院試hub

東京科学大学 院試 過去問 解答例

東工大 理学院 数学系 数学コース 修士課程 数学 2022年度 院試 解答例・解説

東京科学大学 理学院 数学系 数学コース 修士課程 数学 2022年度の院試 過去問について、設問ごとの解法方針・部分点の置き所を解説。全13問収録の解答・解説PDFと併用できます。問題本文は含みません。

最終更新:

設問ごとの解法方針・部分点の置き所を無料で公開しています。

完全な途中式・最終答は解答・解説PDFに収録しています。問題本文は含まれません。

1 — 線形代数

方針

置換行列は、置換の巡回分解ごとにブロック分解して考えるのが最も速い。今回は長さ 33 と長さ 22 の巡回が独立に現れるため、固有多項式はそれぞれの巡回ブロックの固有多項式の積、最小多項式は最小公倍式になる。

固有ベクトルの係数の向き

f(vaj)=vaj+1f(v_{a_j})=v_{a_{j+1}} のとき f(cjvaj)=cj1vaj f\left(\sum c_jv_{a_j}\right)=\sum c_{j-1}v_{a_j} である。したがって cj1=λcjc_{j-1}=\lambda c_j、すなわち cj=λjc0c_j=\lambda^{-j}c_0 となる。ここで係数を λj\lambda^j と書いてしまうと、逆向きの置換行列を扱った答えになることがあるので注意する。

検算

固有空間の次元の和は 2+1+1+1=5 2+1+1+1=5 であり、VV の次元と一致する。また最小多項式は重根を持たないので、AσA_\sigma が対角化可能であることとも整合している。

完全な解答(途中式・最終答)はPDFに収録

2 — 線形写像

方針

hh は冪等写像なので、幾何的には「ある直和分解に関する射影」である。f=ghf=g\circ h と分解したいなら、hh でまず kerf\ker f を消し、その後 gg で像へ同型に送る、という設計が自然である。

なぜ gg を同型にできるか

fWf|_WWImfW\to\operatorname{Im}f の同型だが、このままでは VV 全体の同型ではない。そこで、余った次元同士 dimU=dimK=dimC \dim U=\dim K=\dim C を任意の同型で対応させる。有限次元であることは、この補空間選択と次元一致を保証するために使われている。

試験で書くべき点

gg を延長する」とだけ書くと、同型性の確認が不足しやすい。Imf\operatorname{Im}f の補空間 CCWW の補空間 UU を明示し、g(W)=Imfg(W)=\operatorname{Im}fg(U)=Cg(U)=C と直和成分ごとに同型であることを書くと答案として安定する。

完全な解答(途中式・最終答)はPDFに収録

3 — 位相空間

端点の含み方が本質

S1S^1 の点の基本近傍は「その角度を含み右へ進む」、S2S^2 の点の基本近傍は「その角度を含み左へ戻る」。この非対称性により、同じ角度にある二点も分離できる。一方で、S1S^1 だけを取り出すと閉集合ではなくなる。

典型ミス

通常の二つの円周の和位相と思ってしまうと、絶対値写像を連続、S1S^1 をコンパクトと誤判定しやすい。この問題では位相は通常位相ではなく、指定された開基によって定まる。特に「通常の円周はコンパクト」という事実をそのまま使えない。

検算

XX がコンパクトで S1S^1 がコンパクトでないことは矛盾しない。コンパクト空間の任意の部分集合がコンパクトになるのは、位相が部分集合に対して特別な性質を持つ場合ではなく、一般には閉部分集合に限られる。今回 S1S^1 は閉でないため、コンパクト性を失ってよい。

完全な解答(途中式・最終答)はPDFに収録

4 — 関数列

方針

(1) は「周期関数の平行移動族はコンパクト」という主張である。周期 11 のため、平行移動量を [0,1][0,1] に押し込められることが決定的である。

一様収束の確認

rnjrr_{n_j}\to r から各点収束を言うだけでは不足である。ffR\mathbb R 上で一様連続であることを使い、 rnjr |r_{n_j}-r| だけで supxf(x+rnj)f(x+r)\sup_x |f(x+r_{n_j})-f(x+r)| を制御する必要がある。

典型ミス

(2) で ana_n が収束すると仮定してしまうのは危険である。実数列は、有界部分列を持つ場合と、無限大へ逃げる部分列を持つ場合に分ける。後者で gng_n00 に一様収束することを書くのが、この問題の要点である。

完全な解答(途中式・最終答)はPDFに収録

5 — 積分極限

方針

tt2+x2 \frac{t}{t^2+x^2} t+0t\to+0 で原点に質量が集中する。全質量は tt2+x2dx=π \int_{-\infty}^{\infty}\frac{t}{t^2+x^2}\,dx=\pi なので、原点を含む区間では πf(0)\pi f(0) が現れる。

原点を含まない場合

x=0x=0 から離れていれば、分母は d2d^2 以上で押さえられる。したがって核そのものが一様に 00 へ収束し、積分極限も 00 になる。

典型ミス

(3) でいきなり被積分関数の点wise極限を使うと、原点で特異性が集中するため誤る。必ず「原点近く」と「原点から離れた部分」に分け、近くでは f(x)f(0)f(x)\simeq f(0)、遠くでは核が小さい、という二段構えで示す。

完全な解答(途中式・最終答)はPDFに収録

6 — 群論

方針

位数 p3p^3 の群では、中心の大きさと「中心商が巡回なら元の群は可換」という基本事実が強力である。(1) はこの事実だけでほぼ決まる。

分類で使う標準事実

奇素数 pp に対する位数 p3p^3 の非可換群は、指数 pp の Heisenberg 型と、位数 p2p^2 の元を持つ型に分かれる。問題の条件は後者を排除するための条件である。

試験で書くべき点

単に「知られている分類より」と書く場合でも、どちらの群が位数 p2p^2 の元を持つかを明記する必要がある。少なくとも HpH_p が条件を満たすこと、もう一方が条件を満たさないことを書くと、分類の使い方が答案として明確になる。

完全な解答(途中式・最終答)はPDFに収録

7 — 可換環

方針

この問題は、抽象的な剰余環の議論に見えて、実際には関係式を整理して代数閉体内の解を数える問題である。最初に x3=1x^3=1 を導き、zz の多項式を因数分解することが最重要である。

整域判定

因数分解 (z+2x2)(z+x2)2=0 (z+2x^2)(z+x^2)^2=0 が見えれば、素イデアルでないことが疑われる。厳密には、二つの異なる代数閉体値点 z=2x2z=-2x^2z=x2z=-x^2 が存在するため、片方の因子だけが全体のイデアルに入っているわけではない、と確認する。

典型ミス

標数 22 では 1=1-1=12=02=0 であるため、Y=±iXY=\pm iX と書くと二つあるように見えてしまう。実際には Y2=X2Y^2=X^2 から Y=XY=X の一つだけである。標数 33 では x2+x+1x^2+x+1 が重根になる点も落としやすい。

完全な解答(途中式・最終答)はPDFに収録

8 — 体の拡大

方針

26\sqrt[6]{2} の冪から次数 22 と次数 33 の部分体がすぐに見つかる。問題は「それ以外がない」ことの証明であり、ここでは正規閉包の Galois 群を使うのが確実である。

部分群を見る理由

K/QK/\mathbb Q 自体は Galois 拡大ではないため、KK の部分体を直接 Galois 対応で分類することはできない。そこで正規閉包 LL に上げ、K=LτK=L^{\langle\tau\rangle} を固定する部分群の上側だけを調べる。

典型ミス

次数 66 だから部分体の次数は 1,2,3,61,2,3,6 に限られる、というだけでは不十分である。次数 2233 の部分体が複数ある可能性を排除しなければならない。この排除を担うのが部分群計算である。

完全な解答(途中式・最終答)はPDFに収録

9 — 微分幾何

方針

(2) は SnS^n と超曲面 V(f)V(f) の横断性を示す問題である。SnS^n の法線方向は位置ベクトル xx であり、V(f)V(f) の法線方向は f\nabla f である。Euler の公式により、f=0f=0 上では f\nabla fxx と平行になれないことが分かる。

正則値定理の使い方

SnV(f)S^n\cap V(f) を二つの方程式 ρ=1,f=0 \rho=1,\qquad f=0 の共通零点として扱う。二つの微分が一次独立であることを示せば、余次元 22 が直ちに従う。

検算

(3) の変数変換後、条件は u=v=1/2\|u\|=\|v\|=1/\sqrt2 になる。したがって次元は dim(Sm×Sm)=2m=n1 \dim(S^m\times S^m)=2m=n-1 であり、SnS^n の中の余次元 11、また Rn+1\mathbb R^{n+1} の中の余次元 22 という (2) の結論と一致する。

完全な解答(途中式・最終答)はPDFに収録

10 — 代数的位相

方針

商空間 XpX_p は、S2S^2 をファイバーとする S1S^1 上の束、より具体的には写像トーラスである。底空間から一点を除くと平方根の枝が選べるため、局所的には単なる直積になる。

ホモロジーに効く情報

ApA_p の細かい形のうち、整数係数ホモロジーに効くのは S2S^2 上の次数である。座標反転が偶数個なら向きを保ち、奇数個なら向きを反転する。これが H2H_2 における +1+11-1 の差になる。

典型ミス

p=0,1,2,3p=0,1,2,3 をすべて別々の群として計算しようとすると煩雑になる。整数係数ホモロジーでは偶奇だけが効くため、p=0,2p=0,2p=1,3p=1,3 にまとめてよい。

完全な解答(途中式・最終答)はPDFに収録

11 — 測度論

方針

En,kE_{n,k} は「nn 以降のどこかで誤差が 1/k1/k 以上になる点」の集合である。nn を大きくすると条件が厳しくなるので、En,kE_{n,k} は単調減少する。この単調性が (2)(3) の中心である。

有限測度の使いどころ

(3) では En,knEn,k E_{n,k}\downarrow \bigcap_n E_{n,k} に対して測度の上からの連続性を使う。この定理には、最初の集合の測度が有限であることが必要であり、ここで μ(X)<\mu(X)<\infty が効く。

試験で書くべき点

(4) は「有界収束定理」ではない。fnf_n が点wiseに有界とは仮定されていないからである。L2L^2 ノルムの一様有界性と、ggL2L^2 積分の絶対連続性を組み合わせるのが正しい処理である。

完全な解答(途中式・最終答)はPDFに収録

12 — 関数解析

方針

KKLpL^p にあることから、固定した xx に対して K(x,)K(x,\cdot)LrL^r の双対元として働く。これは (1) の有界性にも (2) の弱収束の利用にも共通する視点である。

コンパクト性の要点

積分作用素のコンパクト性は、核を有限和 aj(x)bj(y) \sum a_j(x)b_j(y) で近似することで有限階数作用素に落とすのが標準手法である。有限階数作用素は有界集合を有限次元空間の有界集合へ送るためコンパクトである。

典型ミス

(2) で fn(y)f(y)f_n(y)\to f(y) が点wiseに成り立つと考えてはいけない。仮定は弱収束であり、使えるのは連続線形汎関数にかけた値の収束である。ここでの汎関数が hK(x,y)h(y)dyh\mapsto\int K(x,y)h(y)\,dy である。

完全な解答(途中式・最終答)はPDFに収録

13 — 複素解析

方針

1/sinz1/\sin zz=nπz=n\pi に単純極を持つ。z=0z=0 だけは z2z^2 も分母にあるため三位の極になり、ここでの留数 1/61/6 を落とさないことが重要である。

積分路の選び方

正方形の縦辺を半整数倍の π\pi に置くことで、実軸上の sinz\sin z の零点を避けつつ、縦辺上で sinz|\sin z| を下から押さえられる。これは留数和から三角級数を取り出す典型的な輪郭積分である。

典型ミス

nnn-n の留数は同じ値であるため、和は二倍になる。また問題の級数は (1)n/n2\sum (-1)^n/n^2 であり、初項が負である。答えの符号は π2/12-\pi^2/12 になる。

完全な解答(途中式・最終答)はPDFに収録

東京科学大学 数学 — 他の年度