電気通信大学 院試 過去問 解答例
電通大 情報理工学研究科 専門科目(機械知能システム学) 2021年度 院試 過去問 解答例・解説(全24問)
全24問。力学8問・熱・統計力学3問・制御工学2問。テーマタグは20件(伝達関数・剛体の回転運動・固有振動数と振動系)。2020年度と共通のテーマは伝達関数・剛体の回転運動・固有振動数と振動系。
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電通大 専門科目(機械知能システム学) 2021年度 院試 過去問の出題内容(全24問)
この24問の分野は力学8問・熱・統計力学3問・制御工学2問・電磁気学・回路2問・微分積分・解析2問・線形代数1問・微分方程式1問・複素解析1問です。
| 大問 | 分野 | 主題 | 解説の小見出し | 最終答 |
|---|---|---|---|---|
| 第1問 | 微分方程式 | 偏微分・重積分・微分方程式 | 極値判定は停留点ごとに行う / 円領域は縦に切ると簡単 | あり |
| 第2問 | 線形代数 | — | 解の存在条件 / 核の条件 | あり |
| 第3問 | 折れた棒の回転運動 | 支点が動いても角運動は単振り子型になる / 衝突では点を選んで角運動量を保存する | あり | |
| 第4問 | ガウスの法則と導体球 | 導体内部の電場はゼロ / 電位は区間ごとに足す | あり | |
| 第5問 | 力学 | 三角分布荷重を受ける単純支持ばり | 三角分布荷重の合力位置 / 境界条件 | あり |
| 第6問 | 力学 | 積層板の熱応力 | 共通ひずみと自由膨張ひずみ / 符号の意味 | あり |
| 第7問 | 力学 | 直列丸棒のねじり | 初期ねじりを基準に入れる / トルクは同じ大きさ | あり |
| 第8問 | 力学 | ばね付き倒立振子 | 小角近似の使い方 / 倒立振子の重力項 | あり |
| 第9問 | 力学 | 二自由度ばね質量系 | 絶対変位で立式する / モードの物理的解釈 | あり |
| 第10問 | 熱・統計力学 | 理想気体の比熱と内部エネルギー | 仕事の符号 / マイヤーの関係 | あり |
| 第11問 | 熱・統計力学 | 逆カルノーサイクル | 冷房と暖房でCOPが違う / 最小動力の意味 | あり |
| 第12問 | 熱・統計力学 | 熱効率と燃料消費 | 出力と燃料投入率 / 単位変換 | あり |
| 第13問 | 力学 | 基礎概念と流線 | レイノルズ数の意味 / 三つの線の区別 | あり |
| 第14問 | 力学 | 二次元速度場 | 定常流でも加速度はゼロとは限らない / 非圧縮と渦なしは別条件 | あり |
| 第15問 | 力学 | 同軸二重円管内の層流 | 十分発達流の簡約 / 対数項が出る理由 | あり |
| 第16問 | 制御工学 | 状態方程式と状態フィードバック | 出力は状態の線形結合 / 極配置は係数比較でよい | あり |
| 第17問 | 制御工学 | フィードバック系の伝達関数と定常偏差 | ブロック線図は加算点から式にする / ランプ入力の定常偏差 | あり |
| 第18問 | 電磁気学・回路 | RLC回路の過渡応答 | 節点電流から2階方程式へ / 重根の場合 | あり |
| 第19問 | 電磁気学・回路 | 電球配列の最大電力 | 明るさ最大は負荷電力最大 / 最大電力伝送条件 | あり |
| 第20問 | インパルス応答とz変換 | BIBO安定性 | あり | |
| 第21問 | 微分積分・解析 | サンプリングと離散時間フーリエ級数 | 連続時間と離散時間の周期 / フーリエ級数の規約 | あり |
| 第22問 | 複素解析 | 複素数計算 | 複素三角関数 / 整関数の線積分 | あり |
| 第23問 | コーシー・リーマン方程式 | ˉ を独立変数のように扱う / CR方程式の使いどころ | あり | |
| 第24問 | 微分積分・解析 | 留数定理による実積分 | 上半平面を選ぶ理由 / 実部と虚部の分離 | あり |
2021年度の出題テーマと、同じテーマを出した他大学・他年度
この年度は17問に20テーマが出ています。
| テーマ | この年度 | 全体の出題実績 | 他大学の直近出題 |
|---|---|---|---|
| 伝達関数 | 第16・17問 | 12大学・113問 | |
| 剛体の回転運動 | 第3・8問 | 16大学・103問 | |
| 固有振動数と振動系 | 第8・9問 | 16大学・71問 | |
| 固有値・固有ベクトル | 第2問 | 25大学・544問 | |
| 線形空間・基底 | 第2問 | 21大学・152問 | |
| 重積分と極座標 | 第1問 | 23大学・142問 | |
| 留数定理 | 第24問 | 18大学・126問 | |
| 静電場 | 第4問 | 16大学・81問 | |
| はりの曲げ | 第5問 | 11大学・71問 | |
| ラグランジアン | 第3問 | 13大学・68問 | |
| 二次形式 | 第2問 | 16大学・63問 | |
| RC回路の過渡応答 | 第18問 | 12大学・44問 | |
| フーリエ級数 | 第21問 | 11大学・30問 | |
| 境界層 | 第13問 | 8大学・30問 | |
| 直交対角化 | 第2問 | 14大学・23問 | |
| カルノーサイクル | 第11問 | 9大学・22問 | |
| コーシーの積分定理 | 第23問 | 8大学・16問 | |
| RLC回路 | 第18問 | 7大学・13問 | |
| Z変換 | 第20問 | 3大学・6問 | |
| ナビエ・ストークス方程式 | 第15問 | 3大学・4問 |
前年度(2020年度)との違い
- 大問数
- 2020年度 24問 → 2021年度 24問
第1問 — 必須数学:偏微分・重積分・微分方程式
極値判定は停留点ごとに行う
停留点が複数ある場合,ヘッセ行列の判定は各点で値を入れてから行う。 は鞍点であり,この点を極値に含めないことが重要である。
円領域は縦に切ると簡単
円を と直すと,積分範囲が になる。 被積分関数が に依存しないため,極座標よりも縦切りの方が計算量が少ない。
未定係数法の見落とし
右辺の は同次解に含まれないので,余分に を掛けない。 三角関数の項は に直してから係数比較すると符号ミスを減らせる。
解答
- である。停留点は と から である。ヘッセ行列は だから, では で極値をとらない。 一方, では , なので極大であり, である。極小は存在しない。
- 領域は である。縦に切ると で だから,
- 同次方程式の特性方程式は である。したがって同次解は である。また,右辺の指数項に対する特殊解は より である。さらに を用い,特殊解を とおくと となる。よって , である。したがって一般解は である。
最終答
第2問 — 必須数学:線形代数
解の存在条件
連立一次方程式は,係数行列が正則なら右辺に関係なく一意解をもつ。 特異になる値だけを別に調べればよいので,まず行列式を見るのが最短である。
核の条件
線形写像の核の基底が与えられた場合,そのベクトルを写した結果をそのまま零ベクトルに置けばよい。 余分に一般ベクトルを置く必要はない。
二次形式は直交対角化で処理する
実対称行列なので直交行列で対角化できる。標準形の対角成分を固有値として読み,跡と行列式を使うと をすばやく決定できる。
第3問 — 必須物理:折れた棒の回転運動
支点が動いても角運動は単振り子型になる
支点は等速で動くため,ラグランジアンには に比例する項が現れる。 しかしこの項は運動方程式では相殺され,重力による回転だけが残る。
衝突では点を選んで角運動量を保存する
衝突点 まわりに角運動量を取ると,衝撃力のモーメントを考えずに済む。 この設定では,衝突直前に は点 にいるため角運動量に寄与しない。
近似の使いどころ
最後の時刻計算では,問題文の , を使って 角加速度を定数にしている。この近似を書かずに厳密な振り子方程式を解こうとすると,試験時間に合わない。
第4問 — 必須物理:ガウスの法則と導体球
導体内部の電場はゼロ
静電平衡の導体内部では電場が消える。この条件から,内面に誘起される電荷が 内側の電荷を打ち消す符号になることがすぐ分かる。
電位は区間ごとに足す
外側では から無限遠までの寄与,空洞内では から までの寄与を足す。 導体殻の金属部分では電場がゼロなので電位差は生じない。
符号の確認
のとき内面電荷は負で,外面電荷は正である。外部から見れば全体の電荷は なので, 外部電場が点電荷 の電場と同じになる。
第5問 — 材料力学:三角分布荷重を受ける単純支持ばり
三角分布荷重の合力位置
合力は三角形の面積で ,作用位置は荷重が大きい側から ,左端から である。 ここを誤ると反力以降の式がすべてずれる。
境界条件
単純支持ばりでは両端のたわみがゼロである。曲げモーメントの境界条件をさらに課す必要はなく, 今回の は反力計算から自然に満たされる。
第6問 — 材料力学:積層板の熱応力
共通ひずみと自由膨張ひずみ
接着されているため,鋼板と銅板の実ひずみは同じである。 ただし自由に膨張できた場合のひずみは , と異なるので, 応力は実ひずみと自由膨張ひずみの差に比例する。
符号の意味
なので,銅板はより伸びたがる。接着により銅板の伸びは抑えられるため銅板は圧縮, 鋼板は引張になる。得られた式の符号もこの物理的見通しと一致している。
第7問 — 材料力学:直列丸棒のねじり
初期ねじりを基準に入れる
丸棒1は接合前にすでに だけねじられている。 したがって応力を生むねじれ角は最終角 ではなく である。
トルクは同じ大きさ
直列に接合された2本の丸棒では,接合部のトルクつり合いにより両棒のトルクの大きさが等しい。 ねじれ角は長さに比例して分担される。
第8問 — 機械力学:ばね付き倒立振子
小角近似の使い方
支点から距離 にある点の水平変位は で近似できる。 ばね力はこの変位に比例し,さらにモーメントを取ると係数が になる。
倒立振子の重力項
重心が支点より上にあるため,重力は復元ではなく不安定化に働く。 ばねの復元係数が重力の不安定化係数を上回るときだけ,鉛直姿勢まわりで振動できる。
第9問 — 機械力学:二自由度ばね質量系
絶対変位で立式する
問題では が自然長位置からの絶対変位として与えられている。 台車間のばねの伸びは なので,力の符号をここで確認すると行列が組みやすい。
モードの物理的解釈
低いモードでは2台車が同方向に動くため,台車間ばねの伸縮が比較的小さい。 高いモードでは逆方向に動くため,台車間ばねが大きく伸縮し,固有振動数が高くなる。
第10問 — 熱力学:理想気体の比熱と内部エネルギー
仕事の符号
ここでは気体が外部へする仕事を としている。定圧膨張なら であり, 温度上昇に対して正になる。
マイヤーの関係
定圧では加えた熱の一部が外部仕事に使われるため,定圧比熱は定積比熱より だけ大きい。 これが の意味である。
第11問 — 熱力学:逆カルノーサイクル
冷房と暖房でCOPが違う
冷房では取り除く熱量 が目的量なので を使う。 暖房では室内へ供給する熱量 が目的量なので を使う。
最小動力の意味
逆カルノーサイクルは同じ温度条件で最大の成績係数を与える。したがって,それで計算した動力が理論上の最小値になる。
第12問 — 熱力学:熱効率と燃料消費
出力と燃料投入率
熱効率は で定義される。燃料消費量を求める前に,まず燃料から毎秒どれだけの熱量が投入されているかを計算する。
単位変換
は である。1時間あたりの燃料量を求めるため,最後に を掛ける。
第13問 — 流体力学:基礎概念と流線
レイノルズ数の意味
レイノルズ数は単なる公式ではなく,慣性力と粘性力の相対的な大きさを表す。 相似則の問題では「幾何学的相似」と「レイノルズ数一致」を合わせて述べるとよい。
三つの線の区別
定常流では流線,流脈線,流跡線が一致するが,非定常流では一般に一致しない。 定義を時刻固定か粒子追跡かで整理すると混同しにくい。
第14問 — 流体力学:二次元速度場
定常流でも加速度はゼロとは限らない
時間微分がなくても,流体粒子が空間的に異なる速度場を通過すれば移流加速度が生じる。 今回の加速度は を各速度成分に作用させて求める。
非圧縮と渦なしは別条件
は体積保存, は局所的な回転なしを意味する。 この問題では両方が成り立つが,常に同時に成り立つわけではない。
第15問 — 流体力学:同軸二重円管内の層流
十分発達流の簡約
十分発達した管内流では,軸方向速度は半径だけの関数になる。 時間変化,周方向変化,軸方向変化,半径方向速度をすべて消せるので,ナビエ・ストークス方程式は常微分方程式になる。
対数項が出る理由
円筒座標ではラプラシアンに が現れる。 一度積分すると になり,さらに積分すると の項が出る。
第16問 — 制御工学:状態方程式と状態フィードバック
出力は状態の線形結合
状態を と取ると,制御出力 は で表せる。 状態方程式だけでなく出力方程式も忘れずに書く。
極配置は係数比較でよい
2次系では希望極から目標多項式を作り,閉ループ特性多項式と係数比較するのが最も速い。
第17問 — 制御工学:フィードバック系の伝達関数と定常偏差
ブロック線図は加算点から式にする
閉ループ伝達関数を暗記式だけで処理すると,前置ゲイン とフィードバックゲイン の位置を取り違えやすい。 まず と書けば安全である。
ランプ入力の定常偏差
は単位ランプ入力である。最終値の定理を使うときは, 閉ループ系が安定であることを確認したうえで の極限を取る。
第18問 — 電気回路学:RLC回路の過渡応答
節点電流から2階方程式へ
インダクタ電流 は抵抗電流とキャパシタ電流に分かれる。 この関係をインダクタ電圧式に代入すると,節点電圧 だけの2階微分方程式になる。
重根の場合
は臨界減衰に対応する。特性根が重根になるため,過渡項は の形になる。
第19問 — 電気回路学:電球配列の最大電力
明るさ最大は負荷電力最大
問題では全体の明るさが全電球の消費電力に比例するとされている。 したがって,電球配列を一つの負荷抵抗 とみなし,負荷電力を最大化すればよい。
最大電力伝送条件
内部抵抗をもつ電源から負荷へ供給される電力は,負荷抵抗が内部抵抗と等しいとき最大になる。 この条件と電球数 を同時に満たす整数を求める。
第20問 — ディジタル信号処理:インパルス応答とz変換
BIBO安定性
因果LTIシステムでは,インパルス応答の絶対和が有限ならBIBO安定である。 指数列の差なので,絶対和は等比級数として直接評価できる。
の次数
が から始まるため, には先頭に が付く。 さらに二つの等比級数の差を取ると が現れる。
第21問 — ディジタル信号処理:サンプリングと離散時間フーリエ級数
連続時間と離散時間の周期
連続時間の周期は秒で表すが,離散時間の周期はサンプル数で表す。 サンプリング後は の位相増分 を使って周期を決める。
フーリエ級数の規約
ここでは の規約を用いた。 別規約では係数の符号や の位置が変わるため,答案では定義を先に書くと誤解されにくい。
第22問 — 応用数学:複素数計算
複素三角関数
を使うと, はすぐに実数になる。 指数関数表示から導いてもよい。
整関数の線積分
被積分関数が整関数で原始関数を持つ場合,経路に依存せず端点だけで積分値が決まる。 複素積分でも実変数の置換積分と同じ感覚で処理できる。
第23問 — 応用数学:コーシー・リーマン方程式
を独立変数のように扱う
複素解析では と見て, と に関する微分を定義する。 微分がゼロであることは,関数が正則方向だけに依存することを表している。
CR方程式の使いどころ
計算の最後は になる。 CR方程式 , を代入すれば,実部と虚部が同時にゼロになる。
第24問 — 応用数学:留数定理による実積分
上半平面を選ぶ理由
なので,上半平面では指数因子が減衰する。 そのため半円弧上の積分が に収束し,実軸積分だけが残る。
実部と虚部の分離
である。複素積分の値 の実部が ,虚部が なので, 二つの実積分が同時に求まる。
電通大 専門科目(機械知能システム学) 院試 過去問の収録7年度
必須数学:解析と微分方程式 / 必須数学:線形代数と空間図形 / 必須物理:斜面上の転がり運動
必須数学:極座標・体積・微分方程式 / 必須数学:行列・階数・固有値 / 必須物理:可動輪軸と2本のひも
必須数学:極値・重積分・微分方程式 / 必須数学:逆行列・線形写像・対角化 / 必須物理:段差を上る円板
必須数学:極座標・重積分・微分方程式 / 必須数学:線形写像・連立方程式・対角化 / 必須物理:半円板の転がり振動
数学基礎:積分と微分方程式 / 数学基礎:行列 / 物理学基礎:円板の転がり
2021年度(このページ・全24問)
必須数学:偏微分・重積分・微分方程式 / 必須数学:線形代数 / 必須物理:折れた棒の回転運動
数学基礎:立体の体積と微分方程式 / 数学基礎:行列の固有値と行列関数 / 物理学基礎:円柱上を転がる輪