院試hub

東京都立大学 院試 過去問 解答例

都立大 理学研究科 数理科学専攻 数学 2024年度冬季 院試 過去問 解答例・解説(全4問)

全4問。微分積分・解析2問・線形代数1問。テーマタグは3件(固有値・固有ベクトル・線形空間・基底・一様収束)。2024年度夏季と共通のテーマは固有値・固有ベクトル・線形空間・基底。

最終更新:

このページで公開
解説4問と大問1問の途中式・最終答(全4問)
解答PDFに収録
途中式と最終答(最終答つき4問)
問題本文
非収録

都立大 数学 2024年度冬季 院試 過去問の出題内容(全4問)

この4問の分野は微分積分・解析2問・線形代数1問です。

大問分野主題解説の小見出し最終答
第1問微分積分・解析広義積分不等式の作り方 / 変数変換での注意あり
第2問微分積分・解析関数項級数積分後に一様収束する理由あり
第3問線形代数—行列計算の確認 / 最小多項式の決め方あり
第4問—部分空間条件の読み替え / W の意味あり

この年度の解説には検算4件・試験で書くべきポイント4件・典型ミス4件が付いています。

2024年度冬季の出題テーマと、同じテーマを出した他大学・他年度

この年度は3問に3テーマが出ています。

前年度(2024年度夏季)との違い

大問数
2024年度夏季 13問 → 2024年度冬季 4問
2024年度冬季で新しく出たテーマ
一様収束
2024年度夏季のページを見る

第1問 — 広義積分

方針

前半は無限大側の比較判定、後半は x↦1/xx\mapsto 1/x による対称性を見る問題である。与えられた変換で f(x) dx=f(1/x) d(1/x) f(x)\,dx=f(1/x)\,d(1/x) となるため、(0,1)(0,1) 側の積分は (1,∞)(1,\infty) 側の積分の符号を反転したものになる。

不等式の作り方

示すべき形に分母を払うと、必要なのは x3log⁡x≤1+x4 x^3\log x\le 1+x^4 である。x≥1x\ge 1 では log⁡x≤x\log x\le x がすぐ使えるので、複雑な増減表は不要である。

変数変換での注意

y=1/xy=1/x では dy/dx<0dy/dx<0 である。したがって積分区間の向きが反転し、 ∫ε1f(x) dx=−∫11/εf(y) dy \int_\varepsilon^1 f(x)\,dx = -\int_1^{1/\varepsilon} f(y)\,dy となる。この負号を落とすと、最後の全区間の積分値を誤る。

検算

0<x<10<x<1 では log⁡x<0\log x<0 なので f(x)<0f(x)<0、一方 x>1x>1 では f(x)>0f(x)>0 である。したがって、対称性により負の部分と正の部分がちょうど打ち消して全体の値が 00 になる、という結論は符号の面からも自然である。

典型ミス

(0,1)(0,1) 側の積分を変数変換するとき、区間の向きが反転することを忘れやすい。ここで負号を落とすと、最後に 2I2I のような誤った値が出てしまう。

試験で書くべきポイント

広義積分では、(0,1)(0,1) と (1,∞)(1,\infty) の収束を別々に確認してから和を取る。値が 00 になる説明だけでは、収束性の確認としては不十分である。

解答

本問の関数を f(x)=2xlog⁡x1+x4(x>0) f(x)=\frac{2x\log x}{1+x^4}\qquad (x>0) とおく。

  1. x≥1x\ge 1 では log⁡x≤x\log x\le x であるから x3log⁡x≤x4≤1+x4. x^3\log x\le x^4\le 1+x^4. したがって 2xlog⁡x1+x4≤2x⋅x1+x4≤2x2 \frac{2x\log x}{1+x^4}\le \frac{2x\cdot x}{1+x^4} \le \frac{2}{x^2} であり、求める評価が従う。
  2. x≥1x\ge 1 では f(x)≥0f(x)\ge 0 であり、(1) より 0≤f(x)≤2x2. 0\le f(x)\le \frac{2}{x^2}. ∫1∞2x−2 dx\int_1^\infty 2x^{-2}\,dx は収束するので、比較判定法により ∫1∞f(x) dx \int_1^\infty f(x)\,dx は収束する。
  3. y=1/xy=1/x とすると dy/dx=−1/x2=−y2dy/dx=-1/x^2=-y^2 である。また f(y)dydx=2(1/x)log⁡(1/x)1+x−4(−1x2)=2xlog⁡x1+x4=f(x). f(y)\frac{dy}{dx} = \frac{2(1/x)\log(1/x)}{1+x^{-4}}\left(-\frac{1}{x^2}\right) = \frac{2x\log x}{1+x^4} = f(x).
  4. 0<ε<10<\varepsilon<1 とする。(3) の関係より ∫ε1f(x) dx=∫1/ε1f(y) dy=−∫11/εf(y) dy. \int_\varepsilon^1 f(x)\,dx = \int_{1/\varepsilon}^{1} f(y)\,dy = -\int_1^{1/\varepsilon} f(y)\,dy. (2) で右辺の極限が存在するので、ε→0+\varepsilon\to 0+ として ∫01f(x) dx \int_0^1 f(x)\,dx も収束する。
  5. I=∫1∞f(x) dx I=\int_1^\infty f(x)\,dx とおくと、(4) の計算から ∫01f(x) dx=−I. \int_0^1 f(x)\,dx=-I. よって ∫0∞f(x) dx=∫01f(x) dx+∫1∞f(x) dx=−I+I=0. \int_0^\infty f(x)\,dx = \int_0^1 f(x)\,dx+\int_1^\infty f(x)\,dx = -I+I=0.

最終答

% ∫1∞f(x) dx\displaystyle \int_1^\infty f(x)\,dx は収束、 ∫01f(x) dx\displaystyle \int_0^1 f(x)\,dx も収束、 ∫0∞f(x) dx\displaystyle \int_0^\infty f(x)\,dx は収束して値は 00。

第2問 — 関数項級数

方針

核になるのは望遠和である。fk=ak−ak+1f_k=a_k-a_{k+1} と見抜けば、点ごとの極限も一様収束の判定も、剰余項 an+1a_{n+1} の評価に帰着する。

積分後に一様収束する理由

an+1(x)a_{n+1}(x) 自身は xx が 00 に近いところで大きな山を持つ。しかし積分すると ∫01an+1(t) dt=12(n+1)log⁡{1+(n+1)3} \int_0^1 a_{n+1}(t)\,dt = \frac{1}{2(n+1)}\log\{1+(n+1)^3\} となり、山の幅の小ささが効いて 00 に近づく。これが「もとの級数は一様収束しないが、積分した級数は一様収束する」理由である。

典型ミス

x>0x>0 での極限だけを見て an+1(x)→0a_{n+1}(x)\to 0 と書くと、一様収束の議論にはならない。一様収束では xx を nn に依存させてよいので、x=(n+1)−3/2x=(n+1)^{-3/2} のように山の頂点を選んで剰余が小さくならないことを示す必要がある。

検算

S(0)=0S(0)=0 であり、求めた式 x/(1+x2)x/(1+x^2) も 00 を与える。また 0≤x≤10\le x\le1 で有界なので、積分後の極限関数としても自然である。

試験で書くべきポイント

(2) では sup⁡0≤x≤1∣∑k=1nFk(x)−∫0xS(t) dt∣→0 \sup_{0\le x\le 1} \left|\sum_{k=1}^nF_k(x)-\int_0^xS(t)\,dt\right|\to 0 を明示することが重要である。各 xx で収束することだけでは一様収束の証明として不十分である。

関数項級数の途中式・最終答をPDFで見る

第3問 — 線形代数

方針

標準基底の像が直接与えられていないので、まず「入力ベクトルを列に並べる」ことが第一手である。三つの入力ベクトルが一次独立なら、それらは C3\mathbb{C}^3 の基底であり、像の情報から線形写像は一意に決まる。

行列計算の確認

AtV=BtA_tV=B_t と置くと、右から V−1V^{-1} を掛けて At=BtV−1A_t=B_tV^{-1} である。ここを V−1BtV^{-1}B_t としてしまうと、行列の積の順序が逆になり全く別の答になる。列ベクトルに左から行列を掛ける約束では、入力ベクトルを列にした行列は右側に現れる。

最小多項式の決め方

t=0t=0 では固有値 2,−22,-2 が現れ、かつ 22 の固有空間が二次元あるため対角化できる。対角化できる行列の最小多項式は、現れる固有値に対応する一次因子を一回ずつ掛けたものになる。

t=1t=1 では A1=I+NA_1=I+N と見て、べき零部分 NN の指数を見るのが速い。N2≠ON^2\ne O かつ N3=ON^3=O なので、最小多項式には (X−1)3(X-1)^3 が必要である。

検算

P0P_0 の各列を A0A_0 に代入すると、順に −2,2,2-2,2,2 倍される。したがって表示された対角行列の対角成分と列の順序は一致している。

典型ミス

At=BtV−1A_t=B_tV^{-1} の積の順序を逆にしないこと。列ベクトルを右に置く記法では、入力ベクトルを並べた行列 VV は右側に現れる。

試験で書くべきポイント

対角化可能性は固有多項式だけでは決まらない。特に t=1t=1 は固有多項式が (X−1)3(X-1)^3 であっても、固有空間が一次元しかないことを示さないと、対角化不能の根拠として弱い。固有空間の次元、または最小多項式に重根があることを明記する。

線形代数の途中式・最終答をPDFで見る

第4問 — 部分空間

方針

U+VU+V は FF の列と GG の列で張られる空間である。したがって dim⁡(U+V)\dim(U+V) は、四本の列を並べた 4×44\times4 行列のランクとして計算できる。

条件の読み替え

FF も GG も列ランクは 22 であるから、通常なら U+VU+V は最大で四次元になる。条件 dim⁡(U+V)=3\dim(U+V)=3 は、四本の列の間に一次関係がちょうど一つあることを意味する。これが det⁡(F G)=0\det(F\ G)=0 とランク 33 の確認に対応している。

W の意味

WW は「f(x)f(x) と g(y)g(y) が同じベクトルになるような組 (x,y)(x,y) 全体」である。これは Fx−Gy=0 Fx-Gy=0 という同次連立一次方程式の解空間なので、自然に部分空間になる。部分空間の証明では、零ベクトルを含むこと、和とスカラー倍で閉じていることを直接示してもよいが、核として見る方が簡潔でミスが少ない。

共通部分への戻し方

WW の元は R2\mathbb{R}^2 の二つのパラメータ x,yx,y を縦に並べたものであって、U∩VU\cap V の元そのものではない。最後に必ず FxFx、または同じ値である GyGy を計算して、R4\mathbb{R}^4 のベクトルに戻す必要がある。

検算

t=−3t=-3 のとき G(11)=(34−3−4)=F(1−2). G\begin{pmatrix}1\\1\end{pmatrix} = \begin{pmatrix} 3\\4\\-3\\-4 \end{pmatrix} = F\begin{pmatrix}1\\-2\end{pmatrix}. したがって求めたベクトルが確かに UU と VV の両方に属していることが確認できる。

典型ミス

det⁡(F G)=0\det(F\ G)=0 だけで t=−3t=-3 と結論して終わらないこと。条件は階数が 33 であることなので、少なくとも一つの 33 次小行列式が非零である確認が必要である。

試験で書くべきポイント

WW の基底は R4\mathbb R^4 の入力ペアの基底、U∩VU\cap V の基底は像空間のベクトルである。最後に FxFx または GyGy を計算して、空間を取り違えていないことを示す。

部分空間の途中式・最終答をPDFで見る

都立大 数学 院試 過去問の収録6年度