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東北大学 院試 過去問 解答例

東北大 情報科学研究科 2群 情報・生命系 基礎・専門科目 2024年3月 院試 過去問 解答例・解説(全12問)

全12問。電磁気学・回路3問・微分積分・解析3問・制御工学1問。テーマタグは7件(伝達関数・剛体の回転運動・ラプラス変換)。2023年8月と共通のテーマは伝達関数・剛体の回転運動。

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解説12問と大問1問の途中式・最終答(全12問)
解答PDFに収録
途中式と最終答(最終答つき12問)
問題本文
非収録

東北大 2群 情報・生命系 基礎・専門科目 2024年3月 院試 過去問の出題内容(全12問)

この12問の分野は電磁気学・回路3問・微分積分・解析3問・制御工学1問・力学1問です。

大問分野主題解説の小見出し最終答
第1問—中空円筒導体とポインティングベクトルアンペールの法則では包絡電流を面積比で数えるあり
第2問電磁気学・回路交流回路と結合インダクタ誘導性・容量性は全インピーダンスの虚部で判定するあり
第3問微分積分・解析多数決関数と中立関数標準形では 1 の入力と 0 の入力を分けて数えるあり
第4問—直積と集合演算等式の否定には反例を1つ出せばよいあり
第5問力学糸が切れた直後の剛体運動並進と回転を同時に立てるあり
第6問微分積分・解析遅延べき関数のラプラス変換積分開始点を読み落とさないあり
第7問制御工学制御系の安定限界と変圧器ボード線図は傾きの変化で零点・極を読むあり
第8問—ヘテロダインAM受信機IF帯域は片側ではなく両側波帯を通すあり
第9問電磁気学・回路MOSFET増幅回路次段のバイアス抵抗は前段の交流負荷あり
第10問電磁気学・回路Dフリップフロップと順序回路次状態は「更新前の値」で計算するあり
第11問微分積分・解析再帰関数とスタック機械スタックには「戻り番地」と「保存した引数」が混在するあり
第12問—有限幅ポテンシャルと硬い壁確率流は進行方向成分だけで比較するあり

2024年3月の出題テーマと、同じテーマを出した他大学・他年度

この年度は5問に7テーマが出ています。

前年度(2023年8月)との違い

大問数
2023年8月 12問 → 2024年3月 12問
両年度に出たテーマ
伝達関数・剛体の回転運動
2023年8月のページを見る

第1問 — 中空円筒導体とポインティングベクトル

ポインティングベクトルの向きは典型的なミスになりやすい。電流は +z^+\hat{\boldsymbol{z}}、 磁界は +ϕ^+\hat{\boldsymbol{\phi}} なので z^×ϕ^=−r^\hat{\boldsymbol{z}}\times\hat{\boldsymbol{\phi}}=-\hat{\boldsymbol{r}} であり、エネルギーは導体の外側面から 内部へ流れ込む。電源からエネルギーが「電線の中を電流と一緒に運ばれる」のではなく、 周囲の電磁界を通じて導体表面へ供給される、という点を確認しておく。

アンペールの法則では包絡電流を面積比で数える

中空導体の内部領域 a<r<ba<r<b では、包絡電流は I(r2−a2)/(b2−a2)I(r^2-a^2)/(b^2-a^2) である。ここを Ir2/b2Ir^2/b^2 のように扱うと内半径 aa の効果を落としてしまう。

解答

  1. 等方性媒質では ∇⋅D=ρ,∇⋅B=0,∇×E=−∂B∂t, \nabla\cdot \boldsymbol{D}=\rho,\qquad \nabla\cdot \boldsymbol{B}=0,\qquad \nabla\times \boldsymbol{E}=-\frac{\partial \boldsymbol{B}}{\partial t}, ∇×H=i+∂D∂t,D=εE,B=μH. \nabla\times \boldsymbol{H}=\boldsymbol{i}+\frac{\partial \boldsymbol{D}}{\partial t}, \qquad \boldsymbol{D}=\varepsilon\boldsymbol{E},\quad \boldsymbol{B}=\mu\boldsymbol{H}. ファラデーの法則に H\boldsymbol{H} を、アンペール--マクスウェルの法則に E\boldsymbol{E} を内積して差をとると H⋅(∇×E)−E⋅(∇×H)=−H⋅∂B∂t−E⋅∂D∂t−E⋅i. \boldsymbol{H}\cdot(\nabla\times\boldsymbol{E}) -\boldsymbol{E}\cdot(\nabla\times\boldsymbol{H}) =-\boldsymbol{H}\cdot\frac{\partial\boldsymbol{B}}{\partial t} -\boldsymbol{E}\cdot\frac{\partial\boldsymbol{D}}{\partial t} -\boldsymbol{E}\cdot\boldsymbol{i}. ベクトル公式 ∇⋅(E×H)=H⋅(∇×E)−E⋅(∇×H)\nabla\cdot(\boldsymbol{E}\times\boldsymbol{H}) =\boldsymbol{H}\cdot(\nabla\times\boldsymbol{E}) -\boldsymbol{E}\cdot(\nabla\times\boldsymbol{H}) を用いれば ∂∂t(12E⋅D+12H⋅B)+∇⋅(E×H)+E⋅i=0. \frac{\partial}{\partial t} \left(\frac{1}{2}\boldsymbol{E}\cdot\boldsymbol{D} +\frac{1}{2}\boldsymbol{H}\cdot\boldsymbol{B}\right) +\nabla\cdot(\boldsymbol{E}\times\boldsymbol{H}) +\boldsymbol{E}\cdot\boldsymbol{i}=0. したがって電磁界のエネルギー密度は u=12εE2+12μH2, u=\frac{1}{2}\varepsilon E^2+\frac{1}{2}\mu H^2, ポインティングベクトルは S=E×H \boldsymbol{S}=\boldsymbol{E}\times\boldsymbol{H} である。この式は「電磁エネルギーの減少率」が「外へ流れ出るエネルギー流束」と 「電流に渡される仕事率」の和に等しいことを表す。
  2. 電流密度は中空円筒導体内で一様なので Jz=Iπ(b2−a2) J_z=\frac{I}{\pi(b^2-a^2)} である。半径 rr の円周にアンペールの法則を適用すると Hϕ(r)={0,r<a,I(r2−a2)2πr(b2−a2),a<r<b,I2πr,b<r. H_\phi(r)= \begin{cases} 0, & r<a,\\[3pt] \displaystyle \frac{I(r^2-a^2)}{2\pi r(b^2-a^2)}, & a<r<b,\\[8pt] \displaystyle \frac{I}{2\pi r}, & b<r. \end{cases} 導体内の軸方向電界はオームの法則より Ez=Jzσ=Iσπ(b2−a2). E_z=\frac{J_z}{\sigma} =\frac{I}{\sigma\pi(b^2-a^2)}. 外側面 r=br=b では Hϕ(b)=I2πb H_\phi(b)=\frac{I}{2\pi b} であり、 S=Ezz^×Hϕϕ^=−EzHϕr^. \boldsymbol{S}=E_z\hat{\boldsymbol{z}}\times H_\phi\hat{\boldsymbol{\phi}} =-E_zH_\phi\hat{\boldsymbol{r}}. よって大きさと向きは ∣S(b)∣=I22π2σb(b2−a2),半径方向内向き. |\boldsymbol{S}(b)|= \frac{I^2}{2\pi^2\sigma b(b^2-a^2)}, \qquad \text{半径方向内向き}. 単位長さ・単位時間当たりに側面から流入する電磁エネルギーは ∣S(b)∣ 2πb=I2σπ(b2−a2). |\boldsymbol{S}(b)|\,2\pi b =\frac{I^2}{\sigma\pi(b^2-a^2)}. 一方、導体内で発生するジュール熱は ∫abσEz2 2πr dr=σEz2π(b2−a2)=I2σπ(b2−a2). \int_a^b \sigma E_z^2\,2\pi r\,dr =\sigma E_z^2\pi(b^2-a^2) =\frac{I^2}{\sigma\pi(b^2-a^2)}. 両者は一致する。

最終答

∇⋅D=ρ,∇⋅B=0,∇×E=−∂tB,∇×H=i+∂tD, \nabla\cdot\boldsymbol{D}=\rho,\quad \nabla\cdot\boldsymbol{B}=0,\quad \nabla\times\boldsymbol{E}=-\partial_t\boldsymbol{B},\quad \nabla\times\boldsymbol{H}=\boldsymbol{i}+\partial_t\boldsymbol{D}, ∂tu+∇⋅S+E⋅i=0,u=12(E⋅D+H⋅B),S=E×H. \partial_t u+\nabla\cdot\boldsymbol{S}+\boldsymbol{E}\cdot\boldsymbol{i}=0,\quad u=\frac12(\boldsymbol{E}\cdot\boldsymbol{D}+\boldsymbol{H}\cdot\boldsymbol{B}),\quad \boldsymbol{S}=\boldsymbol{E}\times\boldsymbol{H}. また Hϕ={0(r<a),I(r2−a2)2πr(b2−a2)(a<r<b),I2πr(b<r),Ez=Iσπ(b2−a2), H_\phi= \begin{cases} 0 &(r<a),\\ \dfrac{I(r^2-a^2)}{2\pi r(b^2-a^2)} &(a<r<b),\\ \dfrac{I}{2\pi r} &(b<r), \end{cases} \quad E_z=\dfrac{I}{\sigma\pi(b^2-a^2)}, ∣S(b)∣=I22π2σb(b2−a2)(内向き) |\boldsymbol{S}(b)|=\dfrac{I^2}{2\pi^2\sigma b(b^2-a^2)} \quad(\text{内向き}) であり、側面からの流入電力密度積分は導体内のジュール熱に等しい。

第2問 — 交流回路と結合インダクタ

フェーザの基準をどの量に置くかを先に固定すると、計算が一気に安定する。この設問では I2I_2 が基準なので、抵抗電圧 V2V_2 も実軸上に置ける。並列枝では電圧が共通、 直列枝では電流が共通である、という整理を崩さないことが重要である。

誘導性・容量性は全インピーダンスの虚部で判定する

枝ごとの見かけではなく、電源から見た合成インピーダンス ZC+ZpZ_C+Z_p の虚部を見る。途中でアドミタンスの虚部だけを見て判定すると符号を誤りやすい。

交流回路と結合インダクタの途中式・最終答をPDFで見る

第3問 — 多数決関数と中立関数

中立性は「真の個数が半分」という個数条件にすぎない。一方、多数決と否定だけで作った関数には 自己双対性という構造的な制約が残る。個数条件だけを見て「すべて表せる」と判断しないこと。

標準形では 1 の入力と 0 の入力を分けて数える

積和標準形は真となる入力を、和積標準形は偽となる入力を列挙する。多数決関数では 真が 4 個、偽も 4 個なので、どちらの標準形も4項になる。

多数決関数と中立関数の途中式・最終答をPDFで見る

第4問 — 直積と集合演算

直積の等式は、順序対 (x,y)(x,y) の第1成分と第2成分に分けて所属条件を展開すると判定しやすい。 和集合は成分ごとに展開すると「交差した組」を新たに作る場合があるため、(3) のような式は注意が必要である。

等式の否定には反例を1つ出せばよい

「任意の集合で成り立つか」を問う問題では、成り立たない場合に一般論で崩す必要はない。 最小の1点集合を使うと、余計な要素がどこで生じるかが明確になる。

直積と集合演算の途中式・最終答をPDFで見る

第5問 — 糸が切れた直後の剛体運動

張力の水平成分は TθT\theta で一次の量なので、θ\theta の運動方程式には残す。 ただし初期条件が θ=θ˙=0\theta=\dot\theta=0 であるため、線形近似の範囲では θ\theta は常に 0 となる。 一方、回転は張力の鉛直成分によるトルクで直ちに始まる。

並進と回転を同時に立てる

張力 TT は未知量だが、鉛直方向の並進式と重心まわりの回転式を連立すれば消去できる。 棒の慣性モーメントを 13Ma2\frac13Ma^2 とする点も頻出確認事項である。

糸が切れた直後の剛体運動の途中式・最終答をPDFで見る

第6問 — 遅延べき関数のラプラス変換

本質は「b/ab/a だけ遅れたべき関数」である。t=b/at=b/a を原点に移す置換を先に行うと、 指数因子 e−pb/ae^{-pb/a} とガンマ積分に分離できる。

積分開始点を読み落とさない

(at−b)c(at-b)^c だけを変換してしまうと遅延因子 e−pb/ae^{-pb/a} が消える。 区分関数では、まず有効な積分区間を確定すること。

遅延べき関数のラプラス変換の途中式・最終答をPDFで見る

第7問 — 制御系の安定限界と変圧器

ナイキストの安定限界は、軌跡が −1-1 を通る条件で決まる。実軸交点を先に求めると K1K_1 が一行で出る。変圧器では必ずどちら側へ換算するかを固定し、定格電流で百分率降下を計算する。

ボード線図は傾きの変化で零点・極を読む

傾きが +20 dB/dec+20\,\mathrm{dB/dec} だけ増えれば零点、20 dB/dec20\,\mathrm{dB/dec} だけ減れば極である。 この読み取りと時定数の大小関係を対応させる。

制御系の安定限界と変圧器の途中式・最終答をPDFで見る

第8問 — ヘテロダインAM受信機

混合で生じるのは和周波と差周波である。ヘテロダイン受信機では、可変同調をRF側だけで完結させず、 信号を固定IFへ移してから高性能な狭帯域増幅・選択を行う点が本質である。

IF帯域は片側ではなく両側波帯を通す

音声の最高周波数が 10 kHz10\,\mathrm{kHz} なら、AMでは搬送波の上下に 10 kHz10\,\mathrm{kHz} ずつ広がる。 したがってIFフィルタ幅は約 20 kHz20\,\mathrm{kHz} と見る。

ヘテロダインAM受信機の途中式・最終答をPDFで見る

第9問 — MOSFET増幅回路

MOSFET のゲート電流を 0 とみなすことで、バイアス分圧と入力インピーダンスを独立に扱える。 縦続増幅では、次段の入力抵抗が前段の負荷になるため、単体時より前段利得が低下する。

次段のバイアス抵抗は前段の交流負荷

結合コンデンサが短絡とみなせる周波数では、次段ゲートの R7∥R8R_7\parallel R_8 が前段ドレーンに並列に見える。 ここを忘れると2段利得を過大評価する。

MOSFET増幅回路の途中式・最終答をPDFで見る

第10問 — Dフリップフロップと順序回路

JK-FF では J=K=1J=K=1 が反転動作なので、D-FF 化ではその状態を使わず、JJ と KK を相補に入力する。 順序回路では、各 D 入力に入っている論理式をまず次状態方程式として書くと、タイムチャートを機械的に作れる。

次状態は「更新前の値」で計算する

2つの D-FF は同じクロックエッジで同時に更新される。Q0Q_0 を更新してから Q1Q_1 を計算するのではなく、 更新前の (Q0,Q1)(Q_0,Q_1) を使って両方の次状態を求める。

Dフリップフロップと順序回路の途中式・最終答をPDFで見る

第11問 — 再帰関数とスタック機械

このプログラムでは、戻り番地をスタックに積んでから `jmp 6' で関数本体へ飛び、 本体側の `ret' が戻り番地を取り出して復帰する。さらに再帰前の引数 nn もスタックに保存しておくため、 戻ってきたあとに 2f(n−1)+n2f(n-1)+n を計算できる。

スタックには「戻り番地」と「保存した引数」が混在する

どちらをいつ push/pop するかを分けて追う。戻り番地は `ret' が消費し、引数 nn は明示的な `pop r1' で回収される。

再帰関数とスタック機械の途中式・最終答をPDFで見る

第12問 — 有限幅ポテンシャルと硬い壁

右側が無限大ポテンシャルなので、x=ax=a では透過波ではなく節条件 ψ(a)=0\psi(a)=0 が課される。 この条件により領域 II は進行波と反射波の重ね合わせになり、幅 aa に対して定在波的な共鳴条件が現れる。

確率流は進行方向成分だけで比較する

領域 II 全体の流れは反射成分も含めると相殺を含む。ここで問われている比は、正方向へ進む成分 Ceik2xCe^{ik_2x} と入射成分 Aeik1xAe^{ik_1x} の確率流密度比である。

有限幅ポテンシャルと硬い壁の途中式・最終答をPDFで見る

東北大 2群 情報・生命系 基礎・専門科目 院試 過去問の収録6年度

  • 2026年3月(全6問)

    電磁誘導 / 二端子対回路 / 全加算器とMUX

  • 2025年8月(全6問)

    平面電磁波の反射と透過 / 線路負荷と過渡応答 / JKフリップフロップ

  • 2025年3月(全6問)

    平行導体と接地平板 / 無損失伝送線路 / 3値入力論理

  • 2024年8月(全6問)

    静電界と静電容量 / 共振回路と変圧器 / 論理式の簡単化

  • 2024年3月(このページ・全12問)

    中空円筒導体とポインティングベクトル / 交流回路と結合インダクタ / 多数決関数と中立関数

  • 2023年8月(全12問)

    同心球導体の電界と静電容量 / 並列交流回路と結合インダクタ / リード・マラー標準形