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東京科学大学 院試 過去問 解答例

東京科学大 生命理工学院 生命理工学系 生命理工学系 専門科目 2022年度 院試 過去問 解答例・解説(全8問)

全8問。テーマタグは2件(転位・カルノーサイクル)。

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解説8問と大問1問の途中式・最終答(全8問)
解答PDFに収録
途中式と最終答(最終答つき8問)
問題本文
非収録

東京科学大 生命理工学系 専門科目 2022年度 院試 過去問の出題内容(全8問)

大問主題解説の小見出し最終答
第1問ペプチド配列決定とコイルドコイル根拠あり
第2問エピジェネティクスとゲノム編集根拠あり
第3問分泌経路とERAD根拠あり
第4問受容体シグナルと膜脂質非対称性根拠あり
第5問芳香族化合物の構造決定と合成根拠あり
第6問多段階有機合成と反応性根拠あり
第7問相転移・吸光・カルノーサイクル根拠あり
第8問NMRと結晶場理論根拠あり

この年度の解説には検算8件・試験で書くべきポイント8件・典型ミス8件が付いています。

2022年度の出題テーマと、同じテーマを出した他大学・他年度

この年度は2問に2テーマが出ています。

前年度(2021年度)との違い

大問数
2021年度 8問 → 2022年度 8問
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第1問 — ペプチド配列決定とコイルドコイル

方針

第I部は、組成分析、N末端標識、酵素切断特異性を組み合わせる古典的配列決定である。FDNBでN末端を固定し、キモトリプシン切断で芳香族残基の直後を切る、と順番に制約を置くと一意に決まる。

根拠

FDNB後に未反応 Tyr が見いだされないのは、Tyr が1残基しかなく、それがN末端としてDNP化されたことを意味する。キモトリプシンで Tyr が遊離するには Tyr のC末側が切られる必要があるので配列先頭は Tyr-である。また Phe:Gly=1:2 の断片がトリペプチドで、さらに Leu が遊離するには、その断片のC末端が Phe、全体のC末端が Leu でなければならない。

検算

得た配列 Tyr-Gly-Gly-Phe-Leu の組成は Gly が2、Tyr, Phe, Leu が各1で条件と一致する。切断は Tyr∣|Gly-Gly-Phe∣|Leu となり、消化産物の記述とも一致する。

典型ミス

キモトリプシンを「芳香族アミノ酸を含む結合ならどこでも切る」と読むと、トリペプチドの向きを誤る。問では芳香族残基のカルボキシ側切断であることが重要である。

試験で書くべきポイント

コイルドコイルでは、heptad repeat の a,d が疎水性コア、e,g が塩橋を作る、という対応を書けば十分に得点できる。結合率計算では KdK_d の単位を μM\mu\mathrm{M} にそろえ、Kd≪CK_d\ll C から近似する過程を示すと概算問題として見通しがよい。

解答

I

  1. 1-フルオロ-2,4-ジニトロベンゼン(FDNB)は、ペプチドのN末端にある遊離 α\alpha-アミノ基と求核芳香族置換で反応し、DNP化アミノ酸を与える。ペプチド結合中のアミド窒素は求核性が低く、完全加水分解後もDNP化されたN末端残基だけを追跡できる。
  2. 塩基性アミノ酸のカルボキシ側を切断する代表的セリンプロテアーゼはトリプシンである。キモトリプシンが主に認識する残基は Phe, Tyr, Trp、トリプシンが認識する残基は Lys, Arg である。
  3. 完全加水分解から組成は Gly2_2Leu1_1Phe1_1Tyr1_1であり、FDNB処理後にDNP-Tyrのみが検出されるのでN末端は Tyr である。キモトリプシン消化で遊離 Tyr と遊離 Leu、および Phe:Gly=1:2 のトリペプチドが得られる。キモトリプシンは芳香族残基のC末側を切断するので、N末端 Tyr の直後で切れて Tyr が遊離し、さらに Phe の直後で切れて C末端側の Leu が遊離する。したがって中央のトリペプチドは Gly-Gly-Phe である。
  4. 質量分析では、ペプチドをイオン化し、MS/MSで断片イオン系列の質量差から配列を読む。少量・高速で、修飾や混合物にも強い一方、同重体残基の識別、異性体・修飾位置の確定、装置・データ解析への依存が弱点になる。

II

  1. 両親媒性により、可溶性球状タンパク質では疎水性側鎖が水から逃れて内部に埋まり、親水性側鎖が表面で水と相互作用する。これは疎水効果による折りたたみの主要な駆動力であり、特定の三次構造を安定化する。
  2. ア:四次、イ:三次、ウ:結合、エ:抗原、オ:二次、カ:IgM、キ:10。
  3. a,d位置は疎水性相互作用、e,g位置は静電相互作用で安定化する。ヘリカルホイールをN末端から読むと、Xペプチドの最初の7残基は Val−Glu−Ser−Ala−Leu−Glu−Lys \mathrm{Val-Glu-Ser-Ala-Leu-Glu-Lys} である。
  4. 1:1結合 X+Y⇌XYX+Y\rightleftharpoons XY とし、初濃度をそれぞれ C=1.0 μMC=1.0\,\mu\mathrm{M}、会合体濃度を xx とする。 Kd=(C−x)2x=0.1 nM=1.0×10−4 μM. K_d=\frac{(C-x)^2}{x}=0.1\,\mathrm{nM}=1.0\times 10^{-4}\,\mu\mathrm{M}. Kd≪CK_d\ll C なので x≃C−δx\simeq C-\delta とおくと、δ2/(C−δ)≃Kd\delta^2/(C-\delta)\simeq K_d、したがって δ≃KdC=10−4 μM=0.01 μM. \delta\simeq \sqrt{K_d C}=\sqrt{10^{-4}}\,\mu\mathrm{M}=0.01\,\mu\mathrm{M}. 会合している割合は x/C≃0.99x/C\simeq 0.99、すなわち約 99%99\% である。
  5. 逆平行では、a,dの疎水性面はある程度向き合いうるが、e,g位置に設計された Lys/Glu の相補的な塩橋の対応が順平行の場合から崩れる。したがって形成は完全には排除されないが、設計上は順平行ヘテロ二量体が優先すると考える。

最終答

I-3: Tyr−Gly−Gly−Phe−Leu\mathrm{Tyr-Gly-Gly-Phe-Leu}。II-2: 四次、三次、結合、抗原、二次、IgM、10。II-3: 疎水性相互作用、静電相互作用、Xは Val−Glu−Ser−Ala−Leu−Glu−Lys\mathrm{Val-Glu-Ser-Ala-Leu-Glu-Lys}。II-4: 約 99%99\%。

第2問 — エピジェネティクスとゲノム編集

方針

実験1は「変異体で発現が増えたら、その因子は野生型で抑制因子」「変異体で発現が減ったら、その因子は活性化因子」と読む。強光条件と通常条件を分け、同じ因子の役割が条件依存的かどうかを見る。

根拠

B欠損で発現が上がるため、BはA1を抑える側にある。さらにDNAメチル化がA1を抑えるという実験2の結果を加えると、Bがメチル化を促進する、またはメチル化されたプロモーター上で活性化因子の結合を妨げる、という説明は自然である。逆に、B強制発現で脱メチル化が進むとA1発現は上がるはずで、B欠損で発現が上がるという結果と反対になる。

検算

CRISPR-Cas9の設計問題では、「D1とD2が相同性の高い遺伝子で、交配しない」という条件が決定的である。片方ずつ狙う設計では二重変異体が得にくいので、保存エクソンを同時に切る設計が必要になる。

典型ミス

ノックアウトとノックダウンを混同しない。CRISPRはDNA配列そのものを変えうる技術で、RNA干渉は多くの場合mRNA量または翻訳を下げる可逆的・不完全な抑制である。

試験で書くべきポイント

空欄補充は用語だけでよいが、記述問題では指定語を必ず入れる。特に「非相同末端結合」「相同組換え」「修復」は同じ文中で関係を説明し、単語の羅列にしない。

エピジェネティクスとゲノム編集の途中式・最終答をPDFで見る

第3問 — 分泌経路とERAD

方針

分泌タンパク質は「SRPによる翻訳一時停止と小胞体膜への誘導」「共翻訳的な小胞体内腔への移行」「糖鎖付加と品質管理」という流れで整理するとよい。ERADはその逆向きに、不良タンパク質を細胞質へ戻して分解する機構である。

根拠

N結合型糖鎖は Asn-X-Ser/Thr 配列のAsn側鎖アミド窒素に転移される。前駆体は Glc3_3Man9_9GlcNAc2_2 の14糖で、ドリコール上で組み立てられる。ここで「OH基」と答えるとO結合型糖鎖と混同していることになる。

検算

KDEL回収では、輸送方向が小胞体からゴルジ体へではなく、漏れ出たタンパク質をゴルジ体から小胞体へ戻す逆行輸送であることを確認する。COP Iはこの逆行輸送に関わる小胞である。

典型ミス

ERADでリソソームを選びたくなるが、問題文では小胞体内腔タンパク質が細胞質へ引き出され、ユビキチン化される流れである。ユビキチン化タンパク質の主要な分解装置はプロテアソームである。

試験で書くべきポイント

実験計画では、単に「電気泳動する」と書くだけでは不十分である。パルス標識で新生Xを追跡し、免疫沈降でXだけを取り出し、ERAD阻害剤との比較で分解分を評価する、という因果関係を書く。

分泌経路とERADの途中式・最終答をPDFで見る

第4問 — 受容体シグナルと膜脂質非対称性

方針

第I部は受容体の分類とオン・オフ制御、第II部は膜脂質が「合成直後は片側」「小胞体では均一化」「細胞膜では非対称化」という順に整理できる。どちらも向きとエネルギー依存性を明確にする。

根拠

RTKはリガンド結合で二量体化し、片方のキナーゼドメインが相手のチロシン残基をリン酸化するため「トランス自己リン酸化」と呼ぶ。GPCRのGタンパク質は三量体で、GTP結合型α\alphaとβγ\beta\gammaの双方がシグナルを出しうる。

検算

フリップ・フロップが遅い理由は、リン脂質全体が動けないからではない。膜面内の側方拡散は速いが、親水性頭部が疎水性コアを横断する過程だけが遅い、という区別が重要である。

典型ミス

小胞体の脂質合成面を内腔側と答える誤りが多い。脂質合成酵素の活性部位は主に細胞質側にあり、そこからスクランブリングで両葉に分配される。

試験で書くべきポイント

膜非対称性の意義は、具体例を1つに絞ると書きやすい。アポトーシス時のPS露出は、名称、普段の局在、外葉露出後の認識、結果まで一続きで説明できる。

受容体シグナルと膜脂質非対称性の途中式・最終答をPDFで見る

第5問 — 芳香族化合物の構造決定と合成

方針

第I部は不飽和度からベンゼン環を前提にし、置換基の炭素数を3に分割する。NMRでは積分比、分裂、対称性、酸化反応の情報を順に使う。

根拠

化合物Aの13{}^{13}C NMRが3本しかないことは、環炭素とメチル炭素が高い対称性で等価になっていることを示す。Bは酸化で無水物を与えるため、2つの側鎖が互いにオルトでなければならない。Cはクメン法そのもので、フェノールとアセトンを与える点が決定的である。

検算

o-エチルトルエンは二置換ベンゼンなので芳香族プロトンが4H、クメンは一置換ベンゼンなので芳香族プロトンが5Hである。NMRの積分と置換度が合っているかを確認すると誤答を減らせる。

典型ミス

IIIのアニリン臭素化では、アミノ基が強いo,p配向性活性化基なので、臭素水では一置換で止まらず2,4,6-トリブロモ体になりやすい。ジアゾ化、Sandmeyer反応、加水分解の順でニトリルからカルボン酸へ進む。

フェノールのスルホン化ではpara位にスルホン酸基を一時的に導入し、Friedel--Craftsアルキル化で2,6位を選択的に埋める。最後の酸処理で脱スルホン化されるため、Oの分子式はC12_{12}H18_{18}Oであり、イソプロピル基は2個である。

試験で書くべきポイント

構造式を描く問題では、置換位置が採点の中心になる。文章答案で補う場合も、o/m/p、1,2,3などの番号、縮合構造式を明示して、同分異性体のどれかが曖昧にならないようにする。

芳香族化合物の構造決定と合成の途中式・最終答をPDFで見る

第6問 — 多段階有機合成と反応性

方針

第I部は全合成の各段階を、保護、還元、水素化、アシル化、脱保護という操作単位で読む。複雑な骨格に引きずられず、変化している官能基だけを見ると試薬選択が決まる。

根拠

Aは環化であり、メチルビニルケトン型の試薬を用いるRobinson環化が対応する。BとHはケトン保護なのでエチレングリコール酸触媒、CとIはアセタール脱保護なので酸性加水分解である。Dは二重結合の水素化、Eはケトンのヒドリド還元、Fはアルコールのアセチル化、Gは保護基の加水分解に対応する。

検算

IRは範囲で覚える。カルボニルはおおむね1700 cm−1^{-1}付近なので(c)、アルコールO-Hは幅広く3200--3600 cm−1^{-1}付近なので(f)である。

典型ミス

Diels--Alder反応の記述では、通常の電子需要型ではジエンに電子供与基、求ジエン体に電子求引基があると反応性が上がる。問題文の3はこの向きが逆である。またα\alpha-シアノアクリレートは水分でアニオン重合しやすく、カチオン重合ではない。

試験で書くべきポイント

立体選択性の説明では「混んでいない面から攻撃」とだけ書くより、基質のどちらか一方の面が縮環骨格やメチル基で遮蔽される、と具体的に書く。構造式を描く答案では、HBr処理の転位と硫酸処理の脱水を分けることが重要である。

多段階有機合成と反応性の途中式・最終答をPDFで見る

第7問 — 相転移・吸光・カルノーサイクル

方針

相平衡ではΔG=0\Delta G=0、可逆熱機関では等温過程と断熱過程を分ける、という基本に戻る。数値問題は単位をJ、K、molにそろえてから概算する。

根拠

100 ℃、1 atmは水の通常沸点なので、液体と気体の化学ポテンシャルが等しい。したがって蒸発は吸熱でΔH>0\Delta H>0だが、平衡条件からΔG=0\Delta G=0であり、ΔS=ΔH/T\Delta S=\Delta H/T が成立する。

検算

100 ℃から99 ℃へ下げると蒸気圧は下がるので、ΔP\Delta P は負でなければならない。大きさも1 Kの変化で数パーセント程度なので、10−210^{-2} atmの選択肢が自然である。

典型ミス

吸光度の対数は自然対数ではなく常用対数で定義される。微分方程式の積分では自然対数が出るため、最後に ln⁡10\ln 10 で割ってモル吸光係数へ吸収する。

試験で書くべきポイント

カルノーサイクルの仕事は、全過程の仕事を個別に足してもよいが、効率 η=1−Tc/Th\eta=1-T_c/T_h を使うと短い。qabq_{ab} が高温熱源から吸収する熱であることを明記する。

相転移・吸光・カルノーサイクルの途中式・最終答をPDFで見る

第8問 — NMRと結晶場理論

方針

NMRは、ゼーマン分裂で生じるエネルギー差を電磁波のエネルギー hνh\nu と等置するだけで数値が出る。文章穴埋めは、熱分布、歳差運動、緩和、FIDの流れとして読む。

根拠

問題文は ΔE=2μB0\Delta E=2\mu B_0 とし、μ=γhI/(2π)\mu=\gamma hI/(2\pi) を与えている。プロトンの I=1/2I=1/2 を代入すると、ΔE=γhB0/(2π)\Delta E=\gamma hB_0/(2\pi) となり、共鳴周波数では hh が消える。

検算

臨床用・分析用NMRで、プロトンのラーモア周波数はおよそ42.6 MHz/Tである。9.0 Tなら 42.6×9≃38342.6\times9\simeq383 MHzなので、約390 MHzという計算結果は妥当である。

典型ミス

エネルギー差を1粒子あたりで止めるか、molあたりにするかを混同しやすい。問2はJ mol−1^{-1}を求めているため、最後にアボガドロ数を掛ける必要がある。

試験で書くべきポイント

ヘモグロビンの錯体問題では、配位子の種類から詳細な電子移動論に踏み込みすぎない。設問の結晶場理論に従い、Fe(II)のd6^6、八面体、低スピン、t2g6t_{2g}^6、不対電子0個を簡潔につなげるのが最も安定する。

NMRと結晶場理論の途中式・最終答をPDFで見る

東京科学大 生命理工学系 専門科目 院試 過去問の収録5年度

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