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北大 工学院 専門科目(材料科学専攻) 2025年度 院試 過去問 解答例・解説(解説12項目)

解説12項目の分野は量子力学2項目です。結晶構造、転位、固有値・固有ベクトルなどが出ています。解説はすべて、途中式と最終答は大問1問ぶんを公開しています。PDFの収録範囲は商品ページで確認できます。原題の条件だけでは答えが一つに決まらないため、確定答案を収録していない箇所が1項目あります。各項目に対象の小問と収録範囲を記載しています。問題本文は含みません。

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A 設問1 — 二元状態図の不変反応と冷却組織

二元状態図の不変反応は、定圧の相律と冷却方向の反応式を組み合わせて読む。全体組成を固定した経路をたどり、初晶と初析を区別する。最終相の割合は同じ温度の共役組成を使うレバー則で確かめる。

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A 設問2 — 燃料電池の自由エネルギーと効率

燃料電池の最大電気仕事は、反応エンタルピー全体とは異なる。定温・定圧の自由エネルギー低下と電子移動量を対応させると、可逆起電力が求まる。実際の効率は生成水量から電荷と電気仕事を計算して比較する。

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A 設問3 — 炭酸塩分解・融解・水酸化物沈殿

炭酸塩分解は反応方向を逆にした標準自由エネルギーとCO2分圧、融解は同じ酸化反応の相による差を使う。水酸化物の沈殿ではpHを水素イオン活量の対数として扱い、平衡境界と除去する側を分ける。

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B 設問1 — 量子数と孤立原子の電子配置

量子数の許される値を数えると、各副殻の軌道数と電子収容数が決まる。多電子原子では遮蔽と軌道の浸透でエネルギーが変わる。フントの規則と排他原理を使い、孤立原子の電子総数と不対電子を確認する。

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B 設問2 — 固体比熱の量子論とデバイ模型

問(1) アインシュタインとデバイの比熱

量子化した調和振動の励起エネルギーは ℏω\hbar\omega、熱平衡の平均フォノン数は nˉ(ω)=1eℏω/(kBT)−1 \bar n(\omega)=\frac1{e^{\hbar\omega/(k_BT)}-1} である。温度が低くなり kBT≪ℏωk_BT\ll\hbar\omega となると、その振動を励起しにくくなる。古典的等分配則が低温でも一定の比熱を与えるのに対し、量子論では比熱が0へ近づく。

アインシュタイン模型は独立振動子の振動数を1つにそろえるので、低温の比熱は指数的に小さくなる。デバイ模型では低周波の連成音響モードが連続的に存在し、その状態密度が ω2\omega^2 に比例するため T3T^3 則を得る。

フォノン数は保存されないので、通常の平衡分布に粒子数保存のための化学ポテンシャルを入れない。電子と同じFermi分布を使うと、振動の統計を取り違える。

問(2) 0 Kから室温までの比熱の図

高温では各調和振動の運動エネルギーと位置エネルギーに、それぞれ kBT/2k_BT/2 が割り当てられる。原子1個につき3方向の振動があるので、1 molでは U≃3RTU\simeq3RT、従って CV,m=dU/dT≃3RC_{V,\mathrm m}=dU/dT\simeq3R となる。

低温では全てのモードが励起されるわけではない。励起可能な周波数の目安 ω≲kBT/ℏ\omega\lesssim k_BT/\hbar まで、状態密度 ω2\omega^2 を積分したモード数は T3T^3 に比例する。この数え上げが、低温の比熱の立ち上がりの根拠である。

0 Kからいきなり 3R3R の水平線を引くのは古典模型の低温破綻を残している。また横軸の℃で0を通す図では、絶対零度の意味を取り違える。室温は物質によらず必ず飽和する点というわけでもない。

問(3) デバイの遮断角振動数

NN 原子は3次元で 3N3N 個の振動自由度をもつ。連続体の音波の状態密度を全ての周波数へ無制限に延ばすと無限個のモードになるため、原子数に対応する有限の総数になるよう上限 ωD\omega_D を設ける。遮断は個々の原子の振動数が全て ωD\omega_D という意味ではない。

長波長近似で縦波1種類、横波2種類の速度を vl,vtv_l,v_t とした3次元の通常の状態数計算は、波数空間の球殻 4πk2dk4\pi k^2dk と状態当たり体積 (2π)3/V(2\pi)^3/V から、係数 V(1/vl3+2/vt3)/(2π2)V(1/v_l^3+2/v_t^3)/(2\pi^2) を与える。一方、原題の印字は分母 2π2\pi の式と、それを AA と定義した式である。この設問では定義された AA に対して状態数を合わせるので、無断で π2\pi^2 へ置き換えない。

得た式を AωD3/3A\omega_D^3/3 へ戻すと厳密に 3N3N になる。因子3を忘れて (3N/A)1/3(3N/A)^{1/3} とすれば、全状態数が NN にしかならず、3方向の振動自由度を落とす。

問(4) デバイ比熱の積分表示

原積分の中で ∂∂Tℏωeℏω/(kBT)−1=(ℏω)2kBT2eℏω/(kBT)(eℏω/(kBT)−1)2 \frac{\partial}{\partial T} \frac{\hbar\omega}{e^{\hbar\omega/(k_BT)}-1} =\frac{(\hbar\omega)^2}{k_BT^2} \frac{e^{\hbar\omega/(k_BT)}}{(e^{\hbar\omega/(k_BT)}-1)^2} と微分し、状態密度を掛けて積分する。ここでは元の周波数上限 ωD\omega_D が一定なので、上限の微分は不要である。微分後に xx へ置換すると上の比熱式になる。先に UU の積分を xx へ置換してから微分する場合は、上限 ΘD/T\Theta_D/T の変化を含めなければならない。

高温では積分中の因子は x2x^2 に近づくので、積分は (ΘD/T)3/3(\Theta_D/T)^3/3、比熱は 3R3R となる。低温では上限を無限大へ延ばし、 ∫0∞x4ex(ex−1)2dx=4π415 \int_0^\infty\frac{x^4e^x}{(e^x-1)^2}dx=\frac{4\pi^4}{15} より CV,m≃(12π4/5)R(T/ΘD)3C_{V,\mathrm m}\simeq(12\pi^4/5)R(T/\Theta_D)^3 を得る。この積分値は ex/(ex−1)2=∑n≥1ne−nxe^x/(e^x-1)^2=\sum_{n\geq1}ne^{-nx} を項別積分し、∑n−4=π4/90\sum n^{-4}=\pi^4/90 を使って確かめられる。

零点エネルギーを加えても温度に依存しないため比熱への寄与はない。振動エネルギーそのものを CVC_V としてしまうと単位に K−1\mathrm K^{-1} がなくなり、高温でも 3RT3RT という誤った比熱になる。

解答

問(1) アインシュタインとデバイの比熱

アインシュタイン模型は全原子の振動数を同じとし、デバイ模型は連成した長波長の振動も含める。

問(2) 0 Kから室温までの比熱の図

横軸を絶対温度、縦軸を定積モル比熱とする。低温で0から T3T^3 に比例して立ち上がり、十分高温ではDulong--Petitの 3R3R に近づく。

絶対零度で0から始まり、低温で温度の3乗に比例し、高温で定積モル比熱3Rへ近づく模式図

室温で高温極限に十分近いかは、材料のデバイ温度との比による。

問(3) デバイの遮断角振動数

原題が定義する状態密度 D(ω)=Aω2D(\omega)=A\omega^2 を用い、全状態数を 3N3N に合わせる。 ∫0ωDD(ω) dω=AωD33=3N. \int_0^{\omega_D}D(\omega)\,d\omega =\frac{A\omega_D^3}{3}=3N.

ここで AA は原題で明示された式のまま用いる。

問(4) デバイ比熱の積分表示

1 molの内部エネルギーの原式を温度で微分する。x=ℏω/(kBT)x=\hbar\omega/(k_BT)、ΘD=ℏωD/kB\Theta_D=\hbar\omega_D/k_B、R=NAkBR=N_Ak_B と置けば、

ωD\omega_D は定体積の模型では温度によらないものとして微分している。

最終答

問(1) アインシュタインとデバイの比熱

(あ) 0、(い) アインシュタイン、(う) フォノン、(え) Bose--Einstein分布、(お) 絶対温度の3乗 T3T^3。

問(3) デバイの遮断角振動数

ωD=(9NA)1/3\displaystyle\omega_D=\left(\frac{9N}{A}\right)^{1/3}。

問(4) デバイ比熱の積分表示

CV,m=9R(TΘD)3∫0ΘD/Tx4ex(ex−1)2 dx\displaystyle C_{V,\mathrm m} =9R\left(\frac{T}{\Theta_D}\right)^3 \int_0^{\Theta_D/T} \frac{x^4e^x}{(e^x-1)^2}\,dx。

B 設問3 — 結晶幾何・空孔・相互拡散

結晶面は軸切片の逆数、面角は法線の内積、面積は外積から求める。空孔濃度は絶対温度を使う指数比で比較する。相互拡散と真正拡散では観測する座標系を区別し、有限時間の平均速度を使う近似も明記する。

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C 設問1 — 伝熱と一様発熱球の熱収支

一様発熱する球の温度は、体積に比例する発熱と表面積に比例する放熱の収支で決まる。過渡式には熱容量と初期条件を含め、定常温度と初期の温度変化で検算する。内部を一様温度とできる条件も確認する。

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C 設問2 — 水電解の電位と異種金属接触

一部の確定答案なし

原題には銅イオン活量の値がないため、その値に対応する厳密な電圧の確定値は収録していません。標準近似の0.52V、活量に依存する一般式、半反応と他の設問の解答を収録しています。

水電解の電位は、半反応の電子数と水素イオン活量・水素分圧のNernst項から求める。銅電極の標準近似と未指定活量への依存を分け、鉄と白金の接触では酸化する場所と水素を生む場所を区別する。

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C 設問3 — 硫化鉄の焙焼とポテンシャル図

硫化物の焙焼を分圧の図で追うには、各反応の平衡定数を酸素・硫黄の対数分圧の直線へ変換する。固相活量を落とさず交点を計算し、SO2分圧一定の経路がどの安定領域を通るかを調べる。

硫化鉄の焙焼とポテンシャル図の途中式・最終答をPDFで見る

D 設問1 — 結晶粒径と降伏応力の温度依存

結晶粒の微細化は粒界を増やし、常温では転位の伝達に必要な応力を高める。転位堆積の模型から粒径依存を導き、高温で粒界が変形経路となる場合と区別する。温度比較には絶対温度を用いる。

結晶粒径と降伏応力の温度依存の途中式・最終答をPDFで見る

D 設問2 — TTT線図と鋼の変態

TTT線図は、急冷後に一定温度へ保持した時間と変態率を表す。対数時間軸で開始・終了を読み、核生成と成長の競合からnoseを説明する。拡散変態、マルテンサイトの方位関係、焼戻しの経路も分けて考える。

TTT線図と鋼の変態の途中式・最終答をPDFで見る

D 設問3 — 圧縮加工と圧延のかみ込み

圧延では板厚が減るため、体積保存に従って出口速度が増す。ロールとの相対速度から入口・出口の摩擦方向を決め、入口での法線力と摩擦力を分解してかみ込み条件を求める。内部空隙の閉鎖には変形の深さも関係する。

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年度別の解答例(2年度)

  • 2026年度(解説12項目)

    酸化物の安定性と水素還元 / 熱容量から求める反応の自由エネルギー / 全率固溶体と正則溶体の自由エネルギー

  • 2025年度(このページ・解説12項目)

    二元状態図の不変反応と冷却組織 / 燃料電池の自由エネルギーと効率 / 炭酸塩分解・融解・水酸化物沈殿

2025年度の出題内容

解説12項目

この12問の分野は量子力学2問です。

大問分野主題解説の小見出し最終答
A 設問1—二元状態図の不変反応と冷却組織—あり
A 設問2—燃料電池の自由エネルギーと効率—あり
A 設問3—炭酸塩分解・融解・水酸化物沈殿—あり
B 設問1量子力学量子数と孤立原子の電子配置—あり
B 設問2量子力学固体比熱の量子論とデバイ模型—あり
B 設問3—結晶幾何・空孔・相互拡散—あり
C 設問1—伝熱と一様発熱球の熱収支—あり
C 設問2—水電解の電位と異種金属接触—一部の確定答案なし
C 設問3—硫化鉄の焙焼とポテンシャル図—あり
D 設問1—結晶粒径と降伏応力の温度依存—あり
D 設問2—TTT線図と鋼の変態—あり
D 設問3—圧縮加工と圧延のかみ込み—あり

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