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大阪大学 院試 過去問 解答例

阪大 理学研究科 数学 2025年度 第1次募集 院試 過去問 解答例・解説(全10問)

全10問。微分積分・解析4問・位相・幾何1問・線形代数1問。テーマタグは6件(固有値・固有ベクトル・線形空間・基底・留数定理)。2024年度 第1次募集と共通のテーマは固有値・固有ベクトル・線形空間・基底・留数定理。

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収録6年度分の解答PDF:大阪大学 理学研究科 数学(¥3,200・紙面見本あり)

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解説10問と大問1問の途中式・最終答(全10問)
解答PDFに収録
途中式と最終答(最終答つき10問)
問題本文
非収録

阪大 数学 2025年度 第1次募集 院試 過去問の出題内容(全10問)

この10問の分野は微分積分・解析4問・位相・幾何1問・線形代数1問・微分方程式1問です。

大問分野主題解説の小見出し最終答
第1問微分積分・解析A-1 連続関数の Ln ノルム極限最大点近傍の扱いあり
第2問線形代数A-2 トレース零行列と共役作用表現行列を対角化する見方あり
第3問位相・幾何A-3 コンパクト性と固有写像ハウスドルフ性の役割あり
第4問微分積分・解析A-4 分枝対数とベータ積分符号の確認あり
第5問—B-1 位数8の群指数 の部分群 / 試験で書くべき点あり
第6問—B-2 二次整数環の剰余環平方因子の判定あり
第7問微分積分・解析B-3 S3上の積関数の臨界点臨界点の見落としやすい部分あり
第8問—B-4 射影空間型商とホモロジー除かれる点 / ホモロジーの検算あり
第9問微分方程式B-5 線形常微分方程式と畳み込み表示極限の意味あり
第10問微分積分・解析B-6 分布関数表示と測度の極限可変測度の場合あり

この年度の解説には典型ミス5件・検算3件が付いています。

2025年度 第1次募集の出題テーマと、同じテーマを出した他大学・他年度

この年度は5問に6テーマが出ています。

前年度(2024年度 第1次募集)との違い

大問数
2024年度 第1次募集 10問 → 2025年度 第1次募集 10問
2025年度 第1次募集で新しく出たテーマ
ラグランジュの未定乗数法・ベータ関数・ガンマ関数
2024年度 第1次募集のページを見る

第1問 — A-1 連続関数の Ln ノルム極限

方針

これは連続関数の LnL^n ノルムが一様ノルムへ収束する事実の典型例である。上からは f≤Mf\le M で直ちに抑え,下からは最大点の近くで ff が MM に十分近い値を保つことを使う。

最大点近傍の扱い

最大値を一点だけでとる場合でも,連続性により「幅のある区間」で M−εM-\varepsilon 以上になる。ここを点だけで評価すると積分への寄与が消えてしまうため,正の長さをもつ区間を取るのが重要である。

検算

定数関数 f≡Mf\equiv M なら左辺は (Mn)1/n=M(M^n)^{1/n}=M であり,結論と一致する。また 0≤f≤M0\le f\le M なので極限が MM を超えないことも自然である。

解答

M=max⁡0≤x≤1f(x)M=\max_{0\le x\le 1}f(x) とおく。ff は非負であるから 0≤f(x)≤M(0≤x≤1) 0\le f(x)\le M\qquad (0\le x\le 1) であり,したがって 0≤∫01f(x)n dx≤Mn 0\le \int_0^1 f(x)^n\,dx\le M^n である。M=0M=0 なら左辺はすべて 00 なので結論は明らかである。以下 M>0M>0 とする。

任意に ε∈(0,M)\varepsilon\in(0,M) を取る。最大値をとる点を x0x_0 とすれば,連続性より x0x_0 の近くで f(x)>M−εf(x)>M-\varepsilon が成り立つ。より正確には,ある区間 I⊂[0,1]I\subset[0,1] と長さ ∣I∣>0|I|>0 が存在して f(x)≥M−ε(x∈I) f(x)\ge M-\varepsilon\qquad (x\in I) となる。よって ∫01f(x)n dx≥∫If(x)n dx≥∣I∣(M−ε)n. \int_0^1 f(x)^n\,dx\ge \int_I f(x)^n\,dx \ge |I|(M-\varepsilon)^n. 両辺の 1/n1/n 乗を取ると ∣I∣1/n(M−ε)≤(∫01f(x)n dx)1/n≤M |I|^{1/n}(M-\varepsilon) \le \left(\int_0^1 f(x)^n\,dx\right)^{1/n} \le M である。n→∞n\to\infty とすると ∣I∣1/n→1|I|^{1/n}\to1 なので M−ε≤lim inf⁡n→∞(∫01f(x)n dx)1/n≤lim sup⁡n→∞(∫01f(x)n dx)1/n≤M. M-\varepsilon \le \liminf_{n\to\infty} \left(\int_0^1 f(x)^n\,dx\right)^{1/n} \le \limsup_{n\to\infty} \left(\int_0^1 f(x)^n\,dx\right)^{1/n} \le M. ε>0\varepsilon>0 は任意であるから,求める極限は MM である。

最終答

lim⁡n→∞(∫01f(x)n dx)1/n=M. \displaystyle \lim_{n\to\infty} \left(\int_0^1 f(x)^n\,dx\right)^{1/n}=M.

第2問 — A-2 トレース零行列と共役作用

方針

共役写像 X↦A−1XAX\mapsto A^{-1}XA は基底を取り替えた表現に対応する。トレースが共役で不変であることと,AA の固有ベクトル基底で行列単位を使うことが中心である。

表現行列を対角化する見方

AA を対角行列 diag⁡(λ1,…,λn)\operatorname{diag}(\lambda_1,\ldots,\lambda_n) と見れば,行列成分 xijx_{ij} は共役作用で λj/λi\lambda_j/\lambda_i 倍される。これが EijE_{ij} が固有ベクトルになる理由である。

典型ミス

fA(V)⊂Vf_A(V)\subset V だけで終えると等号の証明にならない。fAf_A が可逆で,逆写像も同じく VV を保つこと,または次元を使うことを明記する必要がある。

A-2 トレース零行列と共役作用の途中式・最終答をPDFで見る

第3問 — A-3 コンパクト性と固有写像

方針

固有性の証明では,X×YX\times Y 側のコンパクト集合 CC を,第一成分への射影 π(C)\pi(C) で XX 側へ落とす。ff の固有性を使えるのは XX のコンパクト集合に対してなので,ここが最初の一手である。

ハウスドルフ性の役割

h−1(C)h^{-1}(C) をコンパクト集合の閉部分集合として扱うには,CC が閉である必要がある。コンパクト集合が閉になるのは一般の位相空間ではなくハウスドルフ空間であるため,この仮定を使う場所を明確に書くと答案が締まる。

典型ミス

h−1(C)⊂f−1(π(C))h^{-1}(C)\subset f^{-1}(\pi(C)) だけではコンパクト性は従わない。部分集合ではなく「閉部分集合」であることまで示す必要がある。

A-3 コンパクト性と固有写像の途中式・最終答をPDFで見る

第4問 — A-4 分枝対数とベータ積分

方針

正の実軸を切断した対数分枝なので,上側と下側の実軸で関数値が e2πiae^{2\pi ia} 倍だけずれる。この差を留数定理で拾うと,ベータ関数型の積分値が出る。

符号の確認

この分枝では −1-1 の偏角は π\pi である。留数を e(a−1)iπe^{(a-1)i\pi} と置いた後, 1−e2πia1-e^{2\pi ia} の符号まで追うと最終的に正の値 π/sin⁡(πa)\pi/\sin(\pi a) になる。0<a<10<a<1 では積分は正なので,符号検算として有効である。

典型ミス

下側の正の実軸で偏角を 00 ではなく 2π2\pi と見る点を落とすと,係数が消えてしまう。また小円弧の寄与は rar^a で消えるので,0<a<10<a<1 の仮定はここでも効いている。

A-4 分枝対数とベータ積分の途中式・最終答をPDFで見る

第5問 — B-1 位数8の群

方針

まずアーベル群を構造定理で分類し,非アーベル群は位数 44 の巡回部分群を使って半直積的に分類するのが最短である。

指数 22 の部分群

指数 22 なら,外側の剰余類が左右でどちらも G∖HG\setminus H になる。これは以後,位数 44 の部分群 ⟨r⟩\langle r\rangle が正規であることを保証する。

試験で書くべき点

D4D_4 と Q8Q_8 を列挙するだけでなく,同型でない理由を一つ添えると答案が安定する。位数 22 の元の個数は簡単に比較できる不変量である。

B-1 位数8の群の途中式・最終答をPDFで見る

第6問 — B-2 二次整数環の剰余環

方針

RℓR_\ell を Z[X]/(X2−ℓ)\mathbb Z[X]/(X^2-\ell) と見れば,(p)(p) で割った後は Fp[X]/(X2−ℓ)\mathbb F_p[X]/(X^2-\ell) の問題になる。有限直積の体になるかどうかは,多項式が平方因子をもつかどうかで判定できる。

平方因子の判定

標数 p≥3p\ge3 では導関数は 2X2X である。X2−ℓX^2-\ell と 2X2X が共通根をもつのは,X=0X=0 かつ ℓ=0\ell=0 となるとき,つまり p=ℓp=\ell のときだけである。

典型ミス

X2−ℓX^2-\ell が既約でない場合だけを体の直積と考えてしまうと,既約の場合の「一つの体」を落とす。問題文では n=1n=1 も許されているため,既約の場合も条件を満たす。

B-2 二次整数環の剰余環の途中式・最終答をPDFで見る

第7問 — B-3 S3上の積関数の臨界点

方針

球面上の極値問題なのでラグランジュ未定乗数法が自然である。ただし座標が 00 になる場合に割り算すると臨界点を落とすため,零座標の場合を先に分ける。

臨界点の見落としやすい部分

少なくとも二つの座標が 00 なら ∇(xyzw)=0\nabla(xyzw)=0 なので,球面上の接方向微分もすべて 00 になる。これは孤立点ではなく,座標平面内の円弧を含む集合である。

検算

最大値の候補は対称性から全座標の絶対値が等しい点である。相加相乗平均で 1/161/16 が上限になるため,局所計算だけでなく大域的な最大・最小も確定する。

B-3 S3上の積関数の臨界点の途中式・最終答をPDFで見る

第8問 — B-4 射影空間型商とホモロジー

方針

正の実数倍で割る商は,原点から見た方向だけを残す操作である。したがって単位球面への正規化で商空間を具体化する。

除かれる点

除かれるのは xy=0,z=0xy=0,z=0,すなわち z=0z=0 平面内の二つの座標軸である。単位球面上では四点だけが消える。ここを「二本の円が消える」と誤解しないことが重要である。

ホモロジーの検算

S2S^2 から mm 点を除くと,m≥1m\ge1 では m−1m-1 個の円のブーケと同じホモトピー型になる。今回は m=4m=4 なので H1H_1 の階数は 33 である。

B-4 射影空間型商とホモロジーの途中式・最終答をPDFで見る

第9問 — B-5 線形常微分方程式と畳み込み表示

方針

vv はインパルス応答である。v(0)=0v(0)=0,v′(0)=1v'(0)=1 となるように選ぶと,畳み込みを二回微分したときに右辺 f(t)f(t) がちょうど現れる。

極限の意味

作用素 D2+3D+2D^2+3D+2 の定数入力に対するゲインは 1/21/2 である。したがって,ゆっくり変化する f(t)f(t) に対して解 u(t)u(t) が f(t)/2f(t)/2 に追随するというのが (3) の内容である。

典型ミス

畳み込み表示を微分するとき,v(0)=0v(0)=0 と v′(0)=1v'(0)=1 の境界項を確認しないと符号や係数を誤りやすい。また (3) では f(t)f(t) 自体が収束するとは仮定されていないため,f′(t)→0f'(t)\to0 を使って「局所的にはほぼ定数」と見る必要がある。

B-5 線形常微分方程式と畳み込み表示の途中式・最終答をPDFで見る

第10問 — B-6 分布関数表示と測度の極限

方針

分布関数 μ({f>t})\mu(\{f>t\}) が与えられているので,層積分公式を使う。ff 自体の形は不要で,レベル集合の測度だけから積分値を計算する問題である。

可変測度の場合

(3) では測度も nn に依存するため,単純な優収束定理を直接は使えない。そこで ϕn(f)\phi_n(f) の積分を ϕn′(t)μn({f>t})\phi_n'(t)\mu_n(\{f>t\}) の積分に直し,仮定の上下評価をそのまま使う。

検算

誤差項は t2e−t/nt^2e^{-t}/n で,積分すると 2/n2/n になる。したがって μn\mu_n の揺れは極限では消え,(2) と同じ 1+c1+c が残る。

B-6 分布関数表示と測度の極限の途中式・最終答をPDFで見る

阪大 数学 院試 過去問の収録6年度