大阪大学 院試 過去問 解答例
阪大 理学研究科 数学 第1次募集 院試 解答例・解説
大阪大学 理学研究科 数学 第1次募集の院試 過去問について、設問ごとの解法方針・部分点の置き所を解説。全10問収録の解答・解説PDFと併用できます。問題本文は含みません。
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設問ごとの解法方針・部分点の置き所を無料で公開しています。
完全な途中式・最終答は解答・解説PDFに収録しています。問題本文は含まれません。
第1問 — A-1 変分法の基本補題
方針
これは「すべての境界で消える試験関数に対して積分が消えるなら,被積分関数は定数である」という変分法の基本補題の形である。直接部分積分をしたくなるが, は連続としか仮定されていないため, は使わない。
試験関数の作り方
を自由に選びたいが, という制約がある。この制約は という平均ゼロ条件に対応する。したがって任意の から平均値 を引いた を として採用するのが自然である。
検算
結論が の平均値 になることは,定数関数 を代入すると仮定を確かに満たすことからも確認できる。典型的なミスは を選んだ後に,非負連続関数の積分ゼロから各点ゼロを導く部分を書かずに終えることである。
第2問 — A-2 対称行列と交換子写像
方針
前半は実対称行列の標準事実を使う問題である。実対称行列では単位球面上の二次形式の最大値が最大固有値に一致する。後半は交換子写像 の像の次元なので,核の次元を数える。
可換行列の数え方
の固有値がすべて相異なることが重要である。対角化後の と可換な行列 は を満たす。 では なので ,つまり は対角行列である。よって自由度は3つである。
典型ミス
が部分空間であることは, が線形写像であり がその像であることを言えば十分である。集合の形だけを見て個別に閉性を確認してもよいが,線形写像の像と見抜く方が短く確実である。
第3問 — A-3 余可算位相のコンパクト性と連結性
方針
余可算位相では,開集合が非常に大きい。そのため無限集合には「尻尾を順に除く」開被覆を作ると有限部分被覆を壊せる。一方,有限部分空間では一点集合が開になるので離散的に振る舞う。
コンパクト性と連結性の合わせ技
最後の不存在証明では,連続像がコンパクト性と連結性を保つことを同時に使う。像が無限ならコンパクト性に反し,有限なら連結性に反する,という二段構えで潰すのが最短である。
試験で書くべき点
「無限部分集合はコンパクトでない」と主張するだけでは足りない。具体的な開被覆 と,有限個では が残ることまで書くと答案として安定する。
第4問 — A-4 留数計算と広義積分
方針
分子は定数項と1次項が消えるように作られている。したがって で割っても特異性は高々 であり,留数だけが積分値に効く。
符号の確認
正向きの小半円 なら である。一方,実軸積分を評価するためのくぼみ半円は と逆向きに進むので になる。この符号を取り違えると最終積分の符号が反転する。
検算
のとき被積分関数は恒等的に であり,答えも になる。 でも同様に である。端点的な値での検算は,留数計算の符号確認に有効である。
第5問 — B-1 二次元線形群
方針
は単なる加法群として書かれているが,素体 上のベクトル空間でもある。加法群準同型は 線形性を自動的に持つので,問題は の基本問題に帰着する。
中心の見方
中心がスカラー行列になる事実は一般の でも同じである。2次元では「すべての1次元部分空間を保つならスカラー」という形で説明すると短い。
試験での注意
位数の計算では第2列を「第1列と異なる」ではなく「第1列のスカラー倍でない」と数える必要がある。除く個数は ではなく である。
第6問 — B-2 中国剰余型同型とイデアル
方針
前半は中国剰余定理の加群版である。 と が互いに素であるため, は で単元, は で単元になる。この観察が単射性の要点である。
後半の短い処理
を直接一次結合で にする式を探すと遠回りになりやすい。まず から を得て, により が目的のイデアルに入ると見るのが簡潔である。
典型ミス
は整域とは限らない。したがって「 と を割る素因子がない」のような整数的な議論は使えない。イデアルの包含関係だけで処理するのが安全である。
第7問 — B-3 直交群の多様体構造
方針
は直交群 である。多様体性は正則値定理で示すのが標準的で,微分の全射性を具体的に確認すればよい。
微分の検算
を一次の項まで展開すると である。最後の項は2次なので微分には入らない。
連結性の判断
が連結でないことは行列式で即座に分かる。 は離散空間なので,行列式の値が異なる2点を連続曲線で結ぶことはできない,という直感にも対応している。
第8問 — B-4 球面と三角形の和空間のホモロジー
方針
図形の交わりが3点であることをまず押さえる。 は球面に2次元円板を3点で貼った空間, は球面に円周を3点で貼った空間である。この「3点で貼る」ことが の階数を増やす。
Mayer--Vietoris の読み方
連結な2つの空間を 個の点で貼り合わせると, に概ね 個の輪が生じる。ここでは なので,貼り合わせ由来で2個の が現れる。 ではさらに 自身の1個が加わる。
不存在証明
最後は「レトラクションがあれば包含がホモロジー上で単射になる」という標準論法である。階数が大きい が階数の小さい に単射できないことを使う。
第9問 — B-5 可積分関数と幾何級数
方針
前半2問は測度論の基本評価である。特に2問目は の一行が核心である。
幾何級数の注意点
は負の値も取り得るため,単純に全体で単調収束定理を使うことはできない。 と に分けると,前者では単調収束,後者では有界性と優収束が使える。
典型ミス
は各点で成り立つが, が可積分とは限らない。 が に近づく部分の測度が大きいと発散し得るため,この可積分性がちょうど数値級数の収束条件になる。
第10問 — B-6 線形常微分方程式の境界条件
方針
前半は定数変化法の核を直接微分して確認する問題である。Wronski 行列式が であることが,端点微分で が出る理由である。
境界条件の意味
の同次解は と の振動であり,無限遠で収束して になることはない。そのため で消える条件だけで同次解の自由度が消え,一意性が得られる。
直交条件の解釈
両端で消える解が存在するためには,強制項 が同次解 の成分を持たない必要がある。最後の2つの積分条件は,まさにこの共鳴成分が消えることを表している。