院試hub

東大 情報理工学系研究科 知能機械情報学専攻 知能機械情報学 2020年度 院試 過去問 解答例・解説(全3問)

全3問の分野は電磁気学・回路1問です。固有値・固有ベクトル、剛体の回転運動、フィードバック制御などが出ています。2018年度と共通するテーマは剛体の回転運動です。解説はすべて、途中式と最終答は大問1問ぶんを公開しています。残りは解答PDFに収録しています。問題本文は含みません。

最終更新:

第1問 — 必答問題:力学・論理回路・基礎用語

力学部分の見方

重力方向を正に取る座標系では、位置エネルギーの符号を間違えやすい。式を暗記するより、安定平衡である θ=0\theta=0 の近くで復元トルクが −θ-\theta に比例することを確認すると符号ミスを防げる。

多数決論理の最短形

3入力多数決は「1が少なくとも2つ」という条件なので、2入力ずつの積をORすればよい。NAND構成ではド・モルガンの法則 A+B+C=A‾ B‾ C‾‾ A+B+C=\overline{\overline A\,\overline B\,\overline C} を使うと、積和形から直接ゲート数を数えられる。

用語説明で書くべき粒度

用語問題では定義だけでなく、構成要素、役割、代表的な用途を短く添えると答案として強い。PIDなら3項の役割、ハッシュ表なら衝突処理、圧電素子なら正圧電効果と逆圧電効果まで書くと十分である。

必答問題:力学・論理回路・基礎用語の途中式・最終答をPDFで見る

第2問 — 選択問題2A:平面マニピュレータ

ヤコビ行列の読み方

平行リンクであるAは、先端位置が2本のベクトル和として書けるため、2自由度直列機構よりも式が短い。まず位置ベクトルを書き、そこから微分してヤコビ行列を出すのが最も安全である。

コンプライアンスの意味

C=JK−1J⊤C=JK^{-1}J^\top は、関節の柔らかさが手先空間にどう見えるかを表す。固有値が大きい方向は「力を受けると動きやすい方向」、固有値が小さい方向は「剛い方向」である。

直列機構との違い

直列機構では第1関節の回転が第2リンク全体を動かすため、ヤコビ行列の第1列に両リンクの寄与が入る。これがBで先端変位やコンプライアンスが大きくなりやすい主因である。

選択問題2A:平面マニピュレータの途中式・最終答をPDFで見る

第3問 — 選択問題2B:情報表現・符号・エントロピー

2の補数の確認

負数を作る手順は「正の値を書く、反転する、1を足す」である。最後に同じ値をもう一度2の補数にすると元の正数へ戻るので、検算もしやすい。

シンドローム復号

1ビット誤りでは、シンドロームは検査行列の「誤った位置の列」そのものになる。従って HH の列を並べておけば、シンドロームから誤り位置を直接読める。

エントロピーの上限

エントロピーの最大が一様分布であることは、ギブスの不等式を一様分布に対して使うと一行で出る。試験では、単に「一様分布で最大」と書くだけでなく、不等式から H(P)≤log⁡2n\mathcal{H}(P)\le\log_2 n を導く形にすると減点されにくい。

解答

問1:2の補数

8ビット2の補数で −50-50 を表す。まず 50=(00110010)2 50=(00110010)_2 である。ビット反転して 11001101 11001101 となり、1を足すと −50=(11001110)2 -50=(11001110)_2 である。

8ビット符号付き整数の範囲は −27≤x≤27−1 -2^7\le x\le 2^7-1 なので −128≤x≤127 -128\le x\le 127 である。

また 32−50=−18. 32-50=-18. 18=(00010010)2 18=(00010010)_2 より、2の補数で −18=(11101110)2 -18=(11101110)_2 となる。

問2:線形符号

生成行列を G=[P I4],P=[101111110011] G=[P\ I_4],\qquad P= \begin{bmatrix} 1&0&1\\ 1&1&1\\ 1&1&0\\ 0&1&1 \end{bmatrix} とする。加算はすべてGF(2)で行う。入力 u=[1 0 1 1] u=[1\ 0\ 1\ 1] に対して uP=[0 0 0] uP=[0\ 0\ 0] なので w=uG=[0 0 0 1 0 1 1]. w=uG=[0\ 0\ 0\ 1\ 0\ 1\ 1].

検査行列を H=[I3 A] H=[I_3\ A] と書く。任意の符号語で Hw⊤=0Hw^\top=0 が成り立つには HG⊤=[I3 A][P⊤I4]=P⊤+A=0 HG^\top=[I_3\ A] \begin{bmatrix} P^\top\\ I_4 \end{bmatrix} = P^\top+A=0 であればよい。GF(2)では A=−P⊤=P⊤A=-P^\top=P^\top だから A=P⊤=[111001111101]. A=P^\top = \begin{bmatrix} 1&1&1&0\\ 0&1&1&1\\ 1&1&0&1 \end{bmatrix}.

受信語を r=[0 1 1 1 0 1 1] r=[0\ 1\ 1\ 1\ 0\ 1\ 1] とすると、シンドロームは s=Hr⊤=[011]. s=Hr^\top = \begin{bmatrix} 0\\1\\1 \end{bmatrix}. これは HH の第7列と一致するので、誤りは第7ビットである。訂正後の符号語は [0 1 1 1 0 1 0] [0\ 1\ 1\ 1\ 0\ 1\ 0] であり、後半4ビットが元の入力なので u=[1 0 1 0] u=[1\ 0\ 1\ 0] である。

問3:情報量とエントロピー

10進数1桁は10通りを区別するので、情報量は log⁡210=1log⁡102≃10.30≃3.33 bit \log_2 10 = \frac{1}{\log_{10}2} \simeq \frac{1}{0.30} \simeq 3.33\ \mathrm{bit} である。

確率分布 P=(p1,…,pn)P=(p_1,\ldots,p_n)、Q=(q1,…,qn)Q=(q_1,\ldots,q_n) について、ギブスの不等式を示す。 log⁡x≤x−1\log x\le x-1 を x=qk/pkx=q_k/p_k に適用すると log⁡qkpk≤qkpk−1. \log\frac{q_k}{p_k}\le \frac{q_k}{p_k}-1. 両辺に pkp_k を掛けて和を取ると ∑k=1npklog⁡qkpk≤∑k=1n(qk−pk)=0. \sum_{k=1}^n p_k\log\frac{q_k}{p_k} \le \sum_{k=1}^n(q_k-p_k)=0. 従って ∑k=1npklog⁡pkqk≥0 \sum_{k=1}^n p_k\log\frac{p_k}{q_k}\ge0 である。等号はすべての kk で qk/pk=1q_k/p_k=1、すなわち P=QP=Q のときに限る。

エントロピーを H(P)=−∑k=1npklog⁡2pk \mathcal{H}(P)=-\sum_{k=1}^n p_k\log_2 p_k とする。各 pkp_k は 0<pk≤10<p_k\le1 なので H(P)≥0 \mathcal{H}(P)\ge0 である。上限は、ギブスの不等式で一様分布 Q=(1/n,…,1/n)Q=(1/n,\ldots,1/n) を取ればよい。 ∑k=1npklog⁡2pk1/n≥0 \sum_{k=1}^n p_k\log_2\frac{p_k}{1/n}\ge0 より ∑k=1npklog⁡2pk+log⁡2n≥0. \sum_{k=1}^n p_k\log_2p_k+\log_2 n\ge0. したがって H(P)≤log⁡2n. \mathcal{H}(P)\le\log_2 n. 等号は PP が一様分布、すなわち p1=⋯=pn=1n p_1=\cdots=p_n=\frac{1}{n} のときに限る。

最終答

−50-50 は8ビットで 1100111011001110、8ビット符号付き整数の範囲は [−128,127][-128,127]、32−5032-50 は 1110111011101110。符号語は [0 0 0 1 0 1 1][0\,0\,0\,1\,0\,1\,1]、検査行列の右ブロックは P⊤P^\top、受信語の誤りは第7ビットで元入力は [1 0 1 0][1\,0\,1\,0]。また 0≤H(P)≤log⁡2n0\le\mathcal{H}(P)\le\log_2 n で、最大は一様分布で達成される。

年度別の解答例(3年度)

  • 2020年度(このページ・全3問)

    必答問題:力学・論理回路・基礎用語 / 選択問題2A:平面マニピュレータ / 選択問題2B:情報表現・符号・エントロピー

  • 2018年度(全3問)

    必答問題:回路・線形回帰・基礎用語 / 選択問題2A:一リンクアームとDCモータ制御 / 選択問題2B:スタック・キュー・逆ポーランド記法

  • 2016年度(全3問)最終答まで公開

    必答問題:衝突・情報量・電動機 / 選択問題2A:磁気浮上とワイヤ駆動機構 / 選択問題2B:線形識別とマージン

2020年度の出題内容

全3問

この3問の分野は電磁気学・回路1問です。

大問分野主題解説の小見出し最終答
第1問電磁気学・回路力学・論理回路・基礎用語力学部分の見方 / 多数決論理の最短形あり
第2問平面マニピュレータヤコビ行列の読み方 / コンプライアンスの意味あり
第3問—選択問題2B:情報表現・符号・エントロピー2の補数の確認 / シンドローム復号あり

同じテーマを出した他大学・他年度

4テーマ

前年度(2018年度)との違い

大問数
2018年度 3問 → 2020年度 3問
両年度に出たテーマ
剛体の回転運動
2018年度の解答例

東京大学の公式過去問

公開年度範囲
2016〜2020
公式の解答例
非公開(問題冊子のみ)
院試hubの最終確認
2026-08-13
東京大学の公式過去問PDF