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東京都立大学 院試 過去問 解答例

都立大 理学研究科 数理科学専攻 数学 2026年度冬季 院試 過去問 解答例・解説(全4問)

全4問。微分積分・解析2問・線形代数1問。テーマタグは3件(固有値・固有ベクトル・重積分と極座標・一様収束)。2026年度夏季と共通のテーマは固有値・固有ベクトル・重積分と極座標・一様収束。

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解説4問と大問1問の途中式・最終答(全4問)
解答PDFに収録
途中式と最終答(最終答つき4問)
問題本文
非収録

都立大 数学 2026年度冬季 院試 過去問の出題内容(全4問)

この4問の分野は微分積分・解析2問・線形代数1問です。

大問分野主題解説の小見出し最終答
第1問—同時対角化固有値 の空間が決め手 / 十分性の確認あり
第2問線形代数行列式—あり
第3問微分積分・解析関数項級数発散の比較 / 一様収束の理由あり
第4問微分積分・解析多変数積分逆関数の存在 / ヤコビアンの符号あり

この年度の解説には試験で書くべきポイント4件・典型ミス3件・検算1件が付いています。

2026年度冬季の出題テーマと、同じテーマを出した他大学・他年度

この年度は4問に3テーマが出ています。

前年度(2026年度夏季)との違い

大問数
2026年度夏季 13問 → 2026年度冬季 4問
2026年度夏季のページを見る

第1問 — 同時対角化

方針

片方の行列 AA が対角化されると、PP の列は AA の固有ベクトルになる。したがって同時対角化では、 各列が AA と BB の共通固有ベクトルであることが本質である。特に AA の 1 次元固有空間は逃げ場がないので、 そこから aa の必要条件を先に取り出すのが最短である。

固有値 22 の空間が決め手

E2E_2 は 1 次元であるため、u=(−1,−1,1)Tu=(-1,-1,1)^T が BB の固有ベクトルでなければならない。 ここで BuBu の第 1,2 成分は等しく、第 3 成分との符号関係を比べるだけで a=2a=2 が出る。 この段階で候補を絞らずに BB 全体の固有値計算を始めると、計算量が不要に増える。

十分性の確認

a=2a=2 を得た後は、残りの AA の固有空間 E3E_3 の中で BB の固有ベクトルを 2 本取れることを示す必要がある。 「必要条件が出たから終わり」ではなく、実際に正則な PP を作って対角化を確認するところまでが答案の採点対象である。

典型ミス

AA の固有値 33 は重複しているが、固有空間は 2 次元であり、AA は対角化可能である。 代数的重複度だけを見て「重根なので対角化できない」と判断するのは誤りである。 また、PP の列の順序を変えると対角成分の順序も変わるので、答案では列ベクトルと対角行列の対応をそろえて書く。

試験で書くべきポイント

必要条件として a=2a=2 を出すだけでなく、その値で実際に共通固有ベクトルを三本並べた正則行列 PP を提示する。必要性と十分性の両方がそろって初めて同時対角化の答案になる。

解答

まず、問題で与えられた行列を A,BA,B とする。AA の特性多項式は det⁡(λI−A)=(λ−2)(λ−3)2 \det(\lambda I-A)=(\lambda-2)(\lambda-3)^2 である。したがって固有値は 2,32,3 である。

固有値 22 に対しては (A−2I)x=0 (A-2I)x=0 を解くと E2=span⁡{(−1,−1,1)T} E_2=\operatorname{span}\{(-1,-1,1)^T\} を得る。また固有値 33 に対しては (A−3I)x=0 (A-3I)x=0 より E3=span⁡{(1,0,0)T, (0,−3,2)T} E_3=\operatorname{span}\{(1,0,0)^T,\,(0,-3,2)^T\} である。

次に、P−1APP^{-1}AP と P−1BPP^{-1}BP がともに対角行列になると仮定する。このとき PP の各列は AA と BB の共通固有ベクトルでなければならない。特に AA の固有値 22 の固有空間は 1 次元なので、u=(−1,−1,1)Tu=(-1,-1,1)^T は BB の固有ベクトルでなければならない。

直接計算すると Bu=(3a−7, 3a−7, 5−2a)T Bu=(3a-7,\,3a-7,\,5-2a)^T である。これが cu=c(−1,−1,1)Tcu=c(-1,-1,1)^T と等しいためには c=7−3a,c=5−2a c=7-3a,\qquad c=5-2a が必要である。よって a=2 a=2 が必要である。

逆に a=2a=2 とする。このとき Bu=uBu=u である。また AA の固有値 33 の固有空間内のベクトルは v=(x,y,−2y/3)T v=(x,y,-2y/3)^T と書ける。この vv が BB の固有ベクトルになる条件を解くと、例えば v1=(−2,−3,2)T,v2=(−3,−3,2)T v_1=(-2,-3,2)^T,\qquad v_2=(-3,-3,2)^T が得られ、それぞれ Bv1=v1,Bv2=2v2 Bv_1=v_1,\qquad Bv_2=2v_2 を満たす。もちろん Av1=3v1,Av2=3v2 Av_1=3v_1,\qquad Av_2=3v_2 でもある。

したがって P=(−1−2−3−1−3−3122) P= \begin{pmatrix} -1 & -2 & -3\\ -1 & -3 & -3\\ 1 & 2 & 2 \end{pmatrix} とおくと、det⁡P=−1≠0\det P=-1\ne0 であり、 P−1AP=(200030003),P−1BP=(100010002). P^{-1}AP= \begin{pmatrix} 2&0&0\\ 0&3&0\\ 0&0&3 \end{pmatrix}, \qquad P^{-1}BP= \begin{pmatrix} 1&0&0\\ 0&1&0\\ 0&0&2 \end{pmatrix}.

最終答

固有値は 2,32,3。固有空間の基底は E2:{(−1,−1,1)T}E_2:\{(-1,-1,1)^T\}, E3:{(1,0,0)T,(0,−3,2)T}E_3:\{(1,0,0)^T,(0,-3,2)^T\}。 同時対角化できるのは a=2a=2 のみで、そのとき上の PP が一例である。

第2問 — 行列式

方針

PnP_n は最終行を基準に行を引くと、ほとんど単位行列のような形になる。 一方、QnQ_n は対角成分だけが異なる「全成分 1 の行列にスカラー行列を足した形」であり、固有値で見るのが最も速い。

PnP_n の符号

∣Pn∣|P_n| では符号を落としやすい。行基本変形の後に残る行列は、列 11 が最終行に移っている形なので、 行列式は (−1)n−1(-1)^{n-1} になる。n=2n=2 の例で 1−a=−(a−1)1-a=-(a-1) となることを確認すると、一般式の符号を検算できる。

QnQ_n の固有値

11T\mathbf{1}\mathbf{1}^T は、1\mathbf{1} 方向には nn 倍、直交方向には 00 倍として作用する。 したがって QnQ_n の固有値は a+n−1a+n-1 が 1 個、a−1a-1 が n−1n-1 個である。 これは行列式を直接展開するよりも、計算ミスが少ない方法である。

試験で書くべきポイント

比を求めるだけでも、∣Pn∣|P_n| と ∣Qn∣|Q_n| を別々に明示すると部分点が取りやすい。 また、問題の仮定 a≠1a\ne1 により ∣Pn∣|P_n| で割れることを一言添えると、答案としての論理が閉じる。

行列式の途中式・最終答をPDFで見る

第3問 — 関数項級数

方針

第 1 小問は発散の比較、第 2 小問は一様収束と項別積分である。 見た目は似ているが、分子が nn の級数は 1/n1/n 型、分子が 11 の級数は 1/n21/n^2 型になるため、収束性が分かれる。

発散の比較

xx は [0,1][0,1] に固定されているので、分母 x2+n2x^2+n^2 は高々 2n22n^2 と評価できる。 発散を示すときは上からではなく下から評価する必要がある。 nx2+n2≤1n \frac{n}{x^2+n^2}\le \frac{1}{n} のような評価を書いても、発散の証明にはならない。

一様収束の理由

各項を 1/n21/n^2 で一様に抑えられることが重要である。 xx に依存しない収束級数で上から評価できるため、Weierstrass の判定法がそのまま使える。 単なる各点収束だけでは、和と積分の交換は正当化できない。

項別積分の検算

tan⁡−1(x/n)\tan^{-1}(x/n) を微分すると 11+(x/n)2⋅1n=nx2+n2 \frac{1}{1+(x/n)^2}\cdot\frac{1}{n} = \frac{n}{x^2+n^2} になるので、積分公式にはさらに 1/n1/n の係数が必要である。 この係数を落とすミスが多い。正しくは ∫dxx2+n2=1ntan⁡−1xn+C \int\frac{dx}{x^2+n^2}=\frac{1}{n}\tan^{-1}\frac{x}{n}+C である。

典型ミス

発散を示す場面で上から評価しても結論は出ない。第 1 小問では nx2+n2≥1/(2n)\frac{n}{x^2+n^2}\ge 1/(2n) という下からの評価が必要である。

試験で書くべきポイント

和と積分を交換する直前に、一様収束の根拠を必ず書く。Weierstrass の判定法で使う優級数 ∑1/n2\sum 1/n^2 を明示すれば、項別積分の正当化として十分である。

関数項級数の途中式・最終答をPDFで見る

第4問 — 多変数積分

方針

前半で求めた (tanh⁡−1t)′=11−t2 (\tanh^{-1}t)'=\frac{1}{1-t^2} を、後半の積分でそのまま使う構成である。 積分の分母に 1−r61-r^6 と tanh⁡−1(r3)\tanh^{-1}(r^3) が現れるため、t=r3t=r^3 と置くのが自然である。

逆関数の存在

逆関数を持つことを示すには、単に公式を知っているだけでは不十分である。 tanh⁡\tanh が連続かつ狭義単調増加で、極限値が −1,1-1,1 であることを書けば、値域が (−1,1)(-1,1) であることまで示せる。 さらに導関数が正なので、逆関数の微分公式を使える。

ヤコビアンの符号

この座標範囲では sin⁡θ≥0\sin\theta\ge0 であるため、体積要素は dxdydz=r2sin⁡θ dr dθ dφ dxdydz=r^2\sin\theta\,dr\,d\theta\,d\varphi でよい。ヤコビアンの絶対値を使う流儀でも同じ値になる。

積分範囲の読み替え

z≥0z\ge0 は上半空間を表すので、角度は 0≤θ≤π/20\le\theta\le\pi/2 である。 半径は 1/2≤r≤a1/2\le r\le a となる。ここで下限を 1/41/4 としてしまうのは、条件が r2≥1/4r^2\ge1/4 であることを見落としたミスである。

検算

1/2<a<11/2<a<1 なので 1/8<a3<11/8<a^3<1 であり、tanh⁡−1(a3)\tanh^{-1}(a^3) と tanh⁡−1(1/8)\tanh^{-1}(1/8) はどちらも正である。 したがって対数の中身は正で、最終式は実数として意味を持つ。

典型ミス

tanh⁡−1\tanh^{-1} は逆数ではなく逆関数である。また z≥0z\ge0 による角度範囲を 0≤θ≤π0\le\theta\le\pi としてしまうと、角度部分が二倍になってしまう。

試験で書くべきポイント

極座標に直した後、半径範囲、角度範囲、ヤコビアン、置換 t=r3t=r^3 を順に書く。特に r2≥1/4r^2\ge1/4 から r≥1/2r\ge1/2 になる点を明記すると、積分範囲の誤読を防げる。

多変数積分の途中式・最終答をPDFで見る

都立大 数学 院試 過去問の収録6年度