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東京科学大学 院試 過去問 解答例

東京科学大 理学院 数学系 数学コース 修士課程 数学 2023年度 院試 過去問 解答例・解説(全13問)

全13問。微分積分・解析4問・線形代数2問・位相・幾何1問。テーマタグは4件(一様収束・固有値・固有ベクトル・線形空間・基底)。2022年度と共通のテーマは一様収束・固有値・固有ベクトル・線形空間・基底。

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解説13問と大問1問の途中式・最終答(全13問)
解答PDFに収録
途中式と最終答(最終答つき13問)
問題本文
非収録

東京科学大 数学 2023年度 院試 過去問の出題内容(全13問)

この13問の分野は微分積分・解析4問・線形代数2問・位相・幾何1問・微分方程式1問・複素解析1問です。

大問分野主題解説の小見出し最終答
第1問線形代数—有限次元で使う点あり
第2問線形代数行列式積 だけが残る理由 / 試験で書くべき点あり
第3問位相・幾何位相空間この位相の特徴 / コンパクト性の見方あり
第4問微分積分・解析広義積分境界値の注意 / 絶対収束しないことの書き方あり
第5問微分積分・解析級数と積分項別積分の正当化あり
第6問—体論(2) の正規性あり
第7問—可換環(2) の核心あり
第8問微分積分・解析微分形式積分値の意味 / 一次独立性の検出あり
第9問—ホモロジートーラスとの交わり / Mayer--Vietoris の核あり
第10問複素解析複素関数積分表示の意味あり
第11問微分積分・解析ルベーグ積分反例の作り方 / 第2小問のポイントあり
第12問微分方程式常微分方程式微分計算の注意 / 一意性あり
第13問—ヒルベルト空間閉凸性の使いどころあり

この年度の解説には典型ミス6件・試験で書くべきポイント1件が付いています。

2023年度の出題テーマと、同じテーマを出した他大学・他年度

この年度は5問に4テーマが出ています。

前年度(2022年度)との違い

大問数
2022年度 13問 → 2023年度 13問
2023年度で新しく出たテーマ
ヒルベルト空間
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第1問 — 線形代数

方針

W0W_0 は「どれだけ φ\varphi を反復しても像として残る部分」である。W∈SW\in S なら WW 上では φ\varphi を逆向きにも戻せるので、WW の各元は任意回数だけ φ\varphi の像として表せる。これが (1) の本質である。

有限次元で使う点

有限次元性は、降鎖 φ(V)⊃φ2(V)⊃⋯ \varphi(V)\supset \varphi^2(V)\supset\cdots が必ず停止するところでだけ使う。ここを「次元が下がり続けることはできない」と書けば十分である。安定後の像では φ\varphi が全射になり、有限次元線形代数により同型になる。

典型ミス

φ(W0)=W0\varphi(W_0)=W_0 からただちに同型と結論してよいのは有限次元の場合だけである。無限次元では全射でも単射でない線形写像が存在する。左シフトの例はその最小限の反例であり、(2) の有限次元仮定が必要であることの検算にもなっている。

解答

W0=⋂n≥1φn(V)W_0=\bigcap_{n\ge 1}\varphi^n(V) とおく。

  1. W∈SW\in S とする。φ∣W\varphi|_W は WW 上の同型なので、任意の n≥1n\ge 1 に対して W=(φ∣W)n(W)⊂φn(V) W=(\varphi|_W)^n(W)\subset \varphi^n(V) である。したがって W⊂⋂n≥1φn(V)=W0W\subset \bigcap_{n\ge 1}\varphi^n(V)=W_0 である。
  2. VV が有限次元であるとする。部分空間列 φ(V)⊃φ2(V)⊃φ3(V)⊃⋯ \varphi(V)\supset \varphi^2(V)\supset \varphi^3(V)\supset \cdots は降鎖なので、ある NN で安定する。すなわち φN(V)=φN+1(V)=⋯ \varphi^N(V)=\varphi^{N+1}(V)=\cdots となる。このとき W0=φN(V)W_0=\varphi^N(V) であり、 φ(W0)=φ(φN(V))=φN+1(V)=φN(V)=W0 \varphi(W_0)=\varphi(\varphi^N(V))=\varphi^{N+1}(V)=\varphi^N(V)=W_0 である。よって φ∣W0:W0→W0\varphi|_{W_0}:W_0\to W_0 は全射である。W0W_0 は有限次元だから、全射線形写像は単射でもある。したがって φ∣W0\varphi|_{W_0} は線形同型であり、W0∈SW_0\in S である。
  3. KK を任意の体とし、V=KNV=K^{\mathbb N} を KK 成分列全体のベクトル空間とする。 φ(x1,x2,x3,…)=(x2,x3,x4,…) \varphi(x_1,x_2,x_3,\ldots)=(x_2,x_3,x_4,\ldots) と定める。これは全射である。実際、任意の (y1,y2,…)∈V(y_1,y_2,\ldots)\in V は φ(0,y1,y2,…)=(y1,y2,…) \varphi(0,y_1,y_2,\ldots)=(y_1,y_2,\ldots) と書ける。したがってすべての n≥1n\ge 1 で φn(V)=V\varphi^n(V)=V となり、W0=VW_0=V である。 一方、φ(1,0,0,…)=0\varphi(1,0,0,\ldots)=0 なので φ\varphi は単射でない。ゆえに φ∣W0=φ\varphi|_{W_0}=\varphi は W0W_0 上の同型でなく、W0∉SW_0\notin S である。

最終答

有限次元では W0∈SW_0\in S。無限次元では、左シフト φ:KN→KN\varphi:K^{\mathbb N}\to K^{\mathbb N} により W0=VW_0=V だが φ\varphi が単射でない例が得られる。

第2問 — 行列式

方針

三重対角行列式は、まず漸化式を出すのが最も安全である。小行列式を直接展開し続けるより、初期値と漸化式を固定すると (1), (2), (3) が一本につながる。

積 abab だけが残る理由

上三角側の aa と下三角側の bb は、行列式の展開では隣り合う 2 本を同時に選ぶ形で現れる。そのため abab だけが本質量になる。相似変換で上下一様な係数 ab\sqrt{ab} にそろえるのも同じ考えである。

試験で書くべき点

固有ベクトル vj=sin⁡(jkπ/(n+1))v_j=\sin(jk\pi/(n+1)) は、端点条件 v0=vn+1=0v_0=v_{n+1}=0 を満たすから使える。ここを書かずに固有値だけを引用すると、有限区間の境界条件から k=1,…,nk=1,\ldots,n が出る理由が不明になる。

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第3問 — 位相空間

この位相の特徴

通常の積位相では I×JI\times J を自由に取るが、ここでは必ず同じ区間 II を両座標に使う。したがって (0,1)(0,1) のように 2 座標が離れた点の近傍は、その間の対角線上の点を大量に含む。この性質がハウスドルフ性、閉包、開写像のすべてに効く。

コンパクト性の見方

原点を抜くと通常位相ではコンパクトでなくなるが、この位相では原点の近くの反対符号の点を覆う開集合が、原点の周りの小正方形もまとめて含む。したがって抜いた点の近くを 1 個の開集合で処理でき、残りを通常のコンパクト性で処理できる。

閉包の検算

第1象限で x,y>1/2x,y>1/\sqrt2 なら、x,yx,y を含む小さい区間だけを使うと、正方形内の点は原点から遠すぎて単位円板に入らない。反対に、2 座標の間の区間が [−1/2,1/2][-1/\sqrt2,1/\sqrt2] に触れるなら、近傍の正方形は単位円板と必ず交わる。

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第4問 — 広義積分

方針

原点近傍では sin⁡x∼x\sin x\sim x、無限遠では振動と減衰のバランスを見る。絶対収束では振動を使えないので x−ax^{-a} の可積分性が必要になり、条件収束では Dirichlet 判定法が使える。

境界値の注意

a=1a=1 は絶対収束しないが、Dirichlet 判定法により収束する。ここで ∫1∞x−1 dx\int_1^\infty x^{-1}\,dx が発散することだけを見て「収束しない」としてしまうのは典型的な誤りである。

絶対収束しないことの書き方

∣sin⁡x∣|\sin x| の平均が正であることを使うのが本質である。試験では、正弦が一様に正になる区間を各周期から取り出し、調和級数型の下からの評価に落とすと、発散の根拠が明確になる。

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第5問 — 級数と積分

方針

xlog⁡xx\log x が現れたら x=e−tx=e^{-t} が自然である。この置換により xlog⁡x=−te−tx\log x=-te^{-t} となり、積分はガンマ積分に変わる。

項別積分の正当化

xlog⁡xx\log x は [0,1][0,1] 上で有界に延長でき、値は [−1/e,0][-1/e,0] に入る。したがって exlog⁡xe^{x\log x} の冪級数は一様収束で扱える。広義積分の端点を含むため、この一言を入れると答案が安定する。

S(k)S(k) との対応

最後の式は ∑m≥1(−1)m−1mm \sum_{m\ge1}\frac{(-1)^{m-1}}{m^m} を偶数 m=2rm=2r と奇数 mm に分けるだけである。S(2)S(2) は「偶数番目の項の和」そのものなので、S(1)−2S(2)S(1)-2S(2) が出る。

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第6問 — 体論

方針

この問題は「分離性」「中国剰余定理」「ガロア群の根への推移性」の 3 点を順に使う。特に (1) では LL 上で既約である必要はなく、相異なる既約因子に分かれることが重要である。

(2) の正規性

FF は LL 上の分解体として定義されているが、L/KL/K がガロアであるため、KK 上でも有限個の多項式の分解体として表せる。これにより正規性をきちんと示せる。

典型ミス

(3) で「LL 上同型」と言ってしまうと強すぎる。ガロア群の元は KK を固定するが、一般には LL の各元を固定しない。問題で求めるのは KK 上同型であり、L/KL/K の正規性により σ(L)=L\sigma(L)=L が保証される。

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第7問 — 可換環

方針

商イデアル (I:a)(I:a) は「aa を掛けると II に入る元」を集めたものである。素イデアルでないときは a,b∉Ia,b\notin I なのに ab∈Iab\in I となるため、bb が商イデアルを真に大きくする。

(2) の核心

I+(a)=(c)I+(a)=(c) と置くと I⊂(c)I\subset(c) になる。ここで (I:c)(I:c) が単項なら I=c(I:c) I=c(I:c) により II も単項になる。矛盾を出すには、(I:c)(I:c) が II を真に含むことを示す必要がある。そのために c=i+rac=i+ra と書き、cb∈Icb\in I かつ b∉Ib\notin I を使う。

典型ミス

I⊊(I:a)I\subsetneq(I:a) が分かったあと、すぐ II が単項になるわけではない。I+(a)I+(a) の単項性も併用し、生成元 cc に対する商イデアル (I:c)(I:c) に切り替えるところが答案の山場である。

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第8問 — 微分形式

方針

この 2 形式は、3 次元ベクトル解析でいう逆二乗中心場のフラックス形式である。外微分は発散に対応し、球面積分はフラックスに対応する。

積分値の意味

原点を囲む閉曲面を通るフラックスは 4π4\pi で一定である。これは α\alpha が原点でだけ特異性をもつためで、原点を囲まない球面では Stokes の定理により積分は 00 になる。

一次独立性の検出

コホモロジー類の一次独立性は、双対的に 2 サイクル上の積分で調べる。各穴の周りの小球面 Σj\Sigma_j を選ぶと、積分行列が 4π4\pi 倍の単位行列になるため、係数がすべて消える。

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第9問 — ホモロジー

方針

(1) は接触グラフを見る問題である。球面どうしの交わりが点だけなので、2 次元ホモロジーは各球面から 1 個ずつ残り、1 次ホモロジーは接触グラフの閉路から生じる。

トーラスとの交わり

Sj∩TS_j\cap T は 1 つの子午線円である。座標を pj=(2,0,0)p_j=(2,0,0) に回転して考えると、球面の式とトーラスの式を引き算することで交わりが子午線円だけであることが確認できる。

Mayer--Vietoris の核

6 本の子午線円は、トーラスの中ではすべて同じ H1H_1 類を表す。一方、それぞれの球面の中では円板の境界なので XX 側では消える。したがって H1(A∩B)H_1(A\cap B) からの写像の核が階数 55 になり、この分が H2(Y)H_2(Y) に加わる。ここを落とすと H2H_2 の階数を小さく数えやすい。

ホモロジーの途中式・最終答をPDFで見る

第10問 — 複素関数

方針

an/n!a_n/n! による変換は、係数の成長を階乗で強く抑える。Cauchy 評価で ∣an∣≤M(r)r−n|a_n|\le M(r)r^{-n} を得れば、残りは指数関数の級数そのものになる。

積分表示の意味

核 ez/u/ue^{z/u}/u を展開すると u−m−1u^{-m-1} が現れる。f(u)f(u) の anuna_nu^n と掛けたとき、円周積分で u−1u^{-1} の係数だけが取り出されるため、ちょうど n=mn=m の項が残る。これは Cauchy の積分公式を係数抽出として使っている。

典型ミス

r<Rr<R が必要である。収束円の境界 r=Rr=R では ff が円周上で正則とは限らず、M(r)M(r) も定義できない場合がある。また、項別積分は円周上の一様収束を確認してから行う。

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第11問 — ルベーグ積分

方針

L1L^1 収束は平均的な収束であり,高い山が非常に狭い集合に立つことを許す。したがって LpL^p 収束への自動的な改善はない。一方,部分列の概収束と有界連続関数を通した後の LpL^p 収束は,測度収束を経由して示せる。

反例の作り方

L1L^1 ノルムを 0 にするには「高さ ×\times 幅」を 0 にすればよい。任意の p>1p>1 で失敗させるには,高さを極端に大きくし,pp 乗したときに幅の小ささを上回るようにする。ここでは高さ nnn^n,幅 n−n−1n^{-n-1} とした。

第2小問のポイント

L1L^1 収束そのものから全列の概収束は出ない。和が収束する程度に速く L1L^1 ノルムが小さくなる部分列を取り,Borel--Cantelli で例外集合を処理するのが標準手法である。

典型ミス

第3小問では gg の一様連続性を仮定してはいけない。gg は R\mathbb R 全体で有界連続だが,一様連続とは限らない。測度収束と有界性から LpL^p 収束を出すのが安全である。

ルベーグ積分の途中式・最終答をPDFで見る

第12問 — 常微分方程式

方針

核 e−λ∣t−s∣e^{-\lambda|t-s|} は,直線上の作用素 d2/dt2−λ2d^2/dt^2-\lambda^2 の Green 関数に対応する。半直線では境界条件 x(0)=0x(0)=0 を満たすため,反射項 e−λ(t+s)e^{-\lambda(t+s)} が加わる。

微分計算の注意

B(t)B(t) は上端ではなく下端と被積分関数の両方に tt が入っている。したがって B′(t)=λB(t)−f(t) B'(t)=\lambda B(t)-f(t) となる。符号を誤ると y′′−λ2y=fy''-\lambda^2y=f が出ない。

一意性

特殊解を1つ見つけた後は,同次方程式との差を取る。有界性が eλte^{\lambda t} の係数を消し,初期条件が e−λte^{-\lambda t} の係数を決める。この2段階を書くと一意性が明確になる。

常微分方程式の途中式・最終答をPDFで見る

第13問 — ヒルベルト空間

方針

これは閉凸集合への射影定理と,閉凸錐に対する Moreau 分解の基本形である。存在は最小化列を作り,平行四辺形型の恒等式で Cauchy 性を示す。

閉凸性の使いどころ

閉性は極限 xx が KK に残るために使う。凸性は中点 (ξn+ξm)/2(\xi_n+\xi_m)/2 が KK に入るために使う。錐であることは最後に αx∈K\alpha x\in K として (x,y)=0(x,y)=0 を導く部分で使う。

典型ミス

射影の存在を「閉だから」とだけ書くのは不十分である。無限次元では閉有界集合がコンパクトとは限らないため,コンパクト性ではなく完備性と平行四辺形恒等式で最小化列の Cauchy 性を示す必要がある。

試験で書くべきポイント

y∈K∗y\in K^* を示すには,任意の ξ∈K\xi\in K に対して (ξ,y)≤0(\xi,y)\le0 を示す。最小性から得られる不等式を t↓0t\downarrow0 で線形化し,最後に (x,y)=0(x,y)=0 を代入する流れを明確に書くとよい。

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東京科学大 数学 院試 過去問の収録6年度

  • 2025年度(全13問)

    線形代数 / 線形写像 / 位相

  • 2024年度(全13問)

    対角成分と非対角成分が一定の行列 / 跡写像による双対空間と交換子 / グラフの閉性と連続性

  • 2023年度(このページ・全13問)

    線形代数 / 行列式 / 位相空間

  • 2022年度(全13問)

    線形代数 / 線形写像 / 位相空間

  • 2021年度(全10問)

    線形代数・微分作用素 / 位相・コンパクト性 / 多変数解析・連続性

  • 2020年度(全13問)

    右端リーマン和の誤差評価 / 階差と平均の極限 / 相対位相と連結成分