東京都立大学 院試 過去問 解答例
都立大 理学研究科 数理科学専攻 数学 2026年度夏季 院試 解答例・解説
東京都立大学 理学研究科 数理科学専攻 数学 2026年度夏季の院試 過去問について、設問ごとの解法方針・部分点の置き所を解説。全13問収録の解答・解説PDFと併用できます。問題本文は含みません。
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設問ごとの解法方針・部分点の置き所を無料で公開しています。
完全な途中式・最終答は解答・解説PDFに収録しています。問題本文は含まれません。
第1問 — 線形写像
方針
条件 は の成分に関する 1 本の線形条件である。したがって は 次元部分空間であり、成分を置いて基底を作るのが最も確実である。
検算
については実際に である。この確認をしておくと、(1) の計算で を安心して使える。
典型ミス
の型を見誤って としてしまうと、(1) の証明が崩れる。ここでは という括り方が採点上の要点である。
第2問 — 固有値
方針
対称行列の Rayleigh 商の問題である。固有値分解まで持ち込めば、最大値・最小値はそれぞれ最大固有値・最小固有値になる。
検算
例えば となる。固有ベクトルの長さはいずれも なので、 を掛ければ単位ベクトルになる。
試験で書くべきポイント
の分母は が直交行列であるため となる。ここを書かないと、固有値の重み付き平均に帰着した理由が不明確になる。
第3問 — 極値
方針
円板上の多項式型関数だが、 は 、 は符号と に分けて扱うと計算が大きく減る。制約 の下で を最大化する問題に変換するのが核心である。
境界の確認
境界で になることを必ず確認する。内部の臨界点だけを計算して終わると、閉領域上の最大・最小の議論としては不足する。
典型ミス
のため最大値と最小値は対称に現れるが、 に置いた後に符号を忘れやすい。絶対値の最大を出してから、 と に戻すと安全である。
第4問 — 広義積分
方針
この問題は「広義一様収束があると、極限と 積分を交換できる」ことを確認してから、ガウス積分に適用する流れである。単に形式的に積分順序を入れ替えるのではなく、一様収束で誤差評価を入れるのが要点である。
端点 の扱い
(4) では を含む区間に直接 (3) を使えない。いったん で計算し、最後に とする。この一手を入れると、仮定の区間 との整合が取れる。
典型ミス
であり、分母は である。符号と分母を誤ると最後の定数がずれる。
第5問 — 標準形
方針
直交対角化は「実対称」と同値である。一方、直交相似でジョルダン形そのものに移せるかは、通常の相似より強い条件なので、フロベニウスノルムの保存を使うと候補を一気に絞れる。
検算
を代入すると確かに は対称になる。 では なので、固有値 の幾何的重複度が であり、対角化できない。
典型ミス
(3) で「相似ならよい」と考えると、すべての が候補に見えてしまう。問題は直交行列による相似であるため、内積やノルムを保存する条件を必ず使う。
第6問 — 可換環
方針
これは中山の補題の有限生成イデアル版である。局所環の形ではなく、 が を殺す元として現れる形を、生成元の個数に関する帰納法で示す。
(2) の要点
として を作るところが核心である。 を と書いた後、 を掛けて の項を に落とし、最後に を足し戻す。
典型ミス
が可逆であるとは仮定されていない。したがって から直ちに とは言えない。証明では可逆性を使わず、 と分解している。
第7問 — 曲面
方針
曲面がグラフ で与えられているので、まず を正確に出す。第 1 基本量、第 2 基本量、ガウス曲率はそこから機械的に計算できる。
符号の確認
指定された法線は と同じ向きである。グラフ曲面では なので、今回の法線の第 3 成分は正になる。ここで逆向きを取ると の符号がすべて反転する。
最小値の見方
は整理すると に依存しない。さらに では分子も分母も非負で、 で を取る。 だけは となるため別扱いが必要である。
第8問 — 位相
方針
は ノルムの単位球面である。ユークリッド単位球面から各半直線に沿って拡大縮小する写像を作ると、同相性が自然に見える。
連結性の注意
では で連結ではない。設問の連結性は通常 の文脈で読む必要がある。 なら、 の連結性から直ちに従う。
試験で書くべきポイント
同相を示すときは、写像だけでなく逆写像も明示する。分母が にならない理由、すなわち や が原点を含まないことも短く書いておくとよい。
第9問 — ベクトル解析
方針
の面積分を直接計算するより、発散定理で境界全体の流束を出し、すでに求めた の寄与を引く方が速い。
向きの確認
は上向きである。しかし は下側境界なので、 の外向きは下向きであり、面積分では符号を反転して を使う。
典型ミス
交線の半径は である。 を二乗した後、 から を選ぶ。負の解は として不適である。
第10問 — 複素積分
方針
偏角 の直線では の偏角が になり、 が に変わる。これがフレネル積分をガウス積分に接続する理由である。
円弧積分の評価
円弧上では絶対値が になる。 を の一次関数で下から押さえることで、長さ の増加より指数減衰が勝つことを示せる。
典型ミス
の向きは から原点へ戻る向きである。ここで符号を落とすと、最後の の符号が逆になり、フレネル積分の値が誤る。
第11問 — 常微分方程式
方針
右辺は「回転成分」と「半径方向の減衰成分」に分かれている。極座標に直すと、角速度は一定、半径はロジスティック方程式になる。
検算
なので、 なら は増加して に近づき、 なら減少して に近づく。角度は なので、解は原点の周りを一定角速度で回りながら半径 に近づく。
典型ミス
の式では分母が である。 で割ってしまうと角速度が に依存する誤った式になる。
第12問 — 二部グラフ
方針
行列の非零パターンだけを見る量が最大マッチングであり、数値の線形従属性まで見る量が階数である。そのため階数は最大マッチング数を超えられないが、非零成分の値によっては小さくなる。
不等式の核心
非零な小行列式を展開すると、少なくとも 1 つの置換項が非零である。その置換項に現れる非零成分は行も列も重ならないため、ちょうどマッチングになる。
典型ミス
(3) では零でない成分の配置だけでなく、行列の値による打ち消しを使う。全成分が の 行列は、辺は十分あるが行が従属なので階数が に落ちる。
第13問 — アルゴリズム
方針
漸化式は再帰木で各段の総和が になる型である。段数が なので全体は になる。バブルソートの入れ替え回数は、比較回数ではなく反転数で数えるのが最短である。
検算
反転数は「左に大きい値、右に小さい値」の組の個数である。バブルソートの隣接交換は反転数を 1 だけ減らし、整列後の反転数は 0 なので、入れ替え総数と初期反転数は一致する。
典型ミス
最悪計算量を比較回数として数えると、今回の定義とずれる。設問では入れ替え回数を としているため、反転数に基づいて答える。