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神戸大学経済学研究科・経済理論の院試過去問|ミクロ計算とマクロ論述
神戸大学経済学研究科の経済理論を2024〜2026年度Ⅰ期・Ⅱ期の6回分で分析。4問とも必答で、第1・2問のミクロと第3・4問のマクロが100点ずつです。論述の組み立て方、失点しやすい設問、無料で読める各回第1問の解答を案内します。
最終更新: 2026/10/28
神戸大学大学院経済学研究科(博士課程前期課程)の一般入試で、専門科目に経済理論を選ぶ人に向けて、2024〜2026年度のⅠ期・Ⅱ期、計6回・24問の過去問を分析しました。経済理論は毎回4問すべてに答える形式で、6回とも第1問と第2問がミクロ経済学(ゲーム理論・公共経済学を含む)で合計100点、第3問と第4問がマクロ経済学(金融・国際金融を含む)で合計100点でした。ミクロは需要や均衡を文字式・分数・根号のまま最後まで求める計算問題、マクロは式を使いながら文章で説明し評価する問題が中心です。マクロでは50点を1問の論述に充てる出題が5問ありました。
問題冊子は研究科の博士課程前期課程の入試ページで年度・期ごとに公開されていますが、解答例は載っていません。院試Hubは6回それぞれの第1問(いずれもミクロ)の解答を無料で公開し、24問すべての解答を解説PDFにまとめています。この記事では、2027年4月入学の要項で確認した試験の条件、回ごとの配点と出題、論述の組み立て方、失点しやすい設問、練習の進め方を順に説明します。
経済理論は出願時に選ぶ1科目。90分で4問すべてに答える
2027年4月入学・一般入試Ⅰ期の募集要項(8〜9ページ)では、専門科目を経済理論・経済史・統計学から出願時に1科目選び、出願後は変更できません。筆記は200点で、2026年8月17日の10時30分〜12時00分(90分)に行われました。出題は日本語と英語の両方で行い、解答は日本語か英語で書きます。要項には、どの科目でも基礎知識を問う問題を出すと書かれています。机上に置けるのは黒鉛筆、消しゴム、小型鉛筆削り(電動不可)、時計(計時機能のみ)で、研究科が貸与する電卓は統計学の試験だけに認められています。経済理論は電卓なしで解きます。
外国語は学内の筆記試験がなく、出願時に提出するスコアシートで100点です。英語の試験と受験時期の条件は要項6ページの表にあります。口述試験は筆記と同じ日の13時からで、所定様式2枚の研究計画書などを中心に原則日本語で行われました。合否は外国語・筆記・口述の成績と、出身大学での学業成績を総合して決まります。この回は実施済みで、次回の条件は新しい要項で確認してください。
Ⅱ期(2月入試)も、2026年4月入学Ⅱ期の要項(8〜9ページ)では同じ3科目から出願時に1科目を選ぶ方式で、筆記は2026年2月1日の10時30分〜12時00分でした。2026年10月28日時点で、研究科の募集要項の配布ページに2027年4月入学のⅡ期の要項は出ていません。Ⅰ期・Ⅱ期の倍率は神戸大学大学院の倍率と外部受験にまとめています。
過去6回の配点:ミクロとマクロが100点ずつ
経済理論の冊子の注意書きは、6回とも4問すべてに日本語か英語で答える内容で、選択問題はありません。2026年度Ⅰ期は第1問だけに解答用紙が2枚あり、2026年度Ⅱ期は第1問と第2問をあわせて最初の2枚に書く指定でした。大問ごとの配点は次のとおりです。
| 年度・期 | 第1問 | 第2問 | 第3問 | 第4問 |
|---|---|---|---|---|
| 2026年度Ⅱ期 | 85点 | 15点 | 60点 | 40点 |
| 2026年度Ⅰ期 | 80点 | 20点 | 50点 | 50点 |
| 2025年度Ⅱ期 | 40点 | 60点 | 50点 | 50点 |
| 2025年度Ⅰ期 | 50点 | 50点 | 50点 | 50点 |
| 2024年度Ⅱ期 | 60点 | 40点 | 50点 | 50点 |
| 2024年度Ⅰ期 | 50点 | 50点 | 50点 | 50点 |
第1問と第2問の合計、第3問と第4問の合計は、どの回も100点です。ミクロ2問の内訳は回によって大きく変わり、2026年度の2回は第1問だけで80点・85点を占めました。同じ第2問でも、15点の1設問だった回と、60点で4設問あった回があります。マクロは2026年度Ⅱ期だけが60点と40点で、ほかの5回は50点ずつでした。
第1問・第2問:消費者・生産者・寡占・ゲーム・公共財から2題
年度は入学年度です。2026年度Ⅰ期の冊子の冒頭には「令和8(7)年度」とあり、2026年度Ⅱ期は2026年2月1日に行われた回です。ミクロの2題は次のとおりです。
| 年度・期 | 第1問 | 第2問 |
|---|---|---|
| 2026年度Ⅱ期 | 生産者理論3題(85点):一定量を作る最小費用(平方根型と線形の生産関数)、CES型の規模の収穫と技術的限界代替率、3次の費用関数をもつ完全競争企業の生産量と、生産を始める価格の下限 | 費用が非対称なクールノー複占(15点)。数量を価格の関数で与えた需要関数を、逆需要に直してから解く |
| 2026年度Ⅰ期 | 消費者理論7題(80点):平方根型の効用の最適消費、支出最小化、代替効果、劣等財でないことの証明、円周上の制約での最大化、3財への拡張、数量割引のある予算集合の面積 | 公共財の私的供給(20点):社会的に効率的な水準と、2人が同時に拠出を決めるナッシュ均衡 |
| 2025年度Ⅱ期 | 3×3の協調ゲーム(40点):純粋戦略と混合戦略のナッシュ均衡をすべて求める | 3企業が順に生産量を決める寡占(60点):後に動く企業の最適反応関数と、後ろ向き帰納法による均衡 |
| 2025年度Ⅰ期 | 3財のコブ=ダグラス型効用(50点):予算制約、限界効用、需要、間接効用関数、支出関数を数値なしの記号で | 2次の生産関数をもつ1要素の企業(50点):利潤、投入がゼロになる要素価格、要素需要関数、利潤関数 |
| 2024年度Ⅱ期 | コブ=ダグラス型生産関数(60点):限界生産性逓減と規模の収穫の判定、短期・長期の費用関数、2つの費用曲線の関係 | 2×2の標準形ゲーム(40点):純粋戦略・混合戦略の均衡と、特定の組が唯一の均衡になる条件 |
| 2024年度Ⅰ期 | 準線形効用の2消費者(50点):予算制約、需要関数、市場需要、消費者余剰 | 同質財のクールノー複占(50点):同じ費用での均衡と、費用差が大きいときの均衡 |
12題の内訳は、消費者理論3題、生産者理論3題、寡占3題、ゲーム理論2題、公共財1題で、どの回も異なる2分野の組み合わせでした。消費者理論は2024年度Ⅰ期・2025年度Ⅰ期・2026年度Ⅰ期と、Ⅰ期にだけ出ています。ゲーム理論は2024年度Ⅱ期と2025年度Ⅱ期のⅡ期だけです。ただし3回ずつの比較なので、次の回の出題を予告するものではありません。寡占はクールノー競争が2題、3企業が順に動く逐次手番が1題でした。
解き方の面では、二つの特徴があります。一つ目は、連立方程式の解をそのまま答えにせず、非負制約と端点を確かめる設問が多いことです。2024年度Ⅰ期第2問(4)の費用差のある複占、2025年度Ⅰ期第2問の投入ゼロになる要素価格、2026年度Ⅰ期第2問の公共財に拠出しないプレイヤー、2026年度Ⅱ期第1問の完全代替と操業の判断と、6回のうち4回に出ています。二つ目は、前の小問の結果を後の小問で使う構成です。2026年度Ⅰ期第1問は設問1の接点条件を設問2〜4で使い、2025年度Ⅰ期第1問は間接効用関数を所得について解くと支出関数になります。最初の小問で式を誤ると、後の小問まで失点が続きます。
2024年度Ⅱ期第2問と2025年度Ⅱ期第1問は、純粋戦略・混合戦略の均衡を「すべて」求める指示でした。均衡になる組だけでなく、均衡にならない組がなぜ外れるかも1行ずつ書くと、すべて調べたことを答案で示せます。
第3問・第4問:式を使って説明し、主張を評価する
| 年度・期 | 第3問 | 第4問 |
|---|---|---|
| 2026年度Ⅱ期 | 労働供給を含む2期間モデル(60点):最適化問題の定式化、異時点間と同時点の最適条件の導出と意味、定率税と定額税の影響 | 恒常所得仮説(40点):考え方と消費行動の説明、所得増加の予告を受けた消費の動きが仮説と整合するかの判定 |
| 2026年度Ⅰ期 | 国債発行を財源とする減税ですぐに消費が増えるという主張の評価(50点)。リカードの等価定理 | デフレーションの安定化効果と不安定化効果をIS-LMモデルで議論(50点) |
| 2025年度Ⅱ期 | 自由な資本移動・固定相場制・独立した金融政策を同時に実現できるかの議論(50点)。国際金融のトリレンマ | 用語説明5題(各10点):信用創造と信用収縮、時間非整合性、付加価値と帰属価値、小国開放経済、ラスパイレス指数とパーシェ指数 |
| 2025年度Ⅰ期 | 米国の政策金利とCPIインフレ率の時系列グラフに見える正の相関を、フィッシャー式とテイラー・ルールの2通りで説明(25点×2) | 対数効用の2期間消費(50点):予算制約、最適消費の導出、金利の変化が各期の消費に与える影響 |
| 2024年度Ⅱ期 | 期待物価水準の役割に触れ、総供給曲線が右上がりになる2つのメカニズムを説明(50点) | インフレーションの社会的費用と便益の議論(50点) |
| 2024年度Ⅰ期 | コンソル債の割引現在価値、金利と債券価格の関係、市場金利0%で金利を上げ下げする政策手段(50点) | 購買力平価と金利平価の説明、両方が成り立つときの両国の実質金利の関係(50点) |
12題のうち、50点を1問の論述に充てたのが5題(2024年度Ⅱ期の2題、2025年度Ⅱ期第3問、2026年度Ⅰ期の2題)、用語説明が1題です。残りの6題も、文章で説明・議論する小問を含みます。マクロで計算だけの大問はありません。
複数の回にまたがって出た論点は三つあります。一つ目は実質金利で、フィッシャー方程式が2024年度Ⅰ期の第3問・第4問、2025年度Ⅰ期第3問、2026年度Ⅰ期第4問の答案に出てきます。名目金利が0より下がりにくいことも、2024年度Ⅰ期第3問(3)と2026年度Ⅰ期第4問で論点になりました。二つ目は2期間の消費で、2025年度Ⅰ期第4問、2026年度Ⅰ期第3問、2026年度Ⅱ期第3問の答案はどれも生涯の予算制約を使います。三つ目は開放経済で、2024年度Ⅰ期第4問と2025年度Ⅱ期第3問が金利平価を使い、2025年度Ⅱ期第4問では小国開放経済を説明します。
問題文が使う道具を指定する例も多くあります。2026年度Ⅰ期第4問はIS-LMモデル、2025年度Ⅰ期第3問はフィッシャー式と、テイラー・ルール、テイラー原則、実質金利の3語、2024年度Ⅱ期第3問は期待物価水準の役割への言及、2026年度Ⅱ期第3問(3)は(2)で求めた2つの最適条件を使うよう求めていました。指定された道具を使っていない答案は、内容が正しくても指示を満たしません。
90分の使い方:配点を見てから時間を決める
90分で200点なので、1点あたり27秒です。配点どおりに割ると、50点の論述は22分30秒、80点の第1問は36分、15点の第2問は7分弱になります。これは時間の目安で、採点の内訳を示すものではありません。
- 開始直後に4問の配点と小問の数を確かめます。第2問が15点の1設問だった2026年度Ⅱ期と、60点の4設問だった2025年度Ⅱ期では、割く時間がまったく違います。
- 論述は書き始める前に、問題文が指定するモデル・用語・前の小問を書き出し、段落の順序を決めます。論点を落としたまま書き進めると、後から段落を足しにくくなります。
- ミクロは小問を最後まで読んでから解き始めます。前の小問の式を後で使う構成なら、最初の式を一般形で残しておくと、後の小問の計算が短くなります。
- 答えを出したら、元の制約式に戻して等号が成り立つか、生産量や確率が0以上か、価格が正かを確かめます。2026年度Ⅰ期第1問(6)の3財の需要なら、求めた量で予算をちょうど使い切るかを1行で確かめられます。
ミクロ計算で失点しやすい設問
院試Hubの解説で注意点として挙げた箇所から9件を選びました。設問番号は公式の冊子の番号です。
| 回・設問 | 起こりやすい誤り | 確かめること |
|---|---|---|
| 2024年度Ⅰ期第2問(4) | 費用差の大きいクールノー競争で反応関数を連立し、負の生産量をそのまま答える。 | 非負制約から企業2の生産ゼロを考え、そのときの価格が企業2の限界費用を下回ることを示す。 |
| 2024年度Ⅱ期第2問(3) | ある組が唯一の純粋戦略均衡になる条件に、等号まで含める。 | 等号のとき別の組も均衡として残る。均衡の条件を弱い不等号で書いてから否定する。 |
| 2025年度Ⅰ期第2問(4) | 利潤関数を1本の式で答え、要素価格が高い範囲でも正の利潤が出る形にする。 | (2)で求めた投入ゼロの範囲では利潤0とし、場合分けして答える。 |
| 2025年度Ⅱ期第1問(2) | 混合戦略の均衡を、3つの戦略すべてを混ぜる1つだけ答える。 | 2つの戦略だけを混ぜる均衡も3つある。両者が正の確率を置く戦略の組を数え上げ、全7つの均衡を示す。 |
| 2025年度Ⅱ期第2問(3) | 2番目の企業の最適反応を、3番目の企業の生産量を所与として求める。 | 後に動く企業の反応関数を利潤に代入してから微分する。同時手番の解き方と区別する。 |
| 2026年度Ⅰ期第1問(7) | 4単位を超えた後の割引単価を、購入量全体に掛ける。 | 最初の4単位は元の単価のまま。予算線が4単位の点でつながるかを確かめてから面積を求める。 |
| 2026年度Ⅱ期第1問(1b) | 線形の生産関数で、技術的限界代替率と要素価格比を等しくおく。 | 完全代替なので、産出1単位あたりの費用が安い要素だけを使う端点になる。 |
| 2026年度Ⅱ期第1問(3b) | 生産を始める価格の下限を、平均費用の最小値で判定する。 | 固定費用は生産をやめても残るので、平均可変費用の最小値と比べる。 |
| 2026年度Ⅱ期第2問 | 数量を価格の関数で与えた需要関数を、価格の式と読み違える。 | 総生産量で価格を表す逆需要関数を1行書いてから利潤を作る。 |
このうち第1問の項目(2025年度Ⅱ期第1問(2)、2026年度Ⅰ期第1問(7)、2026年度Ⅱ期第1問)は、下の無料解答で式まで確認できます。第2問の項目は解説PDFに収録しています。
マクロ論述の組み立て方
院試Hubの答案例の多くは、使う枠組みと式、主張が成り立つ論理、その論理が依存する仮定、仮定が崩れる場合や現実との違い、という要素で論述を組み立て、最後に主張がどの条件で正しいかを述べています。段の数や順序は問題によって変わります。以下は過去問での具体例です。
主張を評価する論述:2026年度Ⅰ期第3問
答案例はまず、当期の可処分所得で消費が決まるケインズ型消費関数なら、減税で消費が増えるという主張が成り立つことを示します。そのうえで、政府の異時点間予算制約と家計の生涯予算制約の2本を書き、国債で賄う減税が将来の増税と現在価値で相殺されることを示します。2期間の家計の予算制約は次の形です。
政府支出を変えずにT1を下げれば、政府の予算制約からT2が上がり、右辺は変わりません。これがリカードの等価定理です。続けて、将来の増税の予見、借入制約がないこと、減税と増税の負担者が同じ世代であること、一括税であることという仮定を挙げ、借入制約や近視眼、世代交代、歪みのある税で消費が増えうる場合を書きます。「国債は将来世代の負担になる」とだけ書くと、等価定理の説明になりません。世代間の移転は、等価定理が崩れる理由として使います。
同じ予算制約は、2025年度Ⅰ期第4問では所得が第1期だけで税のない形、2026年度Ⅱ期第3問では利子の記述がなく労働供給を選ぶ形で出ています。2026年度Ⅱ期は問題文に利子の記述がないため、答案例は収益率を1として定式化しています。自分で(1+r)を置くと、後の最適条件が問題の設定と合わなくなります。
制度の選択を論じる論述:2025年度Ⅱ期第3問
自由な資本移動・固定相場制・独立した金融政策を同時に実現できるかという問いに、答案例は国際金融のトリレンマとして答え、その理由を金利平価の式で示しています。
Sは自国通貨建ての為替レート、Seはその予想値です。固定相場が信認されていればSe=Sなので自国の金利は外国の金利に等しくなり、金融政策で動かせません。答案例は続けて、三つを同時に追ったときに起きる資本流出と為替介入、三つのうち二つを選ぶ制度の例を書いています。「固定相場では金融政策が効かない」とだけ書くと、資本移動が自由という前提が抜けます。2024年度Ⅰ期第4問(3)も、この式に購買力平価とフィッシャー方程式を組み合わせて、両国の実質金利の関係を導く問題でした。式に番号を付けて並べ、代入の順序を示すと導出が読みやすくなります。
二つの効果や説明を比べる論述
- 2026年度Ⅰ期第4問(デフレとIS-LM):ケインズ効果、ピグー効果、負債デフレ、デフレ予想による実質金利の上昇の四つを、IS曲線とLM曲線のどちらがどちらへ動くかで書き分けます。「共存する」という見解を論じるので、片方の効果だけで終えません。名目金利がゼロに張り付くとケインズ効果が働かないことが、どちらの効果が強いかの条件になります。
- 2025年度Ⅰ期第3問(政策金利とインフレ率):フィッシャー式はインフレ予想から名目金利へ、テイラー・ルールは中央銀行の反応として名目金利へと、因果の向きが逆の説明です。テイラー原則は、名目金利のインフレ率に対する反応係数が1を超えることとして書き、その結果として実質金利が上がることまで述べます。
- 2024年度Ⅱ期第3問(総供給曲線):答案例は硬直的賃金と不完全情報の二つのモデルを取り上げ、どちらも産出が期待物価水準からのずれに反応する式に行き着くことを示したうえで、期待物価水準が各モデルで何を決めているかを1文ずつ書いています。別のモデルを選ぶ場合も、摩擦の種類が異なる二つを選びます。期待物価水準を予想インフレ率と読み替えないようにします。
- 2024年度Ⅱ期第4問(インフレの費用と便益):予想されたインフレと予想されないインフレを分けて費用を挙げ、便益として名目賃金の下方硬直性の下での調整や、名目金利のゼロ制約からの距離を挙げます。「物価が上がって生活が苦しくなる」は、名目所得も上がるなら費用の説明になりません。
判定と用語説明
2026年度Ⅱ期第4問(2)は、所得増加の予告を受けた時点で消費を上げ、実際に所得が増えた時点でさらに上げた個人が、恒常所得仮説に従っているかを判定します。答案例は、予告の時点と所得が実現した時点のそれぞれについて仮説が予測する動きを書き、どちらの時点の動きが仮説と合い、どちらが合わないのかを名指しして判定しています。「消費が滑らかに増えている」という印象だけで判定しないようにします。2025年度Ⅱ期第4問の用語説明は各10点で、答案例は定義1文、式か数値例1つ、補足1文の分量で書いています。「付加価値と帰属価値」のように2語を並べた設問は、片方だけで終えないよう2語を分けて書きます。
分野別の練習と教材
過去6回で問われた内容を、分野ごとに練習の方法と結びつけました。
| 分野 | 過去6回の出題 | 練習のしかた |
|---|---|---|
| 消費者理論 | 需要関数、市場需要、消費者余剰、間接効用関数、支出関数、代替効果、正常財(2024年度Ⅰ期・2025年度Ⅰ期・2026年度Ⅰ期の第1問) | 同じ効用関数で効用最大化と支出最小化を両方解き、ロワの恒等式やシェパードの補題で答えを照合する。 |
| 生産者理論 | 限界生産性と規模の収穫、短期・長期の費用、要素需要と利潤関数、費用最小化、操業の判断(2024年度Ⅱ期第1問・2025年度Ⅰ期第2問・2026年度Ⅱ期第1問) | 同次性で規模の収穫を判定し、条件付き要素需要から費用関数を作る。投入ゼロや完全代替の端点を毎回確かめる。 |
| 寡占とゲーム | クールノー、逐次手番の寡占、純粋戦略・混合戦略の均衡(2024年度Ⅰ期第2問・2024年度Ⅱ期第2問・2025年度Ⅱ期の2題・2026年度Ⅱ期第2問) | 同じ需要と費用で同時手番と逐次手番を解き比べる。「すべて求めよ」では均衡でない組の理由も書く。 |
| 公共財 | 効率的な水準とただ乗り(2026年度Ⅰ期第2問) | 社会的には限界便益を足し合わせ、ナッシュ均衡では各自が自分の限界便益だけを見ることを対比する。 |
| 金融・物価 | 債券価格と金利、総供給曲線、インフレの費用と便益、フィッシャー式とテイラー・ルール、IS-LMとデフレ、信用創造 | 用語ごとに定義1文と式1本を書けるようにする。名目と実質(貨幣量と実質貨幣量、名目金利と実質金利)を区別して書く。 |
| 消費・財政 | 2期間の消費と金利、リカードの等価定理、定率税と定額税、恒常所得仮説 | 生涯の予算制約と異時点間の最適条件から始め、仮定を一つ外すと答えがどう変わるかを書く。 |
| 開放経済 | 購買力平価、金利平価、国際金融のトリレンマ、小国開放経済 | 金利平価の式から、固定相場・変動相場・資本規制のそれぞれで何が決まるかを説明する。 |
ミクロは、消費者・生産者・寡占・ゲーム・公共財の章がそろった中級の教科書を1冊使います。例えばヴァリアン『入門ミクロ経済学』(勁草書房)の該当章で解き方を確かめ、間接効用関数・支出関数・利潤関数の計算は2025年度Ⅰ期の第1問・第2問を練習問題として使います。マクロは、総供給、インフレ、消費、財政、開放経済、IS-LMを扱う中級の教科書を1冊使います。例えば『マンキュー マクロ経済学』(東洋経済新報社)の各章を読んだら、主張を式1本と文章で再現する練習をします。読むだけで終えず、50点の論述を時間を計って書く回数を増やします。
無料で読める第1問と、解説PDFの範囲
院試Hubでは、6回それぞれの第1問の解答と解説を年度別ページで無料公開しています。6題ともミクロで、2026年度の2回は80点・85点の大問です。
- 2026年度Ⅱ期の第1問:費用最小化・規模の収穫・完全競争企業の供給(85点)
- 2026年度Ⅰ期の第1問:平方根型の効用の消費者理論7題(80点)
- 2025年度Ⅱ期の第1問:3×3協調ゲームのナッシュ均衡(40点)
- 2025年度Ⅰ期の第1問:3財コブ=ダグラス型効用の需要・間接効用関数・支出関数(50点)
- 2024年度Ⅱ期の第1問:コブ=ダグラス型生産関数と短期・長期の費用(60点)
- 2024年度Ⅰ期の第1問:準線形効用の需要と消費者余剰(50点)
第2問〜第4問の解答は、経済理論の解答・解説PDFに収録しています。6回分・24問で、マクロの第3問・第4問の12問は、答案例に加えて、答案に入れる要素や書き方の注意を説明しています。解説PDFは問題文を載せていないため、研究科の公式ページで問題冊子を開いて並べて使います。
- 1回分を90分で、電卓を使わずに4問とも解きます。
- 第1問は無料の解答で答え合わせをします。
- 第2問〜第4問はPDFと照合します。論述は、答案例が使ったモデル・式・仮定・最後の判断が自分の答案にあるかを一つずつ確かめます。
- 足りなかった分野を上の表に戻って練習し、別の回を再び90分で解きます。
経済理論と統計学のどちらを選ぶか迷う場合は、統計学の過去問ガイドで出題と配点を比べ、両方の科目で1回分を時間内に解いてから決めます。出願後は科目を変えられません。経済学研究科のほかの科目は神戸大学経済学研究科のページから探せます。
途中式と最終答まで読める解説
経済理論の収録解説の分野(2024〜2026年度・24項目)
院試hubの収録解説6実施回・24項目の見出しを分野別に数えたものです。設問を分割した項目や、公開資料の制約を説明する項目を含むため、公式問題の大問数や完成答案数とは一致しません。マクロ経済学が10項目(全体の42%)で最多。ミクロ経済学は6実施回すべてに出ています。
| 分野 | 項目数 | 全項目に占める割合 | 直近の連続出題 | 最後に出た回 |
|---|---|---|---|---|
| マクロ経済学 | 10 | 42% | 5回連続 | 2026年度 第Ⅱ期 |
| ミクロ経済学 | 9 | 38% | 6回連続 | 2026年度 第Ⅱ期 |
| 5 | 21% | — | 2026年度 第Ⅰ期 |
収録年度と解説項目数
院試hubに収録した6実施回の一覧です。どの回も解説見出しは4項目です。
神戸大 経済理論の解答で立てた注意点(95件)
院試hubの解説で、その設問だけに立てた小見出しです(「方針」「検算」のような全問共通の 見出しは除いています)。新しい実施回から並べています。
ミクロ経済学48件
- 2026年度 第Ⅰ期 第1問 u=\sqrt{x_1}+3\sqrt{x_2} の消費者理論7題間接効用関数を作っておくと速い / 符号が負になることは一般に保証される / x_1^h(1) が設問1と一致することを確認 / 需要関数を導いてから微分する / 制約が非線形でも手順は同じ / 台形の面積として確かめる / 数量割引で予算集合が広がる
- 2026年度 第Ⅱ期 第1問 費用最小化・規模に関する収穫・完全競争企業の供給平方根は変数変換で消す / 線形の場合に微分しない / 同次性を先に示す / b が効かない理由 / 境界の扱い / 2解のうち一方を落とす根拠 / AC ではなく AVC で判定する
- 2026年度 第Ⅱ期 第2問 非対称な費用の下でのクールノー競争需要関数の向きを取り違えない / 均衡条件の意味 / 非対称性の読み方 / 端点解の確認
- 2025年度 第Ⅰ期 第1問 コブ=ダグラス型効用の需要・間接効用関数・支出関数aU/x という形 / 支出シェアが一定 / 性質の確認 / 支出関数の性質で検算
- 2025年度 第Ⅰ期 第2問 1要素企業の要素需要関数と利潤関数端点解の条件を「限界利潤の符号」で書く / 定義域の上限を確認する / 需要曲線の形 / ホテリングの補題で検算 / 利潤関数の性質
- 2025年度 第Ⅱ期 第2問 3企業の逐次手番寡占(シュタッケルベルグ)限界費用を先に引いておく / 非負制約への言及 / 同時手番と取り違えない / 括弧の中が半分になる意味 / 同時手番との比較
マクロ経済学27件
- 2026年度 第Ⅰ期 第3問 国債発行を財源とする減税は消費を増やすか(リカードの等価定理)予算制約の式を2本書く / 「直ぐに」という語に反応する
- 2026年度 第Ⅱ期 第3問 2期間モデルの最適条件と定率税・定額税の比較s≥ 0 を落とさない / 2つの条件の役割の違い / 「(2)の最適条件を用いて」に答える / 歪みの有無を言い切る / s≥ 0 が効く場合
- 2026年度 第Ⅰ期 第4問 デフレーションの安定化効果と不安定化効果(IS-LM)シフトする曲線を明示する / 名目と実質の区別
- 2026年度 第Ⅱ期 第4問 恒常所得仮説と予想された所得増加への反応ケインズ型消費関数との対比 / 整合的でない理由を1点に絞る / 整合的でない行動をどう説明するか
- 2025年度 第Ⅰ期 第3問 名目金利とインフレ率の正の相関(フィッシャー式とテイラー・ルール)2つの説明の関係を書く / テイラー原則の書き方
- 2025年度 第Ⅱ期 第3問 国際金融のトリレンマ金利平価の式を必ず書く / 「調整の過程」を書く / 留保にも触れる
- 2026年度 第Ⅰ期 第2問 公共財の私的供給ゲームと過少供給限界便益は「足す」 / ただ乗りによる過少供給 / 両者が拠出する均衡がないことの確認
- 2025年度 第Ⅱ期 第1問 3×3協調ゲームの純粋戦略・混合戦略ナッシュ均衡協調ゲームの構造 / 台の対応を先に示す / 台の外の条件を忘れない / 均衡利得の比較
- 2024年度 第Ⅱ期 第2問 標準形ゲームの純粋戦略・混合戦略ナッシュ均衡と均衡の一意性ゲームの構造 / 誰の利得で誰の確率が決まるか / 均衡での期待利得(検算) / 一方だけ混合する場合がないこと / 等号の扱い / 確認
- 2024年度 第Ⅰ期 第3問 コンソル債の現在価値と金利,ゼロ金利下の政策手段数値で確かめる / 因果の向き / (1)(2)を「踏まえて」答える / 上げる場合と下げる場合の非対称性
- 2024年度 第Ⅰ期 第4問 購買力平価・金利平価と実質金利の均等化式の並べ方 / 結論の意味 / 現実との乖離
神戸大 公式の過去問の公開年度と公式解答例
- 公式の過去問ページ
- 経済学研究科 博士課程前期課程(一般選抜)
- 公開されている年度
- 2024〜2026年度のⅠ期・Ⅱ期(直近3年)
- 公式の解答例
- 解答例の掲載なし
- 英語の扱い
- TOEIC・TOEFL などの英語外部試験のスコア提出。学内での英語筆記試験はない。
- 院試hubが最後にリンクを確認した日
- 2026-10-28
- ページの内容
- Ⅰ期(夏に実施。2027年4月入学は2026年8月17日)とⅡ期(2月実施)の問題冊子を年度別に1つのPDFで公開(画像PDF)。科目は経済理論・統計学に加えて回によって経済史があり、2024Ⅱ期・2025Ⅰ期・2025Ⅱ期・2026Ⅰ期の冊子には経済史があるが、2024Ⅰ期と2026Ⅱ期にはない。各科目に日本語版と英語版が併載されており、問題は同一。解答例の公開はない。
よくある質問
神戸大学経済学研究科の経済理論は、ミクロとマクロの両方から出ますか。
出ます。2024〜2026年度のⅠ期・Ⅱ期、計6回の冊子では、第1問〜第4問のすべてに日本語か英語で答えます。6回とも第1問と第2問がミクロ(ゲーム理論・公共経済学を含む)で合計100点、第3問と第4問がマクロ(金融・国際金融を含む)で合計100点でした。選択問題はありません。
経済理論の試験で電卓は使えますか。
使えません。2027年4月入学Ⅰ期の要項で机上に置けるのは、黒鉛筆、消しゴム、小型鉛筆削り(電動不可)、時計(計時機能のみ)です。研究科が貸与する電卓は統計学の試験に限られます。経済理論のミクロの答えは11分の40のような分数や根号を含む値が多く、手計算で求めます。
第1問と第2問の配点は毎回同じですか。
同じではありません。2問の合計は6回とも100点ですが、内訳は50点と50点(2024年度Ⅰ期・2025年度Ⅰ期)、60点と40点(2024年度Ⅱ期)、40点と60点(2025年度Ⅱ期)、80点と20点(2026年度Ⅰ期)、85点と15点(2026年度Ⅱ期)でした。試験が始まったら、4問の配点を確かめてから時間を割り振ります。
マクロの論述には何を書けばよいですか。
問題文が指定するモデルや用語を使い、式を1〜2本入れて、主張が成り立つ条件を書きます。2026年度Ⅰ期第3問なら、政府と家計の異時点間予算制約からリカードの等価定理を示し、借入制約などで等価定理が崩れる場合を挙げて、主張がどの条件で正しいかを評価します。用語を並べるだけや、一方の効果だけを書いて終える答案では、問われた評価になりません。
無料で読める経済理論の解答はどれですか。
6回それぞれの第1問です。6題ともミクロで、2026年度Ⅰ期の消費者理論(80点)と2026年度Ⅱ期の生産者理論(85点)も含みます。第2問〜第4問の解答と、マクロ12問の答案例は解説PDFに収録しています。
経済理論ではどの程度の数学を使いますか。
過去6回で使ったのは、偏微分、ラグランジュ乗数法、連立一次方程式、2次方程式、等比級数の和、簡単な定積分です。2024年度Ⅰ期第3問のコンソル債の現在価値は等比級数の和、2024年度Ⅰ期第1問の消費者余剰は需要曲線の積分で求めます。2026年度Ⅰ期第1問(7)の予算集合の面積は、台形と三角形に分けても計算できます。
神戸大学の解答PDF
公式過去問と併用する解答・解説PDFを、神戸大学の研究科・科目別に掲載しています。収録年度と価格は各ページで確認できます。
- 神戸大学 経済学研究科 経済理論の解答PDF(収録6実施回分)
- 神戸大学 経済学研究科 統計学の解答PDF(収録6実施回分)
- 神戸大学 経済学部 数学の解答PDF(収録3年分)
- 神戸大学 経済学部 経済学の解答PDF(収録3年分)
- 神戸大学 理学研究科 数学専攻 数学の解答PDF(収録6年分)
- 神戸大学 理学研究科 物理学専攻 物理の解答PDF(収録1年分)
神戸大学の解答PDF一覧で、神戸大学の研究科・専攻・科目をまとめて確認できます。