東京科学大学 院試 過去問 解答例
東京科学大 生命理工学院 生命理工学系 生命理工学系 専門科目 2023年度 院試 過去問 解答例・解説(全8問)
全8問。化学1問・生物1問・微分積分・解析1問。テーマタグは1件(転位)。2022年度と共通のテーマは転位。
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- 解説8問/全8問(4,662字)
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- 途中式と最終答(最終答つき8問)
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東京科学大 生命理工学系 専門科目 2023年度 院試 過去問の出題内容(全8問)
この8問の分野は化学1問・生物1問・微分積分・解析1問です。
| 大問 | 分野 | 主題 | 解説の小見出し | 最終答 |
|---|---|---|---|---|
| 第1問 | — | 酵素反応速度とDNAポリメラーゼ | 根拠 / 検算・典型ミス | あり |
| 第2問 | — | 植物の貯蔵代謝と糖新生 | 根拠 / 検算・典型ミス | あり |
| 第3問 | 生物 | 真核生物mRNAの成熟と発現制御 | 根拠 / 検算・典型ミス | あり |
| 第4問 | 微分積分・解析 | 分泌経路と蛍光プローブ解析 | 根拠 / 検算・典型ミス | あり |
| 第5問 | — | 有機反応とエーテル誘導体 | 根拠 / 検算・典型ミス | あり |
| 第6問 | 化学 | 医薬品合成と有機化学の基礎 | 根拠 / 検算・典型ミス | あり |
| 第7問 | — | 逐次一次反応の速度式 | 根拠 / 検算・典型ミス | あり |
| 第8問 | — | 生成エンタルピーと内部エネルギー | 根拠 / 検算・典型ミス | あり |
この年度の解説には試験で書くべきポイント8件が付いています。
2023年度の出題テーマと、同じテーマを出した他大学・他年度
この年度は1問に1テーマが出ています。
| テーマ | この年度 | 全体の出題実績 | 他大学の直近出題 |
|---|---|---|---|
| 転位 | 第5問 | 7大学・42問 |
前年度(2022年度)との違い
- 大問数
- 2022年度 8問 → 2023年度 8問
- 両年度に出たテーマ
- 転位
第1問 — 酵素反応速度とDNAポリメラーゼ
方針
第1問は計算問題ではなく、短い記述で核心語を落とさないことが重要である。 は「最大速度そのもの」ではなく「最大速度の半分を与える基質濃度」である。 この区別を書けるかどうかで、酵素反応速度論の理解が伝わる。
根拠
ミカエリス・メンテン式に を代入すると となり、直ちに が得られる。正の協同性は、1個目の基質結合が以後の 結合を促進する現象なので、速度曲線はアロステリック酵素に典型的なシグモイド型 になる。
検算・典型ミス
「 が小さいほど反応速度が小さい」と書くのは誤りである。同じ なら、 が小さい酵素ほど低い で反応が進む。DNAポリメラーゼの fidelity では、校正活性だけでなく、活性部位で正しい塩基対を選ぶ段階も要因に 含めると答案が安定する。
試験で書くべきポイント
PCRの設問では「低 fidelity は悪い」と一般論で終わらせず、変異導入、進化分子 工学、タンパク質改変などの目的を具体例として書く。実験目的と酵素選択を結びつける 一文があると、単なる用語暗記ではない答案になる。
第2問 — 植物の貯蔵代謝と糖新生
方針
植物代謝の問題は、輸送形態、貯蔵形態、分解経路、糖新生の炭素収支を順に整理する。 語句選択では「葉で作られ師管を通る糖」はスクロース、「油脂の主成分」は トリアシルグリセロール、と即決できる。
根拠
脂肪酸は 酸化によりアセチルCoAへ分解される。アセチルCoAを糖へ戻すには、 クエン酸回路の脱炭酸で炭素を失わず、C4有機酸として取り出す必要がある。植物や 一部微生物はグリオキシル酸経路を持つため、油脂を発芽時の糖供給源として使える。
検算・典型ミス
哺乳類でも脂肪酸からエネルギーは得られるが、偶数鎖脂肪酸由来のアセチルCoAから グルコースを正味合成できない。クエン酸回路の中間体は一見糖新生に接続しているが、 アセチルCoA由来の2炭素が脱炭酸で失われるため、正味の炭素増加がない点を明記する。
試験で書くべきポイント
第5小問は「グリオキシル酸経路がないから」で終わると説明不足である。脱炭酸を迂回 する、C4ジカルボン酸を正味生成する、糖新生の炭素骨格を供給する、の3点を入れると 4〜5行の答案としてまとまる。
第3問 — 真核生物mRNAの成熟と発現制御
方針
各設問で指定語があるため、指定語を本文中に自然に入れつつ、機能まで一文添える。 特に I は「名称だけ」では足りず、どの末端・どの配列・何のためかを短く書く。
根拠
真核生物のmRNAは、転写された直後の前駆体のままでは翻訳に使われない。イントロン 除去、 末端保護、 末端形成を経て、核外輸送と翻訳に適した成熟mRNAになる。 転写促進では、遠位のエンハンサーがDNAループによりプロモーター近傍の転写開始装置 へ作用する点が中心である。
検算・典型ミス
ポリA尾部は「アデニンが1個付く」のではなく、多数のアデニン残基が連なる構造である。 キャップ構造は 末端ではなく 末端に付く。スプライシングではエキソンを 除去するのではなく、イントロンを除去してエキソンをつなぐ。
試験で書くべきポイント
mRNA半減期の意義は、単に「安定な方がよい」ではない。短寿命mRNAは素早い応答、 長寿命mRNAは恒常的発現に向く、という対比を書くと生理学的意義として十分な答案に なる。
第4問 — 分泌経路と蛍光プローブ解析
方針
この問題は、Vが「ERからGを経てPMへ向かう1方向の輸送プローブ」であると読めばよい。 阻害点より上流に蓄積し、下流には現れない、という保存則でグラフを決める。
根拠
化合物CはER滞留因子との結合を解除するだけで、分解は考えない条件である。したがって ER、G、PMの割合の総和は一定であり、どこかの輸送段階を止めると、その手前の区画に Vが蓄積する。FRAPでは蛍光分子そのものが再発光するのではなく、未退色分子の移動に より蛍光が回復する点が本質である。
検算・典型ミス
ERからGへの輸送阻害でGが一過的に上がる、と描くのは誤りである。阻害が化合物C添加と 同時なら、ERから出る経路が最初から止まっている。GからPMへの阻害では、PMが後から 増える曲線を描かない。
試験で書くべきポイント
第4小問はFRAP以外を求めているため、FRET、FLIP、光活性化蛍光タンパク質、単粒子追跡 などから一つ選ぶ。検出対象、蛍光シグナルが変わる原理、何が分かるかを3行で結ぶ。
第5問 — 有機反応とエーテル誘導体
方針
構造決定は「反応名」と「炭素数・不飽和度」を照合する。第I部は、Baeyer--Villiger 酸化、アルキン合成と水和、ジアゾカップリング、Claisen転位、ジチアンのアシルアニオン 等価体、オゾン分解が並んでいる。
根拠
Baeyer--Villiger酸化では、より移動しやすいシクロペンチル基が酸素側へ移り、加水分解 でアルコールになる。末端アルキンのヒドロホウ素化酸化は、エノールを経てアルデヒドを 与える。エポキシドは通常のエーテルより環ひずみが大きく、求核開環を受けやすい。
検算・典型ミス
エポキシドの塩基性開環では、より置換の少ない炭素を攻撃する。酸性開環では、プロトン化 により正電荷性が大きい、より置換の多い炭素が攻撃されやすい。両者の位置選択性を 逆に書くミスが多い。
試験で書くべきポイント
構造式問題では、名称だけでなく骨格式を書くのが本来の答案である。本解説の凝縮式を 答案用紙では骨格式へ直す。FとGは図の読み取りを伴うため、反応後の官能基 (チオアセタールの脱保護、オゾン分解でのジカルボニル化)から逆算して描く。
第6問 — 医薬品合成と有機化学の基礎
方針
合成スキームは、アセトフェノンからMannich塩基を作り、還元、塩素化、フェノキシドに よる置換、脱メチル化へ進む流れで読む。各試薬を単独知識として覚えるより、官能基の 変化に対応させる方が確実である。
根拠
Mannich反応では、カルボニル化合物の 炭素が、アミンとホルムアルデヒドから 生じたイミニウムイオンへ付加する。NaBH は通常ケトンをアルコールへ還元し、 SOCl はアルコールを塩化物へ変換する。BrCNと加水分解は第三級アミンの脱メチル化 に用いられる。
検算・典型ミス
化合物2の主鎖はプロパン-1-オンで、1位にフェニル基、3位にジメチルアミノ基がある。 NMRでは「カルボニルの隣だから常に最も低磁場」と決めつけず、酸素が直接結合した 炭素上の水素の強い脱遮蔽を考える。
試験で書くべきポイント
第II部は正誤判定なので、正しい番号だけでよいが、見直しでは反例を一つずつ確認する。 HBr付加、Birch還元、シクロペンタジエニルアニオン、C--H結合解離エネルギーは頻出の 組合せである。
第7問 — 逐次一次反応の速度式
方針
逐次一次反応では、Aを先に解き、その結果をBの微分方程式に代入する。Cは直接解くより、 保存則 を使う方が速い。
根拠
Bの式は線形微分方程式である。 に積分因子 を掛けると となり、 から解が得られる。
検算・典型ミス
になるかを確認する。得られた式では となるので初期条件を満たす。また で指数項が消え、 となるため、全量が最終生成物へ移る極限とも一致する。
試験で書くべきポイント
は から求める。 の式を知らなくても、この条件は と解釈できるが、最終的には指数関数の比を整理して対数を取る必要が ある。分母を とした場合は分子の対数も対応して反転させる。
第8問 — 生成エンタルピーと内部エネルギー
方針
熱化学方程式では、反応エンタルピーを「生成物の生成エンタルピーの和」から 「反応物の生成エンタルピーの和」を引いたものとして書く。完全気体の内部エネルギーは でエンタルピーとつなぐ。
根拠
標準生成エンタルピーは、標準状態の単体から1 molの物質を作る反応のエンタルピーである。 そのため 、、 の値は0である。 また完全気体1 molの温度変化では が成り立つ。
検算・典型ミス
Iの(1)は水が2 mol生成しているため、 をそのまま1 molあたりの値にしない。 IIIの2)では、反応の気体モル数変化 を入れる。式 から、今回は になる。
試験で書くべきポイント
温度補正では、各物質の熱容量を個別に書くより、反応熱容量 を先に定義してもよい。最後に での内部エネルギー変化を求めるため、 の項は を用いる。
東京科学大 生命理工学系 専門科目 院試 過去問の収録5年度
ホルモンと脂質代謝 / タンパク質分離とPCR / 転写・RNAプロセシング・翻訳
塩基配列・代謝調節・膜流動性 / 酸素発生・活性酸素・酸化的リン酸化 / がん遺伝子と遺伝性腫瘍
2023年度(このページ・全8問)
酵素反応速度とDNAポリメラーゼ / 植物の貯蔵代謝と糖新生 / 真核生物mRNAの成熟と発現制御
ペプチド配列決定とコイルドコイル / エピジェネティクスとゲノム編集 / 分泌経路とERAD
エネルギー代謝とシトクロムc / 膜電位と神経細胞 / DNA構造と生物分類