院試hub

東京大学 院試 過去問 解答例

東大 情報理工学系研究科 一般教育科目(数学) 2024年度 院試 過去問 解答例・解説(全3問)

全3問。微分積分・解析1問。テーマタグは2件(正定値行列・ベータ関数・ガンマ関数)。

最終更新:

収録3年度分の解答PDF:東京大学 情報理工学系研究科 一般教育科目(数学)(¥2,880・紙面見本あり)

このページで公開
解説3問と大問1問の途中式・最終答(全3問)
解答PDFに収録
途中式と最終答(最終答つき3問)
問題本文
非収録

東大 一般教育科目(数学) 2024年度 院試 過去問の出題内容(全3問)

この3問の分野は微分積分・解析1問です。

大問分野主題解説の小見出し最終答
第1問—空間ベクトルと最小二乗差の行列はアフィン独立性を見る / 距離の二乗和は正規方程式になるあり
第2問微分積分・解析ガンマ関数と対数分散ガンマ関数として見る / 不等式の役割あり
第3問—停止時刻付きの格子上ランダムウォーク停止までの回数を見る / 幾何分布としてのあり

2024年度の出題テーマと、同じテーマを出した他大学・他年度

この年度は2問に2テーマが出ています。

第1問 — 空間ベクトルと最小二乗

差の行列はアフィン独立性を見る

AA は nin_i そのものではなく,隣り合う差を並べた行列である。したがって rank の条件は「n1,n2,n3,n4n_1,n_2,n_3,n_4 が同一平面上に乗るかどうか」として読むと自然である。

距離の二乗和は正規方程式になる

平面までの距離の二乗和も,直線までの距離の二乗和も,本質的には最小二乗問題である。勾配をゼロにすると (∑niniT)x=∑dini \left(\sum n_in_i^T\right)x=\sum d_in_i の形が現れる。行列 BB の正定値性を先に示しておくと,最小点が一意であることも同時に分かる。

射影行列の見方

niniTn_in_i^T は nin_i 方向への射影,I−niniTI-n_in_i^T はその直交補空間への射影である。直線への距離は「直線方向に垂直な成分」の長さなので,Wi=I−niniTW_i=I-n_in_i^T が自然に出てくる。

解答

  1. 行列 AA の3本の行ベクトルは (n1−n2)T,(n2−n3)T,(n3−n4)T (n_1-n_2)^T,\qquad (n_2-n_3)^T,\qquad (n_3-n_4)^T である。したがって rank⁡A=3 \operatorname{rank}A=3 であるための条件は,3本のベクトル n1−n2,n2−n3,n3−n4 n_1-n_2,\quad n_2-n_3,\quad n_3-n_4 が一次独立であることである。 幾何的には,これは4点 n1,n2,n3,n4n_1,n_2,n_3,n_4 が同一平面上にないことと同値である。すなわち n4∉n1+span⁡{n2−n1, n3−n1} \boxed{ n_4\notin n_1+\operatorname{span}\{n_2-n_1,\ n_3-n_1\}} が求める条件である。
  2. 球の中心を cc,半径を ρ\rho とする。半空間の内側に球があり,各平面に接するので,法線ベクトルの長さが1であることから niTc−di=ρ(i=1,2,3,4) n_i^Tc-d_i=\rho \qquad (i=1,2,3,4) と書ける。これらの差を取ると (n1T−n2T)c=d1−d2, (n_1^T-n_2^T)c=d_1-d_2, (n2T−n3T)c=d2−d3, (n_2^T-n_3^T)c=d_2-d_3, (n3T−n4T)c=d3−d4. (n_3^T-n_4^T)c=d_3-d_4. したがって Ac=(d1−d2d2−d3d3−d4). Ac= \begin{pmatrix} d_1-d_2\\ d_2-d_3\\ d_3-d_4 \end{pmatrix}. 中心が A−1uA^{-1}u と表されるので u=(d1−d2d2−d3d3−d4) \boxed{ u= \begin{pmatrix} d_1-d_2\\ d_2-d_3\\ d_3-d_4 \end{pmatrix}} である。
  3. BB は B=∑i=14niniT B=\sum_{i=1}^4 n_in_i^T であるから対称である。任意の x∈R3x\in\mathbb R^3 について xTBx=∑i=14xTniniTx=∑i=14(niTx)2≥0 x^TBx = \sum_{i=1}^4 x^Tn_in_i^Tx = \sum_{i=1}^4 (n_i^Tx)^2 \ge0 である。もし xTBx=0x^TBx=0 なら,すべての ii について niTx=0n_i^Tx=0 である。特に n1,n2,n3n_1,n_2,n_3 は一次独立なので,それらすべてに直交する xx は x=0x=0 に限られる。したがって x≠0x\ne0 なら xTBx>0x^TBx>0 であり, B は正定値対称行列である \boxed{B\text{ は正定値対称行列である}} と分かる。
  4. 点 xx から平面 niTx−di=0n_i^Tx-d_i=0 までの距離は,∥ni∥=1\|n_i\|=1 より ∣niTx−di∣ |n_i^Tx-d_i| である。したがって最小化すべき関数は F(x)=∑i=14(niTx−di)2 F(x)=\sum_{i=1}^4 (n_i^Tx-d_i)^2 である。勾配を計算すると ∇F(x)=2∑i=14ni(niTx−di)=2(Bx−∑i=14dini). \nabla F(x) = 2\sum_{i=1}^4 n_i(n_i^Tx-d_i) = 2\left(Bx-\sum_{i=1}^4d_in_i\right). 最小点では ∇F(x)=0\nabla F(x)=0 なので Bx=∑i=14dini. Bx=\sum_{i=1}^4d_in_i. よって PP の位置ベクトルが B−1vB^{-1}v と表されるとき v=∑i=14dini \boxed{v=\sum_{i=1}^4d_in_i} である。
  5. 直線 lil_i への直交射影は,点 xix_i から nin_i 方向へ進んだ成分だけを残す操作である。したがって Ri=xi+niniT(y−xi)=y−(I−niniT)(y−xi). R_i=x_i+n_in_i^T(y-x_i) = y-(I-n_in_i^T)(y-x_i). よって Wi=I−niniT. \boxed{W_i=I-n_in_i^T}. また WiT=WiW_i^T=W_i であり, Wi2=(I−niniT)2=I−2niniT+ni(niTni)niT=I−niniT=Wi. W_i^2 = (I-n_in_i^T)^2 = I-2n_in_i^T+n_i(n_i^Tn_i)n_i^T = I-n_in_i^T = W_i. したがって WiTWi=Wi \boxed{W_i^TW_i=W_i} である。 最後に,点 yy から3本の直線までの距離の二乗和を G(y)=∑i=13(y−xi)TWi(y−xi) G(y)=\sum_{i=1}^3 (y-x_i)^TW_i(y-x_i) と書く。n1,n2,n3n_1,n_2,n_3 が互いに直交する単位ベクトルなので ∑i=13niniT=I,∑i=13Wi=2I. \sum_{i=1}^3 n_in_i^T=I, \qquad \sum_{i=1}^3 W_i=2I. 制約がないときの最小点 ww は ∑i=13Wi(w−xi)=0 \sum_{i=1}^3W_i(w-x_i)=0 を満たす。よって 2w=∑i=13Wixi,w=12∑i=13Wixi. 2w=\sum_{i=1}^3W_ix_i, \qquad \boxed{w=\frac12\sum_{i=1}^3W_ix_i}. 制約平面上の最小点は,この ww を平面 aTx=ba^Tx=b へ直交射影した点であり, (I−aaTaTa)w+abaTa \left(I-\frac{aa^T}{a^Ta}\right)w+\frac{ab}{a^Ta} と表される。

最終答

rank⁡A=3⟺n4∉n1+span⁡{n2−n1,n3−n1}. \operatorname{rank}A=3 \Longleftrightarrow n_4\notin n_1+\operatorname{span}\{n_2-n_1,n_3-n_1\}. u=(d1−d2, d2−d3, d3−d4)T,v=∑i=14dini. u=(d_1-d_2,\ d_2-d_3,\ d_3-d_4)^T,\qquad v=\sum_{i=1}^4d_in_i. B は正定値対称,Wi=I−niniT,w=12∑i=13Wixi. B\text{ は正定値対称},\qquad W_i=I-n_in_i^T,\qquad w=\frac12\sum_{i=1}^3W_ix_i.

第2問 — ガンマ関数と対数分散

ガンマ関数として見る

f(s)f(s) はガンマ関数 Γ(s)\Gamma(s) である。特に f(1)=Γ(1)=1f(1)=\Gamma(1)=1 であり,ss に関する微分は ts−1t^{s-1} から log⁡t\log t を引き出す操作になる。

不等式の役割

et>tn/n!e^t>t^n/n! は,尾部積分を多項式で上から評価するために使う。n>sn>s という条件は ∫1cts−1−n dt \int_1^c t^{s-1-n}\,dt を n−sn-s で表すために必要である。

最後は分散の変数変換

p(r)p(r) はレイリー分布である。u=r2/(2α)u=r^2/(2\alpha) と置くと指数分布へ変わり,log⁡r\log r は log⁡u\log u の半分に定数を足したものになる。このため α\alpha に依存しない値が出る。

ガンマ関数と対数分散の途中式・最終答をPDFで見る

第3問 — 停止時刻付きの格子上ランダムウォーク

停止までの回数を見る

この過程では,停止するまで右・上の移動だけが続く。したがって停止位置 (X,Y)(X,Y) は,停止前に右を何回,上を何回選んだかというカウントそのものである。共同分布は二項係数つきの負の多項分布になる。

幾何分布としての XX

X=0X=0 は「右が出る前に停止する」確率である。上への移動は何回挟まっても構わないため,qq の等比級数になる。以後,右への移動を1回数えるたびに同じ状況が再開するので,XX は幾何分布になる。

相関が正になる理由

XX と YY は一見競合するが,停止が遅いほど右にも上にも多く進むため,無条件では正の相関をもつ。計算上も Cov⁡(X,Y)=pq/r2>0\operatorname{Cov}(X,Y)=pq/r^2>0 となる。

停止時刻付きの格子上ランダムウォークの途中式・最終答をPDFで見る

東大 一般教育科目(数学) 院試 過去問の収録3年度

  • 2026年度(全3問)

    実対称行列と極分解 / 常微分方程式 / 単純ランダムウォークと指数評価

  • 2025年度(全3問)

    直線の係数ベクトルと鏡映 / 周期係数の微分方程式 / 連続する表の出現確率

  • 2024年度(このページ・全3問)

    空間ベクトルと最小二乗 / ガンマ関数と対数分散 / 停止時刻付きの格子上ランダムウォーク