院試hub

大阪大学 院試 過去問 解答例

阪大 理学研究科 数学 2026年度 第1次募集 院試 過去問 解答例・解説(全10問)

全10問。位相・幾何2問・線形代数1問・代数1問。テーマタグは5件(線形空間・基底・固有値・固有ベクトル・留数定理)。2025年度 第2次募集と共通のテーマは固有値・固有ベクトル・留数定理。

最終更新:

このページで公開
解説10問と大問1問の途中式・最終答(全10問)
解答PDFに収録
途中式と最終答(最終答つき10問)
問題本文
非収録

阪大 数学 2026年度 第1次募集 院試 過去問の出題内容(全10問)

この10問の分野は位相・幾何2問・線形代数1問・代数1問・微分積分・解析1問・微分方程式1問です。

大問分野主題解説の小見出し最終答
第1問—A-1 変分法の基本補題試験関数の作り方あり
第2問線形代数A-2 対称行列と交換子写像可換行列の数え方あり
第3問位相・幾何A-3 余可算位相のコンパクト性と連結性コンパクト性と連結性の合わせ技 / 試験で書くべき点あり
第4問微分積分・解析A-4 留数計算と広義積分符号の確認あり
第5問—B-1 二次元線形群中心の見方あり
第6問代数B-2 中国剰余型同型とイデアル後半の短い処理あり
第7問位相・幾何B-3 直交群の多様体構造微分の検算 / 連結性の判断あり
第8問—B-4 球面と三角形の和空間のホモロジーMayer--Vietoris の読み方 / 不存在証明あり
第9問—B-5 可積分関数と幾何級数幾何級数の注意点あり
第10問微分方程式B-6 線形常微分方程式の境界条件境界条件の意味 / 直交条件の解釈あり

この年度の解説には典型ミス3件・検算2件が付いています。

2026年度 第1次募集の出題テーマと、同じテーマを出した他大学・他年度

この年度は4問に5テーマが出ています。

前年度(2025年度 第2次募集)との違い

大問数
2025年度 第2次募集 4問 → 2026年度 第1次募集 10問
両年度に出たテーマ
固有値・固有ベクトル・留数定理
2026年度 第1次募集で新しく出たテーマ
線形空間・基底・二次形式・群論・環論
2025年度 第2次募集のページを見る

第1問 — A-1 変分法の基本補題

方針

これは「すべての境界で消える試験関数に対して積分が消えるなら,被積分関数は定数である」という変分法の基本補題の形である。直接部分積分をしたくなるが,ff は連続としか仮定されていないため,f′f' は使わない。

試験関数の作り方

g′(x)g'(x) を自由に選びたいが,g(a)=g(b)=0g(a)=g(b)=0 という制約がある。この制約は ∫abg′(x) dx=0 \int_a^b g'(x)\,dx=0 という平均ゼロ条件に対応する。したがって任意の hh から平均値 α\alpha を引いた h−αh-\alpha を g′g' として採用するのが自然である。

検算

結論が ff の平均値 cc になることは,定数関数 f≡cf\equiv c を代入すると仮定を確かに満たすことからも確認できる。典型的なミスは h=f−ch=f-c を選んだ後に,非負連続関数の積分ゼロから各点ゼロを導く部分を書かずに終えることである。

解答

(1) 区間を [a,b][a,b] とし,まず非負連続関数 kk について示す。もしある x0∈[a,b]x_0\in[a,b] で k(x0)>0k(x_0)>0 なら,連続性より x0x_0 の近くの小区間上で k(x)≥k(x0)/2>0k(x)\ge k(x_0)/2>0 となる。 したがって ∫abk(x) dx>0\int_a^b k(x)\,dx>0 となり,仮定に反する。よって k≡0k\equiv 0 である。

(2) 次に任意の連続関数 hh に対し α=1b−a∫abh(t) dt,g(x)=∫ax{h(t)−α} dt \alpha=\frac{1}{b-a}\int_a^b h(t)\,dt,\qquad g(x)=\int_a^x \{h(t)-\alpha\}\,dt とおく。この gg は R\mathbb R 上の C1C^1 級関数であり,g(a)=0g(a)=0 である。また g(b)=∫abh(t) dt−α(b−a)=0 g(b)=\int_a^b h(t)\,dt-\alpha(b-a)=0 なので,gg は許される試験関数である。さらに g′(x)=h(x)−αg'(x)=h(x)-\alpha である。

(3) 問題の仮定にこの gg を代入すると 0=∫abf(x){h(x)−α} dx=∫abf(x)h(x) dx−∫abh(x) dxb−a∫abf(x) dx. 0=\int_a^b f(x)\{h(x)-\alpha\}\,dx =\int_a^b f(x)h(x)\,dx -\frac{\int_a^b h(x)\,dx}{b-a}\int_a^b f(x)\,dx . ここで c=1b−a∫abf(x) dx c=\frac{1}{b-a}\int_a^b f(x)\,dx とおけば ∫ab(f(x)−c)h(x) dx=0 \int_a^b (f(x)-c)h(x)\,dx=0 が任意の連続関数 hh に対して成り立つ。

(4) 最後に h=f−ch=f-c とおくと ∫ab(f(x)−c)2 dx=0 \int_a^b (f(x)-c)^2\,dx=0 である。先に示した非負連続関数の場合を k=(f−c)2k=(f-c)^2 に適用すれば, f(x)−c=0f(x)-c=0 が [a,b][a,b] 上で常に成り立つ。したがって ff は [a,b][a,b] 上で定数関数である。

最終答

(1)k≡0on [a,b]. \text{(1)}\quad k\equiv0\quad \text{on }[a,b]. (2)α=1b−a∫abh(t) dt,g(x)=∫ax{h(t)−α} dt. \text{(2)}\quad \alpha=\frac1{b-a}\int_a^b h(t)\,dt,\qquad g(x)=\int_a^x\{h(t)-\alpha\}\,dt. (3)∫ab(f(x)−c)h(x) dx=0,c=1b−a∫abf(x) dx. \text{(3)}\quad \int_a^b(f(x)-c)h(x)\,dx=0,\qquad c=\frac1{b-a}\int_a^b f(x)\,dx. (4)f(x)=c(a≤x≤b). \text{(4)}\quad f(x)=c\quad (a\le x\le b).

第2問 — A-2 対称行列と交換子写像

方針

前半は実対称行列の標準事実を使う問題である。実対称行列では単位球面上の二次形式の最大値が最大固有値に一致する。後半は交換子写像 X↦SX−XSX\mapsto SX-XS の像の次元なので,核の次元を数える。

可換行列の数え方

SS の固有値がすべて相異なることが重要である。対角化後の D=diag⁡(7,1,−1)D=\operatorname{diag}(7,1,-1) と可換な行列 Y=(yij)Y=(y_{ij}) は (di−dj)yij=0 (d_i-d_j)y_{ij}=0 を満たす。i≠ji\ne j では di≠djd_i\ne d_j なので yij=0y_{ij}=0,つまり YY は対角行列である。よって自由度は3つである。

典型ミス

WW が部分空間であることは,TT が線形写像であり WW がその像であることを言えば十分である。集合の形だけを見て個別に閉性を確認してもよいが,線形写像の像と見抜く方が短く確実である。

A-2 対称行列と交換子写像の途中式・最終答をPDFで見る

第3問 — A-3 余可算位相のコンパクト性と連結性

方針

余可算位相では,開集合が非常に大きい。そのため無限集合には「尻尾を順に除く」開被覆を作ると有限部分被覆を壊せる。一方,有限部分空間では一点集合が開になるので離散的に振る舞う。

コンパクト性と連結性の合わせ技

最後の不存在証明では,連続像がコンパクト性と連結性を保つことを同時に使う。像が無限ならコンパクト性に反し,有限なら連結性に反する,という二段構えで潰すのが最短である。

試験で書くべき点

「無限部分集合はコンパクトでない」と主張するだけでは足りない。具体的な開被覆 UnU_n と,有限個では aNa_N が残ることまで書くと答案として安定する。

A-3 余可算位相のコンパクト性と連結性の途中式・最終答をPDFで見る

第4問 — A-4 留数計算と広義積分

方針

分子は定数項と1次項が消えるように作られている。したがって z−3z^{-3} で割っても特異性は高々 z−1z^{-1} であり,留数だけが積分値に効く。

符号の確認

正向きの小半円 0→π0\to\pi なら ∫dz/z=iπ\int dz/z=i\pi である。一方,実軸積分を評価するためのくぼみ半円は π→0\pi\to0 と逆向きに進むので −iπ-i\pi になる。この符号を取り違えると最終積分の符号が反転する。

検算

a=1a=1 のとき被積分関数は恒等的に 00 であり,答えも 00 になる。a=0a=0 でも同様に 00 である。端点的な値での検算は,留数計算の符号確認に有効である。

A-4 留数計算と広義積分の途中式・最終答をPDFで見る

第5問 — B-1 二次元線形群

方針

MM は単なる加法群として書かれているが,素体 Fp\mathbb F_p 上のベクトル空間でもある。加法群準同型は Fp\mathbb F_p 線形性を自動的に持つので,問題は GL(2,Fp)\mathrm{GL}(2,\mathbb F_p) の基本問題に帰着する。

中心の見方

中心がスカラー行列になる事実は一般の GL(n,F)\mathrm{GL}(n,F) でも同じである。2次元では「すべての1次元部分空間を保つならスカラー」という形で説明すると短い。

試験での注意

位数の計算では第2列を「第1列と異なる」ではなく「第1列のスカラー倍でない」と数える必要がある。除く個数は 11 ではなく pp である。

B-1 二次元線形群の途中式・最終答をPDFで見る

第6問 — B-2 中国剰余型同型とイデアル

方針

前半は中国剰余定理の加群版である。aa と bb が互いに素であるため,bb は R/(a)R/(a) で単元,aa は R/(b)R/(b) で単元になる。この観察が単射性の要点である。

後半の短い処理

(ab,a+b)(ab,a+b) を直接一次結合で 1R1_R にする式を探すと遠回りになりやすい。まず (a,a+b)=(1R)(a,a+b)=(1_R) から (a2,a+b)=(1R)(a^2,a+b)=(1_R) を得て,a2=a(a+b)−aba^2=a(a+b)-ab により a2a^2 が目的のイデアルに入ると見るのが簡潔である。

典型ミス

RR は整域とは限らない。したがって「abab と a+ba+b を割る素因子がない」のような整数的な議論は使えない。イデアルの包含関係だけで処理するのが安全である。

B-2 中国剰余型同型とイデアルの途中式・最終答をPDFで見る

第7問 — B-3 直交群の多様体構造

方針

NnN_n は直交群 O(n)O(n) である。多様体性は正則値定理で示すのが標準的で,微分の全射性を具体的に確認すればよい。

微分の検算

F(A+H)=t(A+H)(A+H)F(A+H)={}^t(A+H)(A+H) を一次の項まで展開すると F(A+H)=F(A)+tHA+tAH+tHH F(A+H)=F(A)+{}^tHA+{}^tAH+{}^tHH である。最後の項は2次なので微分には入らない。

連結性の判断

O(n)O(n) が連結でないことは行列式で即座に分かる。{1,−1}\{1,-1\} は離散空間なので,行列式の値が異なる2点を連続曲線で結ぶことはできない,という直感にも対応している。

B-3 直交群の多様体構造の途中式・最終答をPDFで見る

第8問 — B-4 球面と三角形の和空間のホモロジー

方針

図形の交わりが3点であることをまず押さえる。XX は球面に2次元円板を3点で貼った空間,YY は球面に円周を3点で貼った空間である。この「3点で貼る」ことが H1H_1 の階数を増やす。

Mayer--Vietoris の読み方

連結な2つの空間を mm 個の点で貼り合わせると,H1H_1 に概ね m−1m-1 個の輪が生じる。ここでは m=3m=3 なので,貼り合わせ由来で2個の H1H_1 が現れる。YY ではさらに C≃S1C\simeq S^1 自身の1個が加わる。

不存在証明

最後は「レトラクションがあれば包含がホモロジー上で単射になる」という標準論法である。階数が大きい H1(Y)H_1(Y) が階数の小さい H1(X)H_1(X) に単射できないことを使う。

B-4 球面と三角形の和空間のホモロジーの途中式・最終答をPDFで見る

第9問 — B-5 可積分関数と幾何級数

方針

前半2問は測度論の基本評価である。特に2問目は rμ(∣f∣≥r)≤∫∣f∣≥r∣f∣ dμ r\mu(|f|\ge r)\le \int_{|f|\ge r}|f|\,d\mu の一行が核心である。

幾何級数の注意点

ff は負の値も取り得るため,単純に全体で単調収束定理を使うことはできない。{f≥0}\{f\ge0\} と {f<0}\{f<0\} に分けると,前者では単調収束,後者では有界性と優収束が使える。

典型ミス

∣f∣<1|f|<1 は各点で成り立つが,1/(1−f)1/(1-f) が可積分とは限らない。ff が 11 に近づく部分の測度が大きいと発散し得るため,この可積分性がちょうど数値級数の収束条件になる。

B-5 可積分関数と幾何級数の途中式・最終答をPDFで見る

第10問 — B-6 線形常微分方程式の境界条件

方針

前半は定数変化法の核を直接微分して確認する問題である。Wronski 行列式が 11 であることが,端点微分で f(t)f(t) が出る理由である。

境界条件の意味

u′′+λ2u=fu''+\lambda^2u=f の同次解は cos⁡λt\cos\lambda t と sin⁡λt\sin\lambda t の振動であり,無限遠で収束して 00 になることはない。そのため +∞+\infty で消える条件だけで同次解の自由度が消え,一意性が得られる。

直交条件の解釈

両端で消える解が存在するためには,強制項 ff が同次解 cos⁡λt,sin⁡λt\cos\lambda t,\sin\lambda t の成分を持たない必要がある。最後の2つの積分条件は,まさにこの共鳴成分が消えることを表している。

B-6 線形常微分方程式の境界条件の途中式・最終答をPDFで見る

阪大 数学 院試 過去問の収録6年度