電気通信大学 院試 過去問 解答例
電通大 情報理工学研究科 基盤理工学専攻 専門科目(分子生物学・生物化学・細胞・神経生物学) 2022年度 院試 解答例・解説
電気通信大学 情報理工学研究科 基盤理工学専攻 専門科目(分子生物学・生物化学・細胞・神経生物学) 2022年度の院試 過去問について、設問ごとの解法方針と確認点を解説。全2問収録の解答・解説PDFと併用できます。問題本文は含みません。
最終更新:
設問ごとの解法方針と確認点を公開しています。
続きの途中式・最終答は解答・解説PDFに収録しています。問題本文は含まれません。
第1問 — 分子生物学・生物化学
情報の向きと例外を分けて書く
セントラルドグマの答案では、複製、転写、翻訳を一列に並べるだけでは不十分である。重要なのは、タンパク質配列から核酸配列へ情報が戻る経路を通常は認めない、という情報の向きである。逆転写は RNA から DNA への流れなので例外に見えるが、タンパク質から核酸へ戻るわけではない点も押さえておくとよい。
リーディング鎖とラギング鎖は酵素の方向性から決まる
丸暗記で「連続」「不連続」とだけ書くと、向きの説明が弱くなる。DNA ポリメラーゼが にしか伸長できないこと、鋳型鎖は逆平行であること、複製フォークが動くことをつなげると、なぜ片側だけ Okazaki 断片を作るのかが自然に導ける。
クロマトグラフィーは何が違うかで選ぶ
分離法の選択では、まず対象どうしの差を見抜く。分子量が同じならサイズでは分けにくく、電荷差や疎水性差を見る。等電点が近ければイオン交換では分離能が落ちるため、分子量差があればサイズ排除を使う。この対応関係を理由つきで書くことが採点上の要点である。
構造解析は階層と試料条件を意識する
シートの説明は「板状」といった印象語ではなく、主鎖水素結合、鎖の向き、側鎖の交互配置を書くと構造の答案になる。三次・四次構造解析では、X 線結晶構造解析、NMR、クライオ電子顕微鏡などが候補になるが、名称だけでなく試料をどう測り、何が得られるかまで述べるとよい。
第2問 — 細胞・神経生物学
安静膜電位は濃度勾配の維持と瞬間の透過性を分ける
Na/K ATPase は勾配を作り直す長期的な装置であり、安静膜電位の近い値を直接決める主役は、その瞬間に透過性の高い K である。この二つを分けて書くと、静止膜電位、活動電位、疲労の説明がつながる。
興奮収縮連関は時系列で整理する
膜電位変化、筋小胞体からの Ca 放出、トロポニンへの結合、架橋サイクル、張力発生という順番で書くと答案が安定する。図の曲線では膜電位が最も早く、Ca 上昇がそれに続き、張力はさらに遅れて立ち上がる。この遅れは、化学的な結合変化と機械的な力発生を挟むためである。
強縮は Ca2+ が下がり切らないことから説明する
刺激頻度が低いと、刺激ごとに Ca が上がってから十分に回収され、単収縮として分かれる。頻度が上がると Ca が基線まで戻る前に次の刺激が来るため、トロポニンに結合した Ca の効果が重なり、張力が加重する。十分高頻度では収縮が融合して強縮になる。
疲労は一つの物質だけで説明しない
長時間の高頻度刺激後に張力が下がる理由は、ATP が完全に尽きるからだけではない。細胞外 K 上昇で興奮性が落ちる、筋小胞体の Ca 放出が弱まる、無機リン酸や酸性化で架橋サイクルや Ca 感受性が変わる、という複数の段階が同時に効く。設問が 3 行程度なら、代表的な二、三段階を因果でつなぐとよい。