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神戸大 経済学研究科 経済理論 2025年度 第Ⅱ期 院試 過去問 解答例・解説(全4問)

全4問の分野はマクロ経済学2問、ミクロ経済学1問です。解説はすべて、途中式と最終答は大問1問ぶんを公開しています。残りは解答PDFに収録しています。問題本文は含みません。

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第1問 — ゲーム理論:3×3協調ゲームの純粋戦略・混合戦略ナッシュ均衡

協調ゲームの構造

このゲームは,2人が同じ番号の戦略を選べたときだけ利得が発生する調整ゲームである。均衡が3つあり,利得は (3,3)>(2,2)>(1,1)(3,3)>(2,2)>(1,1) の順に並ぶので,(B,R)(B,R) が他の2つをパレート支配する。それでも (T,L)(T,L) と (S,M)(S,M) が均衡として残るのがナッシュ均衡の概念の特徴であり,均衡選択の問題が生じる。この一言を添えると,設問2の混合戦略均衡の意味づけにもつながる。

設問2 混合戦略ナッシュ均衡

台の対応を先に示す

3×33\times3 で総当たりすると 7×7=497\times7=49 通りの台の組を調べることになる。「XX の台と YY の台は同じ番号でそろう」ことを先に示せば,調べるのは7通りで済む。この論法を1段落で書いておくと,網羅性の根拠にもなる。

台の外の条件を忘れない

無差別条件だけでは均衡にならない。台の外の戦略の期待利得が台の値以下であることを必ず確認する。ここでは台の外の期待利得はいずれも 00 なので条件は自動的に満たされるが,一般には満たされない場合があり,そこで候補が落ちる。

検算

全体を台とする均衡で XX の期待利得は qL=611q_L=\tfrac6{11},2qM=6112q_M=\tfrac6{11},3qR=6113q_R=\tfrac6{11} となり3つとも一致する。台が2の均衡でも,たとえば {S,B}\{S,B\} では 2⋅35=652\cdot\tfrac35=\tfrac65,3⋅25=653\cdot\tfrac25=\tfrac65 で一致する。確率の合計が1であることとあわせて確かめる。

均衡利得の比較

混合均衡の期待利得は,{T,S}\{T,S\} 型で 23\tfrac23,{T,B}\{T,B\} 型で 34\tfrac34,{S,B}\{S,B\} 型で 65\tfrac65,全体で 611\tfrac6{11} である。いずれも純粋戦略均衡の 1,2,31,2,3 より低い。調整に失敗する確率が残るためであり,協調ゲームで混合均衡が非効率になるという性質を一言添えると議論が締まる。

解答

対角成分の確認

(T,L)(T,L) では両者とも 11 を得る。XX が SS または BB に変えると 00 になるので逸脱しない。YY も同様。よって均衡である。(S,M)(S,M)(利得 22 ずつ),(B,R)(B,R)(利得 33 ずつ)についても,どちらか一方が逸脱すると利得が 00 に落ちるので,同じ理由で均衡である。

非対角成分の確認

非対角の6組ではどちらの利得も 00 である。たとえば (T,M)(T,M) で XX が SS に変えると 0→20\to2 となり得をするので均衡でない。(T,R)(T,R) では XX が BB に変えて 0→30\to3,(S,L)(S,L) では XX が TT に変えて 0→10\to1,というように,どの非対角成分でも XX は相手の戦略に対応する対角成分へ移れば正の利得を得られる。よって非対角はすべて均衡でない。

記号と期待利得

XX が T,S,BT,S,B を確率 pT,pS,pBp_T,p_S,p_B,YY が L,M,RL,M,R を確率 qL,qM,qRq_L,q_M,q_R で選ぶとする。XX の期待利得は E[T]=qL,E[S]=2qM,E[B]=3qR, \mathbb{E}[T]=q_L,\qquad \mathbb{E}[S]=2q_M,\qquad \mathbb{E}[B]=3q_R, YY の期待利得は対称に E[L]=pT,E[M]=2pS,E[R]=3pB. \mathbb{E}[L]=p_T,\qquad \mathbb{E}[M]=2p_S,\qquad \mathbb{E}[R]=3p_B . 均衡では,正の確率を置く戦略(台)どうしの期待利得が等しく,台の外の戦略の期待利得はそれ以下でなければならない。

台が一致することの確認

XX の台に TT が入るなら qL>0q_L>0 でなければならない(qL=0q_L=0 なら E[T]=0\mathbb{E}[T]=0 となり,正の利得を与える他の戦略に劣る)。同様に SS が台に入るなら qM>0q_M>0,BB なら qR>0q_R>0。逆向きも成り立つので,XX の台と YY の台は同じ番号の集合になる。したがって台は {T,L}\{T,L\},{S,M}\{S,M\},{B,R}\{B,R\},{T,S}×{L,M}\{T,S\}\times\{L,M\},{T,B}×{L,R}\{T,B\}\times\{L,R\},{S,B}×{M,R}\{S,B\}\times\{M,R\},全体,の7通りである。

台の大きさが2の均衡

XX が T,ST,S のみを使う場合,無差別条件は qL=2qMq_L=2q_M,qL+qM=1q_L+q_M=1 より qL=23,qM=13,qR=0, q_L=\frac23,\qquad q_M=\frac13,\qquad q_R=0, このとき XX の期待利得は 23\tfrac23,台の外の E[B]=3qR=0≤23\mathbb{E}[B]=3q_R=0\le\tfrac23 で条件を満たす。対称に pT=23p_T=\tfrac23,pS=13p_S=\tfrac13,pB=0p_B=0。 同様に {T,B}×{L,R}\{T,B\}\times\{L,R\} では qL=3qRq_L=3q_R より qL=34q_L=\tfrac34,qR=14q_R=\tfrac14(pp も同じ),{S,B}×{M,R}\{S,B\}\times\{M,R\} では 2qM=3qR2q_M=3q_R より qM=35q_M=\tfrac35,qR=25q_R=\tfrac25(pp も同じ)。いずれも台の外の期待利得は 00 で条件を満たす。

台が全体の均衡

qL=2qM=3qRq_L=2q_M=3q_R と qL+qM+qR=1q_L+q_M+q_R=1 を解く。共通の値を vv とすると qL=vq_L=v,qM=v2q_M=\tfrac v2,qR=v3q_R=\tfrac v3 で, v(1+12+13)=116v=1⟹v=611, v\left(1+\frac12+\frac13\right)=\frac{11}{6}v=1 \quad\Longrightarrow\quad v=\frac{6}{11}, qL=611,qM=311,qR=211. q_L=\frac{6}{11},\qquad q_M=\frac{3}{11},\qquad q_R=\frac{2}{11}. pp も対称に同じ値になる。

最終答

(T,L)(T,L),(S,M)(S,M),(B,R)(B,R) の3つ

台の大きさ1(純粋)が3つ,台の大きさ2が3つ,台の大きさ3が1つの計7つ。真に混合するものは (pT,pS,pB)=(qL,qM,qR)=(23,13,0), (34,0,14), (0,35,25), (611,311,211)(p_T,p_S,p_B)=(q_L,q_M,q_R)=(\tfrac23,\tfrac13,0),\ (\tfrac34,0,\tfrac14),\ (0,\tfrac35,\tfrac25),\ (\tfrac6{11},\tfrac3{11},\tfrac2{11}) の4つ

第2問 — ミクロ経済学:3企業の逐次手番寡占(シュタッケルベルグ)

限界費用を先に引いておく

Ci=xiC_i=x_i なので限界費用は1で一定である。99 から 11 を引いて 88 にまとめておくと,以下の微分がすべて簡単になる。(9−⋯ )xU−xU(9-\cdots)x_U-x_U のまま進めても同じだが,整理した形を1本書いておくと計算ミスが減る。

設問2 企業 UU の最適反応関数

非負制約への言及

xS+xT>8x_S+x_T>8 なら xU=0x_U=0 が最適になる。均衡では xS+xT=6<8x_S+x_T=6<8 となるので内点解でよいが,「最適反応関数を求めよ」と言われたときは定義域を1行添えておくと正確である。

設問3 企業 TT の最適反応関数

同時手番と取り違えない

TT が xUx_U を所与として最大化すると xT=(8−xS−xU)/2x_T=(8-x_S-x_U)/2 となり,これは誤りである。逐次手番では,後に動く企業の反応関数を代入してから微分する。「xUx_U を xS,xTx_S,x_T の関数として代入する」という一手を式で示すことが,この設問の得点源である。

括弧の中が半分になる意味

代入後の残余需要 (8−xS−xT)/2(8-x_S-x_T)/2 は,TT が1単位増やすと UU が 12\tfrac12 単位減らすため,実効的な需要の傾きが半分になることを表している。後続企業が生産を控えてくれる分だけ,先手の企業は強気に出られる。

設問4 均衡における各企業の生産量

検算

価格は P=9−4−2−1=2P=9-4-2-1=2。各企業の利潤は (P−1)xi(P-1)x_i なので πS=4\pi_S=4,πT=2\pi_T=2,πU=1\pi_U=1 となる。生産量も利潤も先手から順に 4:2:14:2:1 と半分ずつになる。この規則性を確かめると,代入のどこかで計算を落としていないかが分かる。

同時手番との比較

同じ需要・費用で3企業がクールノー競争(同時手番)を行うと,対称均衡は xi=(8)/(3+1)=2x_i=(8)/(3+1)=2 となり,総生産量は 66,価格は 33 である。逐次手番では総生産量が 77,価格は 22 となり,生産量は増えて価格は下がる。先手の SS が 44 を選んでコミットすることで後続を押し下げる先手の優位(first-mover advantage)が働くためである。この比較を1段落添えると,30点の設問として十分な厚みになる。

失点しやすい点

後ろ向き帰納法の順序を守る。SS の1階条件を立てる前に,xTx_T と xUx_U の両方を xSx_S だけの関数にしておく必要がある。xUx_U に xTx_T の反応関数を入れ忘れると,xUx_U に xTx_T が残ったまま微分することになり,均衡がずれる。また Ci=xiC_i=x_i を「固定費用」と読まないこと。限界費用1の可変費用である。

ミクロ経済学:3企業の逐次手番寡占(シュタッケルベルグ)の途中式・最終答をPDFで見る

第3問 — 国際マクロ経済学:国際金融のトリレンマ

金利平価の式を必ず書く

50点の論述で言葉だけの説明にとどめると差がつかない。i=i∗+(Ee−E)/Ei=i^{*}+(E^{e}-E)/E を書き,固定相場の信認によって第2項が消えることを示すのが,トリレンマの数式による説明である。この1行があるかどうかで答案の水準が変わる。

「調整の過程」を書く

結論だけでなく,3つを同時に立てようとしたときに何が起こるか(資本流出,介入,マネタリーベースの減少,準備の枯渇,通貨危機)を順に書くと,トリレンマが単なる分類ではなく市場の力によって強制される制約であることが示せる。1990年代のアジア通貨危機や1992年の欧州通貨危機を例に挙げてもよい。

留保にも触れる

現実には3つは連続的な選択であり,中間的な制度(管理フロート,バンド制,部分的な資本規制)が取られる。また,資本移動が自由でも自国通貨の為替相場が変動すれば金融政策の独立性が完全に得られるとは限らない,というグローバル金融循環(global financial cycle)の議論もあり,「トリレンマはディレンマに近い」という主張がある。この留保を1段落添えると,「議論しなさい」という指示に対して踏み込んだ答案になる。

失点しやすい点

「固定相場だと金融政策が効かない」とだけ書くと,資本移動の自由という前提が抜ける。資本規制があれば固定相場でも独立した金融政策は可能なので,3つの条件のどれを外すかで結論が変わることを明示する。トリレンマの主張は「3つのうち任意の2つは両立するが,3つは両立しない」である。

国際マクロ経済学:国際金融のトリレンマの途中式・最終答をPDFで見る

第4問 — マクロ経済学:用語説明5題

答案の分量

1題10点なので,1題あたり解答用紙で5〜8行が目安である。定義を1文で言い切り,式または数値例を1つ置き,最後に「なぜそれが重要か」を1文添える構成にすると,5題を通して分量が揃う。

式を1本入れる効果

信用創造の D=D0/rD=D_0/r,小国開放経済の S−I=NXS-I=NX,価格指数の2式は,どれも1行で書けて定義の理解を示せる。式を書かずに言葉だけで説明した答案とは,同じ内容でも評価が変わる。

失点しやすい点

付加価値と帰属価値は「価値」という語が共通するだけで内容が無関係な2語である。どちらか一方だけを説明して終わらないように,2語を分けて書く。時間非整合性は「政策が途中で変わること」ではなく,「事前に最適だった政策が事後には最適でなくなる」という構造の問題であり,民間の期待形成が本質であることを書く。ラスパイレスとパーシェは,加重に使う数量がどちらの時点のものかを取り違えないよう,式で示すのが確実である。

マクロ経済学:用語説明5題の途中式・最終答をPDFで見る

年度別の解答例(6年度)

  • 2026年度 第Ⅱ期(全4問)

    ミクロ経済学:費用最小化・規模に関する収穫・完全競争企業の供給 / ミクロ経済学:非対称な費用の下でのクールノー競争 / マクロ経済学:2期間モデルの最適条件と定率税・定額税の比較

  • 2026年度 第Ⅰ期(全4問)

    ミクロ経済学:u=\sqrt{x_1}+3\sqrt{x_2} の消費者理論7題 / 公共経済学:公共財の私的供給ゲームと過少供給 / マクロ経済学:国債発行を財源とする減税は消費を増やすか(リカードの等価定理)

  • 2025年度 第Ⅱ期(このページ・全4問)

    ゲーム理論:3×3協調ゲームの純粋戦略・混合戦略ナッシュ均衡 / ミクロ経済学:3企業の逐次手番寡占(シュタッケルベルグ) / 国際マクロ経済学:国際金融のトリレンマ

  • 2025年度 第Ⅰ期(全4問)

    ミクロ経済学:コブ=ダグラス型効用の需要・間接効用関数・支出関数 / ミクロ経済学:1要素企業の要素需要関数と利潤関数 / マクロ経済学:名目金利とインフレ率の正の相関(フィッシャー式とテイラー・ルール)

  • 2024年度 第Ⅱ期(全4問)

    ミクロ経済学:コブ=ダグラス型生産関数の限界生産性・規模の収穫・短期と長期の費用 / ゲーム理論:標準形ゲームの純粋戦略・混合戦略ナッシュ均衡と均衡の一意性 / マクロ経済学:総供給曲線が右上がりになるメカニズム

  • 2024年度 第Ⅰ期(全4問)

    ミクロ経済学:準線形効用の需要関数・市場需要・消費者余剰 / ミクロ経済学:クールノー複占と非対称費用の下での端点均衡 / 金融論:コンソル債の現在価値と金利,ゼロ金利下の政策手段

2025年度 第Ⅱ期の出題内容

全4問

この4問の分野はマクロ経済学2問・ミクロ経済学1問です。

大問分野主題解説の小見出し最終答
第1問3×3協調ゲームの純粋戦略・混合戦略ナッシュ均衡協調ゲームの構造 / 台の対応を先に示すあり
第2問ミクロ経済学3企業の逐次手番寡占(シュタッケルベルグ)限界費用を先に引いておく / 非負制約への言及あり
第3問マクロ経済学国際金融のトリレンマ金利平価の式を必ず書く / 「調整の過程」を書くあり
第4問マクロ経済学用語説明5題式を1本入れる効果あり

2025年度 第Ⅱ期の解説には失点しやすい点3件・検算2件が付いています。

前年度(2025年度 第Ⅰ期)との違い

大問数
2025年度 第Ⅰ期 4問 → 2025年度 第Ⅱ期 4問
2025年度 第Ⅰ期の解答例

神戸大学の公式過去問

公開年度範囲
2024〜2026年度のⅠ期・Ⅱ期(直近3年)
公式の解答例
非公開(問題冊子のみ)
英語の扱い
TOEIC・TOEFL などの英語外部試験のスコア提出。学内での英語筆記試験はない。
院試hubの最終確認
2026-09-04
神戸大学の公式過去問PDF