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東京大学 院試 過去問 解答例

東大 工学系研究科 機械工学専攻 機械工学 専門科目 2022年度 院試 過去問 解答例・解説(全5問)

全5問。テーマタグは6件(はりの曲げ・固有振動数と振動系・固有値・固有ベクトル)。2021年度と共通のテーマははりの曲げ・固有振動数と振動系・剛体の回転運動。

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解説5問と大問1問の途中式・最終答(全5問)
解答PDFに収録
途中式と最終答(最終答つき5問)
問題本文
非収録

東大 機械工学 専門科目 2022年度 院試 過去問の出題内容(全5問)

大問主題解説の小見出し最終答
第1問熱ポンプサイクルと放射体温計—あり
第2問運動量法則と細管内の粘性流れ—あり
第3問はりの曲げと薄肉円筒容器—あり
第4問微小振動とフィードバック制御—あり
第5問力センサと空気圧シリンダ—あり

この年度の解説には検算5件・試験で書くべきポイント5件・典型ミス5件が付いています。

2022年度の出題テーマと、同じテーマを出した他大学・他年度

この年度は3問に6テーマが出ています。

前年度(2021年度)との違い

大問数
2021年度 10問 → 2022年度 5問
2022年度で新しく出たテーマ
固有値・固有ベクトル・伝達関数
2021年度のページを見る

第1問 — 熱ポンプサイクルと放射体温計

方針

第 I 部は,定積熱交換と断熱仕事を別々に追うより,1 サイクルの エネルギー収支 Win=Qh−QcW_{\mathrm{in}}=Q_h-Q_c を使う方が短い。第 II 部は 円筒熱伝導抵抗と外表面の熱伝達抵抗を直列に置けば,温度分布と表面温度が 同時に求まる。

検算

可逆断熱圧縮で T2→TlT_2\to T_l とすると圧縮比は 1 に近づき, ε=T2/(T2−Tl)\varepsilon=T_2/(T_2-T_l) は大きくなる。温度差が小さい熱ポンプほど 高効率という物理的な傾向と合う。円筒モデルでは h→0h\to0 で Ts→TcT_s\to T_c,h→∞h\to\infty で Ts→T∞T_s\to T_\infty となり,境界条件の 極限と一致する。

典型ミス

TT-ss 線図で定積線を直線にしてしまうミスが多い。式 s−s0=cvln⁡(T/T0)s-s_0=c_v\ln(T/T_0) を添え,定積線上で冷却すればエントロピーが 減ることを書くと減点されにくい。また放射熱量の計算では摂氏温度をそのまま 4 乗してはいけない。必ず K に直す。

試験で書くべきポイント

熱ポンプでは「どの熱量を正に取るか」を最初に明示する。放射体温計では, 測っているのは体表面からの赤外放射であり,体温との関係は熱伝導・対流・放射の つり合いに依存する,という一文を最後に入れると説明問題として締まる。

熱ポンプサイクルと放射体温計の途中式・最終答をPDFで見る

第2問 — 運動量法則と細管内の粘性流れ

方針

前半は水平方向の運動量保存を使う典型問題である。自由表面に大気圧が 作用しているため,絶対圧で全境界を扱うと p0p_0 は打ち消し合う。 実際の計算ではゲージ圧で静水圧合力を書くのが最も安全である。

検算

Fr1=1Fr_1=1 のとき H2/H1=−1+92=1 H_2/H_1=\frac{-1+\sqrt{9}}{2}=1 となり,水深は変わらない。Fr1>1Fr_1>1 で H2>H1H_2>H_1 となるので, 射流から常流への跳水と同じ判定になっている。

典型ミス

運動量流束を ρHV\rho HV としてしまうと次元が質量流量になる。 運動量流束は ρHV2\rho HV^2 である。また細管問題では,放物速度分布を 仮定しているのでポアズイユ係数 3232 を用いる。平板クエット流の式を 混ぜると係数が合わない。

試験で書くべきポイント

液柱の先端では,圧力差と表面張力の水平成分のつり合いを書くことが重要である。 濡れ性がよい cos⁡θ>0\cos\theta>0 の場合に PF<p0P_F<p_0 となることを確認しておくと, 符号ミスを発見しやすい。

解答

I. 自由表面をもつ二次元流れ

紙面垂直方向の幅を 1 とし,流入側の水深と流速を H1,V1H_1,V_1, 流出側の水深と流速を H2,V2H_2,V_2 とする。連続の式は H1V1=H2V2=q H_1V_1=H_2V_2=q である。大気圧の寄与は閉じた検査体積全体で打ち消し合うので,水平方向の 運動量式にはゲージ圧だけを入れればよい。

  1. 流入面に作用する圧力の合力は F1=p0H1+∫0H1ρg(H1−y) dy=p0H1+12ρgH12. F_1=p_0H_1+\int_0^{H_1}\rho g(H_1-y)\,dy =\boxed{p_0H_1+\frac{1}{2}\rho gH_1^2}. ゲージ圧だけなら ρgH12/2\rho gH_1^2/2 である。
  2. 流出運動量流束は Mout=ρH2V22=ρH12H2V12. M_{\mathrm{out}}=\rho H_2V_2^2 =\boxed{\rho\frac{H_1^2}{H_2}V_1^2}.
  3. 水平方向の運動量法則より ρH2V22−ρH1V12=12ρgH12−12ρgH22. \rho H_2V_2^2-\rho H_1V_1^2 =\frac{1}{2}\rho gH_1^2-\frac{1}{2}\rho gH_2^2 . ここで左辺は運動量の流出から流入を引いた量である。したがって ρH1V12(H1H2−1)=12ρg(H12−H22). \rho H_1V_1^2\left(\frac{H_1}{H_2}-1\right) =\frac{1}{2}\rho g(H_1^2-H_2^2).
  4. 上式を y=H2/H1y=H_2/H_1 で整理すると V12gH1=y(1+y)2. \frac{V_1^2}{gH_1}=\frac{y(1+y)}{2}. よって H2H1=−1+1+8V12/(gH1)2. \boxed{\frac{H_2}{H_1} =\frac{-1+\sqrt{1+8V_1^2/(gH_1)}}{2}} .
  5. 無次元数は流入側フルード数 Fr1=V1gH1 \boxed{Fr_1=\frac{V_1}{\sqrt{gH_1}}} である。H2>H1H_2>H_1 となる条件は H2/H1>1H_2/H_1>1 であるから, Fr1>1 \boxed{Fr_1>1} である。

II. 細い円管への液体の進入

管径を DD,液柱部長さを L(t)L(t),先端の移動速度を U=dL/dtU=dL/dt,粘度を μ\mu とする。液柱部の流れは十分発達した ハーゲン--ポアズイユ流れで,断面平均速度が UU である。

  1. 圧力差を ΔP=Pv−PF\Delta P=P_v-P_F,初期長さを L0L_0 とすると Q=πD4128μL0ΔP,U0=QπD2/4. Q=\frac{\pi D^4}{128\mu L_0}\Delta P,\qquad U_0=\frac{Q}{\pi D^2/4}. したがって U0=D2ΔP32μL0. \boxed{U_0=\frac{D^2\Delta P}{32\mu L_0}} .
  2. 任意時刻で同じ近似が成り立つなら dLdt=D2ΔP32μL. \boxed{\frac{dL}{dt}=\frac{D^2\Delta P}{32\mu L}} .
  3. 上式に L dL/dt=D2ΔP/(32μ)L\,dL/dt=D^2\Delta P/(32\mu) を掛けて積分すると 12{L(t)2−L02}=D2ΔP32μt. \frac{1}{2}\{L(t)^2-L_0^2\} =\frac{D^2\Delta P}{32\mu}t . よって L(t)=(L02+D2ΔP16μt)1/2. \boxed{L(t)= \left(L_0^2+\frac{D^2\Delta P}{16\mu}t\right)^{1/2}} .
  4. 液柱部の運動エネルギー変化を無視すれば,単位時間当たりの 粘性散逸は圧力仕事率に等しい。 Φ=ΔP Q=ΔPπD24U0 \boxed{\Phi=\Delta P\,Q =\Delta P\frac{\pi D^2}{4}U_0} である。U0U_0 を消去すると Φ=πD4ΔP2128μL0. \Phi=\frac{\pi D^4\Delta P^2}{128\mu L_0}.
  5. 先端部の運動量変化と摩擦を無視し,表面張力の水平成分だけで つり合いを取る。濡れ角を θ\theta,表面張力を σ\sigma とすると, 接触線全体の水平成分は πDσcos⁡θ\pi D\sigma\cos\theta であり,圧力差は 断面積 πD2/4\pi D^2/4 に作用する。したがって (p0−PF)πD24=πDσcos⁡θ, (p_0-P_F)\frac{\pi D^2}{4}=\pi D\sigma\cos\theta, すなわち PF=p0−4σcos⁡θD. \boxed{P_F=p_0-\frac{4\sigma\cos\theta}{D}} .

最終答

自由表面流れでは H2/H1=(−1+1+8Fr12)/2\displaystyle H_2/H_1=(-1+\sqrt{1+8Fr_1^2})/2, Fr1=V1/gH1Fr_1=V_1/\sqrt{gH_1},液面上昇条件は Fr1>1Fr_1>1。 細管流れでは dL/dt=D2ΔP/(32μL)\displaystyle dL/dt=D^2\Delta P/(32\mu L), L(t)={L02+D2ΔPt/(16μ)}1/2\displaystyle L(t)=\{L_0^2+D^2\Delta Pt/(16\mu)\}^{1/2}, PF=p0−4σcos⁡θ/D\displaystyle P_F=p_0-4\sigma\cos\theta/D。

第3問 — はりの曲げと薄肉円筒容器

方針

はりの問題では,上側はりと下側はりを分けて考える。上側はりの支点反力が 下側はりへの荷重になり,点 D の変位は「下側はりの支点沈下」と 「上側はりの相対たわみ」の和になる。

検算

下側はり AB の曲げモーメントは l<x<3ll<x<3l で一定である。この区間を 三角形に描いてしまうと,支点 C, E に集中荷重があるという力学状態と 矛盾する。薄肉円筒では σθ=2σz\sigma_\theta=2\sigma_z となるので,き裂開口には 周方向応力を使うのが自然である。

典型ミス

点 D のたわみに下側はりの中央 x=2lx=2l のたわみを足してしまう誤りがある。 上側はりは C, E で支持されているため,足すべき沈下は C または E の沈下である。 また,き裂進展圧力の式では a\sqrt{a} が分母に入るため,き裂が深くなるほど 破壊圧力が下がる。

試験で書くべきポイント

SFD・BMD は図で描く指定だが,答案では反力,区間ごとのせん断力, 曲げモーメントの値を添えると読み取りの曖昧さが消える。破壊圧力のグラフでは 「水平な塑性崩壊線」と「右下がりのき裂進展線」の小さい方が実際の破壊圧力である, という説明を書く。

はりの曲げと薄肉円筒容器の途中式・最終答をPDFで見る

第4問 — 微小振動とフィードバック制御

方針

振り子は,重力によるモーメント係数とばねによるモーメント係数を 足して Iθ¨+Kθ=0I\ddot\theta+K\theta=0 に落とす。制御はブロック線図から 閉ループ分母を先に作れば,安定条件,減衰比,最終値が同じ分母から 順に読める。

検算

同期モードでばねが変形しないなら,1 次固有振動数に kk が現れない。 この性質は式にも反映されている。制御系では b>1b>1 がないと 閉ループ分母の定数項が負となり,もとの不安定なプラントを安定化できない。

典型ミス

上側質点 MM は復元ではなく倒立側のモーメントを与えるので, (mb+Mc)g(mb+Mc)g としてはいけない。ノイズ伝達関数では,ノイズが出力側ではなく プラント入力に入っているため,分子は P(s)P(s) であり,閉ループ伝達関数 GP/(1+GP)GP/(1+GP) ではない。

試験で書くべきポイント

固有モードは固有値だけでなく「同相」「逆相」を言葉で添える。 制御の最後の記述問題では,bb を大きくして定常偏差を下げるだけでなく, aa によって減衰を確保しノイズピークを抑える,という両立条件まで書く。

微小振動とフィードバック制御の途中式・最終答をPDFで見る

第5問 — 力センサと空気圧シリンダ

方針

力センサは,薄板の曲げ剛性をばね定数に置き換え,剛体先端部の質量と組み合わせて 1 自由度系として見る。空気圧シリンダは,圧力による有効受圧面積と, 薄い潤滑膜のせん断応力を別々に処理する。

検算

δz∝t−3\delta_z\propto t^{-3},εmax⁡∝t−2\varepsilon_{\max}\propto t^{-2} である。 薄板を少し厚くするだけで剛性が大きく上がるため,力センサの感度が大きく下がる という設計感覚と合う。潤滑膜では V∝c/μV\propto c/\mu なので,隙間が狭くなる効果と 粘度低下の効果が逆向きに効く。

典型ミス

シリンダ推力でロッド側にも全断面積 πD2/4\pi D^2/4 を使う誤りが多い。 ロッド側は環状面積 π(D2−d2)/4\pi(D^2-d^2)/4 である。熱膨張では直径差を計算してから 2 で割り,半径隙間に戻す必要がある。

試験で書くべきポイント

4 ゲージブリッジは「感度増大」と「温度補償」を理由付きで書く。 加工工程は唯一解ではないが,基準面,同軸加工,穴加工の順に整理して書くと, 実現可能な工程として評価されやすい。

力センサと空気圧シリンダの途中式・最終答をPDFで見る

東大 機械工学 専門科目 院試 過去問の収録6年度

  • 2026年度(全5問)

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  • 2024年度(全5問)

    熱機関サイクルと非定常熱伝導 / 風車モデルと傾斜液膜流 / 応力変換と自重を受ける丸棒

  • 2023年度(全5問)

    熱力学と相変化熱伝導 / 音速と圧縮性流れの相似 / はりの応力と平面トラス

  • 2022年度(このページ・全5問)

    熱ポンプサイクルと放射体温計 / 運動量法則と細管内の粘性流れ / はりの曲げと薄肉円筒容器

  • 2021年度(全10問)

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