み込みすぎない。設問の結晶場理論に従い、Fe(II)のd6^6、八面体、低スピン、t2g6t_{2g}^6、不対電子0個を簡潔につなげるのが最も安定する。

続きの解答(途中式・最終答)はPDFに収録

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