大阪大学 院試 過去問 解答例
阪大 理学研究科 数学 2024年度 第1次募集 院試 過去問 解答例・解説(全10問)
全10問。微分積分・解析2問。テーマタグは5件(固有値・固有ベクトル・線形空間・基底・留数定理)。2023年度 第2次募集と共通のテーマは留数定理。
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収録6年度分の解答PDF:大阪大学 理学研究科 数学(¥3,200・紙面見本あり)
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- 解説10問と大問1問の途中式・最終答(全10問)
- 解答PDFに収録
- 途中式と最終答(最終答つき10問)
- 問題本文
- 非収録
阪大 数学 2024年度 第1次募集 院試 過去問の出題内容(全10問)
この10問の分野は微分積分・解析2問です。
| 大問 | 分野 | 主題 | 解説の小見出し | 最終答 |
|---|---|---|---|---|
| 第1問 | — | A-1 一様収束と幾何級数 | 最大値が 未満になる理由 | あり |
| 第2問 | — | A-2 べき零線形写像 | 実数体で何が壊れるか | あり |
| 第3問 | — | A-3 連続写像と位相的性質 | 注意点 | あり |
| 第4問 | 微分積分・解析 | A-4 二重極の留数と実積分 | 留数の検算 | あり |
| 第5問 | — | B-1 半直積群の計算 | 二乗集合の数え方 / 共役類の検算 | あり |
| 第6問 | — | B-2 Z[sqrt(-5) | 既約性の見方 | あり |
| 第7問 | — | B-3 クライン瓶型商と2形式 | 零点の作り方 / 試験で書くべき点 | あり |
| 第8問 | — | B-4 球面と円の和空間のホモロジー | 交点計算 | あり |
| 第9問 | 微分積分・解析 | B-5 ガウス核による積分変換 | 一次モーメント | あり |
| 第10問 | — | B-6 符号条件付き自律方程式 | 極限の存在 | あり |
この年度の解説には典型ミス5件・検算2件が付いています。
2024年度 第1次募集の出題テーマと、同じテーマを出した他大学・他年度
この年度は5問に5テーマが出ています。
| テーマ | この年度 | 全体の出題実績 | 他大学の直近出題 |
|---|---|---|---|
| 固有値・固有ベクトル | 第2問 | 25大学・544問 | |
| 線形空間・基底 | 第7問 | 21大学・152問 | |
| 留数定理 | 第4問 | 18大学・126問 | |
| 一様収束 | 第1問 | 14大学・63問 | |
| 群論・環論 | 第5問 | 13大学・60問 |
前年度(2023年度 第2次募集)との違い
- 大問数
- 2023年度 第2次募集 4問 → 2024年度 第1次募集 10問
- 両年度に出たテーマ
- 留数定理
- 2024年度 第1次募集で新しく出たテーマ
- 固有値・固有ベクトル・線形空間・基底・一様収束・群論・環論
第1問 — A-1 一様収束と幾何級数
方針
一様収束の強さは,積分誤差を区間長と一様ノルムで直接抑えられる点にある。(3) はこの結果を幾何級数へ適用するだけでよい。
最大値が 未満になる理由
が各点で成り立つだけではなく,閉区間上の連続関数であるため最大値 が存在する。もし ならどこかで となり仮定に反する。ここを明記すると一様収束の証明になる。
典型ミス
各点収束だけを使って和と積分を交換すると根拠不足である。今回は比が 以下に一様に抑えられるため,ワイエルシュトラスの判定法で安全に交換できる。
解答
(1) が 上一様収束するので, である。したがって よって積分と極限を交換できる。
(2) は連続で,閉区間上で を満たす。コンパクト性より最大値 が存在し, である。各 について であり,数値級数 は収束する。ワイエルシュトラスの判定法により は 上一様収束する。
(3) では である。したがって (2) と同様に は 上一様収束する。(1) より和と積分を交換してよいので, 幾何級数の和は であるから
最終答
(1) 積分極限は交換できる。
(2) 級数 は 上で一様収束する。
(3)
第2問 — A-2 べき零線形写像
方針
べき零なら固有値は という向きは体によらず成立する。逆向きは,特性多項式が固有値で完全に分解する複素数体上ではケーリー・ハミルトンで示せる。
実数体で何が壊れるか
実数体上では複素固有値だけをもつ線形写像がある。回転行列は固有値が なので実固有値をもたず,条件を満たすがべき零ではない。
典型ミス
(4) で「固有値がないからべき零」としてはいけない。べき零なら特性多項式は であり,回転行列のように特性多項式が となるものは除外される。
第3問 — A-3 連続写像と位相的性質
方針
三つとも基本性質の確認である。(1) は開被覆,(2) は分離,(3) はコンパクト空間の閉部分集合,という定義に戻れば短く証明できる。
注意点
(3) ではハウスドルフ性は不要である。「コンパクト集合が閉である」にはハウスドルフ性が必要だが,ここで使うのは「コンパクト空間の閉部分集合はコンパクト」であり,これは一般の位相空間で成立する。
試験での書き方
成立・不成立だけでなく,成立する理由を一行でも定義から書くと確実である。特に (2) は像の開集合ではなく, の相対位相での開集合を使う点を明確にする。
第4問 — A-4 二重極の留数と実積分
方針
は上半平面で減衰するため,上半円閉曲線を使う。分母が二乗なので二重極の留数を微分で求めるのが中心である。
留数の検算
での留数は純虚数 になり, を掛けると正の実数 になる。偶関数的な実積分が実数になることとも一致する。
典型ミス
は下半平面の極なので,上半円の積分には寄与しない。それでも (2) では全極の留数を問われているため, の留数も計算しておく必要がある。
第5問 — B-1 半直積群の計算
方針
この群は の加法群に が を通じて作用する半直積である。計算は第二成分を先に追うと整理しやすい。
二乗集合の数え方
の第二成分は必ず偶数になる。第一成分は係数 が かどうかで,全体に動く場合と に潰れる場合に分かれる。
共役類の検算
共役で第二成分は変わらない。したがって に含まれる共役類を数えるときも,第二成分 ごとに分ければ過不足を避けられる。
第6問 — B-2 Z[sqrt(-5)
方針
ノルム は乗法的で,値が非負整数になる。これにより単元・既約性・一意分解の失敗をすべて判定できる。
既約性の見方
なので,非自明に分解できるならノルム の元が必要になる。しかし は不可能である。 についても同じ論法が使える。
典型ミス
一意分解でないことを示すには,単に二通りの分解を書くだけでは足りない。各因子が既約であることと,互いに同伴でないことまで確認する。
第7問 — B-3 クライン瓶型商と2形式
方針
商空間上の形式は,普遍被覆側ではデッキ変換で不変な形式として見える。ただし は向きを反転するので, にマイナスが付く。この符号反転が零点の存在を強制する。
零点の作り方
から,特に 上では となる。連続性により,端点の値が反対符号なら途中で必ず になる。
試験で書くべき点
最後に から を結論するには, の微分が階数 であることを使う。問題文の多様体構造の条件はここで使われる。
第8問 — B-4 球面と円の和空間のホモロジー
方針
交点の個数でホモトピー型が変わる。円が球面に一点で接すればウェッジ和 ,二点で交われば一次サイクルがさらに一つ増える。
交点計算
は球面に一点で接し, は球面と二点で交わる。ここを計算で確認してから位相型を判断するのが安全である。
検算
の は球面成分に由来して が残る。円を貼り付けても球面の二次サイクルが境界になるわけではない。一方,二点貼り付けの円は独立な一次サイクルを二つ作るため は になる。
第9問 — B-5 ガウス核による積分変換
方針
はガウス重み付きの平行移動平均である。 では引数が に戻り,積分量は変数変換で保存される。
一次モーメント
の一次モーメントを取ると,変数変換後に の寄与 と平行移動量 の寄与が分かれる。ガウス核は偶関数なので の項は消え, だけが残る。
典型ミス
(1) で全実数上の一様連続性を仮定する必要はない。 固定で,ガウス重みの尾部を先に小さくし,残りの有界区間上で連続性を使えば十分である。
第10問 — B-6 符号条件付き自律方程式
方針
符号条件 は,解が原点から遠ざからないことを表す。 を微分するとこの意味がそのまま不等式になる。
極限の存在
が減少するだけでは 自身の極限が直ちに出るわけではない。 なら減少, なら増加という符号ごとの単調性を使うのが確実である。
検算
極限 が存在するなら,遠方では はほぼ定数である。自律方程式 で定数極限に落ち着くためには,右辺も でなければならない。区間積分はこの直観を厳密にする方法である。
阪大 数学 院試 過去問の収録6年度
線形代数 / 重積分・調和関数 / 位相
A-1 変分法の基本補題 / A-2 対称行列と交換子写像 / A-3 余可算位相のコンパクト性と連結性
多変数関数の極値 / 行列の固有値 / 連結性とコンパクト性
A-1 連続関数の Ln ノルム極限 / A-2 トレース零行列と共役作用 / A-3 コンパクト性と固有写像
2024年度 第1次募集(このページ・全10問)
A-1 一様収束と幾何級数 / A-2 べき零線形写像 / A-3 連続写像と位相的性質
一変数関数の極限 / 射影と直和分解 / 距離空間