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神戸大 経済学研究科 経済理論 2026年度 第Ⅰ期 院試 過去問 解答例・解説(全4問)

全4問の分野はマクロ経済学2問、ミクロ経済学1問です。解説はすべて、途中式と最終答は大問1問ぶんを公開しています。残りは解答PDFに収録しています。問題本文は含みません。

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第1問 — ミクロ経済学:u=\sqrt{x_1}+3\sqrt{x_2} の消費者理論7題

間接効用関数を作っておくと速い

設問1の一般化として,所得 mm のとき x1=2m11x_1=\tfrac{2m}{11} となるので a=2m/11a=\sqrt{2m/11}, u=1122m11=11m2. u=\frac{11}{2}\sqrt{\frac{2m}{11}}=\sqrt{\frac{11m}{2}} . これを mm について解けば m=2u211m=\dfrac{2u^{2}}{11} で,u=10u=10 を入れると 200/11200/11 が直ちに出る。m=20m=20 を入れると u=110≈10.49>10u=\sqrt{110}\approx10.49>10 となり,設問1の答えと整合する(20より小さい所得で足りる)。

設問3 p1p_1 が1から2に上がるときの代替効果

符号が負になることは一般に保証される

自己価格についての代替効果は,効用を一定に保つ限り必ず負(または0)である。スルツキー行列の対角成分が非正であることによる。数値を出す前に「代替効果は理論上必ず負」と書いておくと,計算が合わなくても符号の判断で得点できる。

x1h(1)x_1^{h}(1) が設問1と一致することを確認

x1h(1)=40/11x_1^{h}(1)=40/11 は設問1のマーシャル需要と同じ値になる。当初の点では両者が一致するので,これは計算が正しいことの検算になる。

設問4 財1が劣等財でないことの証明

需要関数を導いてから微分する

「劣等財でないことを証明せよ」は,需要関数を所得で微分して符号を見るのが最も確実である。この効用関数は所得について1次同次な需要を生むので x1x_1 が mm に比例し,符号の判定が1行で済む。無差別曲線の形から議論しようとすると煩雑になる。

設問5 制約が x12+x22=1x_1^{2}+x_2^{2}=1 の場合

制約が非線形でも手順は同じ

予算制約が直線でなくなっても,ラグランジュ条件「限界効用の比 = 制約の勾配の比」は同じ形で使える。ここでは制約の勾配が (2x1,2x2)(2x_1,2x_2) なので,接点条件は MRS=x1/x2\mathrm{MRS}=x_1/x_2 になる。実際 x23x1=x1x2\dfrac{\sqrt{x_2}}{3\sqrt{x_1}}=\dfrac{x_1}{x_2} を整理すると x23/2=3x13/2x_2^{3/2}=3x_1^{3/2} となり,上と一致する。

検算

x12+x22=0.1878+0.8123=1.000x_1^{2}+x_2^{2}=0.1878+0.8123=1.000 で制約を満たす。32/3≈2.0803^{2/3}\approx2.080 を使って比 x2/x1≈2.080x_2/x_1\approx2.080 を確かめるとよい。

設問6 3財の場合

検算

83+2⋅6+2⋅83=83+12+163=8+12=20\tfrac83+2\cdot6+2\cdot\tfrac83=\tfrac83+12+\tfrac{16}{3}=8+12=20 で予算をちょうど使い切る。財1と財3は係数が 11 と 22,価格が 11 と 22 で比が等しいので消費量が一致する。この対応に気づくと計算が1行減る。

設問7 非線形価格の下での予算集合の面積

台形の面積として確かめる

第1区間は上底 1010,下底 88,幅 44 の台形で (10+8)2×4=36\tfrac{(10+8)}{2}\times4=36。第2区間は上底 88,下底 00,幅 3232 の三角形で 8×322=128\tfrac{8\times32}{2}=128。積分と一致する。図を描いて台形と三角形に分ければ,積分を使わずに求められる。

数量割引で予算集合が広がる

4単位を超えた分の単価が半額になるため,境界線は x1=4x_1=4 で折れ曲がり,そこから先は緩やかになる。もし全区間で単価が1なら最大消費量は 2020,面積は 20×102=100\tfrac{20\times10}{2}=100 である。164164 はこれより大きく,割引によって選択肢が増えたことを表す。この比較を添えると,計算だけで終わらない答案になる。

失点しやすい点

x1>4x_1>4 の領域で単価0.5をすべての単位に適用して e(x1)=0.5x1e(x_1)=0.5x_1 としない。最初の4単位は単価1なので,4×1=44\times1=4 を必ず加える。問題文が 4×1+(6−4)×0.5=54\times1+(6-4)\times0.5=5 という例を挙げているのは,この点を確認させるためである。

解答

接点条件

限界効用は MU1=12x1\mathrm{MU}_1=\dfrac{1}{2\sqrt{x_1}},MU2=32x2\mathrm{MU}_2=\dfrac{3}{2\sqrt{x_2}} なので MRS=MU1MU2=x23x1. \mathrm{MRS}=\frac{\mathrm{MU}_1}{\mathrm{MU}_2}=\frac{\sqrt{x_2}}{3\sqrt{x_1}} . p1=1p_1=1,p2=2p_2=2 より MRS=p1/p2=12\mathrm{MRS}=p_1/p_2=\tfrac12 とおくと x23x1=12⟹x2=32x1⟹x2=94x1. \frac{\sqrt{x_2}}{3\sqrt{x_1}}=\frac12 \quad\Longrightarrow\quad \sqrt{x_2}=\frac32\sqrt{x_1} \quad\Longrightarrow\quad x_2=\frac94 x_1 .

予算制約に代入

x1+2x2=x1+2⋅94x1=112x1=20⟹x1=4011,x2=94⋅4011=9011. x_1+2x_2=x_1+2\cdot\frac94x_1=\frac{11}{2}x_1=20 \quad\Longrightarrow\quad x_1=\frac{40}{11},\qquad x_2=\frac94\cdot\frac{40}{11}=\frac{90}{11}. uu は各財について狭義凹で無差別曲線は原点に凸なので,接点が最大を与える。

設問2 効用10以上を得るのに必要な最低所得

支出最小化は同じ接点条件

支出最小化でも接点条件 x2=94x1x_2=\tfrac94x_1 は変わらない。a=x1a=\sqrt{x_1} とおくと x2=32a\sqrt{x_2}=\tfrac32a なので u=x1+3x2=a+3⋅32a=112a. u=\sqrt{x_1}+3\sqrt{x_2}=a+3\cdot\frac32 a=\frac{11}{2}a . u=10u=10 より a=2011a=\dfrac{20}{11},すなわち x1=a2=400121,x2=94x1=900121. x_1=a^{2}=\frac{400}{121},\qquad x_2=\frac94x_1=\frac{900}{121}. 必要な支出は x1+2x2=400+1800121=2200121=20011. x_1+2x_2=\frac{400+1800}{121}=\frac{2200}{121}=\frac{200}{11}.

ヒックス需要を求める

効用を uu に保ったまま価格 p1p_1(p2=2p_2=2)に直面する場合,接点条件は x23x1=p12\dfrac{\sqrt{x_2}}{3\sqrt{x_1}}=\dfrac{p_1}{2},すなわち x2=3p12x1\sqrt{x_2}=\dfrac{3p_1}{2}\sqrt{x_1}。これを効用の式に入れると u=x1+3⋅3p12x1=x1(1+9p12)=x1⋅2+9p12, u=\sqrt{x_1}+3\cdot\frac{3p_1}{2}\sqrt{x_1} =\sqrt{x_1}\left(1+\frac{9p_1}{2}\right) =\sqrt{x_1}\cdot\frac{2+9p_1}{2}, x1=2u2+9p1⟹x1h(p1,u)=4u2(2+9p1)2. \sqrt{x_1}=\frac{2u}{2+9p_1} \quad\Longrightarrow\quad x_1^{h}(p_1,u)=\frac{4u^{2}}{(2+9p_1)^{2}} .

代替効果の計算

当初の効用水準は u2=110u^{2}=110(設問2の注より u=110u=\sqrt{110})。 x1h(1)=4⋅110112=440121=4011,x1h(2)=4⋅110202=440400=1110. x_1^{h}(1)=\frac{4\cdot110}{11^{2}}=\frac{440}{121}=\frac{40}{11}, \qquad x_1^{h}(2)=\frac{4\cdot110}{20^{2}}=\frac{440}{400}=\frac{11}{10}. 代替効果は効用を一定に保った変化分なので Δx1代替=1110−4011=121−400110=−279110≈−2.54. \Delta x_1^{\text{代替}}=\frac{11}{10}-\frac{40}{11} =\frac{121-400}{110}=-\frac{279}{110}\approx-2.54 .

マーシャル需要を一般の p1,mp_1,m で求める

接点条件 x2=3p12x1\sqrt{x_2}=\dfrac{3p_1}{2}\sqrt{x_1} より x2=9p124x1x_2=\dfrac{9p_1^{2}}{4}x_1。予算制約 p1x1+2x2=mp_1x_1+2x_2=m に代入すると p1x1+2⋅9p124x1=p1x1(1+9p12)=m, p_1x_1+2\cdot\frac{9p_1^{2}}{4}x_1 =p_1x_1\left(1+\frac{9p_1}{2}\right)=m, x1(p1,m)=2mp1 (2+9p1). x_1(p_1,m)=\frac{2m}{p_1\,(2+9p_1)} .

所得についての単調性

p1>0p_1>0 を固定すると分母は mm に依存しない正の定数なので ∂x1∂m=2p1(2+9p1)>0. \frac{\partial x_1}{\partial m}=\frac{2}{p_1(2+9p_1)}>0 . 所得が増えれば財1の需要は必ず増える。したがって財1は正常財であり,劣等財ではない。

ラグランジュ条件

max⁡ x1+3x2s.t.x12+x22=1, x1,x2≥0. \max\ \sqrt{x_1}+3\sqrt{x_2} \quad\text{s.t.}\quad x_1^{2}+x_2^{2}=1,\ x_1,x_2\ge0 . L=x1+3x2−λ(x12+x22−1)\mathcal{L}=\sqrt{x_1}+3\sqrt{x_2}-\lambda(x_1^{2}+x_2^{2}-1) として 12x1=2λx1,32x2=2λx2. \frac{1}{2\sqrt{x_1}}=2\lambda x_1,\qquad \frac{3}{2\sqrt{x_2}}=2\lambda x_2 . それぞれ 1=4λx13/21=4\lambda x_1^{3/2},3=4λx23/23=4\lambda x_2^{3/2} と書けるので,辺々割って 3=(x2x1)3/2⟹x2=32/3x1. 3=\left(\frac{x_2}{x_1}\right)^{3/2} \quad\Longrightarrow\quad x_2=3^{2/3}x_1 .

制約に代入

x12(1+34/3)=1⟹x1=11+34/3,x2=32/31+34/3. x_1^{2}\left(1+3^{4/3}\right)=1 \quad\Longrightarrow\quad x_1=\frac{1}{\sqrt{1+3^{4/3}}},\qquad x_2=\frac{3^{2/3}}{\sqrt{1+3^{4/3}}} . 数値では 34/3≈4.3273^{4/3}\approx4.327 なので x1≈0.433x_1\approx0.433,x2≈0.901x_2\approx0.901,このとき u≈0.658+2.848=3.506u\approx0.658+2.848=3.506。

加重限界効用均等

u=x1+3x2+2x3u=\sqrt{x_1}+3\sqrt{x_2}+2\sqrt{x_3},p=(1,2,2)p=(1,2,2),m=20m=20。最適点では各財の1円あたり限界効用が等しい。 12x1=32x2⋅12=22x3⋅12. \frac{1}{2\sqrt{x_1}} =\frac{3}{2\sqrt{x_2}}\cdot\frac12 =\frac{2}{2\sqrt{x_3}}\cdot\frac12 . 第1式と第2式から 12x1=34x2\dfrac{1}{2\sqrt{x_1}}=\dfrac{3}{4\sqrt{x_2}},すなわち x2=32x1\sqrt{x_2}=\tfrac32\sqrt{x_1},x2=94x1x_2=\tfrac94x_1。 第1式と第3式から 12x1=12x3\dfrac{1}{2\sqrt{x_1}}=\dfrac{1}{2\sqrt{x_3}},すなわち x3=x1x_3=x_1。

予算制約

x1+2x2+2x3=x1+2⋅94x1+2x1=152x1=20⟹x1=83, x_1+2x_2+2x_3 =x_1+2\cdot\frac94x_1+2x_1 =\frac{15}{2}x_1=20 \quad\Longrightarrow\quad x_1=\frac{8}{3}, x2=94⋅83=6,x3=83. x_2=\frac94\cdot\frac83=6,\qquad x_3=\frac83 .

支出関数

財1への支出は e(x1)={x1(0≤x1≤4)4+0.5(x1−4)=2+0.5x1(x1>4) e(x_1)= \begin{cases} x_1 & (0\le x_1\le 4)\\[2pt] 4+0.5(x_1-4)=2+0.5x_1 & (x_1>4) \end{cases} 予算集合は {(x1,x2)≥0: e(x1)+2x2≤20}\{(x_1,x_2)\ge 0:\ e(x_1)+2x_2\le 20\} である。上側の境界は x2={20−x12=10−x12(0≤x1≤4)20−(2+0.5x1)2=9−x14(x1>4) x_2= \begin{cases} \dfrac{20-x_1}{2}=10-\dfrac{x_1}{2} & (0\le x_1\le4)\\[6pt] \dfrac{20-(2+0.5x_1)}{2}=9-\dfrac{x_1}{4} & (x_1>4) \end{cases} x1=4x_1=4 でどちらも 88 となり連続である。x2=0x_2=0 となるのは 9−x14=09-\tfrac{x_1}{4}=0,すなわち x1=36x_1=36 のときで,これが財1の最大消費量である。

面積の計算

∫04 ⁣(10−x12)dx1=[10x1−x124]04=40−4=36, \int_0^{4}\!\left(10-\frac{x_1}{2}\right)dx_1 =\Bigl[10x_1-\frac{x_1^{2}}{4}\Bigr]_0^{4} =40-4=36, ∫436 ⁣(9−x14)dx1=[9x1−x128]436=(324−162)−(36−2)=162−34=128. \int_4^{36}\!\left(9-\frac{x_1}{4}\right)dx_1 =\Bigl[9x_1-\frac{x_1^{2}}{8}\Bigr]_4^{36} =(324-162)-(36-2)=162-34=128 . 合計は 36+128=16436+128=164。

最終答

(x1,x2)=(4011, 9011)(x_1,x_2)=\left(\dfrac{40}{11},\ \dfrac{90}{11}\right)

20011≈18.18\dfrac{200}{11}\approx 18.18

代替効果は −279110≈−2.54-\dfrac{279}{110}\approx-2.54 で負

x1=2mp1(2+9p1)x_1=\dfrac{2m}{p_1(2+9p_1)} は mm の増加関数(∂x1/∂m>0\partial x_1/\partial m>0)なので,財1は劣等財ではない

x1=(1+34/3)−1/2≈0.433x_1=\left(1+3^{4/3}\right)^{-1/2}\approx0.433, x2=32/3(1+34/3)−1/2≈0.901x_2=3^{2/3}\left(1+3^{4/3}\right)^{-1/2}\approx0.901

(x1,x2,x3)=(83, 6, 83)(x_1,x_2,x_3)=\left(\dfrac83,\ 6,\ \dfrac83\right)

予算集合の面積は 164164

第2問 — 公共経済学:公共財の私的供給ゲームと過少供給

限界便益は「足す」

公共財は非競合的なので,1単位の追加から両者が同時に便益を受ける。したがって社会的限界便益は各自の限界便益の和であり,これを限界費用(ここでは1)と等しくするのがサミュエルソン条件である。私的財のように各自の限界便益を価格に等しくするのではない,という点が最大の分岐点になる。

設問2 同時決定ゲームのナッシュ均衡

ただ乗りによる過少供給

yNE=314≈0.214<yeff=14=0.25y^{\mathrm{NE}}=\tfrac3{14}\approx0.214<y^{\mathrm{eff}}=\tfrac14=0.25 である。均衡では,各自が自分の限界便益しか勘定に入れないので,相手が受ける便益(正の外部性)が無視され,公共財は社会的に望ましい水準を下回る。さらに,限界便益の低いプレイヤー1は一切拠出せず,完全にただ乗りする。準線形の設定では,最も評価の高い1人だけが供給しその水準で均衡する,という結果になりやすい。この構造を1段落書くと,10点の設問として厚みが出る。

両者が拠出する均衡がないことの確認

g1>0g_1>0 かつ g2>0g_2>0 の均衡があるとすれば,v1′(y)=1v_1'(y)=1 と v2′(y)=1v_2'(y)=1 が同時に成り立たねばならないが,y=0.2y=0.2 と y=3/14y=3/14 は異なるので不可能である。この1行を書いておくと,場合分けを尽くしたことが示せる。

検算

均衡でのプレイヤー2の効用は v2(314)+10−314v_2(\tfrac3{14})+10-\tfrac3{14}。v2(314)=4⋅314−7⋅9196=67−928=24−928=1528v_2(\tfrac3{14})=4\cdot\tfrac3{14}-7\cdot\tfrac9{196}=\tfrac{6}{7}-\tfrac{9}{28}=\tfrac{24-9}{28}=\tfrac{15}{28} なので U2=1528+10−628=10+928U_2=\tfrac{15}{28}+10-\tfrac{6}{28}=10+\tfrac{9}{28}。プレイヤー1は拠出せずに U1=v1(314)+10=914−4598+10U_1=v_1(\tfrac3{14})+10=\tfrac{9}{14}-\tfrac{45}{98}+10 を得る。拠出しない側のほうが得をしているという構図が数値でも確認できる。

公共経済学:公共財の私的供給ゲームと過少供給の途中式・最終答をPDFで見る

第3問 — マクロ経済学:国債発行を財源とする減税は消費を増やすか(リカードの等価定理)

予算制約の式を2本書く

政府の異時点間予算制約と家計の異時点間予算制約の2本を書き,前者を後者に代入すると C1+C21+r=Y1+Y21+r−(G1+G21+r) C_1+\frac{C_2}{1+r}=Y_1+\frac{Y_2}{1+r}-\left(G_1+\frac{G_2}{1+r}\right) となり,右辺に T1,T2T_1,T_2 が現れないことが一目で分かる。この式が等価定理の核心なので,論述でも必ず書く。

「直ぐに」という語に反応する

問題文は「直ぐに民間消費は増える」としている。仮に将来の政府支出削減を伴う減税なら生涯可処分所得が実際に増えるので消費は増えるが,その場合でも消費は生涯所得の増加分に応じて平滑化されるので,増加は減税額より小さく,時期も当期に集中しない。「直ぐに,減税額に見合う分だけ」という含意を否定できるかが評価の要点である。

失点しやすい点

「国債発行だから将来世代の負担になる」とだけ書くのは,等価定理の説明になっていない。等価定理は,同一世代であれば負担が現在価値で不変であることを示すものである。世代間の移転は,むしろ等価定理が成り立たない理由として挙げる。この順序を取り違えないこと。

マクロ経済学:国債発行を財源とする減税は消費を増やすか(リカードの等価定理)の途中式・最終答をPDFで見る

第4問 — マクロ経済学:デフレーションの安定化効果と不安定化効果(IS-LM)

シフトする曲線を明示する

4つの効果それぞれについて,IS曲線とLM曲線のどちらがどちら向きに動くかを明記する。ケインズ効果はLMの右シフト,ピグー効果はISの右シフト,負債デフレとデフレ期待はISの左シフト,と書き分けるだけで論旨が整理される。図を描ける場合は,LMの右シフトとISの左シフトを1枚の図に重ねて,産出の変化が両者の大小で決まることを示す。

名目と実質の区別

デフレの議論では,MM と M/PM/P,ii と rr の区別が要になる。LM曲線に入るのは実質貨幣供給,投資関数に入るのは実質利子率である。この2つを区別せずに「デフレで金利が下がるから投資が増える」と書くと,デフレ期待の効果を落とすことになる。

失点しやすい点

「共存する」という見解を評価する問題なので,どちらか一方だけを説明して終わらない。また,安定化と不安定化のどちらが強いかは状況に依存するという条件付きの結論を述べ,その条件(ゼロ金利制約,民間債務の水準,予想の形成)を明示する。無条件に「デフレは悪い」と書くと,IS-LMモデルによる議論という指示に応えたことにならない。

マクロ経済学:デフレーションの安定化効果と不安定化効果(IS-LM)の途中式・最終答をPDFで見る

年度別の解答例(6年度)

  • 2026年度 第Ⅱ期(全4問)

    ミクロ経済学:費用最小化・規模に関する収穫・完全競争企業の供給 / ミクロ経済学:非対称な費用の下でのクールノー競争 / マクロ経済学:2期間モデルの最適条件と定率税・定額税の比較

  • 2026年度 第Ⅰ期(このページ・全4問)

    ミクロ経済学:u=\sqrt{x_1}+3\sqrt{x_2} の消費者理論7題 / 公共経済学:公共財の私的供給ゲームと過少供給 / マクロ経済学:国債発行を財源とする減税は消費を増やすか(リカードの等価定理)

  • 2025年度 第Ⅱ期(全4問)

    ゲーム理論:3×3協調ゲームの純粋戦略・混合戦略ナッシュ均衡 / ミクロ経済学:3企業の逐次手番寡占(シュタッケルベルグ) / 国際マクロ経済学:国際金融のトリレンマ

  • 2025年度 第Ⅰ期(全4問)

    ミクロ経済学:コブ=ダグラス型効用の需要・間接効用関数・支出関数 / ミクロ経済学:1要素企業の要素需要関数と利潤関数 / マクロ経済学:名目金利とインフレ率の正の相関(フィッシャー式とテイラー・ルール)

  • 2024年度 第Ⅱ期(全4問)

    ミクロ経済学:コブ=ダグラス型生産関数の限界生産性・規模の収穫・短期と長期の費用 / ゲーム理論:標準形ゲームの純粋戦略・混合戦略ナッシュ均衡と均衡の一意性 / マクロ経済学:総供給曲線が右上がりになるメカニズム

  • 2024年度 第Ⅰ期(全4問)

    ミクロ経済学:準線形効用の需要関数・市場需要・消費者余剰 / ミクロ経済学:クールノー複占と非対称費用の下での端点均衡 / 金融論:コンソル債の現在価値と金利,ゼロ金利下の政策手段

2026年度 第Ⅰ期の出題内容

全4問

この4問の分野はマクロ経済学2問・ミクロ経済学1問です。

大問分野主題解説の小見出し最終答
第1問ミクロ経済学u=\sqrt{x_1}+3\sqrt{x_2} の消費者理論7題間接効用関数を作っておくと速い / 符号が負になることは一般に保証されるあり
第2問公共財の私的供給ゲームと過少供給限界便益は「足す」 / ただ乗りによる過少供給あり
第3問マクロ経済学国債発行を財源とする減税は消費を増やすか(リカードの等価定理)予算制約の式を2本書く / 「直ぐに」という語に反応するあり
第4問マクロ経済学デフレーションの安定化効果と不安定化効果(IS-LM)シフトする曲線を明示する / 名目と実質の区別あり

2026年度 第Ⅰ期の解説には失点しやすい点3件・検算2件が付いています。

前年度(2025年度 第Ⅱ期)との違い

大問数
2025年度 第Ⅱ期 4問 → 2026年度 第Ⅰ期 4問
2025年度 第Ⅱ期の解答例

神戸大学の公式過去問

公開年度範囲
2024〜2026年度のⅠ期・Ⅱ期(直近3年)
公式の解答例
非公開(問題冊子のみ)
英語の扱い
TOEIC・TOEFL などの英語外部試験のスコア提出。学内での英語筆記試験はない。
院試hubの最終確認
2026-09-04
神戸大学の公式過去問PDF