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神戸大 経済学研究科 経済理論 2025年度 第Ⅰ期 院試 過去問 解答例・解説(全4問)

全4問の分野はマクロ経済学2問、ミクロ経済学2問です。解説はすべて、途中式と最終答は大問1問ぶんを公開しています。残りは解答PDFに収録しています。問題本文は含みません。

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第1問 — ミクロ経済学:コブ=ダグラス型効用の需要・間接効用関数・支出関数

aU/xaU/x という形

コブ=ダグラス型では限界効用が「指数 ×\times 効用 ÷\div 消費量」と書ける。この形にしておくと,設問3で限界代替率を作るときに UU が約分されて MRSxy=ab⋅yx\mathrm{MRS}_{xy}=\dfrac{a}{b}\cdot\dfrac{y}{x} と一瞬で出る。

設問3 財 xx の最適消費量

支出シェアが一定

Pxx∗/M=a/sP_xx^{*}/M=a/s であり,財 xx への支出の割合は価格にも所得にもよらず指数の比だけで決まる。これがコブ=ダグラス型の最大の特徴で,需要の所得弾力性は1,自己価格弾力性は −1-1,交差価格弾力性は0になる。この一文を添えると理解が示せる。

設問4 間接効用関数

性質の確認

VV は MM について増加,各価格について減少しており,(P,M)(P,M) について0次同次である(MM と全価格を tt 倍すると MsM^{s} が tst^{s} 倍,分母も ta+b+c=tst^{a+b+c}=t^{s} 倍で相殺)。この2点を1行確かめると,代入ミスがないことを自分で保証できる。ロワの恒等式 x∗=−∂V/∂Px∂V/∂Mx^{*}=-\dfrac{\partial V/\partial P_x}{\partial V/\partial M} からも設問3の答えが再現できる。

設問5 支出関数

支出関数の性質で検算

支出関数は価格について1次同次でなければならない。全価格を tt 倍すると括弧の中が ta+b+c=tst^{a+b+c}=t^{s} 倍になり,1/s1/s 乗されて tt 倍になる。条件を満たしている。またシェパードの補題 ∂E/∂Px=xh\partial E/\partial P_x=x^{h} を計算すると ∂E∂Px=as⋅EPx \frac{\partial E}{\partial P_x}=\frac{a}{s}\cdot\frac{E}{P_x} となり,E=ME=M のときに設問3のマーシャル需要と一致する。ヒックス需要とマーシャル需要が同じ点で一致することの確認になる。

答案の書き方

支出最小化を最初から解き直してもよいが,設問4を終えている以上,間接効用関数を逆に解くのが最短である。「支出関数は間接効用関数の MM についての逆関数である」という一文を書いてから式変形に入ると,論理の飛躍がない。

解答

定義どおり

所得 M>0M>0 をすべて3財に振り向けるので Pxx+Pyy+Pzz≤M. P_xx+P_yy+P_zz\le M . 効用が各財について狭義増加なので,最適点では等号で成り立つ(ワルラス法則)。 Pxx+Pyy+Pzz=M,x,y,z≥0. P_xx+P_yy+P_zz=M,\qquad x,y,z\ge0 .

設問2 財 xx の限界効用

MUx=∂U∂x=a xa−1ybzc=a U(x,y,z)x. \mathrm{MU}_x=\frac{\partial U}{\partial x} =a\,x^{a-1}y^{b}z^{c} =\frac{a\,U(x,y,z)}{x}. a>0a>0 より MUx>0\mathrm{MU}_x>0。また ∂2U∂x2=a(a−1)xa−2ybzc \frac{\partial^{2}U}{\partial x^{2}}=a(a-1)x^{a-2}y^{b}z^{c} なので,0<a<10<a<1 のときに限り限界効用は逓減する。

対数変換して解く

UU を最大化することと log⁡U=alog⁡x+blog⁡y+clog⁡z\log U=a\log x+b\log y+c\log z を最大化することは同値である。ラグランジュ関数を L=alog⁡x+blog⁡y+clog⁡z−λ(Pxx+Pyy+Pzz−M) \mathcal{L}=a\log x+b\log y+c\log z-\lambda\bigl(P_xx+P_yy+P_zz-M\bigr) として1階条件を書くと ax=λPx,by=λPy,cz=λPz, \frac{a}{x}=\lambda P_x,\qquad \frac{b}{y}=\lambda P_y,\qquad \frac{c}{z}=\lambda P_z, すなわち Pxx=aλ,Pyy=bλ,Pzz=cλ. P_xx=\frac{a}{\lambda},\qquad P_yy=\frac{b}{\lambda},\qquad P_zz=\frac{c}{\lambda}.

予算制約で λ\lambda を消す

辺々加えると M=a+b+cλ=sλM=\dfrac{a+b+c}{\lambda}=\dfrac{s}{\lambda}(s≡a+b+cs\equiv a+b+c)なので λ=sM\lambda=\dfrac{s}{M}。したがって x∗=aλPx=as⋅MPx. x^{*}=\frac{a}{\lambda P_x}=\frac{a}{s}\cdot\frac{M}{P_x}. 同様に y∗=bsMPyy^{*}=\dfrac{b}{s}\dfrac{M}{P_y},z∗=csMPzz^{*}=\dfrac{c}{s}\dfrac{M}{P_z}。

最適解を効用に代入

V(Px,Py,Pz,M)=(x∗)a(y∗)b(z∗)c=(aMsPx)a(bMsPy)b(cMsPz)c. V(P_x,P_y,P_z,M) =(x^{*})^{a}(y^{*})^{b}(z^{*})^{c} =\left(\frac{aM}{sP_x}\right)^{a} \left(\frac{bM}{sP_y}\right)^{b} \left(\frac{cM}{sP_z}\right)^{c}. MM と ss をまとめると V=aabbccss⋅MsPxaPybPzc,s=a+b+c. V=\frac{a^{a}b^{b}c^{c}}{s^{s}} \cdot\frac{M^{s}}{P_x^{a}P_y^{b}P_z^{c}}, \qquad s=a+b+c .

間接効用関数を所得について解く

支出関数 E(Px,Py,Pz,U)E(P_x,P_y,P_z,U) は,効用水準 UU を達成する最小の支出であり,V(P,E)=UV(P,E)=U を EE について解いたものである。設問4の式で MM を EE,VV を UU と書くと U=aabbccss⋅EsPxaPybPzc, U=\frac{a^{a}b^{b}c^{c}}{s^{s}}\cdot\frac{E^{s}}{P_x^{a}P_y^{b}P_z^{c}}, Es=U⋅ss PxaPybPzcaabbcc, E^{s}=U\cdot\frac{s^{s}\,P_x^{a}P_y^{b}P_z^{c}}{a^{a}b^{b}c^{c}}, E=s(U PxaPybPzcaabbcc)1/s. E=s\left(\frac{U\,P_x^{a}P_y^{b}P_z^{c}}{a^{a}b^{b}c^{c}}\right)^{1/s}.

最終答

Pxx+Pyy+Pzz=MP_xx+P_yy+P_zz=M(x,y,z≥0x,y,z\ge0)

MUx=a xa−1ybzc=aUx\mathrm{MU}_x=a\,x^{a-1}y^{b}z^{c}=\dfrac{aU}{x}

x∗=aa+b+c⋅MPxx^{*}=\dfrac{a}{a+b+c}\cdot\dfrac{M}{P_x}

V=aabbcc(a+b+c)a+b+c⋅Ma+b+cPxaPybPzcV=\dfrac{a^{a}b^{b}c^{c}}{(a+b+c)^{a+b+c}}\cdot\dfrac{M^{a+b+c}}{P_x^{a}P_y^{b}P_z^{c}}

E(Px,Py,Pz,U)=(a+b+c)(U PxaPybPzcaabbcc)1a+b+cE(P_x,P_y,P_z,U)=(a+b+c)\left(\dfrac{U\,P_x^{a}P_y^{b}P_z^{c}}{a^{a}b^{b}c^{c}}\right)^{\frac{1}{a+b+c}}

第2問 — ミクロ経済学:1要素企業の要素需要関数と利潤関数

端点解の条件を「限界利潤の符号」で書く

「k∗=(100−r)/2≤0k^{*}=(100-r)/2\le0 より r≥100r\ge100」と書いても同じ答えになるが,端点解の判定は π′(0)≤0\pi'(0)\le0 で書くほうが一般的で,非負制約のある最大化の作法として正確である。等号のとき k=0k=0 と k>0k>0 が無差別になるので,r=100r=100 を含めてよい。

設問3 kk の要素需要関数

定義域の上限を確認する

問題文がわざわざ k∈[0,50]k\in[0,50] と定義域を与えているので,解がこの範囲に入ることを1行確かめる。r>0r>0 である限り k∗=(100−r)/2<50k^{*}=(100-r)/2<50 なので上限では制約されない。k=50k=50 は yy が最大となる点(MP=0\mathrm{MP}=0)であり,要素価格が正である限りそこまで投入することはない。

需要曲線の形

k∗k^{*} は rr の減少関数で,切片 5050(r→0r\to0),横軸との交点 r=100r=100 の直線である。要素需要曲線は限界生産物価値曲線 VMP(k)=100−2k\mathrm{VMP}(k)=100-2k そのものであり,r=VMP(k)r=\mathrm{VMP}(k) を kk について解いた形になっている。

設問4 利潤関数 π(r)\pi(r)

ホテリングの補題で検算

利潤関数を要素価格で微分すると,符号を反転した要素需要が出るはずである。 ∂π∂r=−2(100−r)4=−100−r2=−k∗(r). \frac{\partial \pi}{\partial r}=-\frac{2(100-r)}{4}=-\frac{100-r}{2}=-k^{*}(r). 設問3の答えと一致するので,代入と整理に誤りがない。この検算は1行で済むうえ,利潤関数と要素需要関数の関係を理解していることも示せる。

利潤関数の性質

π(r)\pi(r) は rr について減少・凸であり,r=100r=100 で π=0\pi=0 となってそれ以上は0のまま平坦になる。r→100−r\to100^{-} で π→0\pi\to0,π′→0\pi'\to0 なので接続は滑らかである。利潤関数が価格について凸になるのは包絡線定理の一般的な帰結であり,これも1行添えるとよい。

失点しやすい点

設問4で場合分けを書かずに π(r)=(100−r)2/4\pi(r)=(100-r)^{2}/4 とだけ答えると,r>100r>100 で利潤が正になるという誤った式になる(実際には操業せず0)。設問2で求めた範囲を必ず反映させる。

ミクロ経済学:1要素企業の要素需要関数と利潤関数の途中式・最終答をPDFで見る

第3問 — マクロ経済学:名目金利とインフレ率の正の相関(フィッシャー式とテイラー・ルール)

2つの説明の関係を書く

設問1は「インフレ予想 →\to 名目金利」,設問2は「インフレ率 →\to 中央銀行 →\to 名目金利」であり,観測される正の相関は同じでも因果の向きが違う。両方が同時に働いている可能性が高く,相関だけからはどちらが主かを識別できない,という一文を最後に置くと,25点+25点の答案として締まる。

テイラー原則の書き方

「α>1\alpha>1」と書くと誤りになる書き方がある。テイラー・ルールを it=r∗+π∗+ϕπ(πt−π∗)+β(yt−y∗)i_t=r^{*}+\pi^{*}+\phi_{\pi}(\pi_t-\pi^{*})+\beta(y_t-y^{*}) と書く流儀では条件が ϕπ>1\phi_{\pi}>1,本文のように πt\pi_t を別に立てる流儀では α>0\alpha>0 である。どちらの書き方をしたかを明示し,「名目金利のインフレ率に対する反応係数が1を超える」という内容で述べれば安全である。

失点しやすい点

実質金利を明示的に書かずに「金利を上げればインフレが収まる」とだけ書かない。効くのは実質金利であり,名目金利の上げ幅がインフレ率の上げ幅を超えることが条件である。指定された3語(テイラー・ルール,テイラー原則,実質金利)はいずれも定義を1文添えて使う。

マクロ経済学:名目金利とインフレ率の正の相関(フィッシャー式とテイラー・ルール)の途中式・最終答をPDFで見る

第4問 — マクロ経済学:対数効用の2期間消費と金利の効果

消費の相対価格

生涯予算制約の左辺で,第2期消費の価格が 11+r\dfrac{1}{1+r} になっている。金利は第2期消費の相対価格を決める変数であり,rr が上がると第2期消費が相対的に安くなる。設問3の代替効果はここから読める。

設問2 各期の最適消費量

オイラー方程式からも同じ

異時点間の最適条件(オイラー方程式)は u′(C1)=β(1+r)u′(C2)u'(C_1)=\beta(1+r)u'(C_2),対数効用では 1C1=β(1+r)C2\dfrac{1}{C_1}=\dfrac{\beta(1+r)}{C_2} すなわち C2=β(1+r)C1C_2=\beta(1+r)C_1 である。これを生涯予算制約に代入しても同じ答えが出る。「導出も明記すること」という指示があるので,どちらの経路でもよいから途中を省かない。

検算

C1+C21+r=Y1+β+βY1+β=YC_1+\dfrac{C_2}{1+r}=\dfrac{Y}{1+\beta}+\dfrac{\beta Y}{1+\beta}=Y となり,生涯予算制約を満たす。β→1\beta\to1 なら C1=C2/(1+r)=Y/2C_1=C_2/(1+r)=Y/2 で消費を均等に配分し,β→0\beta\to0 なら C1→YC_1\to Y ですべてを第1期に使う。極限が直感と合うことも確かめておく。

設問3 金利の変化が各期の消費額に与える影響

「所得は第1期のみ」という設定の意味

この家計は必ず貯蓄者である。もし第2期にも所得があり借入をする家計であれば,金利上昇の所得効果は逆向き(生涯所得の減少)になり,C1C_1 は減る。設問が第1期のみの所得としているのは,所得効果の向きを確定させるためである。この点に触れると,2つの効果の議論が具体的になる。

答案の書き方

「議論しなさい」なので,微分の結果を書いただけでは20点を取り切れない。∂C1/∂r=0\partial C_1/\partial r=0 という結果を示したうえで,それが2つの効果の相殺によるものであること,対数効用という仮定に依存すること,一般の効用関数では符号が変わりうることまで書く。

失点しやすい点

「金利が上がれば貯蓄が増える」と書かない。この設定では貯蓄は rr に依存しない。金利と貯蓄の関係が一意に定まらないのは,代替効果と所得効果が逆向きに働くためであり,対数効用はその境界にあたる。

マクロ経済学:対数効用の2期間消費と金利の効果の途中式・最終答をPDFで見る

年度別の解答例(6年度)

  • 2026年度 第Ⅱ期(全4問)

    ミクロ経済学:費用最小化・規模に関する収穫・完全競争企業の供給 / ミクロ経済学:非対称な費用の下でのクールノー競争 / マクロ経済学:2期間モデルの最適条件と定率税・定額税の比較

  • 2026年度 第Ⅰ期(全4問)

    ミクロ経済学:u=\sqrt{x_1}+3\sqrt{x_2} の消費者理論7題 / 公共経済学:公共財の私的供給ゲームと過少供給 / マクロ経済学:国債発行を財源とする減税は消費を増やすか(リカードの等価定理)

  • 2025年度 第Ⅱ期(全4問)

    ゲーム理論:3×3協調ゲームの純粋戦略・混合戦略ナッシュ均衡 / ミクロ経済学:3企業の逐次手番寡占(シュタッケルベルグ) / 国際マクロ経済学:国際金融のトリレンマ

  • 2025年度 第Ⅰ期(このページ・全4問)

    ミクロ経済学:コブ=ダグラス型効用の需要・間接効用関数・支出関数 / ミクロ経済学:1要素企業の要素需要関数と利潤関数 / マクロ経済学:名目金利とインフレ率の正の相関(フィッシャー式とテイラー・ルール)

  • 2024年度 第Ⅱ期(全4問)

    ミクロ経済学:コブ=ダグラス型生産関数の限界生産性・規模の収穫・短期と長期の費用 / ゲーム理論:標準形ゲームの純粋戦略・混合戦略ナッシュ均衡と均衡の一意性 / マクロ経済学:総供給曲線が右上がりになるメカニズム

  • 2024年度 第Ⅰ期(全4問)

    ミクロ経済学:準線形効用の需要関数・市場需要・消費者余剰 / ミクロ経済学:クールノー複占と非対称費用の下での端点均衡 / 金融論:コンソル債の現在価値と金利,ゼロ金利下の政策手段

2025年度 第Ⅰ期の出題内容

全4問

この4問の分野はマクロ経済学2問・ミクロ経済学2問です。

大問分野主題解説の小見出し最終答
第1問ミクロ経済学コブ=ダグラス型効用の需要・間接効用関数・支出関数aU/x という形 / 支出シェアが一定あり
第2問ミクロ経済学1要素企業の要素需要関数と利潤関数端点解の条件を「限界利潤の符号」で書く / 定義域の上限を確認するあり
第3問マクロ経済学名目金利とインフレ率の正の相関(フィッシャー式とテイラー・ルール)2つの説明の関係を書く / テイラー原則の書き方あり
第4問マクロ経済学対数効用の2期間消費と金利の効果消費の相対価格 / オイラー方程式からも同じあり

2025年度 第Ⅰ期の解説には失点しやすい点3件・答案の書き方2件・検算1件が付いています。

前年度(2024年度 第Ⅱ期)との違い

大問数
2024年度 第Ⅱ期 4問 → 2025年度 第Ⅰ期 4問
2024年度 第Ⅱ期の解答例

神戸大学の公式過去問

公開年度範囲
2024〜2026年度のⅠ期・Ⅱ期(直近3年)
公式の解答例
非公開(問題冊子のみ)
英語の扱い
TOEIC・TOEFL などの英語外部試験のスコア提出。学内での英語筆記試験はない。
院試hubの最終確認
2026-09-04
神戸大学の公式過去問PDF