東京都立大学 院試 過去問 解答例
都立大 理学研究科 数理科学専攻 数学 2025年度冬季 院試 解答例・解説
東京都立大学 理学研究科 数理科学専攻 数学 2025年度冬季の院試 過去問について、設問ごとの解法方針・部分点の置き所を解説。全4問収録の解答・解説PDFと併用できます。問題本文は含みません。
最終更新:
設問ごとの解法方針・部分点の置き所を無料で公開しています。
完全な途中式・最終答は解答・解説PDFに収録しています。問題本文は含まれません。
第1問 — 線形写像
方針
線形写像かどうかは,まず定数項と2次以上の項が消えるかを見る。本問では第1成分の の係数だけを確認すればよい。表現行列を作ったあとは, から への写像なので,単射性は3本の列の一次独立性で判定する。
検算
のときだけ全ての3次小行列式が0になる。実際,このとき が核に入るので,階数は3ではない。逆に なら で,階数3がただちに従う。
典型ミス
の場合に だからといって としてはいけない。この場合の和は そのもので, 2本の一次独立なベクトルで張られる平面にすぎない。 の場合も,核の生成ベクトルが すでに に含まれているため,次元は増えない。
試験で書くべきポイント
小行列式を一つだけ計算して を示すだけでは, のときに本当に階数が 落ちることの確認が弱い。全ての3次小行列式が を因子にもつこと,または で明示的な核ベクトルを示すことまで書くと答案として安定する。
第2問 — 固有値と対角化
方針
固有値が指定されている問題では,まず特性多項式の係数比較を行うのが最短である。 特に本問では が因子として現れるため,残りの2次式だけを比較すれば が決まる。
対角化条件の見方
重複している固有値は だけである。固有値 の固有空間は少なくとも1次元 ずつあるので,対角化の可否は の固有空間が代数的重複度2に届くかどうかだけを 見ればよい。したがって を調べる問題に帰着する。
余因子行列の扱い
余因子行列は正則行列に対して と書ける。ここで なので,各固有値上で と一致する2次多項式を補間すればよい。 対角化可能性を仮定しているから,固有値上で一致すれば行列に代入しても一致する。
検算
のとき、示した二つのベクトルはどちらも を満たし、互いに一次独立である。したがって の固有空間が確かに二次元であることを確認できる。
典型ミス
最小多項式に を残してしまうミスが多い。これは対角化できない場合の ジョルダンブロックを反映する因子であり,本問の(iii)では が仮定されている。 したがって重複固有値であっても,最小多項式には一次因子 が一回だけ現れる。
試験で書くべきポイント
係数比較で を決めた後、対角化条件では重複固有値 の固有空間だけを調べる、と書くと答案が短くなる。余因子行列は に直してから固有値上の補間で処理する。
第3問 — 広義積分
方針
広義積分は,問題のある場所を分けるのが基本である。三角関数の積分では が0になる だけが問題になる。二重積分では,原点の特異性と 帯状領域の無限遠の両方を確認する必要がある。
比較の注意
のときは,正の数に負の冪を取るため,不等号の向きが反転する。 例えば から が従う。 収束側を示すときには下からの評価ではなく,上から で押さえることが 必要である。
二重積分の検算
が大きいほど原点で発散しやすく,小さいほど無限遠で発散しやすい。 したがって答が という形になるのは自然である。原点で ,無限遠で と 役割を分けて覚えると混同しにくい。
試験で書くべきポイント
帯状領域は全平面ではないが,原点近くでは半円盤と同程度の領域を含み,またそれに 含まれるため,極座標による判定が使える。無限遠では が に制限されて いるので,実質的には1次元の積分 が支配する。
第4問 — べき級数
方針
偶数階の階乗だけが現れる級数なので, と に結びつけるのが核心である。 では , では になる。 特に なので,後半では常に双曲線余弦の表示を使える。
絶対値が出る理由
は, では1へ, では へ近づく。 これに前の が掛かるため,極限は ではなく になる。 も別に確認しておくと,点ごとの極限の記述が完全になる。
一様収束の検算
極限関数 は無限大で大きくなるため,一見すると全実数上の一様収束は怪しく見える。 しかし差は であり,大きな では が指数的に1へ近づく。この指数減衰が の増大に勝つため,全実数上でも一様収束する。
典型ミス
と書いたあと,絶対値の微分で場合分けを複雑に しすぎることがある。 は偶関数なので としてから微分すれば, も含めて 自然に処理できる。
試験で書くべきポイント
一様収束の判定では、点ごとの極限だけでなく上限ノルムを評価する。 まで書けば、全実数上での一様収束を明確に示せる。