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北大 情報科学院 情報科学専攻 システム情報科学コース 専門科目 2025年度 院試 過去問 解答例・解説(全7問)

全7問の分野は電磁気学・回路2問、制御工学1問、力学1問です。固有値・固有ベクトル、伝達関数、調和振動子などが出ています。解説はすべて、途中式と最終答は大問1問ぶんを公開しています。残りは解答PDFに収録しています。問題本文は含みません。

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第1問 — 応用数学I

行和条件は右から e\mathbf ee を掛ける

この問題の中心は、行ごとの和を個別に追うのではなく、e\mathbf e を右から掛ける形に直すことである。AeA\mathbf e の第 ii 成分は AA の第 ii 行の成分和そのものなので、条件全体が Ae=eA\mathbf e=\mathbf e の一行で表せる。逆行列や転置行列に関する議論も、この形にするとほとんど機械的に処理できる。

転置行列では固有値が 1 であることを確認する

ATA^T の固有ベクトルが e\mathbf e であることだけでは、対応する固有値が 11 とは限らない。そこで Ae=eA\mathbf e=\mathbf e から得られるスカラー量 eTAe=n\mathbf e^T A\mathbf e=n と、ATe=λeA^T\mathbf e=\lambda\mathbf e から得られる eTAe=λn\mathbf e^T A\mathbf e=\lambda n を比較する。この一手を書かないと、ATe=eA^T\mathbf e=\mathbf e までは到達しない。

ポテンシャルは積分定数の依存変数を絞り込む

φx=P\varphi_x=P から積分した直後の ``定数'' は、xx に依存しない任意関数 h(y,z)h(y,z) である。次に φy=Q\varphi_y=Q で yy 依存を消し、最後に φz=R\varphi_z=R で zz 依存を消す。多変数のポテンシャル問題では、この任意関数を順に絞る過程を省かないことが重要である。

線積分の検算

得られたポテンシャルは ∇(x2+xycos⁡z)=(2x+ycos⁡z, xcos⁡z, −xysin⁡z) \nabla(x^2+xy\cos z) = (2x+y\cos z,\ x\cos z,\ -xy\sin z) となり、a=1a=1 のときのベクトル場と一致する。終点では cos⁡π=−1\cos\pi=-1 なので 1+2cos⁡π=−11+2\cos\pi=-1、始点では x=y=0x=y=0 により変化分は 00 である。符号ミスが起きやすいのは cos⁡π=−1\cos\pi=-1 の部分である。

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第2問 — 応用数学II

同次形では y/xy/xy/x を見る

2-1(a) は xx と yy が同じ次数で現れる形なので、y/xy/x を新しい未知関数にするのが自然である。y=vxy=vx と置いたあとに dy/dx=v+xdv/dxdy/dx=v+xdv/dx を入れると、vv の項が打ち消されて変数分離に落ちる。この打ち消しを確認できれば、計算の方針はほぼ決まる。

線形連立系は固有値の符号が解の増減を決める

2-1(b) では固有値が 11 と −2-2 なので、一つのモードは ete^t で増大し、もう一つのモードは e−2te^{-2t} で減衰する。固有ベクトルの定数倍は任意であるため、(2,−1)T(2,-1)^T を (−2,1)T(-2,1)^T としても同じ解空間を表す。

周期関数のラプラス変換は等比級数

ラプラス変換の積分を [0,p],[p,2p],…[0,p],[p,2p],\ldots に分けると、周期性で関数部分は同じになり、指数関数だけが e−pse^{-ps} 倍ずつ変わる。このため係数が等比級数になり、分母 1−e−ps1-e^{-ps} が現れる。収束条件としては通常 Re⁡s>0\operatorname{Re}s>0 を考えれば十分である。

フーリエ係数の偶奇を使って計算量を減らす

t2+tt^2+t は偶関数部分 t2t^2 と奇関数部分 tt に分かれる。余弦は偶関数、正弦は奇関数なので、ana_n には t2t^2 だけ、bnb_n には tt だけが効く。ここを見抜くと、不要な部分積分を半分に減らせる。最後に、この級数では定数項が a0a_0 であり a0/2a_0/2 ではない点にも注意する。

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第3問 — 情報学基礎

小問集合では表記の意味を先に確定する

A∩B‾A\cap\overline{B} のように補集合が入る問題では、補集合を取る全体集合を必ず確認する。ここでは U={1,…,10}U=\{1,\ldots,10\} の中で BB を補うので、3,93,9 は AA に入っていても除かれる。また、6 頂点の木の個数は「頂点を区別しない」と明記されているため、Cayley の公式 646^{4} ではなく、非同型な木の個数 66 を答える。

論理回路は最後に吸収律で短くする

中段の反転後の項は B+C‾‾=B‾C \overline{B+\overline C}=\overline B C である。下段に AB‾CA\overline B C が残っても、これは B‾C\overline B C に吸収される。したがって最終形は A‾B+B‾C\overline A B+\overline B C で十分である。NAND の二段構成では、各積項の否定を作り、最後の NAND で和に戻す、という流れを意識すると図にしやすい。

グラフ問題の検算

無向グラフでは辺が 1616 本なので、次数総和は握手補題により 2⋅16=322\cdot16=32 になる。次数表の合計も 3232 になっており、数え落としの検算になる。最小全域木は 11 頂点なので採用辺が 10 本になっていることを確認する。最大フローでは、値 1313 の実行可能フローと容量 1313 のカットを同時に示しているため、最大フロー最小カット定理により最適性まで保証できる。

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第4問 — 力学

摩擦は減衰係数ではなく定数外力として扱う

動摩擦は速度に比例する抵抗ではなく,大きさがほぼ一定で向きだけが速度と反対に変わる力である。そのため運動方程式は半周期ごとに右辺の符号が変わる。周期が 2πm/k2\pi\sqrt{m/k} のままなのは,摩擦が有効な平衡位置を ±μdmg/k\pm\mu_{\mathrm d}mg/k だけずらすだけで,ばね定数と質量による角振動数を変えないからである。

停止条件では静止摩擦を使う

振幅の減少量は動摩擦で決まるが,最後に止まるかどうかは静止摩擦で判定する。問題では最初に手を離したときを n=0n=0 とし,円板が一旦静止して運動の向きを変え,再び動き出すごとに nn を1増やす。したがって jj 回目の静止点での最大伸縮量は Aj=x0−2jμdmgk A_j=x_0-\frac{2j\mu_{\mathrm d}mg}{k} であり,完全停止する静止点は Aj≤μsmg/kA_j\le \mu_{\mathrm s}mg/k を初めて満たす jj である。この最後の静止点では再始動しないので,方向転換回数としての nn はその一つ前までの回数,すなわち j−1j-1 になる。

転がりでは有効質量が増える

転がりではばねの仕事が並進運動エネルギーだけでなく回転運動エネルギーにも入る。したがって有効質量は meff=m+Ia2 m_{\mathrm{eff}}=m+\frac{I}{a^2} となる。一様円板では I=ma2/2I=ma^2/2 なので meff=3m/2m_{\mathrm{eff}}=3m/2 であり,滑る場合より周期が 3/2\sqrt{3/2} 倍長くなる。

解答

1-1 滑りを伴うばね振動

右向きを xx の正方向とし,動摩擦力の大きさを Fd=μdmg F_{\mathrm d}=\mu_{\mathrm d}mg とおく。円板は回転しないので,並進運動だけを考えればよい。

  1. xx が減少する半周期では摩擦力は右向きであるから mx¨=−kx+μdmg,mx¨+kx=μdmg. m\ddot{x}=-kx+\mu_{\mathrm d}mg, \qquad m\ddot{x}+kx=\mu_{\mathrm d}mg. 逆に xx が増加する半周期では摩擦力は左向きであるから mx¨=−kx−μdmg,mx¨+kx=−μdmg. m\ddot{x}=-kx-\mu_{\mathrm d}mg, \qquad m\ddot{x}+kx=-\mu_{\mathrm d}mg. いずれも平衡位置が一定量だけずれた単振動であり,角振動数は ω1=km \omega_1=\sqrt{\frac{k}{m}} で変わらない。したがって振動している間の周期は T1=2πmk T_1=2\pi\sqrt{\frac{m}{k}} である。

  2. α=μdmgk \alpha=\frac{\mu_{\mathrm d}mg}{k} とおく。正の最大変位 AA から左向きに動く半周期では x(t)=α+(A−α)cos⁡ω1t x(t)=\alpha+(A-\alpha)\cos \omega_1 t であり,次に静止する時刻 t=π/ω1t=\pi/\omega_1 で x=2α−A. x=2\alpha-A. 符号を除いた最大伸縮量は A′=A−2α A' = A-2\alpha となる。よって半周期あたりの最大伸縮量の減少量は ΔA=2α=2μdmgk \Delta A=2\alpha=\frac{2\mu_{\mathrm d}mg}{k} である。

  3. 初期最大伸びを A0=x0A_0=x_0 とする。半周期ごとの最大伸縮量は Aj=x0−2jμdmgk(j=0,1,2,…) A_j=x_0-\frac{2j\mu_{\mathrm d}mg}{k} \qquad (j=0,1,2,\ldots) と減少する。ただし,静止した位置から再び動き出すには,ばね力が最大静止摩擦力を上回る必要がある。すなわち kAj>μsmg kA_j>\mu_{\mathrm s}mg の間だけ向きを変えて振動が続く。

    最初に Aj≤μsmgk A_j\le \frac{\mu_{\mathrm s}mg}{k} となった静止点では,静止摩擦がばね力を支えられるため,円板はそのまま停止し,再び動き出さない。したがって,実際に向きを変えて再始動した回数は nstop=max⁡{0, ⌈kx0−μsmg2μdmg⌉−1}. n_{\mathrm{stop}} =\max\left\{0,\, \left\lceil \frac{kx_0-\mu_{\mathrm s}mg}{2\mu_{\mathrm d}mg} \right\rceil-1 \right\}.

1-2 滑らない転がり

  1. 面密度が一様な円板の中心軸まわりの慣性モーメントは I=12ma2 I=\frac{1}{2}ma^2 である。

  2. 静止摩擦力を ff,円板の回転角を反時計回り正の θ\theta とする。滑らずに転がるので x=−aθ,x¨=−aθ¨. x=-a\theta,\qquad \ddot{x}=-a\ddot{\theta}. 並進と回転の運動方程式は mx¨=−kx+f,Iθ¨=af. m\ddot{x}=-kx+f, \qquad I\ddot{\theta}=af. 拘束条件から θ¨=−x¨/a\ddot{\theta}=-\ddot{x}/a であるため f=−Ia2x¨. f=-\frac{I}{a^2}\ddot{x}. これを並進運動方程式へ代入すると (m+Ia2)x¨+kx=0. \left(m+\frac{I}{a^2}\right)\ddot{x}+kx=0. I=ma2/2I=ma^2/2 を用いて 3m2x¨+kx=0 \frac{3m}{2}\ddot{x}+kx=0 となる。よって角振動数と周期は ω2=2k3m,T2=2π3m2k. \omega_2=\sqrt{\frac{2k}{3m}}, \qquad T_2=2\pi\sqrt{\frac{3m}{2k}}.

最終答

mx¨+kx=μdmg(x˙<0),mx¨+kx=−μdmg(x˙>0),T1=2πmk,ΔA=2μdmgk,nstop=max⁡{0,⌈kx0−μsmg2μdmg⌉−1},I=12ma2,(m+Ia2)x¨+kx=0,T2=2π3m2k. \begin{gathered} m\ddot{x}+kx=\mu_{\mathrm d}mg\quad(\dot{x}<0),\qquad m\ddot{x}+kx=-\mu_{\mathrm d}mg\quad(\dot{x}>0),\\ T_1=2\pi\sqrt{\frac{m}{k}},\qquad \Delta A=\frac{2\mu_{\mathrm d}mg}{k},\\ n_{\mathrm{stop}} =\max\left\{0,\left\lceil \frac{kx_0-\mu_{\mathrm s}mg}{2\mu_{\mathrm d}mg} \right\rceil-1\right\},\\ I=\frac{1}{2}ma^2,\qquad \left(m+\frac{I}{a^2}\right)\ddot{x}+kx=0,\qquad T_2=2\pi\sqrt{\frac{3m}{2k}}. \end{gathered}

第5問 — 電気回路

電流源を含む回路は節点法が安定

直流回路では中央の電流源が左右の分圧を直接結びつけている。メッシュ電流法でも解けるが,電流源の扱いで符号を間違えやすい。節点法なら,電流源が片方の節点に流入し,もう片方から流出することを式に入れるだけでよい。

交流回路は電圧の大きさだけで角度を復元する

直列抵抗の電圧は電流と同相なので,既知の三つの電圧実効値から余弦定理で負荷の力率を求められる。ただし,この情報だけでは負荷が遅れ力率か進み力率かまでは一意に決まらない。設問で単に力率を問う場合は cos⁡ϕ\cos\phi の大きさを答えればよい。

キャパシタの最終値は開放電圧で決まる

一次の RC 過渡応答は 最終値+{初期値−最終値}e−t/τ \text{最終値}+\{\text{初期値}-\text{最終値}\}e^{-t/\tau} の形になる。端子電圧を変化させない条件は,初期値を最終値に一致させることに尽きる。ここで時定数にはキャパシタから見た等価抵抗 r∥Rr\parallel R を使う点が重要である。

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第6問 — 電磁気学

円筒対称では法則の選び方で計算量が決まる

電荷が一様な円柱ではガウス面も同軸円筒に取ると,電界は半径方向だけになり,面積分が直ちに Er2πrℓE_r2\pi r\ell になる。軸方向電流による磁界も同じく円筒対称であり,アンペール経路を同心円に取るのが最短である。

周方向電流はソレノイド型の磁界を作る

周方向電流は,断面で見ると多数の円形電流が zz 方向に積み重なったものと考えられる。そのため磁界は周方向ではなく zz 方向を向く。導体の外側で 00,内側の空洞で一定,導体内部で線形に変化する形は,厚みのあるソレノイドの磁界分布として理解できる。

誘導電界は中心からの距離に比例する

3-3 では,鎖交磁束が領域幅 2x2x に比例するため,ファラデーの法則から誘導電界も xx に比例する。したがってジュール損失では x2x^2 を厚さ方向に平均することになり,∫x2 dx\int x^2\,dx から w2w^2 依存性が現れる。周波数依存性は時間微分の ω=2πf\omega=2\pi f から生じる。

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第7問 — 線形制御理論

位相条件は複素数の偏角差に直す

4-1 では,分子と分母をそれぞれ複素数として見ればよい。分子の偏角は tan⁡−1(a/b)\tan^{-1}(a/b),分母の偏角は tan⁡−1c\tan^{-1}c である。遅れ位相は分母側の偏角が大きいことを意味するため,符号を逆にしないことが重要である。

可制御正準形は伝達関数から直接作れる

分母が s2+s+6s^2+s+6,分子が s+4s+4 なので,可制御正準形は Ac=[01−6−1],bc=[01],cc=[41] A_c=\begin{bmatrix}0&1\\-6&-1\end{bmatrix}, \quad b_c=\begin{bmatrix}0\\1\end{bmatrix}, \quad c_c=\begin{bmatrix}4&1\end{bmatrix} と置けばよい。正準形を求める問題では,相似変換そのものよりも,同じ伝達関数を実現していることを確認するのが採点上の要点になる。

ゲイン余裕は位相交差点で評価する

ゲイン余裕は閉ループ特性方程式そのものからではなく,開ループ伝達関数のボード線図上で読む量である。今回のように KK が単なる実ゲインのとき,位相交差周波数は KK に依存しない。まず K=1K=1 の大きさを求め,最後に KK を掛けると計算が短い。

LQRの符号は入力の定義で決まる

標準形では最適入力は u=−R−1b⊤Sxu=-R^{-1}b^\top Sx である。本問では R=1R=1,かつフィードバックを u=Fxu=Fx と書いているため,答えるべきゲインは F=−b⊤SF=-b^\top S である。正の [3 1][3\ 1] ではなく [−3 −1][-3\ -1] になる点に注意する。

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年度別の解答例(2年度)

  • 2026年度(全7問)

    応用数学I / 応用数学II / 情報学基礎

  • 2025年度(このページ・全7問)

    応用数学I / 応用数学II / 情報学基礎

2025年度の出題内容

全7問

この7問の分野は電磁気学・回路2問・制御工学1問・力学1問です。

大問分野主題解説の小見出し最終答
第1問—応用数学I行和条件は右から ee を掛ける / 転置行列では固有値が 1 であることを確認するあり
第2問—応用数学II同次形では y/xy/x を見る / 線形連立系は固有値の符号が解の増減を決めるあり
第3問—情報学基礎小問集合では表記の意味を先に確定する / 論理回路は最後に吸収律で短くするあり
第4問力学—摩擦は減衰係数ではなく定数外力として扱う / 停止条件では静止摩擦を使うあり
第5問電磁気学・回路電気回路電流源を含む回路は節点法が安定 / 交流回路は電圧の大きさだけで角度を復元するあり
第6問電磁気学・回路電磁気学円筒対称では法則の選び方で計算量が決まる / 周方向電流はソレノイド型の磁界を作るあり
第7問制御工学線形制御理論位相条件は複素数の偏角差に直す / 可制御正準形は伝達関数から直接作れるあり

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9テーマ

北海道大学の公式過去問

公開年度範囲
2025〜2026年度(専門科目1・2。2025年度分は公式過年度ページで確認)
公式の解答例
非公開(問題冊子のみ)
英語の扱い
2027年4月修士はTOEIC L&R・TOEFL iBT・IELTS Academicの指定スコアで評価。IP/ITP不可、TOEFL Special Home Edition可、MyBest不可。
院試hubの最終確認
2026-10-15
北海道大学の公式過去問PDF