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東京大学 院試 過去問 解答例

東大 工学系研究科 応用化学専攻 一般教育科目 化学 2023年度 院試 解答例・解説

東京大学 工学系研究科 応用化学専攻 一般教育科目 化学 2023年度の院試 過去問について、設問ごとの解法方針と確認点を解説。全3問収録の解答・解説PDFと併用できます。問題本文は含みません。

最終更新:

設問ごとの解法方針と確認点を公開しています。

続きの途中式・最終答は解答・解説PDFに収録しています。問題本文は含まれません。

1 — 物理化学

G--P 図の読み方

GG の圧力依存性は相の安定性だけでなく傾きから相を判定する問題である。 定温で dG=VdPdG=VdP と書けることを示せば,図の細部を暗記していなくても解ける。 気体では理想気体なら GGlnP\ln P 的に増えるため,概略図では傾きが大きく,圧力上昇とともに傾きが小さく見える。

Gibbs--Helmholtz 式の失点しやすい点

G/T=S\partial G/\partial T=-S を使った後に,G=HTSG=H-TSH=G+TSH=G+TS と変形する一行が必要である。 S/TG/T2-S/T-G/T^2 で止めると,求める形まで到達していない。 定圧条件であることも添えると答案として安定する。

van't Hoff 式と符号

ΔG/T=RlnK\Delta G^\circ/T=-R\ln K としてから微分すると符号を間違えにくい。 吸熱反応では ΔH>0\Delta H^\circ>0 なので,温度を上げると KK が増える。 第4小問で lnK\ln K1.9-1.9 から大きく正に変わることは,この物理的予想と一致している。

Lineweaver--Burk プロット

[数式] は直線の式 y=ax+by=ax+b そのものである。単位も確認すると, 切片 1/Vmax1/V_{\max} の単位は μmol1Ls\mathrm{\mu mol^{-1}\,L\,s}, 傾き Km/VmaxK_m/V_{\max} の単位は秒であり,表から得た 60 s60\ \mathrm{s} と整合する。

Arrhenius 式の確認

頻度因子 AA が同じであるため,速度定数を等置すると指数部だけを比較できる。 活性化エネルギーを 10 分の 1 にする効果を温度だけで補うには,絶対温度を 10 倍にする必要がある。 摂氏温度を 10 倍してはいけない。Arrhenius 式の温度は必ず K で扱う。

続きの解答(途中式・最終答)はPDFに収録

2 — 無機化学

結晶場分裂の符号

正八面体では配位子軸上を向く dx2y2,dz2d_{x^2-y^2},d_{z^2} が強く反発して高くなる。 正四面体では配位子が軸上にないため分裂の上下が八面体と異なり,ee が低く,t2t_2 が高い。 また一般に Δt\Delta_tΔo\Delta_o より小さいが,本問では大小関係より分裂の向きと縮退度を書くことが重要である。

トランス効果の使い方

トランス効果は熱力学的な安定性ではなく置換速度を支配する効果である。 白金(II)の平面四配位錯体では,次に抜ける塩化物が「どの配位子のトランス位にあるか」を見る。 [数式] のような強いトランス効果配位子を早く入れると,その反対側を選択的に置換できる。

電極電位は電子数で重み付けする

複数の半反応を合成するとき,電極電位 EE^\circ は示量量ではない。 足し合わせるのは ΔG=nFE\Delta G^\circ=-nFE^\circ である。 したがって 0.560.56 V と 2.262.26 V を単純平均してはいけない。 今回は 1 電子過程と 2 電子過程を足すので,(1E1+2E2)/3(1E_1+2E_2)/3 となる。

不均化の判定

[数式] が片方で還元されて [数式],もう片方で酸化されて [数式] になると考える。 還元電位の大きい組を還元側に置き,もう一方を逆向きにして Ecell>0E^\circ_{\mathrm{cell}}>0 なら不均化は自発的である。

Ellingham 図の答案の書き方

線の上下だけでなく,反応式を組み合わせて ΔGtotal\Delta G^\circ_{\mathrm{total}} を作ると説明が明確になる。 金属酸化物の生成線より炭素酸化の線が低い温度領域では,炭素が酸素を受け取る反応の方が Gibbs エネルギー的に有利であり,酸化物の還元が可能になる。

続きの解答(途中式・最終答)はPDFに収録

3 — 有機化学

NMR の順序

化学シフトは「電子密度が低いほど低磁場,大きい ppm」と考える。 ベンゼン環プロトンは環電流の反遮蔽効果を受けるため 7 ppm 付近に現れる。 [数式] は酸素の誘起効果で 3 ppm 台,単純アルカンは 1 ppm 前後である。

イミダゾールの二つの窒素

五員環芳香族では,孤立電子対が芳香族性に参加しているかを区別する。 ピロール型窒素の孤立電子対を塩基として使うと芳香族性を壊すため,電子対は反応に使いにくい。 ピリジン型窒素の孤立電子対は芳香族 π\pi 系の外にあるので,より電子豊富な部位として扱う。

酸性度は共役塩基の安定性で比べる

1,3-ジカルボニルの中央水素は,脱プロトン化後に二つのカルボニルへ負電荷を分散できる。 酸塩化物やエステルの α\alpha 位水素もエノラートを作れるが,安定化の程度は 1,3-ジカルボニルに及ばない。 アルカンの C--H は,負電荷を受け止める官能基がないため著しく酸性が低い。

芳香族求電子置換の反応性

反応性は配向性だけでなく活性化・不活性化の強さで決まる。 [数式] とアルキル基は活性化,ハロゲンはオルト・パラ配向性だが全体として不活性化, [数式][数式] は強い不活性化基である。 置換基が二つある場合は,不活性化効果が重なると反応性がさらに下がる。

Friedel--Crafts 合成の典型ミス

直鎖アルキル基を Friedel--Crafts アルキル化で直接入れようとすると,転位と多置換が問題になる。 直鎖アルキルベンゼンを選択的に作る定石は,まずアシル化で [数式] を導入し,その後にカルボニルをメチレンへ還元する方法である。 この経路なら炭素骨格の転位を避けられる。

続きの解答(途中式・最終答)はPDFに収録

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