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東京科学大学 院試 過去問 解答例

東工大 理学院 数学系 数学コース 修士課程 数学 2023年度 院試 解答例・解説

東京科学大学 理学院 数学系 数学コース 修士課程 数学 2023年度の院試 過去問について、設問ごとの解法方針・部分点の置き所を解説。全13問収録の解答・解説PDFと併用できます。問題本文は含みません。

最終更新:

設問ごとの解法方針・部分点の置き所を無料で公開しています。

完全な途中式・最終答は解答・解説PDFに収録しています。問題本文は含まれません。

1 — 線形代数

方針

W0W_0 は「どれだけ φ\varphi を反復しても像として残る部分」である。WSW\in S なら WW 上では φ\varphi を逆向きにも戻せるので、WW の各元は任意回数だけ φ\varphi の像として表せる。これが (1) の本質である。

有限次元で使う点

有限次元性は、降鎖 φ(V)φ2(V) \varphi(V)\supset \varphi^2(V)\supset\cdots が必ず停止するところでだけ使う。ここを「次元が下がり続けることはできない」と書けば十分である。安定後の像では φ\varphi が全射になり、有限次元線形代数により同型になる。

典型ミス

φ(W0)=W0\varphi(W_0)=W_0 からただちに同型と結論してよいのは有限次元の場合だけである。無限次元では全射でも単射でない線形写像が存在する。左シフトの例はその最小限の反例であり、(2) の有限次元仮定が必要であることの検算にもなっている。

完全な解答(途中式・最終答)はPDFに収録

2 — 行列式

方針

三重対角行列式は、まず漸化式を出すのが最も安全である。小行列式を直接展開し続けるより、初期値と漸化式を固定すると (1), (2), (3) が一本につながる。

abab だけが残る理由

上三角側の aa と下三角側の bb は、行列式の展開では隣り合う 2 本を同時に選ぶ形で現れる。そのため abab だけが本質量になる。相似変換で上下一様な係数 ab\sqrt{ab} にそろえるのも同じ考えである。

試験で書くべき点

固有ベクトル vj=sin(jkπ/(n+1))v_j=\sin(jk\pi/(n+1)) は、端点条件 v0=vn+1=0v_0=v_{n+1}=0 を満たすから使える。ここを書かずに固有値だけを引用すると、有限区間の境界条件から k=1,,nk=1,\ldots,n が出る理由が不明になる。

完全な解答(途中式・最終答)はPDFに収録

3 — 位相空間

この位相の特徴

通常の積位相では I×JI\times J を自由に取るが、ここでは必ず同じ区間 II を両座標に使う。したがって (0,1)(0,1) のように 2 座標が離れた点の近傍は、その間の対角線上の点を大量に含む。この性質がハウスドルフ性、閉包、開写像のすべてに効く。

コンパクト性の見方

原点を抜くと通常位相ではコンパクトでなくなるが、この位相では原点の近くの反対符号の点を覆う開集合が、原点の周りの小正方形もまとめて含む。したがって抜いた点の近くを 1 個の開集合で処理でき、残りを通常のコンパクト性で処理できる。

閉包の検算

第1象限で x,y>1/2x,y>1/\sqrt2 なら、x,yx,y を含む小さい区間だけを使うと、正方形内の点は原点から遠すぎて単位円板に入らない。反対に、2 座標の間の区間が [1/2,1/2][-1/\sqrt2,1/\sqrt2] に触れるなら、近傍の正方形は単位円板と必ず交わる。

完全な解答(途中式・最終答)はPDFに収録

4 — 広義積分

方針

原点近傍では sinxx\sin x\sim x、無限遠では振動と減衰のバランスを見る。絶対収束では振動を使えないので xax^{-a} の可積分性が必要になり、条件収束では Dirichlet 判定法が使える。

境界値の注意

a=1a=1 は絶対収束しないが、Dirichlet 判定法により収束する。ここで 1x1dx\int_1^\infty x^{-1}\,dx が発散することだけを見て「収束しない」としてしまうのは典型的な誤りである。

絶対収束しないことの書き方

sinx|\sin x| の平均が正であることを使うのが本質である。試験では、正弦が一様に正になる区間を各周期から取り出し、調和級数型の下からの評価に落とすと、発散の根拠が明確になる。

完全な解答(途中式・最終答)はPDFに収録

5 — 級数と積分

方針

xlogxx\log x が現れたら x=etx=e^{-t} が自然である。この置換により xlogx=tetx\log x=-te^{-t} となり、積分はガンマ積分に変わる。

項別積分の正当化

xlogxx\log x[0,1][0,1] 上で有界に延長でき、値は [1/e,0][-1/e,0] に入る。したがって exlogxe^{x\log x} の冪級数は一様収束で扱える。広義積分の端点を含むため、この一言を入れると答案が安定する。

S(k)S(k) との対応

最後の式は m1(1)m1mm \sum_{m\ge1}\frac{(-1)^{m-1}}{m^m} を偶数 m=2rm=2r と奇数 mm に分けるだけである。S(2)S(2) は「偶数番目の項の和」そのものなので、S(1)2S(2)S(1)-2S(2) が出る。

完全な解答(途中式・最終答)はPDFに収録

6 — 体論

方針

この問題は「分離性」「中国剰余定理」「ガロア群の根への推移性」の 3 点を順に使う。特に (1) では LL 上で既約である必要はなく、相異なる既約因子に分かれることが重要である。

(2) の正規性

FFLL 上の分解体として定義されているが、L/KL/K がガロアであるため、KK 上でも有限個の多項式の分解体として表せる。これにより正規性をきちんと示せる。

典型ミス

(3) で「LL 上同型」と言ってしまうと強すぎる。ガロア群の元は KK を固定するが、一般には LL の各元を固定しない。問題で求めるのは KK 上同型であり、L/KL/K の正規性により σ(L)=L\sigma(L)=L が保証される。

完全な解答(途中式・最終答)はPDFに収録

7 — 可換環

方針

商イデアル (I:a)(I:a) は「aa を掛けると II に入る元」を集めたものである。素イデアルでないときは a,bIa,b\notin I なのに abIab\in I となるため、bb が商イデアルを真に大きくする。

(2) の核心

I+(a)=(c)I+(a)=(c) と置くと I(c)I\subset(c) になる。ここで (I:c)(I:c) が単項なら I=c(I:c) I=c(I:c) により II も単項になる。矛盾を出すには、(I:c)(I:c)II を真に含むことを示す必要がある。そのために c=i+rac=i+ra と書き、cbIcb\in I かつ bIb\notin I を使う。

典型ミス

I(I:a)I\subsetneq(I:a) が分かったあと、すぐ II が単項になるわけではない。I+(a)I+(a) の単項性も併用し、生成元 cc に対する商イデアル (I:c)(I:c) に切り替えるところが答案の山場である。

完全な解答(途中式・最終答)はPDFに収録

8 — 微分形式

方針

この 2 形式は、3 次元ベクトル解析でいう逆二乗中心場のフラックス形式である。外微分は発散に対応し、球面積分はフラックスに対応する。

積分値の意味

原点を囲む閉曲面を通るフラックスは 4π4\pi で一定である。これは α\alpha が原点でだけ特異性をもつためで、原点を囲まない球面では Stokes の定理により積分は 00 になる。

一次独立性の検出

コホモロジー類の一次独立性は、双対的に 2 サイクル上の積分で調べる。各穴の周りの小球面 Σj\Sigma_j を選ぶと、積分行列が 4π4\pi 倍の単位行列になるため、係数がすべて消える。

完全な解答(途中式・最終答)はPDFに収録

9 — ホモロジー

方針

(1) は接触グラフを見る問題である。球面どうしの交わりが点だけなので、2 次元ホモロジーは各球面から 1 個ずつ残り、1 次ホモロジーは接触グラフの閉路から生じる。

トーラスとの交わり

SjTS_j\cap T は 1 つの子午線円である。座標を pj=(2,0,0)p_j=(2,0,0) に回転して考えると、球面の式とトーラスの式を引き算することで交わりが子午線円だけであることが確認できる。

Mayer--Vietoris の核

6 本の子午線円は、トーラスの中ではすべて同じ H1H_1 類を表す。一方、それぞれの球面の中では円板の境界なので XX 側では消える。したがって H1(AB)H_1(A\cap B) からの写像の核が階数 55 になり、この分が H2(Y)H_2(Y) に加わる。ここを落とすと H2H_2 の階数を小さく数えやすい。

完全な解答(途中式・最終答)はPDFに収録

10 — 複素関数

方針

an/n!a_n/n! による変換は、係数の成長を階乗で強く抑える。Cauchy 評価で anM(r)rn|a_n|\le M(r)r^{-n} を得れば、残りは指数関数の級数そのものになる。

積分表示の意味

ez/u/ue^{z/u}/u を展開すると um1u^{-m-1} が現れる。f(u)f(u)anuna_nu^n と掛けたとき、円周積分で u1u^{-1} の係数だけが取り出されるため、ちょうど n=mn=m の項が残る。これは Cauchy の積分公式を係数抽出として使っている。

典型ミス

r<Rr<R が必要である。収束円の境界 r=Rr=R では ff が円周上で正則とは限らず、M(r)M(r) も定義できない場合がある。また、項別積分は円周上の一様収束を確認してから行う。

完全な解答(途中式・最終答)はPDFに収録

11 — ルベーグ積分

方針

L1L^1 収束は平均的な収束であり,高い山が非常に狭い集合に立つことを許す。したがって LpL^p 収束への自動的な改善はない。一方,部分列の概収束と有界連続関数を通した後の LpL^p 収束は,測度収束を経由して示せる。

反例の作り方

L1L^1 ノルムを 0 にするには「高さ ×\times 幅」を 0 にすればよい。任意の p>1p>1 で失敗させるには,高さを極端に大きくし,pp 乗したときに幅の小ささを上回るようにする。ここでは高さ nnn^n,幅 nn1n^{-n-1} とした。

第2小問のポイント

L1L^1 収束そのものから全列の概収束は出ない。和が収束する程度に速く L1L^1 ノルムが小さくなる部分列を取り,Borel--Cantelli で例外集合を処理するのが標準手法である。

典型ミス

第3小問では gg の一様連続性を仮定してはいけない。ggR\mathbb R 全体で有界連続だが,一様連続とは限らない。測度収束と有界性から LpL^p 収束を出すのが安全である。

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12 — 常微分方程式

方針

eλtse^{-\lambda|t-s|} は,直線上の作用素 d2/dt2λ2d^2/dt^2-\lambda^2 の Green 関数に対応する。半直線では境界条件 x(0)=0x(0)=0 を満たすため,反射項 eλ(t+s)e^{-\lambda(t+s)} が加わる。

微分計算の注意

B(t)B(t) は上端ではなく下端と被積分関数の両方に tt が入っている。したがって B(t)=λB(t)f(t) B'(t)=\lambda B(t)-f(t) となる。符号を誤ると yλ2y=fy''-\lambda^2y=f が出ない。

一意性

特殊解を1つ見つけた後は,同次方程式との差を取る。有界性が eλte^{\lambda t} の係数を消し,初期条件が eλte^{-\lambda t} の係数を決める。この2段階を書くと一意性が明確になる。

完全な解答(途中式・最終答)はPDFに収録

13 — ヒルベルト空間

方針

これは閉凸集合への射影定理と,閉凸錐に対する Moreau 分解の基本形である。存在は最小化列を作り,平行四辺形型の恒等式で Cauchy 性を示す。

閉凸性の使いどころ

閉性は極限 xxKK に残るために使う。凸性は中点 (ξn+ξm)/2(\xi_n+\xi_m)/2KK に入るために使う。錐であることは最後に αxK\alpha x\in K として (x,y)=0(x,y)=0 を導く部分で使う。

典型ミス

射影の存在を「閉だから」とだけ書くのは不十分である。無限次元では閉有界集合がコンパクトとは限らないため,コンパクト性ではなく完備性と平行四辺形恒等式で最小化列の Cauchy 性を示す必要がある。

試験で書くべきポイント

yKy\in K^* を示すには,任意の ξK\xi\in K に対して (ξ,y)0(\xi,y)\le0 を示す。最小性から得られる不等式を t0t\downarrow0 で線形化し,最後に (x,y)=0(x,y)=0 を代入する流れを明確に書くとよい。

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