電気通信大学 院試 過去問 解答例
電通大 情報理工学研究科 専門科目(機械知能システム学) 2025年度 院試 解答例・解説
電気通信大学 情報理工学研究科 専門科目(機械知能システム学) 2025年度の院試 過去問について、設問ごとの解法方針・部分点の置き所を解説。全25問収録の解答・解説PDFと併用できます。問題本文は含みません。
最終更新:
設問ごとの解法方針・部分点の置き所を無料で公開しています。
完全な途中式・最終答は解答・解説PDFに収録しています。問題本文は含まれません。
第1問 — 必須数学:極座標・体積・微分方程式
極座標曲線の縦接線
極座標曲線では,いったん に直してから接線を判定するのが確実である。縦接線は だけでは不十分で, も確認する必要がある。今回の は尖点であり,通常の縦接線として扱わない。
体積は投影領域を先に決める
座標平面と曲面で囲まれる体積では,まず 平面への投影領域を決める。 から が出るので,あとは高さ を積分するだけでよい。
微分方程式は型を見分ける
1本目は分離形,2本目は定数係数線形微分方程式である。2本目では右辺が指数関数と一次式の和なので,特解もそれぞれ分けて作る。重解の斉次解 を落としやすいため,特性方程式の重複度まで書くと安全である。
第2問 — 必須数学:行列・階数・固有値
逆行列は行列式が1だと余因子がそのまま使える
この問題の は なので,余因子行列の転置がそのまま逆行列になる。検算として,求めた行列を右から掛けて単位行列になるかを見ると,符号ミスをすぐ発見できる。
階数4未満は行列式0
4次正方行列で階数が4未満という条件は,正則でないことと同値である。したがって,連立方程式の階数を直接調べるより,まず を計算するのが短い。自然数条件は最後に使えばよい。
対称行列の固有ベクトルは直交する
は実対称行列なので,異なる固有値に属する固有ベクトルは直交する。固有値を求めたあと,正規化して列に並べれば正規直交行列が作れる。列の順番を変えると対角成分の順番も変わるが,どれも正しい。
第3問 — 必須物理:可動輪軸と2本のひも
拘束条件を先に決める
この問題では運動方程式そのものよりも,ひもが伸びず滑らないことから出る拘束条件が重要である。右の固定ひもから ,左のひも端から が出る。これで自由度は実質1つになる。
張力は最後に消去する
張力 は内部拘束力に近い役割を持つため,まずは運動方程式に残しておく。拘束条件を使って を結び,最後に張力を消去すると,重心加速度が一気に求まる。
たるみ条件は
ひもは押すことができないので,張力が負になる計算結果は物理的にはたるみを意味する。したがって を課す。質点 の値が最終条件から消えるのは,質点の加速度と重力の差が張力を決める一方,輪軸側の慣性条件がたるみの有無を支配するためである。
第4問 — 必須物理:円形コイルとソレノイドの磁場
円形コイルは軸方向成分だけが残る
ビオ・サバールの法則で微小素片の磁場を出すと,軸に垂直な成分も現れる。しかし円形コイル全体では,対向する素片の寄与が打ち消し合うため,軸方向成分だけが残る。対称性を使うと積分が大幅に短くなる。
ソレノイドは円形コイルの重ね合わせ
有限長ソレノイドの軸上磁場は,円形コイルの公式を軸方向に積分すれば得られる。積分核 の原始関数が であることを使うのが計算の中心である。
無限長の外部磁場はアンペールの法則で判断する
有限長の式を直接外部点で極限してもよいが,無限長ソレノイドの外部磁場はアンペールの法則で0と見る方が明確である。内部では長方形経路を取ると,貫く電流が に比例し,磁場の大きさは になる。
第5問 — 材料力学:単純支持ばり
まず支点反力を決める
等分布荷重が全長に一様に載る単純支持ばりでは,左右対称性から反力が等しいことを直ちに使ってもよい。ただし答案では,全体の力のつり合いとモーメントのつり合いを一行書くと,反力の符号と大きさが明確になる。
せん断力と曲げモーメントの関係
この問題では が成り立つ。求めた が直線, が放物線になっていることは,荷重が一様分布であることと整合している。最大曲げモーメントが中央に出るのも,せん断力がそこでゼロになるからである。
たわみの符号
たわみを上向き正にする流儀も,下向き正にする流儀もある。重要なのは,曲げモーメントと曲率の符号を一貫させることである。ここでは下向きを正にしたため,中央たわみ が正になり,物理的な向きと一致する。
第6問 — 材料力学:両端固定棒の軸力
不静定問題はつり合いだけでは足りない
両端固定棒では未知反力が の2つあり,力のつり合いは1本しかない。したがって,両端間の相対変位がゼロであるという変形条件を追加する必要がある。この条件を忘れると,不静定反力は決まらない。
軸力は区間ごとに一定
集中荷重だけが作用しているので,軸力は荷重点をまたぐたびに階段状に変化する。今回は を区間ごとに置けばよく,分布荷重のような積分は不要である。
エネルギーは符号に依存しない
区間 の軸力は,右向き正の約束では負になる。しかしひずみエネルギーは の積分なので,圧縮でも引張でも正である。反力の符号を間違えてもエネルギーだけ偶然合うことがあるため,反力の向きは別に確認しておくべきである。
第7問 — 材料力学:両端固定丸棒のねじり
軸力問題と同じ構造
ねじりの両端固定問題は,軸力の両端固定問題と同じ考え方で解ける。軸力 ,伸び を,ねじりモーメント ,ねじれ角 に置き換えればよい。
互換条件は全ねじれ角ゼロ
両端が剛体壁で固定されているため,端部 と端部 の回転角はどちらもゼロである。そのため,各区間のねじれ角の和がゼロになる。ここで区間長が と異なるので,単純な平均ではなく,長さで重み付けした和を使う必要がある。
符号を定義してから答える
固定端モーメントは,外から加えた を打ち消す向きに出るため,正方向を の向きに取ると負になる。ねじれ角も同じ符号約束に従う。入試答案では,符号を曖昧にしたまま最終式だけを書くより,最初に正方向を宣言しておく方が減点されにくい。
第8問 — 機械力学:2自由度ばね質量系
中央ばねの伸びは相対変位
2自由度系では,壁についたばねと物体同士をつなぐばねを区別する。壁ばねの伸びは絶対変位 だが,中央ばねの伸びは相対変位 である。この違いを正しく入れると剛性行列 が得られる。
固有振動数は一般化固有値問題
質量行列が単位行列ではないので,単に剛性行列 の固有値を求める問題ではない。正しくは を解く。ここを取り違えると固有角振動数がずれる。
反共振
で がゼロになるのは,共振ではなく反共振である。入力を受けている物体1を中央ばね越しの物体2の運動が打ち消し,物体1の変位振幅だけが消える。分母がゼロになる共振条件とは別に,分子がゼロになる条件を見るのがポイントである。
第9問 — 機械力学:転がり円柱とばね
拘束条件で1自由度に落とす
中心の並進 と回転 は独立ではない。滑りなしの条件 によって,この系は実質的に1自由度になる。ラグランジュ法では,最初に独立な一般化座標を1つに絞ると計算が短くなる。
ばねは2本分のエネルギーを持つ
円柱が右へ動くと,左ばねは伸び,右ばねは縮む。向きは逆でも,ばねエネルギーは変形量の2乗なので両方とも である。したがって合計が になり,復元力は になる。
有効質量
運動方程式を で書くと となる。回転慣性 は,並進運動から見ると の追加質量として効く。転がり問題ではこの有効質量の見方を使うと,周期の式を確認しやすい。
第10問 — 熱力学:多孔質壁を通る理想気体
多孔質壁は絞り過程として見る
多孔質壁を通るゆっくりした流れは,典型的な絞り過程である。断熱・摩擦なしのピストン操作であっても,多孔質壁内部では不可逆性が生じる。理想気体ではエンタルピーが温度だけで決まるため,温度一定なら になる。
正味仕事がゼロになる理由
左側ではピストン1が気体を押し,右側では気体がピストン2を押す。大きさだけを見るとそれぞれ , であり,理想気体かつ等温なので で等しい。したがって,気体全体が外部になす正味仕事はゼロである。
不可逆性はエントロピーで判定する
温度が変わらないからといって可逆とは限らない。今回のように圧力差を通じて気体が多孔質壁を通る過程では, が正になる。断熱でエントロピーが増えることが,不可逆過程であることの決定的な根拠である。
第11問 — 熱力学:理想気体の等温膨張と断熱膨張
比熱は質量基準でそろえる
問題で与えられた気体定数が なので,比熱も質量あたりの として扱う。全量の熱量や仕事を求めるときだけ,質量 を掛ける。
等温と断熱の違い
等温過程では温度が一定なので内部エネルギーは変化しない。一方,断熱過程では熱の授受がないが,膨張仕事をした分だけ温度と内部エネルギーが下がる。両者は「熱が入るか」ではなく,「温度が一定か」「エントロピーが一定か」で区別すると混乱しにくい。
線図で見るべき点
- 線図では,同じ体積比 まで膨張したとき,断熱曲線の方が等温曲線より急に圧力が下がる。- 線図では,等温過程は水平線,可逆断熱過程は鉛直線になる。
第12問 — 熱力学:ランキンサイクル
単位時間あたりのエネルギー収支
与えられている量はすべて単位時間あたりである。したがって,厳密には熱量率・仕事率として扱うが,サイクルのエネルギー収支の形は通常の熱機関と同じである。
ポンプ仕事の符号
タービン仕事 は外部へ取り出せる仕事,ポンプ仕事 は外部から投入する仕事である。そのため正味出力は になる。効率で としてしまう誤りが起こりやすい。
エンタルピー差と熱量
定常流のボイラーでは,軸仕事や運動エネルギー変化を無視すれば,単位質量あたりの加熱量は比エンタルピー差で表される。したがって,質量流量 を掛けて とするのが基本である。
第13問 — 流体力学:水銀マノメータ
同じ高さの同じ静止流体では圧力が等しい
マノメータでは,開放端から出発して液柱内を上下にたどるのが最も確実である。下に進むと だけ圧力が増え,上に進むと同じだけ減る。水銀と水では密度が違うので,どの区間をどの流体で移動したかを明確に分ける。
ゲージ圧の基準
ゲージ圧は大気圧をゼロとした圧力である。したがって,開放端をゼロとして計算すれば,そのまま のゲージ圧が得られる。絶対圧を求める場合だけ,最後に大気圧を足す。
第14問 — 流体力学:非圧縮流れと渦度
非圧縮条件は発散ゼロ
二次元の非圧縮性流れでは,速度場の発散がゼロになる。多項式で与えられている場合は,係数比較に持ち込むと一度で が決まる。
渦度の符号
二次元流れでよく使う渦度は である。順番を逆にすると符号が反転するので,答案では定義式を最初に書いてから計算するのが安全である。
第15問 — 流体力学:傾斜面上の液膜流れ
自由表面の条件
壁面では速度ゼロ,液膜表面ではせん断応力ゼロである。この2つの境界条件により放物線速度分布が決まる。管内流と違って,最大速度は中心ではなく自由表面に現れる。
重力の接線成分だけが駆動する
斜面に沿って流れを駆動するのは重力の 方向成分 である。垂直方向成分は静水圧分布に対応するが,ここでは自由表面圧力一定かつ十分発達流として, 方向の圧力勾配をゼロとおける。
平均速度の確認
得られた速度分布は放物線であり, を満たす。これは自由表面せん断ゼロの液膜流れでよく現れる比であり,計算の確認にも使える。
第16問 — 制御工学:移動体の伝達関数
ゼロ初期値なら微分は 倍
伝達関数を求めるときはゼロ初期値を仮定する。したがって は , は に変換される。初期値項を残したまま伝達関数を作らないように注意する。
インパルス応答
単位インパルス入力のラプラス変換は1である。したがって,インパルス応答は の逆変換で得られる。今回の は部分分数分解が最短である。
第17問 — 制御工学:PD制御と最終値
目標値から位置までの閉ループ伝達関数
PD制御では,目標値は比例項を通じて入力され,微分項は速度を減衰させる役割を持つ。そのため分子は ,分母は になる。
外乱があると定常偏差が残る
比例制御だけで定常外乱を完全に打ち消すことはできない。今回,目標値は1だが抵抗外乱が1だけ入るため,定常状態では となり, にとどまる。積分制御がないため定常偏差が残る,という制御上の意味も押さえておくとよい。
第18問 — 制御工学:一輪車モデルの状態方程式
状態は3つで十分
運動方程式には の2階微分と の1階微分が現れる。そのため,状態として を選べば1階の連立方程式に変換できる。
可制御性は入力がどこに入るかを見る
入力 は直接には 方程式にだけ入る。そこから が の加速度方程式に効くには が必要である。実際に可制御性行列の行列式も となり,条件は になる。
特性方程式には目標値を入れない
閉ループ極は同次方程式の固有値で決まる。目標値 は外部入力として右辺に現れるだけなので,特性方程式を作るときは除いてよい。
第19問 — 電気回路学:交流回路のインピーダンス
節点電圧で一度に整理する
この回路は, の後ろに の並列枝がついた形である。節点電圧 を置くと,各枝電流がすぐ書けるため, の特殊条件も簡単に扱える。
同相条件は入力インピーダンスの虚部ゼロ
電源電圧 と電源電流 が同相であることは,電源から見た入力インピーダンスが実数であることと同値である。したがって,複素インピーダンスを実部・虚部に分け,虚部をゼロにすればよい。
条件は一意の周波数だけとは限らない
この問題では と の組に条件が課される。どちらか一方を固定すれば他方が決まるが,両方を未知とすれば条件式は曲線になる。最後に と の範囲まで書くと,物理的に意味のある解だけを残せる。
第20問 — 電気回路学:RLC回路の自然応答
定常状態の初期条件
直流定常状態では,インダクタは短絡,キャパシタは開放である。したがって切替直前の電流はゼロ,キャパシタ電圧は電源電圧 になる。過渡解析では,この初期条件を正しく置くことが最初の山場である。
微分方程式を解かずに最大値を判断する
切替後の回路には電源がない。抵抗はエネルギーを増やせないので,キャパシタ電圧が初期値 を超えるには,初期エネルギーを超えるエネルギーが必要になる。したがって最大値は初期値 である。
積分値は消費エネルギー
は抵抗で熱に変わった総エネルギーである。最終的に電流もキャパシタ電圧もゼロになるので,初期に蓄えられていた がそのまま になる。これは過渡応答の形に依存しない。
第21問 — ディジタル信号処理:3点移動平均
標本化で角周波数が無次元になる
連続時間の角周波数 を標本化周期 で掛けると,離散時間の正規化角周波数 になる。単位は と考えるとよい。
移動平均は線形位相フィルタ
係数が と対称なので,周波数応答は と実数因子の積になる。これは1サンプルの遅延を持つ線形位相フィルタであることを表している。
過渡部と定常部を分ける
初期条件 があるため, は定常的な正弦波応答とは一致しない。周波数応答で得る振幅と位相は,入力が十分続いた後の定常状態に対応する。
第22問 — ディジタル信号処理:フィードバック系
内部信号を置く
ブロック線図では,いきなり と の関係を書こうとすると混乱しやすい。加算器の出力を と置くと,フィードバック部分と出力加算部分を分けて式にできる。
フィードバック係数が安定性を決める
分母 は,内部状態が1ステップごとに2倍される成分を持つことを意味する。そのため,インパルス応答は減衰せず,むしろ増大する。極が単位円内にないことと,インパルス応答が絶対総和可能でないことは同じ不安定性を表している。
第23問 — 応用数学:複素数と逆三角関数
複素べきは対数の枝に注意する
実数のべきと違い,複素数の は で定義される。複素対数は多価なので,主値を使うのか,全ての値を書くのかを意識する必要がある。
逆三角関数は指数関数に直す
を の二次方程式に直すと,逆関数の対数表示が自然に出る。平方根と対数には枝があるため,公式は枝の選択を含んだ表現である。
第24問 — 応用数学:複素微分
実変数と同じ公式でも定義から示す
複素微分でも積の微分公式は実変数の場合と同じ形で成り立つ。ただし証明では, が複素平面内の任意方向から0へ近づくことを意識する。正則性があるため,この極限が経路によらず存在する。
対数微分の枝
は複素平面全体で一価正則にはならない。したがって の微分を扱うときは,あらかじめ対数の枝を固定した領域で考える。枝を固定すれば を通常通り使える。
第25問 — 応用数学:ローラン展開と留数
内側の特異点だけを見る
被積分関数の特異点は と である。経路は なので, だけが内部にある。留数定理では,経路の外側の特異点は積分値に寄与しない。
ローラン展開で留数を読む
の範囲では幾何級数 が使える。これに を掛けると, の係数がすぐに1と分かる。二位の極として微分公式で留数を求めても同じ結果になる。