電気通信大学 院試 過去問 解答例
電通大 情報理工学研究科 専門科目(機械知能システム学) 2024年度 院試 解答例・解説
電気通信大学 情報理工学研究科 専門科目(機械知能システム学) 2024年度の院試 過去問について、設問ごとの解法方針・部分点の置き所を解説。全23問収録の解答・解説PDFと併用できます。問題本文は含みません。
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設問ごとの解法方針・部分点の置き所を無料で公開しています。
完全な途中式・最終答は解答・解説PDFに収録しています。問題本文は含まれません。
第1問 — 必須数学:極値・重積分・微分方程式
二次関数の極値はヘッセ行列で判定する
二変数二次関数では,停留点を求めたあとヘッセ行列の正定値性を見る。今回は正定値なので停留点は大域的な極小点であり,反対に上方向には無限に大きくなるため極大値は存在しない。
領域は上端の切り替わりで分ける
の上端は と のうち小さい方で決まる。交点 を境に積分範囲を分けると,積分領域を正しく表せる。
指数を含む右辺は置換で簡単になる
左辺が になっているので, とおくと演算子が に落ちる。定数係数非斉次方程式では,特性根と同じ指数が右辺にある場合,この置換が特に有効である。
第2問 — 必須数学:逆行列・線形写像・対角化
像は列空間として見る
行列で定まる線形写像の像は,行列の列ベクトルが張る空間である。今回の は第1列と第2列が同じなので,列の重複を取り除いて一次独立な列だけを残せば像の基底が得られる。
対称な行列は固有空間を先に見る
対角成分がすべて同じで,非対角成分もすべて同じ行列は, 方向と,成分和が0の平面に分けるとすぐに固有値が分かる。この構造を使うと,特性多項式を直接展開するより計算が短い。
第3問 — 必須物理:段差を上る円板
衝突では角運動量保存を使う
段差の角 から受ける衝撃力は大きいが,その作用線は を通る。そのため,衝突の瞬間に まわりの角運動量を保存量として使える。一方,力学的エネルギーは衝突で失われるので,衝突前後で保存してはいけない。
衝突後は点 まわりの回転
衝突直後は円板が点 を中心に回り始める。したがって慣性モーメントは重心まわりではなく,平行軸の定理で とする。ここを のままにすると もエネルギーも大きく誤る。
第4問 — 必須物理:平行板コンデンサと誘電体
誘電体は有効距離を短くする
極板に垂直に誘電体が挿入される場合,真空中の距離 と誘電体中の距離 が直列に並ぶ。誘電体中では同じ電束密度に対する電場が になるので,有効距離は になる。
電池接続時の力は
電位差一定の条件では,電池が電荷を出し入れする。したがって力をエネルギーから出すときは,コンデンサ単体のエネルギーだけでなく電池の仕事も含めた有効ポテンシャルを考える必要がある。結果として,力は で求まる。
傾いた極板は微小並列コンデンサの和
極板間隔が場所で変わるときは,長さ方向に細かく分割し,各微小部分を並列コンデンサとして足し合わせる。積分で対数が出たあと, が小さいことを使って二次まで展開する。
第5問 — 材料力学:集中荷重を受ける片持ちはり
自由端から座標を取る
このはりは固定端が右にあるので,固定端条件は で与えられる。自由端から座標を取ると,断面の左側にある荷重だけを数えればよく,せん断力と曲げモーメントを簡単に書ける。
集中荷重の位置で式が切り替わる
を越えると,断面の左側に2つ目の集中荷重が入る。そのため は階段状に, は折れ線状に変化する。たわみ曲線は,たわみ角とたわみが荷重点で連続になるように積分定数を決める。
第6問 — 材料力学:並列部材の引張
並列部材は伸びが等しい
2つの部材が剛体板で一体に接続されているため,軸力は等しくないが伸びは等しい。これは電気回路でいえば並列接続の電圧が等しいことに対応する。
荷重分担は軸剛性で決まる
各部材の軸剛性は である。したがって剛性が大きい部材ほど大きな荷重を負担する。応力はさらに断面積で割るため,荷重分担と応力分担を混同しないようにする。
第7問 — 材料力学:曲げとねじりの合成応力
曲げ応力とねじり応力を別に求める
中実丸棒では が基本式である。曲げは垂直応力,ねじりはせん断応力として同じ表面点に重ね合わせる。
主応力はモールの応力円で処理する
一軸垂直応力とせん断応力の組合せでは,モールの応力円の中心が ,半径が になる。最大主応力は中心に半径を足したもの,最大主せん断応力は半径そのものである。
第8問 — 機械力学:2自由度ばね質量系
中間ばねは相対変位で効く
2つの質点をつなぐばねの伸びは である。壁につながるばねは絶対変位,質点間のばねは相対変位で書く。この区別を間違えると剛性行列の非対角成分の符号が崩れる。
同位相の仮定で固有値問題になる
同じ角振動数・同じ位相で振動すると仮定すると,時間依存部分が共通因子として消え,振幅 に関する連立一次方程式になる。非自明解の条件が振動数方程式である。
第9問 — 機械力学:強制振動と伝達力
標準形に直す
強制振動では,まず で標準形に直すと,振幅倍率と位相遅れをそのまま読める。 は静的に同じ力を加えたときの変位であり,動的振幅 の基準になる。
伝達力はばね力と減衰力のベクトル和
ばね力は変位と同相,減衰力は速度と同相である。速度は変位より 進むため,伝達力の振幅は単純な和ではなく を掛けて求める。
第10問 — 熱力学:カルノー熱機関
可逆サイクルでは熱量と温度の比がそろう
カルノーサイクルで最も重要なのは, という可逆熱交換の関係である。これを使うと,熱効率も成績係数も一気に求まる。熱機関の細かな構造や作動流体の種類を直接使わない点がカルノーサイクルの特徴である。
比熱比を使わなくてよい理由
断熱線の傾きや体積比を求める問題では比熱比が必要になる。しかし,本問の効率は熱源温度だけで決まる。比熱比が変わると同じ体積比に対する温度変化は変わるが, と の間で動く可逆熱機関として見れば効率は不変である。
第11問 — 熱力学:定常流タービン
タービンではエンタルピー差を見る
流れを伴う機械では,閉じた系の内部エネルギー差ではなく,流入・流出に伴う押しのけ仕事を含めたエンタルピー差を使う。理想気体では なので,圧力が与えられていても,断熱タービンの取り出し仕事は温度差で決まる。
符号は取り出す向きで決める
ここではタービンが外部へ取り出す仕事を正にした。したがって入口温度が出口温度より高い通常のタービンでは となり, である。
第12問 — 熱力学:オットーサイクル
熱の出入りは定積過程だけ
オットーサイクルでは断熱過程では熱の出入りがない。したがって効率計算では,定積加熱と定積冷却だけを見ればよい。定積過程では熱量が で表せるため,温度だけで整理できる。
圧縮比に直すと見通しがよい
入試では の式から圧縮比の式へ変形する流れがよく問われる。断熱関係を使って を体積比に置き換えるのが要点である。圧縮比が大きいほど が小さくなり,理想的には効率が上がる。
第13問 — 流体力学:平行平板間の層流
完全発達流では速度分布だけを解く
完全発達した平行平板間流れでは,速度の 方向変化が消え,問題は 方向の二階常微分方程式になる。圧力勾配が一定なら,速度分布は放物線になる。
平均速度の位置は二つある
速度分布は中央面 に関して対称である。そのため,平均速度と等しい位置も中央面を挟んで二つ現れる。最大速度の位置だけを答えないように注意する。
第14問 — 流体力学:ベンチュリ管
圧力差を二通りに表す
ベンチュリ管の吸い上げ問題では,空気流側のベルヌーイ式で得られる圧力低下と,液柱側の静水圧差を等置する。空気と液体で密度が異なるので, と を混同しないことが重要である。
断面積の差は逆二乗で効く
速度は なので,動圧差には が現れる。直径で表すと が出るため,途中で面積のまま整理してから最後に代入すると計算ミスを減らせる。
第15問 — 流体力学:次元解析
指数を指定された量から置く
次元解析では,問題文で「 の指数を 」「 の指数を 」と指定されることがある。この場合,その量を最初から一次で含めて未知指数を解けばよい。
二つの代表的な無次元数
球まわりの粘性流れではレイノルズ数が慣性力と粘性力の比を表す。後流振動を扱うときは,振動の時間尺度 と移流時間 の比からストローハル数が現れる。
第16問 — 制御工学:安定化フィードバック
重力項とばね項をまとめて見る
線形化後の係数は である。ばねが強いと となり,左辺へ移したときに安定な復元項になる。符号を間違えると,安定条件が逆になるので注意する。
PD制御は減衰と剛性を追加する
は速度に比例する項なので減衰を増やし, は角度偏差に比例する項なので実効的なばね定数を増やす。閉ループの分母 を見れば,安定化の役割が直接読み取れる。
第17問 — 制御工学:状態空間表現とオブザーバ
出力が角度と角速度の線形結合になっている
出力が なので,出力行列は である。角度だけを測る場合の とは可観測条件が変わるため,問題文の出力をそのまま行列にすることが重要である。
この符号のオブザーバは になる
標準形では と書くことも多いが,本問は という形で与えられている。誤差を と定義すると になるので,符号を機械的に確認してから特性多項式を作る。
第18問 — 電気回路:一次ローパスフィルタ
低周波と高周波の極限で判定する
ローパスかどうかは, と の極限を見ると素早く判断できる。インダクタは低周波で短絡,高周波で開放に近づく。キャパシタは低周波で開放,高周波で短絡に近づく。
は振幅が の点
デシベル表示では となる。したがってカットオフは分母の二乗和が になる点として求めればよい。
第19問 — 電気回路:RL過渡応答
インダクタ電流は瞬時に変わらない
RL過渡応答では,最初に を置く。閉じた直後はインダクタが開放のように振る舞い,十分時間がたつと短絡のように振る舞う。この二つの極限を確認すると,指数応答の向きが決まる。
テブナン等価で時定数を出す
並列枝を含む回路では,インダクタから見た等価抵抗を使うと時定数がすぐに出る。電源を短絡して を取ることがポイントである。
第20問 — ディジタル信号処理:差分方程式の伝達関数
二つ前の出力だけが戻る
差分方程式に がなく, だけが現れるため,インパルス応答は偶数番目だけに値を持つ。展開式から時間領域の形を直接読める。
安定判定は単位円を見る
離散時間の因果LTIシステムでは,収束領域が単位円を含めばBIBO安定である。極の絶対値がすべて 未満であれば,因果系では単位円が収束領域に入る。
第21問 — ディジタル信号処理:離散時間フーリエ変換
ステップ信号は収束因子で扱う
単位ステップ信号は無限に続くため,そのまま と書くと通常の関数としては収束しない。入試答案では,収束因子を入れた極限で表すと安全である。差を取ると になり,最終的な は普通の関数として になる。
時間シフトは指数因子
離散時間フーリエ変換では,右へ一つ遅らせると が掛かる。 は二点だけの信号なので,変換も とすぐに求まる。
第22問 — 応用数学:複素積分とコーシーの公式
一周する点を見ればよい
は,経路が を正の向きに一周していれば である。半径や中心以外の形には依存しない。
正則関数の線積分は原始関数で処理する
は全平面で正則なので,経路が曲がっていても積分値は端点だけで決まる。パラメータ が答えに出ないのは,曲線の形ではなく始点と終点だけが効いているからである。
第23問 — 応用数学:正則写像とヤコビ行列式
正則写像の面積倍率
正則関数は局所的には回転と拡大縮小として振る舞う。そのため,面積倍率であるヤコビ行列式は,長さ倍率 の二乗になる。コーシー・リーマンの関係式を使うと,この事実を直接計算で確認できる。
分数一次変換は境界を追う
分数一次変換は円や直線を円や直線に写す。本問では単位円の内部がどちら側へ写るかを, の符号で判定すればよい。 が に写ることからも,上半平面側であることが確認できる。