北海道 · 北海道大学
北大 理学院 物理の院試過去問・解答|2027・2026年度の量子力学
北大の物性物理学・宇宙理学の公式過去問と試験条件。2027年度問題IIIの水素原子・スピン測定10小問、2026年度問題IIIの調和振動子・Landau準位9小問を、途中式と図で解説します。
最終更新: 2026/10/16
北大理学院の物性物理学・宇宙理学の合同問題は、宇宙理学専攻の公式一覧から入手できます。この記事では2027年度と2026年度の問題IIIを、全小問の途中式まで解説します。2027年度は水素原子の縮退摂動とスピン測定、2026年度は調和振動子と磁場中の荷電粒子です。
午前・午後各150分。午後の選択条件は研究室で異なる
2027年度夏季の試験は2026年8月10日実施で、午前が9時〜11時30分、午後が13時〜15時30分でした。午前は問題I・IIを解答します。午後は冊子にIII〜VIが載っていますが、全員が自由に2問を選ぶ方式ではありません。
| 志望先 | 2027年度夏季・午後の解答指定 |
|---|---|
| 物性物理学専攻 | 宇宙理学との併願者を含め、III・IVを解答。 |
| 宇宙理学:観測天文学、理論宇宙物理学、素粒子・宇宙論、原子核理論、情報メディア科学、原子核反応データ科学 | III・IVを解答。 |
| 宇宙理学:惑星宇宙グループ、宇宙物質科学グループ、相転移ダイナミクス、飛翔体観測 | III・IV・V・VIから2問を選択。 |
指定は午前の問題表紙と午後の問題表紙で確認できます。口頭試問・英語の提出条件は修士募集要項も併せて確認してください。冬季や翌年度に同じ筆記構成があるとは限りません。
2027年度・問題III:水素原子の縮退摂動とスピン測定
2026年8月10日実施の公式問題・午後2〜4ページにある全10小問を解きます。問1は水素原子のn=2の4状態に摂動を加え、問2は磁場に対するスピンの向きと測定確率を調べます。以下、結合定数λは実数とします。
問1–1:積の随伴では演算子の順序を逆にする
問題の演算子をTz=(K+K†)/2、K=xℓy−yℓxと書きます。位置と角運動量はエルミートですが、その積が同じ順序のままエルミートになるとは限りません。
したがって、問題で与えられた対称化されたTzはエルミートです。
問1–2:空間反転と時間反転に対する符号
空間反転では位置rと運動量pがともに反転し、ℓ=r×pは変わりません。Tzには位置が1つ含まれるので符号が反転します。時間反転ではrは変わらず、pとℓが反転するため、やはりTzの符号が反転します。時間反転は反ユニタリであり、複素数表示ではiも−iになります。
問1–3:交換関係から極座標表示を導く
ℓyx=xℓy−iℏz、ℓxy=yℓx+iℏzを使って位置を左にそろえます。この交換の分を落とすと、最後のcosθが消えてしまいます。
問題に与えられたℓx・ℓyへx=r sinθ cosφ、y=r sinθ sinφを代入します。φ微分の係数は打ち消し合います。
問1–4:動径積分と角度積分を分ける
ψ200の角度部分Y00は定数なので、そのθ微分は0です。求める行列要素は次の積になります。体積要素のr²とTzのrから、動径積分にはr³が現れます。
ここでu=r/a₀です。角度積分ではcos²θの球面平均が1/3であることを使いました。動径積分は負になるので、最終的な符号は正の虚数です。
問1–5:4状態の縮退空間で摂動行列を作る
基底を問題指定の順序ψ200、ψ210、ψ21+1、ψ21−1とします。Tzはφを含まないのでmを保存します。また空間反転で奇の演算子なので、同じパリティの状態間の行列要素は0です。残る2要素はエルミート性により互いの複素共役です。
対角要素だけを計算して「補正は全部0」としてはいけません。縮退した状態間の非対角要素も含めて対角化します。
問1–6:エネルギー補正と対応する状態
左上の2×2ブロックはパウリ行列σyの形です。規格化した固有状態と1次の補正は、
ψ21+1とψ21−1の補正はともに0です。この2状態が張る空間では、任意の正規直交基底を選べます。上式の状態は縮退空間内で選ぶ0次の状態であり、他の主量子数の状態が混ざる高次の補正まで求めたものではありません。
問2–1:スピンの大きさとz成分の交換関係
スピン1/2ではsx=ℏσx/2などと書けます。各パウリ行列の二乗が単位行列Iなので、
問2–2:磁場との相互作用を行列で表す
磁場の方向はn=(sinθ,0,cosθ)です。K=λℏB/2と置くと、z方向のスピン基底で、
問2–3:規格化したエネルギー固有状態
括弧内の行列は二乗するとIになり、固有値は±1です。各ベクトルを行列に掛けて確認すると、
両状態の内積は0で、それぞれのノルムは1です。λの符号が指定されない場合、どちらが低いエネルギーかはKの符号で決まります。
問2–4:z方向の上向き状態での測定確率
初期状態|+⟩を上の固有状態へ射影し、係数の絶対値を二乗します。
θ=0なら−Kを確率1で測定し、θ=π/2なら2つの結果が半々になります。K=0ではエネルギーが縮退し、測定結果は0だけで、その確率は1です。
2026年度・問題III:調和振動子とランダウ準位
2025年8月7日実施の公式問題・午後2〜3ページの全9小問を解きます。前半の昇降演算子を、後半の一様磁場中の荷電粒子へ対応させます。
問1:演算子の積の順序を保って展開する
問題の定義はa=(p−imωq)/√(2mℏω)、a†=(p+imωq)/√(2mℏω)です。[q,p]=iℏを使うと、
古典的な数としてpとqを交換すると、1/2の項が消えてしまいます。
問2:エネルギーを上下させる交換関係
[AB,C]=A[B,C]+[A,C]Bを使います。
Hの固有状態にa†を作用させるとエネルギーがℏω増え、aではℏω減ります。
問3:基底状態のエネルギー
与えられたノルムの条件からaψ₀=0です。問1のHを作用させると、
問4:励起状態の規格化
交換関係から[a,(a†)ⁿ]=n(a†)ⁿ⁻¹です。aψ₀=0と合わせると、(a†)ⁿψ₀のノルムの二乗はn!になります。
各状態全体の位相は自由ですが、問題で定義されたa†を使う限り、その定義に合わせて式をそろえます。
問5:正準運動量と力学的運動量を区別する
L=mv²/2−eφ+ev·Aを速度で微分するとp=mv+eAです。v=(p−eA)/mをp·v−Lへ代入します。
pは正準運動量で、mvそのものではありません。量子化後は、二乗を各成分の演算子の積として扱います。
問6:面内運動とz方向を分ける
φ=0、A=(−By/2,Bx/2,0)を代入します。
zとpzは面内の変数と交換するので、波動関数をR(x,y)Z(z)に分離できます。
問7:面内の演算子を調和振動子へ対応させる
[Πx,Πy]=iℏeBです。eB≠0としてs=sgn(eB)、ωc=|eB|/mと置き、
この順序なら電荷や磁場の符号によらず[a,a†]=1となり、
問1の位置と運動量に直接対応させるなら、Q=−Πy/(eB)、P=Πxと取れます。[Q,P]=iℏ、P²/(2m)+mωc²Q²/2=Hxyです。
問8:実波動関数という条件で基底状態を求める
aR₀=0にpx=−iℏ∂x、py=−iℏ∂yを代入します。R₀を実関数とする問題の条件により、実部と虚部がそれぞれ0になります。
磁気長ℓB=√(ℏ/|eB|)を使うとR₀=C exp[−(x²+y²)/(4ℓB²)]です。平面全体で規格化するには、極座標で積分します。
全体の符号は任意です。これは対称ゲージで実関数という条件を満たす解であり、最低ランダウ準位全体が非縮退という意味ではありません。実関数に限定しなければ、同じエネルギーをもつ他の状態があります。
問9:磁場方向の自由な運動
HzZ=ε⊥Zにε⊥>0を代入すると、自由粒子の2階微分方程式です。
ここでA・Bは積分定数で、後者のBは磁束密度と別の記号です。問題の指定どおりz方向の規格化は行いません。面内の離散的なランダウ準位に対して、z方向の自由運動は連続したエネルギーを取ります。
2021・2023・2024年度の出題テーマ
過年度のI〜IVで扱われたテーマは次の通りです。量子力学だけでなく、力学・電磁気学・熱統計も含めて、志望先が指定する問題を練習してください。
| 入学年度 | I〜IVで扱われた内容 |
|---|---|
| 2024 | 中心力散乱、滑車とばねの微小振動、同心導体と放電回路、自由電磁場のポテンシャル、箱型障壁、角運動量とスピン軌道、エンタルピー、過冷却、調和振動子。 |
| 2023 | 連成振動、対称コマ、ポインティングベクトル、結合回路エネルギー、電磁波、調和振動子、2粒子問題、縮退摂動、相対論的気体、流出分布。 |
| 2021 | 吊り下げ棒の振動、逆コンプトン散乱、球対称誘電体、電磁波の垂直入射、調和振動子の時間依存摂動、一次元散乱、古典理想気体、平均場Ising、有限時間熱機関。 |
今回の2問を解き直すときは、行列要素の複素共役、固有状態の規格化、交換関係の符号を先に照合すると、計算がずれた箇所を特定できます。2027年度問2ではθ=0・π/2・πの測定確率、2026年度では磁場の符号を反転してもエネルギーが正であることが検算になります。
公式PDFを年度から選ぶには北大の過去問一覧を使えます。販売する物理の解答・解説PDFは、商品ページに記載された収録年度が対象です。この記事の2027年度の解説を販売PDFに追加したという意味ではありません。
途中式と最終答まで読める解説
このガイドで扱う解答PDF
問題本文は含みません。公式の問題冊子と併用してください。
物理学の収録解説の分野(2021〜2024年度・12項目)
収録年度と解説項目数
院試hubに収録した3実施回の一覧です。どの回も解説見出しは4項目です。
| 実施回 | 解説項目数 | 公開範囲 |
|---|---|---|
| 2024年度 | 4 | 第1問の途中式・最終答 |
| 2023年度 | 4 | 第1問の途中式・最終答 |
| 2021年度 | 4 | 第1問の途中式・最終答 |
北大 物理学の解答で立てた注意点(10件)
院試hubの解説で、その設問だけに立てた小見出しです(「方針」「検算」のような全問共通の 見出しは除いています)。新しい実施回から並べています。
力学3件
- 2024年度 第1問途中式の要点
- 2023年度 第1問 解析力学途中式の意味
- 2021年度 第1問 力学・相対論途中式の要点
量子力学3件
- 2024年度 第3問途中式の要点
- 2023年度 第3問途中式の意味
- 2021年度 第3問途中式の要点
電磁気学・回路2件
- 2024年度 第2問 電磁気学途中式の要点
- 2021年度 第2問 電磁気学途中式の要点
熱・統計力学2件
- 2024年度 第4問 熱力学・統計力学途中式の要点
- 2021年度 第4問 統計力学途中式の要点
頻出論点と、同じ論点を出す他大学
院試hubが解答した大問の論点を、他大学の出題と突き合わせたものです。併願先を 探すときの重なりの実数として使えます。
| 論点 | この専攻での出題 | 出題年度 | 同じ論点を出す他大学 | 全国の出題大学 |
|---|---|---|---|---|
| 固有値・固有ベクトル | 4問 | 2024・2023 | 神戸大学・京都大学・東京大学・大阪大学・名古屋大学 | 25大学 |
| 調和振動子 | 3問 | 2024・2023・2021 | 名古屋大学・電気通信大学・広島大学・九州大学・名古屋工業大学 | 16大学 |
| 剛体の回転運動 | 3問 | 2024・2023・2021 | 京都大学・広島大学・九州工業大学・筑波大学・九州大学 | 16大学 |
| ラグランジアン | 3問 | 2024・2023・2021 | 名古屋大学・京都大学・広島大学・筑波大学・九州大学 | 13大学 |
| 分配関数 | 2問 | 2024・2021 | 東京大学・名古屋大学・筑波大学・九州大学・京都大学 | 16大学 |
| 静電場 | 2問 | 2024・2021 | 名古屋大学・九州工業大学・筑波大学・九州大学・名古屋工業大学 | 16大学 |
| ハミルトン形式 | 2問 | 2023・2021 | 名古屋大学・広島大学・筑波大学・九州大学・京都大学 | 15大学 |
| 固有振動数と振動系 | 2問 | 2024・2023 | 東京大学・名古屋大学・広島大学・筑波大学・東北大学 | 16大学 |
| 電磁波 | 2問 | 2024・2021 | 筑波大学・九州大学・東京大学・名古屋大学・東北大学 | 15大学 |
| マクスウェル方程式 | 2問 | 2024・2021 | 九州大学・東京大学・大阪大学・名古屋工業大学・大阪公立大学 | 8大学 |
北大 公式の過去問の公開年度と公式解答例
- 公式の過去問ページ
- 理学院 物性物理学専攻・宇宙理学専攻
- 公開されている年度
- 2006〜2027年度(入学年度。募集回ごとに掲載内容が異なる)
- 公式の解答例
- 解答例の掲載なし
- 英語の扱い
- 旧年度の英語問題と現在の外部スコア提出を区別し、受験年度の募集要項を確認。
- 院試hubが最後にリンクを確認した日
- 2026-10-16
- ページの内容
- 宇宙理学専攻の公式一覧から合同問題を案内。2027年度夏季は午前・午後を公開、秋季・冬季は一覧が空欄。掲載ページに解答例はない。
よくある質問
北大理学院の物理の過去問はどこにありますか。
宇宙理学専攻の公式過去問一覧に、物性物理学専攻との合同問題があります。2006〜2027年度の掲載分を確認でき、最新の2027年度夏季は2026年8月10日実施です。午前・午後と募集回を分けて選んでください。
物理の試験時間と解答する問題は何ですか。
2027年度夏季は午前・午後それぞれ150分です。午前は問題I・IIを解答します。物性物理学志望者は併願者を含め午後のIII・IVが必須です。宇宙理学は研究室によりIII・IVが必須の場合と、III〜VIから2問を選ぶ場合があります。
2027年度の水素原子の摂動で対角成分が0なら、エネルギー補正も0ですか。
この問題では0とは限りません。n=2の縮退空間で非対角成分も計算し、摂動行列を対角化します。ψ200とψ210が結合して補正は±3λℏa₀となり、残る2状態の1次補正は0です。
2026年度のLandau準位で負の電荷も同じ式を使えますか。
サイクロトロン振動数を|eB|/mとし、消滅演算子にeBの符号を入れれば扱えます。eBをそのまま正の量として平方根へ入れないことが必要です。記事では交換関係、基底波動関数、z方向の自由運動まで導きます。
北海道大学の解答PDF
公式過去問と併用する解答・解説PDFを、北海道大学の研究科・科目別に掲載しています。収録年度と価格は各ページで確認できます。
- 北海道大学 理学院 自然史科学専攻 専門科目(地球惑星科学)の解答PDF(収録5実施回分)
- 北海道大学 工学院 応用量子科学系研究室群 応用量子科学系 専門科目の解答PDF(収録3年分)
- 北海道大学 工学院 機械・宇宙航空工学系研究室群 専門科目の解答PDF(収録3年分)
- 北海道大学 情報科学院 情報科学専攻 システム情報科学コース 専門科目の解答PDF(収録2年分)
- 北海道大学 情報科学院 情報科学専攻 情報エレクトロニクスコース 専門科目の解答PDF(収録2年分)
- 北海道大学 情報科学院 情報科学専攻 情報理工学コース 専門科目の解答PDF(収録2年分)
- 北海道大学 情報科学院 情報科学専攻 メディアネットワークコース 専門科目の解答PDF(収録2年分)
北海道大学の解答PDF一覧で、北海道大学の研究科・専攻・科目をまとめて確認できます。