神戸大 経済学研究科 経済理論 2024年度 第Ⅰ期 院試 過去問 解答例・解説(全4問)
全4問の分野はミクロ経済学2問です。解説はすべて、途中式と最終答は大問1問ぶんを公開しています。残りは解答PDFに収録しています。問題本文は含みません。
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第1問 — ミクロ経済学:準線形効用の需要関数・市場需要・消費者余剰
所得効果がないこと
準線形効用では,財1の限界効用が だけの関数で,財2の限界効用が定数である。したがって内点条件 に所得が入らず,需要は価格だけで決まる。所得の変化はすべて財2の消費に吸収される。この性質を1行明記すると,設問4で消費者余剰を面積で測れる理由の説明になる。
端点解に触れる
所得が小さいと財2の消費が負になってしまうので,そのときは全額を財1に使う端点解になる。答案では内点解を主に書き,条件を1行添えておけば十分である。以下では内点解を仮定する。
設問3 財1の市場需要関数
水平和であることの意味
同じ価格に直面する各消費者の需要量を足すので,価格を固定して数量を足す(水平和)。需要関数を価格について足すのではない。 は価格弾力性が一定 の需要曲線である。
設問4 のときの消費者余剰
2通りで出すと確実
需要曲線の積分と,効用(便益)から支払いを引く方法の両方で同じ値が出るのは,準線形効用に所得効果がないからである。一般の効用関数では両者は一致せず,等価変分・補償変分と消費者余剰が食い違う。この違いに1文触れると理解の深さが示せる。
積分範囲の上限
は で0に近づき,積分は収束する。需要曲線が縦軸と交わらない形(この例のように)でも,面積が有限であれば消費者余剰は定義できる。上限を とすることに違和感があれば, の限界効用が で発散するため,どんな高い価格でもわずかには買う,と説明できる。
解答
財2の価格は1,財1の価格は なので,消費者 について 効用はどちらの財についても増加するので,最適点では等号で成り立つ。
設問2 各消費者の財1の需要関数消費者1
, なので 。内点条件 より このとき財1への支出は なので, すなわち が内点解の条件である。所得がこれに満たない場合は の端点解となり 。
消費者2
なので内点条件は 財1への支出は で,内点解の条件は 。満たさなければ 。
市場需要は個別需要の水平和である。
定義に沿って積分で求める
準線形効用では消費者余剰は需要曲線の下・価格の上の面積で厳密に測れる。
効用から直接確かめる
のとき消費者1は を消費し,そこから得る便益は ,支払いは なので余剰は 。消費者2は ,便益 ,支払い で余剰は 。合計は 積分で求めた値と一致する。
最終答
(,)
( のとき), ( のとき)。いずれも所得に依存しない
(両者とも内点解となる価格・所得の範囲で)
消費者余剰は (消費者1が ,消費者2が )
第2問 — ミクロ経済学:クールノー複占と非対称費用の下での端点均衡
対称性を仮定してよい理由
反応関数を代入して解いても同じ結果になるが, と は互いに入れ替えても同じ形なので,交点は対角線 上にある。傾きの絶対値が1未満なので交点は一意であり,対称解以外はない。この一文で対称性の仮定を正当化できる。
設問3 均衡における市場価格
検算と比較
各企業の利潤は 。同じ需要・費用で独占なら ,,完全競争なら , である。複占の はこの中間にあり,企業数が増えるほど価格が限界費用に近づくという性質と整合する。
設問4 , のときのナッシュ均衡
負の解が出たら端点を疑う
連立の答えが負になったときに,そのまま「」と書くと大きく失点する。生産量には の制約があるので,1階条件は内点でのみ等号で成り立ち,端点では不等号(限界利潤が非正)になる。 を置いてから企業1の最適化を解き,最後に企業2に逸脱の誘因がないことを確認する,という順序が答案として完結している。
価格と限界費用の比較で読む
均衡価格 と企業2の限界費用 を比べれば,参入しても赤字になることが一目で分かる。数式の確認に加えてこの一言を書くと,端点解が偶然ではなく経済的に必然であることが伝わる。
設問2との対比
費用が同じなら市場を分け合って ,総生産量 ,価格 だった。費用差が広がると効率の悪い企業が退出し,総生産量は に減り価格は に上がる。競争相手が消えることで価格が上がるという点を添えると,10点の設問として厚みが出る。
第3問 — 金融論:コンソル債の現在価値と金利,ゼロ金利下の政策手段
数値で確かめる
,, なら となり,額面と一致する。クーポン率と市場金利が等しいとき債券は額面で取引される(パー),という基本と合う。 なら , なら である。
設問2 金利が上昇すると債券価格が下落する理由
因果の向き
「金利が上がるから価格が下がる」とも「価格が下がるから利回りが上がる」とも言えるが,債券市場では価格と利回りは同じ現象の裏表である。中央銀行が債券を売買して価格を動かすことが,そのまま金利を動かすことになる——この点が設問3につながる。
設問3 市場金利0\%の経済における政策手段
(1)(2)を「踏まえて」答える
設問文が「上の問題(1)(2)を踏まえると」と指示しているので,債券価格と金利が逆に動くという関係を明示的に使う。中央銀行の公開市場操作は債券の売買であり,価格を動かすことで金利を動かしている,という筋道を1文書くと指示に応えたことになる。
上げる場合と下げる場合の非対称性
金利を上げる方向には制約がないが,下げる方向にはゼロ下限という制約がある。この非対称性が,デフレ下で金融政策が効きにくい理由であり,非伝統的手段が必要になる理由でもある。この対比を明示すると20点の設問として十分な内容になる。
第4問 — 国際金融論:購買力平価・金利平価と実質金利の均等化
式の並べ方
3本の式を(1)(2)(3)と番号を付けて並べ,代入の順序を明示するのがこの設問の正しい書き方である。20点の配点は導出過程に置かれているので,結論の だけを書いても取り切れない。
結論の意味
実質金利が国際的に均等化するということは,資本が実質収益率の高い国へ流れる裁定が働くことを意味する。名目金利の差は,実質金利の差ではなく予想インフレ率の差(=予想される減価率)を反映しているにすぎない。高金利通貨に投資しても,その通貨が予想どおり減価すれば,実質的な超過収益は得られない。
現実との乖離
実証的には,購買力平価は短期には大きく外れ(実質為替レートは持続的に変動する),カバーなし金利平価も成り立たない(高金利通貨がむしろ増価する「フォワード・プレミアム・パズル」,キャリートレードの収益性)。したがって実質金利平価も短期には成り立たない。長期・平均的には成り立つ傾向があるという留保を1文添えると,答案として締まる。
年度別の解答例(6年度)
ミクロ経済学:費用最小化・規模に関する収穫・完全競争企業の供給 / ミクロ経済学:非対称な費用の下でのクールノー競争 / マクロ経済学:2期間モデルの最適条件と定率税・定額税の比較
ミクロ経済学:u=\sqrt{x_1}+3\sqrt{x_2} の消費者理論7題 / 公共経済学:公共財の私的供給ゲームと過少供給 / マクロ経済学:国債発行を財源とする減税は消費を増やすか(リカードの等価定理)
ゲーム理論:3×3協調ゲームの純粋戦略・混合戦略ナッシュ均衡 / ミクロ経済学:3企業の逐次手番寡占(シュタッケルベルグ) / 国際マクロ経済学:国際金融のトリレンマ
ミクロ経済学:コブ=ダグラス型効用の需要・間接効用関数・支出関数 / ミクロ経済学:1要素企業の要素需要関数と利潤関数 / マクロ経済学:名目金利とインフレ率の正の相関(フィッシャー式とテイラー・ルール)
ミクロ経済学:コブ=ダグラス型生産関数の限界生産性・規模の収穫・短期と長期の費用 / ゲーム理論:標準形ゲームの純粋戦略・混合戦略ナッシュ均衡と均衡の一意性 / マクロ経済学:総供給曲線が右上がりになるメカニズム
2024年度 第Ⅰ期(このページ・全4問)
ミクロ経済学:準線形効用の需要関数・市場需要・消費者余剰 / ミクロ経済学:クールノー複占と非対称費用の下での端点均衡 / 金融論:コンソル債の現在価値と金利,ゼロ金利下の政策手段
2024年度 第Ⅰ期の出題内容
全4問
神戸大学の公式過去問
- 公開年度範囲
- 2024〜2026年度のⅠ期・Ⅱ期(直近3年)
- 公式の解答例
- 非公開(問題冊子のみ)
- 英語の扱い
- TOEIC・TOEFL などの英語外部試験のスコア提出。学内での英語筆記試験はない。
- 院試hubの最終確認
- 2026-09-04