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東京都立大学 院試 過去問 解答例

都立大 理学研究科 数理科学専攻 数学 2024年度夏季 院試 解答例・解説

東京都立大学 理学研究科 数理科学専攻 数学 2024年度夏季の院試 過去問について、設問ごとの解法方針・部分点の置き所を解説。全13問収録の解答・解説PDFと併用できます。問題本文は含みません。

最終更新:

設問ごとの解法方針・部分点の置き所を無料で公開しています。

完全な途中式・最終答は解答・解説PDFに収録しています。問題本文は含まれません。

1 — 微分積分

方針

底が 11 に近づき,指数が x2x^2 で大きくなる形なので,対数を取って x2logxx+2 x^2\log\frac{x}{x+2} を調べるのが最も安定する。微分でも収束判定でも同じ対数量が中心になる。

単調性で落としやすい点

log(1t)t\log(1-t)\leq -t だけを使うと符号評価が粗くなることがある。本問では loguu1\log u\leq u-1 を使うと logxx+2+1x+2<0 \log\frac{x}{x+2}+\frac{1}{x+2}<0 がすぐ出る。最後に f(x)>0f(x)>0 を明記してから f(x)<0f'(x)<0 と結論する。

級数と広義積分

f(x)1/xe2<1f(x)^{1/x}\to e^{-2}<1 なので級数は根判定法そのものでよい。広義積分は logf(x)2x\log f(x)\sim -2x から指数関数で上から押さえる。ここで単調減少性を用いた 積分判定法にこだわる必要はない。

完全な解答(途中式・最終答)はPDFに収録

2 — 多変数積分

方針

(1) はレベル曲面の接平面,(2) は対称性,(3) は楕円体を単位球へ直す変数変換が それぞれ主眼である。どれも計算量を減らす最初の一手を選べるかが重要である。

検算

(2) では領域の面積が 22 で,被積分関数は非負なので答は正になる。 (3) では単位球上の r2dV=4π/5\int r^2\,dV=4\pi/5 に伸縮率 66 が掛かるので 24π/524\pi/5 になる。ヤコビアンを掛け忘れると 4π/54\pi/5 になってしまう。

試験で書くべきポイント

接平面では法線ベクトルが F\nabla F であること,重積分では使用した対称性と 変数変換のヤコビアンを明記する。答だけを書くと部分点を落としやすい。

完全な解答(途中式・最終答)はPDFに収録

3 — 線形写像

方針

F1(V)F^{-1}(V) の次元は,直接すべての連立方程式を解いても求まるが, dimF1(V)=dimkerF+dim(VImF) \dim F^{-1}(V)=\dim\ker F+\dim(V\cap\operatorname{Im}F) を使うと構造が見える。像と VV をそれぞれ平面として把握するのが短い。

典型ミス

BB が正則でないことから V=R3V=\mathbb{R}^3 ではない,と分かるだけで, dimV=1\dim V=1 とは限らない。本問では rankB=2\operatorname{rank}B=2 である。 また b1ImFb_1\notin\operatorname{Im}F の判定では,拡大係数行列を計算する代わりに 像の法線ベクトルを使うと計算が安定する。

検算

dimkerF=2\dim\ker F=2dim(VImF)=1\dim(V\cap\operatorname{Im}F)=1 なので答は 33F1(V)R4F^{-1}(V)\subset\mathbb{R}^4 であるから,次元が 44 を超えないことも 自然に確認できる。

完全な解答(途中式・最終答)はPDFに収録

4 — 対角化

方針

固有多項式から固有値の重複度を読み,固有空間の次元が代数的重複度に足りるかを 見る。ここでは固有値 11 の固有空間が常に 3 次元であることが決定的である。

なぜ a=1a=1 だけが除外されるか

a1a\neq 1 なら固有値 11aa が異なるので,それぞれの固有空間から取った 固有ベクトルは自動的に一次独立になる。一方 a=1a=1 では固有値が 1 つに潰れ, 固有空間の次元が 33 にとどまるため,4 本の一次独立な固有ベクトルが揃わない。

試験で書くべきポイント

固有多項式だけでは対角化可能性は決まらない。重複固有値 11 の固有空間の次元を 必ず書く。また PP は列に固有ベクトルを並べるので,対角成分の順序と列の順序を 一致させる。

完全な解答(途中式・最終答)はPDFに収録

5 — ジョルダン標準形

方針

最小多項式は「各固有値に対する最大ジョルダン細胞サイズ」を記録する。 本問では次数が 5 以上という条件が,3 個の固有値がすべて現れることと, 最大サイズの組が (1,2,2)(1,2,2) であることを強制している。

列挙の考え方

6 次行列で,最低限必要な次元は 1+2+2=5 1+2+2=5 である。残り 1 次元を α1,α2,α3\alpha_1,\alpha_2,\alpha_3 のどこへ足すかで 3 通りに 分かれる。ただし α2,α3\alpha_2,\alpha_3 では最大サイズが 2 でなければならないため, 3 次元にする場合は 2+12+1 の分割だけが許される。

典型ミス

f(A)=Of(A)=O からすぐ mA=fm_A=f としてはいけない。最小多項式は ff の約数であり, 次数条件や追加条件を使って初めて具体的に決まる。

完全な解答(途中式・最終答)はPDFに収録

6 — 可換環

方針

べき等元 e2=ee^2=e があると,AAee 側と 1e1-e 側に分かれる。本問の ϕ(x)=ex\phi(x)=exee 側への射影であり,核は反対側の (1e)A(1-e)A になる。

単位元の注意

eAeA の単位元は AA の単位元 11 ではなく ee である。環準同型を示すときも ϕ(1)=e\phi(1)=e を確認する必要がある。

典型ミス

kerϕ={xex=0}\ker\phi=\{x\mid ex=0\} まではすぐ出るが,これを単項イデアルとして (1e)A(1-e)A と同一視する一行 x=ex+(1e)x x=ex+(1-e)x を書かないと証明が完結しない。

完全な解答(途中式・最終答)はPDFに収録

7 — 曲線と曲面

方針

この曲線は弧長パラメータ表示された円螺旋である。まず Frenet 枠 (e1,e2,e3)(e_1,e_2,e_3) を確定し,管状曲面の標準計算に持ち込む。

向きの確認

pu×pv=r(1rκcosv)(cosve2+sinve3) p_u\times p_v=-r(1-r\kappa\cos v)(\cos v\,e_2+\sin v\,e_3) である。指定は pu×pv-p_u\times p_v と同じ向きなので,法線は cosve2+sinve3\cos v\,e_2+\sin v\,e_3 になる。ここを逆にするとガウス曲率の表示で符号を 取り違えやすい。

検算

管状曲面の公式として K=κcosvr(1rκcosv) K=-\frac{\kappa\cos v}{r(1-r\kappa\cos v)} が得られる。捩率 τ\tau は途中の基本量には現れるが,最終的なガウス曲率からは 消える。計算結果に τ\tau が残った場合は第1・第2基本量の行列式を再確認する。

完全な解答(途中式・最終答)はPDFに収録

8 — 商位相

方針

商空間 XX の点は ff の値ごとの同値類である。したがって XX は実質的に 値集合 f(R)f(\mathbb{R}) と同じ点集合を持つ,という見方を使う。

ハウスドルフ性

連続単射 f~:XR \widetilde f:X\to\mathbb{R} が作れれば,実数直線のハウスドルフ性を引き戻して 2 点を分離できる。 連続単射の存在だけで十分であり,ここで XXf(R)f(\mathbb{R}) が同相であることまで 示す必要はない。

コンパクト性の要点

最大値・最小値を取る点 a,ba,b を結ぶ閉区間だけで全ての値が実現される。 したがって商空間全体がコンパクト集合 [a,b][a,b] の連続像になる。この発想を使うと, R\mathbb{R} 全体が非コンパクトであることに惑わされない。

完全な解答(途中式・最終答)はPDFに収録

9 — グリーン公式

方針

これは Green の第1公式と第2公式である。覚えている公式を書くより, div(fg)=fΔg+fg \operatorname{div}(f\nabla g)=f\Delta g+\nabla f\cdot\nabla g から出発すると符号を間違えにくい。

境界の向き

法線微分を使った流束表示では,境界の向きよりも外向き法線 nn の向きが重要である。 Green の定理の線積分表示に直す場合は,境界が領域を左に見る向きであることと 外向き法線の対応を確認する。

試験で書くべきポイント

f,gf,gC2C^2 級,境界が C1C^1 級なので発散定理を適用できる,という正当化を 一言入れる。第2公式では勾配の内積項が相殺されることを明示する。

完全な解答(途中式・最終答)はPDFに収録

10 — 留数計算

方針

三角関数積分は z=eiθz=e^{i\theta} によって有理関数の周回積分へ変換する。 このとき,三角関数の変換だけでなく dθ=dziz d\theta=\frac{dz}{iz} を必ず掛ける。

極の位置

23-2-\sqrt3 は絶対値が 11 より大きいので単位円外にある。 2+3-2+\sqrt31<2+3<0-1< -2+\sqrt3<0 なので単位円内にある。 内部の極だけを留数和に入れる。

検算

被積分関数は非負であり,答 π(423) \pi(4-2\sqrt3) も正である。符号が負になった場合は,1/i=i1/i=-i と留数定理の 2πi2\pi i の掛け合わせを確認する。

完全な解答(途中式・最終答)はPDFに収録

11 — 常微分方程式

方針

係数行列は「回転」と「スカラー倍」の和である。問題で与えられた回転変換は, 回転成分をちょうど打ち消し,X,YX,Y を独立なスカラー方程式にするためのもの。

検算

q(t)=etq(t)=e^{-t} の積分は 1et1-e^{-t} であり,eete^{-e^{-t}} ではない。 初期値 X(0)=1,Y(0)=2X(0)=1,Y(0)=2 を代入すると,得られた式は確かに X(0)=1,Y(0)=2 X(0)=1,\qquad Y(0)=2 を満たす。

試験で書くべきポイント

最後の極限近似では x(t)=X(t)cost+Y(t)sint x(t)=X(t)\cos t+Y(t)\sin t に戻す必要がある。X,YX,Y の極限だけを書いても,求める α,β\alpha,\beta には到達しない。

完全な解答(途中式・最終答)はPDFに収録

12 — グラフ

方針

(1) は Havel--Hakimi 法の考え方で,高次数の頂点から順に必要な本数だけ辺を張ると 作りやすい。(3) は「次数は 00 から n1n-1 まで」という範囲と, 00n1n-1 が同時に出られないことが核心である。

典型ミス

(2) で次数和が奇数だから,と書くのは本問では使えない。実際 6+5+4+3+3+3=24 6+5+4+3+3+3=24 は偶数である。不可能な理由は,6 頂点単純グラフの最大次数が 55 だからである。

試験で書くべきポイント

「単純」グラフなのでループや多重辺で次数を増やすことはできない。 最大次数 n1n-1 の理由も,隣接できる相手が自分以外の n1n-1 頂点だけだからである。

完全な解答(途中式・最終答)はPDFに収録

13 — ビット列

方針

置換 TT は文字列の連結を保つ射である。このため BnB_n はフィボナッチ語になり, 長さはフィボナッチ数で支配される。

``01'' の数え方

置換後に ``01'' が文字の内部から生じることはない。1101\mapsto 10010\mapsto 1 なので,``01'' は必ず隣り合う 2 つの像の境目で生じる。境目の左側が 11 の像の 末尾 00 であるときだけ ``01'' になる。

典型ミス

BnB_n に含まれる 11 の個数をそのまま cn+1c_{n+1} とすると,末尾が 11 の場合に 1 個多く数えてしまう。末尾の像 1010 の後には次の文字がないため,末尾補正が必要である。

完全な解答(途中式・最終答)はPDFに収録

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