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東京大学 院試 過去問 解答例

東大 工学系研究科 機械工学専攻 機械工学 専門科目 2024年度 院試 過去問 解答例・解説(全5問)

全5問。テーマタグは6件(伝達関数・はりの曲げ・固有振動数と振動系)。

最終更新:

収録6年度分の解答PDF:東京大学 工学系研究科 機械工学専攻 機械工学 専門科目(¥3,200・紙面見本あり)

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解説5問と大問1問の途中式・最終答(全5問)
解答PDFに収録
途中式と最終答(最終答つき5問)
問題本文
非収録

東大 機械工学 専門科目 2024年度 院試 過去問の出題内容(全5問)

大問主題解説の小見出し最終答
第1問熱機関サイクルと非定常熱伝導—あり
第2問風車モデルと傾斜液膜流—あり
第3問応力変換と自重を受ける丸棒—あり
第4問強制振動とPID調整—あり
第5問送りねじの設計・加工と効率—あり

この年度の解説には検算5件・試験で書くべきポイント5件・典型ミス5件が付いています。

2024年度の出題テーマと、同じテーマを出した他大学・他年度

この年度は3問に6テーマが出ています。

前年度(2023年度)との違い

大問数
2023年度 5問 → 2024年度 5問
2023年度のページを見る

第1問 — 熱機関サイクルと非定常熱伝導

方針

前半はブレイトンサイクルと同じ構造であり,熱効率は「定圧過程で出入りする熱量」だけから書ける。 断熱過程では熱の出入りがないので,仕事を個別に計算する必要はない。 後半はフーリエの法則で微小区間のエネルギー収支を作り,境界条件に合う固有関数を使う。

検算

圧力比 p1/p0p_1/p_0 が大きくなると (p0/p1)(κ−1)/κ(p_0/p_1)^{(\kappa-1)/\kappa} は小さくなり,効率は大きくなる。 これは圧縮比を上げると理想サイクル効率が上がるという物理的な傾向と一致する。 熱伝導解は x=0,Lx=0,L で常に TLT_L となり,t→∞t\to\infty で全体が TLT_L に近づくため,境界条件と終状態の検算も通っている。

典型ミス

可逆断熱関係の指数を (κ−1)/κ(\kappa-1)/\kappa ではなく κ/(κ−1)\kappa/(\kappa-1) としてしまうミスが多い。 また熱伝導の放熱エントロピー項は「外へ出る熱量」を正に取ると,媒体側のエントロピー寄与は負になる。 符号を明示せずに正の値だけを書くと,最後の大小関係を誤る。

試験で書くべきポイント

効率式では QinQ_{\mathrm{in}} と QoutQ_{\mathrm{out}} のどちらを正量として扱っているかを先に書く。 熱伝導では,微小区間への正味流入熱量を qx(x)−qx(x+δx)q_x(x)-q_x(x+\delta x) と置いた一行が偏微分方程式導出の採点点になる。

解答

I. 定圧・可逆断熱サイクル

状態 a→ba\to b は高圧側の定圧加熱,b→cb\to c は可逆断熱膨張, c→dc\to d は低圧側の定圧放熱,d→ad\to a は可逆断熱圧縮である。 理想気体で定圧比熱 cpc_p が一定なので,外部から受け取る熱量と外部へ捨てる熱量は Qin=cp(Tb−Ta),Qout=cp(Tc−Td) Q_{\mathrm{in}}=c_p(T_b-T_a),\qquad Q_{\mathrm{out}}=c_p(T_c-T_d) である。したがって熱効率は η=1−QoutQin=1−Tc−TdTb−Ta \eta =1-\frac{Q_{\mathrm{out}}}{Q_{\mathrm{in}}} =1-\frac{T_c-T_d}{T_b-T_a} となる。

可逆断熱過程では Tp(1−κ)/κ=const. T p^{(1-\kappa)/\kappa}=\text{const.} が成り立つ。よって TcTb=(p0p1)(κ−1)/κ,TdTa=(p0p1)(κ−1)/κ. \frac{T_c}{T_b} =\left(\frac{p_0}{p_1}\right)^{(\kappa-1)/\kappa}, \qquad \frac{T_d}{T_a} =\left(\frac{p_0}{p_1}\right)^{(\kappa-1)/\kappa}. これを上の効率式に代入すると Tc−Td=(p0p1)(κ−1)/κ(Tb−Ta) T_c-T_d =\left(\frac{p_0}{p_1}\right)^{(\kappa-1)/\kappa}(T_b-T_a) であるから, η=1−(p0p1)(κ−1)/κ \eta =1-\left(\frac{p_0}{p_1}\right)^{(\kappa-1)/\kappa} を得る。

温度は定圧加熱で上がり,可逆断熱膨張で下がり,定圧放熱でさらに下がる。 したがって最高温度は状態 bb,最低温度は状態 dd である。TT--ss 線図では b→cb\to c と d→ad\to a が鉛直な等エントロピー線,a→ba\to b が上側へ向かう定圧加熱曲線, c→dc\to d が下側へ戻る定圧放熱曲線になる。

同じ最高温度 TbT_b と最低温度 TdT_d の間で動作するカルノーサイクルの効率は ηc=1−TdTb \eta_c=1-\frac{T_d}{T_b} である。一方,本サイクルでは η=1−r,r=(p0p1)(κ−1)/κ. \eta=1-r,\qquad r=\left(\frac{p_0}{p_1}\right)^{(\kappa-1)/\kappa}. また Td=rTaT_d=rT_a であり,定圧加熱により Tb>TaT_b>T_a だから TdTb=rTaTb<r. \frac{T_d}{T_b}=r\frac{T_a}{T_b}<r. よって ηc=1−TdTb>1−r=η \eta_c=1-\frac{T_d}{T_b}>1-r=\eta となり,カルノーサイクルの効率の方が高い。

II. 一次元非定常熱伝導

断面積は 11 とする。フーリエの法則より,xx 方向の熱流束は qx=−λ∂T∂x q_x=-\lambda\frac{\partial T}{\partial x} である。微小区間 [x,x+δx][x,x+\delta x] に微小時間 δt\delta t の間に流入する正味熱量は δQcond={qx(x)−qx(x+δx)}δt=λ∂2T∂x2δx δt \delta Q_{\mathrm{cond}} =\{q_x(x)-q_x(x+\delta x)\}\delta t =\lambda\frac{\partial^2 T}{\partial x^2}\delta x\,\delta t である。一方,同じ微小部分の温度を δT\delta T だけ上昇させるのに必要な熱量は δQstore=ρc δx δT=ρc δx ∂T∂tδt \delta Q_{\mathrm{store}} =\rho c\,\delta x\,\delta T =\rho c\,\delta x\,\frac{\partial T}{\partial t}\delta t である。両者を等置して ρc∂T∂t=λ∂2T∂x2 \rho c\frac{\partial T}{\partial t} =\lambda\frac{\partial^2T}{\partial x^2} を得る。

境界温度 TLT_L からの差を θ(t,x)=T(t,x)−TL\theta(t,x)=T(t,x)-T_L とおくと, ∂θ∂t=λρc∂2θ∂x2,θ(t,0)=θ(t,L)=0. \frac{\partial \theta}{\partial t} =\frac{\lambda}{\rho c}\frac{\partial^2\theta}{\partial x^2}, \qquad \theta(t,0)=\theta(t,L)=0. 初期分布は単一の正弦波 θ(0,x)=(TH−TL)sin⁡πxL \theta(0,x)=(T_H-T_L)\sin\frac{\pi x}{L} なので,同じ固有関数だけが残る。τ=ρcL2/λ\tau=\rho cL^2/\lambda を用いれば T(t,x)=TL+(TH−TL)exp⁡ ⁣(−π2tτ)sin⁡πxL T(t,x) =T_L+(T_H-T_L) \exp\!\left(-\frac{\pi^2t}{\tau}\right) \sin\frac{\pi x}{L} である。

両端から外部へ出ていく放熱量の和は Q˙out=2λπL(TH−TL)exp⁡ ⁣(−π2tτ) \dot Q_{\mathrm{out}} = 2\lambda\frac{\pi}{L}(T_H-T_L) \exp\!\left(-\frac{\pi^2t}{\tau}\right) である。境界温度はどちらも TLT_L だから,媒体のエントロピー変化率のうち放熱による寄与は S˙heat=−Q˙outTL=−2πλ(TH−TL)LTLexp⁡ ⁣(−π2tτ). \dot S_{\mathrm{heat}} =-\frac{\dot Q_{\mathrm{out}}}{T_L} = -\frac{2\pi\lambda(T_H-T_L)}{LT_L} \exp\!\left(-\frac{\pi^2t}{\tau}\right). 内部の不可逆熱伝導によるエントロピー生成は正であるため, S˙heat<S˙medium<0 \dot S_{\mathrm{heat}}<\dot S_{\mathrm{medium}}<0 である。

最終答

η=1−Tc−TdTb−Ta=1−(p0p1)(κ−1)/κ,Tmax⁡:b,Tmin⁡:d. \eta =1-\frac{T_c-T_d}{T_b-T_a} =1-\left(\frac{p_0}{p_1}\right)^{(\kappa-1)/\kappa}, \quad T_{\max}:b,\quad T_{\min}:d. T(t,x)=TL+(TH−TL)e−π2t/τsin⁡πxL,S˙heat=−2πλ(TH−TL)LTLe−π2t/τ. T(t,x)=T_L+(T_H-T_L)e^{-\pi^2t/\tau}\sin\frac{\pi x}{L}, \qquad \dot S_{\mathrm{heat}} =-\frac{2\pi\lambda(T_H-T_L)}{LT_L}e^{-\pi^2t/\tau}. 大小関係は S˙heat<S˙medium<0\dot S_{\mathrm{heat}}<\dot S_{\mathrm{medium}}<0。

第2問 — 風車モデルと傾斜液膜流

方針

風車の問題はアクチュエータディスクの標準形である。 力は運動量保存,仕事率は運動エネルギー保存,ディスク面速度は W˙=FUT\dot W=FU_T から決まる。 液膜流では,速度分布を完全に求めなくても,連続の式,法線方向の静水圧分布,検査体積の力のつり合いだけで設問に答えられる。

検算

U1=U0U_1=U_0 なら風車は流れからエネルギーを取り出さないので η=0\eta=0 になる。 U1→0U_1\to0 でも η→1/2\eta\to1/2 にとどまり,最大が中間の U1/U0=1/3U_1/U_0=1/3 に出ることは自然である。 液膜の圧力は自由表面で p0p_0,壁面に近づくほど大きくなるので,p=p0+ρgcos⁡θ(δ−y)p=p_0+\rho g\cos\theta(\delta-y) の符号は正しい。

典型ミス

風車の力を ρATUT(U0−U1)\rho A_TU_T(U_0-U_1) と書くこと自体は連続の式で同値だが,設問が指定する変数である ρ,A0,U0,U1\rho,A_0,U_0,U_1 に整理する必要がある。 また,液膜の摩擦係数では分母を ρU0\rho U_0 としてしまうと次元が合わない。 動圧型の量にするには必ず U02U_0^2 が必要である。

試験で書くべきポイント

運動量保存では「圧力項が大気圧で相殺される」ことを一言書く。 液膜では「十分発達なので入口・出口の運動量流束が等しい」と書いてから壁面せん断を出すと,検査体積法の導出として明確になる。

風車モデルと傾斜液膜流の途中式・最終答をPDFで見る

第3問 — 応力変換と自重を受ける丸棒

方針

溶接線の問題は,任意面の応力ベクトル t(n)=σn\boldsymbol{t}^{(n)}=\boldsymbol{\sigma}\boldsymbol{n} を使うのが最短である。 ひずみゲージは応力変換ではなく,まずひずみ変換で γxy\gamma_{xy} を求めてからフックの法則に戻す。 丸棒は自重を分布荷重として扱い,反力,曲げモーメント,軸力を順に求める。

検算

初めの応力状態では xx 方向引張と yy 方向圧縮が同時に作用するため,30∘30^\circ の面の垂直応力が小さな圧縮になる。 丸棒の曲げモーメントは x0=0x_0=0 と x0=Lx_0=L で 00 になる式になっており,端部条件と整合する。

典型ミス

溶接線の内力を求めるとき,線の長さ 60 mm60\,{\mathrm{mm}} と板厚 1 mm1\,{\mathrm{mm}} を掛け忘れやすい。 また,ゲージ cc の式では工学せん断ひずみ γxy\gamma_{xy} を用いるため, γxysin⁡θcos⁡θ\gamma_{xy}\sin\theta\cos\theta と書く形になる。 丸棒の最大垂直応力では曲げ応力だけでなく,自重と反力による軸圧縮応力を足し合わせる必要がある。

試験で書くべきポイント

内力ベクトルは法線の向きで符号が反転するので,採点者が追えるように自分の法線を明記する。 曲げ問題では,どちらの部分を自由物体として切り出したかを図なしでもわかるように書くと符号の減点を避けられる。

応力変換と自重を受ける丸棒の途中式・最終答をPDFで見る

第4問 — 強制振動とPID調整

方針

強制振動は複素振幅法を使うと,変位振幅と力伝達率を一つの代数計算で求められる。 PID調整では,まず P 制御で安定限界となる周波数を位相条件から求め,その周波数でゲイン条件をかける。

検算

力伝達率は ω=0\omega=0 で 11 になる。低周波ではばね力が外力をそのまま机に伝えるため妥当である。 G(s)=1/(2s+1)4G(s)=1/(2s+1)^4 は同じ一次遅れが4個直列なので,位相が −180∘-180^\circ になるのは各要素が −45∘-45^\circ になる ω=1/2\omega=1/2 である。

典型ミス

式(2-1)の右辺は F/mF/m であり,外力振幅 AA をそのまま右辺振幅に置くと変位振幅に mm が抜ける。 また,Ziegler--Nichols の表では P 制御器のゲインは限界感度そのものではなく 0.5Ku0.5K_u である。 この問題では Kp=2K_p=2 を使うため,定常偏差は 1/(1+4)1/(1+4) ではなく 1/(1+2)1/(1+2) になる。

試験で書くべきポイント

Bode 線図の折れ線近似は文章だけでなく,折点 ω=1/2\omega=1/2 と傾き −20 dB/dec-20\,{\mathrm{dB/dec}} を明記すれば十分に採点可能である。 PIDの定常偏差では,積分動作により直流ゲインが無限大になることを最終値定理と結び付けて書く。

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第5問 — 送りねじの設計・加工と効率

方針

前半は機械要素の設計上のトラブルを,すきま,同期,製造法の観点で簡潔に答える問題である。 後半は「1回転あたりの仕事」で効率を定義し,リード角と摩擦角だけの関数にして最大化する。

検算

摩擦がない極限 ρ→0\rho\to0 では η=tan⁡βtan⁡β=1 \eta=\frac{\tan\beta}{\tan\beta}=1 となる。最大効率の式も ηmax⁡→(1−0)2=1 \eta_{\max}\to(1-0)^2=1 であり,物理的に正しい。 また ρ\rho が大きくなるほど 1+tan⁡2ρ−tan⁡ρ\sqrt{1+\tan^2\rho}-\tan\rho は小さくなるため,最大効率も低下する。

典型ミス

2πT2\pi T を力と解釈したり,mgLmgL を出力パワーと解釈したりすると効率の意味が崩れる。 どちらも「1回転あたりの仕事」である。 また最大化では tan⁡(β+ρ)\tan(\beta+\rho) を展開せずに微分すると計算が重くなる。 x=tan⁡βx=\tan\beta と置くと二次方程式で終わる。

試験で書くべきポイント

記述問題では「大きい場合」「小さい場合」を対で書き分け,現象と理由を一文にまとめる。 効率最大化では,最適な β\beta だけでなく,設問の指定どおり ρ\rho または tan⁡ρ\tan\rho の関数として整理した最終形を示す。

送りねじの設計・加工と効率の途中式・最終答をPDFで見る

東大 機械工学 専門科目 院試 過去問の収録6年度

  • 2026年度(全5問)

    逆ブレイトン冷凍サイクルと発熱平板 / 非定常粘性拡散 / 熱膨張拘束はり

  • 2025年度(全5問)

    熱力学・熱伝導 / 流体力学 / 材料力学

  • 2024年度(このページ・全5問)

    熱機関サイクルと非定常熱伝導 / 風車モデルと傾斜液膜流 / 応力変換と自重を受ける丸棒

  • 2023年度(全5問)

    熱力学と相変化熱伝導 / 音速と圧縮性流れの相似 / はりの応力と平面トラス

  • 2022年度(全5問)

    熱ポンプサイクルと放射体温計 / 運動量法則と細管内の粘性流れ / はりの曲げと薄肉円筒容器

  • 2021年度(全10問)

    断熱タンクへの充填 / 分子運動論による熱伝導 / 二次元粘性流の減衰