東京都立大学 院試 過去問 解答例
都立大 理学研究科 数理科学専攻 数学 2024年度夏季 院試 解答例・解説
東京都立大学 理学研究科 数理科学専攻 数学 2024年度夏季の院試 過去問について、設問ごとの解法方針・部分点の置き所を解説。全13問収録の解答・解説PDFと併用できます。問題本文は含みません。
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設問ごとの解法方針・部分点の置き所を無料で公開しています。
完全な途中式・最終答は解答・解説PDFに収録しています。問題本文は含まれません。
第1問 — 微分積分
方針
底が に近づき,指数が で大きくなる形なので,対数を取って を調べるのが最も安定する。微分でも収束判定でも同じ対数量が中心になる。
単調性で落としやすい点
だけを使うと符号評価が粗くなることがある。本問では を使うと がすぐ出る。最後に を明記してから と結論する。
級数と広義積分
なので級数は根判定法そのものでよい。広義積分は から指数関数で上から押さえる。ここで単調減少性を用いた 積分判定法にこだわる必要はない。
第2問 — 多変数積分
方針
(1) はレベル曲面の接平面,(2) は対称性,(3) は楕円体を単位球へ直す変数変換が それぞれ主眼である。どれも計算量を減らす最初の一手を選べるかが重要である。
検算
(2) では領域の面積が で,被積分関数は非負なので答は正になる。 (3) では単位球上の に伸縮率 が掛かるので になる。ヤコビアンを掛け忘れると になってしまう。
試験で書くべきポイント
接平面では法線ベクトルが であること,重積分では使用した対称性と 変数変換のヤコビアンを明記する。答だけを書くと部分点を落としやすい。
第3問 — 線形写像
方針
の次元は,直接すべての連立方程式を解いても求まるが, を使うと構造が見える。像と をそれぞれ平面として把握するのが短い。
典型ミス
が正則でないことから ではない,と分かるだけで, とは限らない。本問では である。 また の判定では,拡大係数行列を計算する代わりに 像の法線ベクトルを使うと計算が安定する。
検算
, なので答は 。 であるから,次元が を超えないことも 自然に確認できる。
第4問 — 対角化
方針
固有多項式から固有値の重複度を読み,固有空間の次元が代数的重複度に足りるかを 見る。ここでは固有値 の固有空間が常に 3 次元であることが決定的である。
なぜ だけが除外されるか
なら固有値 と が異なるので,それぞれの固有空間から取った 固有ベクトルは自動的に一次独立になる。一方 では固有値が 1 つに潰れ, 固有空間の次元が にとどまるため,4 本の一次独立な固有ベクトルが揃わない。
試験で書くべきポイント
固有多項式だけでは対角化可能性は決まらない。重複固有値 の固有空間の次元を 必ず書く。また は列に固有ベクトルを並べるので,対角成分の順序と列の順序を 一致させる。
第5問 — ジョルダン標準形
方針
最小多項式は「各固有値に対する最大ジョルダン細胞サイズ」を記録する。 本問では次数が 5 以上という条件が,3 個の固有値がすべて現れることと, 最大サイズの組が であることを強制している。
列挙の考え方
6 次行列で,最低限必要な次元は である。残り 1 次元を のどこへ足すかで 3 通りに 分かれる。ただし では最大サイズが 2 でなければならないため, 3 次元にする場合は の分割だけが許される。
典型ミス
からすぐ としてはいけない。最小多項式は の約数であり, 次数条件や追加条件を使って初めて具体的に決まる。
第6問 — 可換環
方針
べき等元 があると, は 側と 側に分かれる。本問の は 側への射影であり,核は反対側の になる。
単位元の注意
の単位元は の単位元 ではなく である。環準同型を示すときも を確認する必要がある。
典型ミス
まではすぐ出るが,これを単項イデアルとして と同一視する一行 を書かないと証明が完結しない。
第7問 — 曲線と曲面
方針
この曲線は弧長パラメータ表示された円螺旋である。まず Frenet 枠 を確定し,管状曲面の標準計算に持ち込む。
向きの確認
である。指定は と同じ向きなので,法線は になる。ここを逆にするとガウス曲率の表示で符号を 取り違えやすい。
検算
管状曲面の公式として が得られる。捩率 は途中の基本量には現れるが,最終的なガウス曲率からは 消える。計算結果に が残った場合は第1・第2基本量の行列式を再確認する。
第8問 — 商位相
方針
商空間 の点は の値ごとの同値類である。したがって は実質的に 値集合 と同じ点集合を持つ,という見方を使う。
ハウスドルフ性
連続単射 が作れれば,実数直線のハウスドルフ性を引き戻して 2 点を分離できる。 連続単射の存在だけで十分であり,ここで と が同相であることまで 示す必要はない。
コンパクト性の要点
最大値・最小値を取る点 を結ぶ閉区間だけで全ての値が実現される。 したがって商空間全体がコンパクト集合 の連続像になる。この発想を使うと, 全体が非コンパクトであることに惑わされない。
第9問 — グリーン公式
方針
これは Green の第1公式と第2公式である。覚えている公式を書くより, から出発すると符号を間違えにくい。
境界の向き
法線微分を使った流束表示では,境界の向きよりも外向き法線 の向きが重要である。 Green の定理の線積分表示に直す場合は,境界が領域を左に見る向きであることと 外向き法線の対応を確認する。
試験で書くべきポイント
が 級,境界が 級なので発散定理を適用できる,という正当化を 一言入れる。第2公式では勾配の内積項が相殺されることを明示する。
第10問 — 留数計算
方針
三角関数積分は によって有理関数の周回積分へ変換する。 このとき,三角関数の変換だけでなく を必ず掛ける。
極の位置
は絶対値が より大きいので単位円外にある。 は なので単位円内にある。 内部の極だけを留数和に入れる。
検算
被積分関数は非負であり,答 も正である。符号が負になった場合は, と留数定理の の掛け合わせを確認する。
第11問 — 常微分方程式
方針
係数行列は「回転」と「スカラー倍」の和である。問題で与えられた回転変換は, 回転成分をちょうど打ち消し, を独立なスカラー方程式にするためのもの。
検算
の積分は であり, ではない。 初期値 を代入すると,得られた式は確かに を満たす。
試験で書くべきポイント
最後の極限近似では に戻す必要がある。 の極限だけを書いても,求める には到達しない。
第12問 — グラフ
方針
(1) は Havel--Hakimi 法の考え方で,高次数の頂点から順に必要な本数だけ辺を張ると 作りやすい。(3) は「次数は から まで」という範囲と, と が同時に出られないことが核心である。
典型ミス
(2) で次数和が奇数だから,と書くのは本問では使えない。実際 は偶数である。不可能な理由は,6 頂点単純グラフの最大次数が だからである。
試験で書くべきポイント
「単純」グラフなのでループや多重辺で次数を増やすことはできない。 最大次数 の理由も,隣接できる相手が自分以外の 頂点だけだからである。
第13問 — ビット列
方針
置換 は文字列の連結を保つ射である。このため はフィボナッチ語になり, 長さはフィボナッチ数で支配される。
``01'' の数え方
置換後に ``01'' が文字の内部から生じることはない。, なので,``01'' は必ず隣り合う 2 つの像の境目で生じる。境目の左側が の像の 末尾 であるときだけ ``01'' になる。
典型ミス
に含まれる の個数をそのまま とすると,末尾が の場合に 1 個多く数えてしまう。末尾の像 の後には次の文字がないため,末尾補正が必要である。