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東京大学 院試 過去問 解答例

東大 工学系研究科 応用化学専攻 一般教育科目 化学 2025年度 院試 解答例・解説

東京大学 工学系研究科 応用化学専攻 一般教育科目 化学 2025年度の院試 過去問について、設問ごとの解法方針と確認点を解説。全3問収録の解答・解説PDFと併用できます。問題本文は含みません。

最終更新:

設問ごとの解法方針と確認点を公開しています。

続きの途中式・最終答は解答・解説PDFに収録しています。問題本文は含まれません。

1 — 物理化学

方針

第I部は「Raoult 則を入れてから温度微分する」ことが最短である。 問題文中の ΔmixG\Delta_{\mathrm{mix}}G のまま微分しようとすると, pi/pip_i/p_i^{*} の温度依存性まで考えたくなるが,この設問では理想溶液として Raoult 則を用いるのが本筋である。組成を固定した温度微分なので, xB,xTx_{\mathrm{B}},x_{\mathrm{T}} は定数として扱う。

検算

0<x<10<x<1 では lnx<0\ln x<0 である。したがって xBlnxB+xTlnxT<0 x_{\mathrm{B}}\ln x_{\mathrm{B}}+x_{\mathrm{T}}\ln x_{\mathrm{T}}<0 となり,ΔmixS>0\Delta_{\mathrm{mix}}S>0 である。混合で乱雑さが増えるという 物理的予想と一致する。また理想溶液の混合エンタルピーが 0 になることも, 同種・異種相互作用が等しいというモデルの帰結として自然である。

典型ミス

分圧が等しい条件を xB=xTx_{\mathrm{B}}=x_{\mathrm{T}} としてはいけない。純液体蒸気圧が ベンゼンとトルエンで異なるため,等しいのは pBxB=pTxT p_{\mathrm{B}}^{*}x_{\mathrm{B}}=p_{\mathrm{T}}^{*}x_{\mathrm{T}} である。また,逐次反応では B の生成項と消費項を両方書く必要がある。 d[B]/dt=k1[A]d[\mathrm{B}]/dt=k_1[\mathrm{A}] だけでは,中間体 B の蓄積と減衰を 表せない。

試験で書くべきポイント

逐次反応のグラフ選択では,式だけでなく「k2k_2 が大きいほど B が速く消費される」 という言葉を添えると答案が強くなる。さらに tmax=ln(k1/k2)k1k2 t_{\max}=\frac{\ln(k_1/k_2)}{k_1-k_2} を示しておけば,ピークが早くなる判断も式から説明できる。選択肢のラベルだけを 書くより,ピーク高さとピーク時刻の変化を一文で述べる方が部分点を失いにくい。

続きの解答(途中式・最終答)はPDFに収録

2 — 無機化学

錯体異性体の数え方

二座配位子を先に固定してから,残りの単座配位子を配置すると重複を避けやすい。 phen\mathrm{phen} の 2 つの donor 原子は隣接位置にしか入れないので,残る 4 座に Cl\mathrm{Cl}NH3\mathrm{NH_3} を 2 個ずつ置く問題になる。ここで 「Cl\mathrm{Cl} が trans」「NH3\mathrm{NH_3} が trans」「どちらも trans でない」 をまず区別する。どちらも trans でない場合だけ,鏡像関係の 2 種が残る。 この最後の一対を落とすのが典型的な失点である。

高スピンと低スピン

どちらの Cr 錯体も Cr(II) で d4d^4 である点は同じである。差が出るのは配位子場の 強さである。弱場では Hund 則に従って ege_g にも 1 個入るため t2g3eg1t_{2g}^{3}e_g^{1},強場では対形成してでも低い t2gt_{2g} に入るため t2g4t_{2g}^{4} となる。配位子場安定化エネルギーだけを聞かれているので, 対形成エネルギーを勝手に足さないことも重要である。

Born--Haber サイクルの符号

格子エンタルピーを解離方向で正に定義しているため,気体イオンから固体を作る段階は ΔLH-\Delta_{\mathrm{L}}H^\circ と書く。ここを逆符号にすると CsCl の値が負になり, 定義と矛盾する。計算後に 昇華+イオン化+解離+電子付加=222 kJmol1 \text{昇華}+\text{イオン化}+\text{解離}+\text{電子付加} =222\ \mathrm{kJ\,mol^{-1}} であり,強く安定な結晶形成によって最終的に 433 kJmol1-433\ \mathrm{kJ\,mol^{-1}} まで下がる, というエネルギーの流れを確認すると符号ミスに気づきやすい。

試験で書くべきポイント

格子エンタルピーの設問では,数値だけでなく状態記号を含む熱化学方程式を書くことが 要求されやすい。特に [数式] の解離は CsCl では半分,[数式] では 1 mol 分を使う。第2イオン化エンタルピーを入れるかどうかも式量で決まるので, まず生成反応の化学量論を書いてからサイクルを作るのが安全である。

続きの解答(途中式・最終答)はPDFに収録

3 — 有機化学

酸化度の数え方

有機化合物中の炭素酸化度は,形式電荷ではなく結合相手の電気陰性度で機械的に数える。 炭素同士の単結合・二重結合・三重結合はいずれも 0 と数えるので,炭素だけに結合した アルキン炭素は酸化度 0 である。カルボニル炭素は [数式] だけで +2+2 になり, アミドではさらに [数式]+1+1 を与えるため,最も酸化度が高い。

Wittig 反応の立体選択性

安定化 ylide は熱力学的に安定な EE-アルケンを与えやすく,非安定化 ylide は 速度論的に ZZ-アルケンを与えやすい。bombykol の二重結合配置はこの組合せで 作り分けている。最終段階の [数式] はエステルを一級アルコールに還元するが, 通常の条件では C=C の E/ZE/Z 配置は変えない。したがって D の配置がそのまま bombykol の配置になる。

合成経路の狙い

E から直接 Grignard 試薬を作ろうとすると,分子内または分子間でケトンへ反応して 混合物になりやすい。先にケトンをアセタールとして保護してから末端ブロミドを 有機金属化し,DMF でアルデヒドへ変換するのが要点である。次に過剰アセトンを 用いると,アセトン側のエノラートが主に求核剤として働き,目的の交差アルドール付加を 進めやすい。

NMR の検算

pp-tert-butyltoluene は [数式] なので,炭素数は 6+1+4=116+1+4=11,水素数は 4+3+9=164+3+9=16 で分子式に一致する。 para 二置換ベンゼンなら芳香族プロトンは 2H+2H に分かれ,tert-butyl 基の 9H は 隣接プロトンを持たない一重線になりやすい。積分比,分裂,化学シフトの三つが 同時に合うため,この構造に確定できる。

典型ミス

NMR の「低磁場」と「高磁場」は化学シフトの大小と混同しやすい。 低磁場は大きい ppm,高磁場は小さい ppm である。また,水素結合は遮蔽ではなく 脱遮蔽を強めるので,水素結合プロトンは低磁場側へ移動する。構造決定では 9H 一重線を isopropyl 基と誤読しないことも重要である。isopropyl 基なら 6H の二重線と 1H の多重線が現れるはずで,9H 一重線とは合わない。

続きの解答(途中式・最終答)はPDFに収録

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