東京都立大学 院試 過去問 解答例
都立大 理学研究科 数理科学専攻 数学 2026年度冬季 院試 解答例・解説
東京都立大学 理学研究科 数理科学専攻 数学 2026年度冬季の院試 過去問について、設問ごとの解法方針・部分点の置き所を解説。全4問収録の解答・解説PDFと併用できます。問題本文は含みません。
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設問ごとの解法方針・部分点の置き所を無料で公開しています。
完全な途中式・最終答は解答・解説PDFに収録しています。問題本文は含まれません。
第1問 — 同時対角化
方針
片方の行列 が対角化されると、 の列は の固有ベクトルになる。したがって同時対角化では、 各列が と の共通固有ベクトルであることが本質である。特に の 1 次元固有空間は逃げ場がないので、 そこから の必要条件を先に取り出すのが最短である。
固有値 の空間が決め手
は 1 次元であるため、 が の固有ベクトルでなければならない。 ここで の第 1,2 成分は等しく、第 3 成分との符号関係を比べるだけで が出る。 この段階で候補を絞らずに 全体の固有値計算を始めると、計算量が不要に増える。
十分性の確認
を得た後は、残りの の固有空間 の中で の固有ベクトルを 2 本取れることを示す必要がある。 「必要条件が出たから終わり」ではなく、実際に正則な を作って対角化を確認するところまでが答案の採点対象である。
典型ミス
の固有値 は重複しているが、固有空間は 2 次元であり、 は対角化可能である。 代数的重複度だけを見て「重根なので対角化できない」と判断するのは誤りである。 また、 の列の順序を変えると対角成分の順序も変わるので、答案では列ベクトルと対角行列の対応をそろえて書く。
試験で書くべきポイント
必要条件として を出すだけでなく、その値で実際に共通固有ベクトルを三本並べた正則行列 を提示する。必要性と十分性の両方がそろって初めて同時対角化の答案になる。
第2問 — 行列式
方針
は最終行を基準に行を引くと、ほとんど単位行列のような形になる。 一方、 は対角成分だけが異なる「全成分 1 の行列にスカラー行列を足した形」であり、固有値で見るのが最も速い。
の符号
では符号を落としやすい。行基本変形の後に残る行列は、列 が最終行に移っている形なので、 行列式は になる。 の例で となることを確認すると、一般式の符号を検算できる。
の固有値
は、 方向には 倍、直交方向には 倍として作用する。 したがって の固有値は が 1 個、 が 個である。 これは行列式を直接展開するよりも、計算ミスが少ない方法である。
試験で書くべきポイント
比を求めるだけでも、 と を別々に明示すると部分点が取りやすい。 また、問題の仮定 により で割れることを一言添えると、答案としての論理が閉じる。
第3問 — 関数項級数
方針
第 1 小問は発散の比較、第 2 小問は一様収束と項別積分である。 見た目は似ているが、分子が の級数は 型、分子が の級数は 型になるため、収束性が分かれる。
発散の比較
は に固定されているので、分母 は高々 と評価できる。 発散を示すときは上からではなく下から評価する必要がある。 のような評価を書いても、発散の証明にはならない。
一様収束の理由
各項を で一様に抑えられることが重要である。 に依存しない収束級数で上から評価できるため、Weierstrass の判定法がそのまま使える。 単なる各点収束だけでは、和と積分の交換は正当化できない。
項別積分の検算
を微分すると になるので、積分公式にはさらに の係数が必要である。 この係数を落とすミスが多い。正しくは である。
典型ミス
発散を示す場面で上から評価しても結論は出ない。第 1 小問では という下からの評価が必要である。
試験で書くべきポイント
和と積分を交換する直前に、一様収束の根拠を必ず書く。Weierstrass の判定法で使う優級数 を明示すれば、項別積分の正当化として十分である。
第4問 — 多変数積分
方針
前半で求めた を、後半の積分でそのまま使う構成である。 積分の分母に と が現れるため、 と置くのが自然である。
逆関数の存在
逆関数を持つことを示すには、単に公式を知っているだけでは不十分である。 が連続かつ狭義単調増加で、極限値が であることを書けば、値域が であることまで示せる。 さらに導関数が正なので、逆関数の微分公式を使える。
ヤコビアンの符号
この座標範囲では であるため、体積要素は でよい。ヤコビアンの絶対値を使う流儀でも同じ値になる。
積分範囲の読み替え
は上半空間を表すので、角度は である。 半径は となる。ここで下限を としてしまうのは、条件が であることを見落としたミスである。
検算
なので であり、 と はどちらも正である。 したがって対数の中身は正で、最終式は実数として意味を持つ。
典型ミス
は逆数ではなく逆関数である。また による角度範囲を としてしまうと、角度部分が二倍になってしまう。
試験で書くべきポイント
極座標に直した後、半径範囲、角度範囲、ヤコビアン、置換 を順に書く。特に から になる点を明記すると、積分範囲の誤読を防げる。