東京大学 院試 過去問 解答例
東大 工学系研究科 機械工学専攻 機械工学 専門科目 2021年度 院試 解答例・解説
東京大学 工学系研究科 機械工学専攻 機械工学 専門科目 2021年度の院試 過去問について、設問ごとの解法方針・部分点の置き所を解説。全10問収録の解答・解説PDFと併用できます。問題本文は含みません。
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第1問 — 断熱タンクへの充填
方針
非定常の開いた系なので、タンクを検査体積にとるのが最短である。タンクは剛体かつ断熱で、軸仕事もないため、エネルギー収支は「内部エネルギーの増加 = 流入エンタルピー」だけになる。
検算
等エンタルピーの場合、 なら となる。等エントロピーの場合も同じ極限で であり、どちらの式も圧力差がないとき流入質量を生じない。
典型ミス
最終状態の質量を最初から と置くと誤りである。タンク内の最終温度は一般に ではない。また、等エントロピー流入では流入気体の温度がタンク圧力の上昇に応じて変わるため、微分形で積分する必要がある。
第2問 — 分子運動論による熱伝導
方針
平面を通過する分子数は、単なる半数ではなく速度成分 で重みづける。速い分子ほど同じ時間に遠くから平面へ到達するためである。
重要な解釈
は気体分子運動論の基本結果である。一方、通過分子が運ぶ平均エネルギーは通常の平均並進エネルギー ではなく になる。これは が大きい分子ほど平面通過に多く寄与するためである。
試験で書くべき点
最後の熱伝導率では、左右の面の温度を と置き、1次までテイラー展開する。この符号を明示すると、熱が高温側から低温側へ流れることも同時に説明できる。
第3問 — 二次元粘性流の減衰
方針
これはテイラー--グリーン渦型の速度場である。連続の式から を決め、粘性応力で検査体積の運動量が減ることを使えば、振幅の指数減衰まで一気に出せる。
検算
ナビエ--ストークス方程式の粘性項だけを見ると、 である。したがって からも の減衰率は と分かる。
典型ミス
渦度の符号は流れ関数の定義に依存する。ここでは を採用しているので、 と合わせて符号をそろえることが重要である。
第4問 — ランキン渦
方針
ランキン渦は、内側が剛体回転、外側が自由渦である。圧力は遠心力との半径方向つり合いから、エネルギーと散逸は円筒座標の面積要素 を使って求める。
境界での仕事の符号
自由渦側のせん断応力は負であるため、粘性コアは仕事を失い、自由渦領域は同じ大きさの仕事を受ける。その受け取った仕事が自由渦領域内で粘性散逸する、と見ると符号を間違えにくい。
検算
一定なら である。時間とともにコア半径が広がると散逸率は で小さくなるため、 が時間に比例して増える結果は物理的にも自然である。
第5問 — 段付き棒と並列棒
方針
段付き棒は断面積が異なる直列ばねであり、図5-3の系は段付き棒と棒2の並列ばねである。この直列・並列の見分けができれば計算は短い。
ひずみゲージの注意
中央部は一軸応力状態だが、横ひずみ は存在する。45度ゲージではこの横ひずみも半分だけ入るため、 が付く。
温度上昇の考え方
加熱された段付き棒の自由膨張量は である。剛体がその全量だけ動けるわけではなく、並列の棒2が抵抗するため、剛性比 だけが実際の変位になる。
第6問 — 組合せはりの曲げ
方針
組合せはりでは、ひずみ分布は材料によらず直線である。一方、応力は なので材料ごとに傾きが変わる。これを分けて書くのが重要である。
中立面の位置
二層はりでは下側の材料のヤング率が大きいため、中立面は接合面より下側に移る。計算結果 はこの物理的な見通しと一致する。
典型ミス
断面の図心と中立面を混同しないこと。均質はりなら一致するが、異材の組合せはりでは、軸力ゼロ条件 から中立面を求める。
第7問 — 剛体棒の回転振動
方針
小振動では、回転中心から距離 のばね取付点の鉛直変位は である。したがって、そのばねが作る回転剛性は になる。
軸受をずらした場合
軸受を重心からずらすと、復元剛性だけでなく慣性モーメントも に変わる。固有振動数の増減はこの2つの効果の競争で決まり、単純に「ばね腕が長くなるから増える」とは限らない。
試験で書くべき点
減衰の設問では、臨界減衰と過減衰の違いを言葉だけでなく、過渡応答の形として示すと答案が明確になる。どちらも振動しないが、臨界減衰は最速、過減衰は遅い戻りである。
第8問 — 一自由度マニピュレータ
方針
重力を無視するので、非線形項は現れない。端まわり慣性 を正しく置けば、以後は標準的な2次系とPID閉ループの問題である。
可制御・可観測
入力トルクは角加速度に直接入るため可制御である。また出力が角度で、状態に角速度も含めているため、角度の時間変化から角速度を観測できる。この直感は行列の階数計算と一致する。
典型ミス
PIDの微分項では、目標角が定数なので である。したがって微分ゲインは有効減衰を に増やす形で現れる。
第9問 — 平ベルト伝動とプーリ加工
方針
前半は機械要素としての平ベルトの特徴、後半は加工順序の問題である。設計では「滑りは欠点にも保護機能にもなる」と整理すると答えやすい。
加工順序の要点
プーリでは軸穴とベルト接触外周の同軸度が重要である。したがって、軸穴を基準化し、外周と端面をできるだけ同一段取りで仕上げるのが合理的である。段取り替え後は内径基準で保持し、基準の取り直しによる偏心を抑える。
典型ミス
表面処理名だけを書くと説明不足になりやすい。高周波焼入れなら「表面加熱と急冷」、浸炭焼入れなら「炭素拡散と焼入れ」という硬化メカニズムまで短く添える。
第10問 — ベルト摩擦の推定
方針
ベルト摩擦はキャプスタンの式である。微小要素の半径方向つり合いから 、接線方向つり合いから を作り、積分する。
張力比の注意
式に入れるのは常に「大きい張力/小さい張力」である。回転方向やロードセルの取付側によって が大きい側か小さい側か変わるため、符号ではなく張力比で考えるとミスを避けられる。
実験上のポイント
静止摩擦係数を推定するには、完全に滑った後ではなく、滑り始め直前の張力比を読む。滑走中の値を使うと動摩擦係数に近い値になり、推定目的とずれる。