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東京大学 院試 過去問 解答例

東大 工学系研究科 機械工学専攻 機械工学 専門科目 2021年度 院試 過去問 解答例・解説(全10問)

全10問。力学1問。テーマタグは8件(線形空間・基底・剛体の回転運動・はりの曲げ)。

最終更新:

収録6年度分の解答PDF:東京大学 工学系研究科 機械工学専攻 機械工学 専門科目(¥3,200・紙面見本あり)

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解説10問と大問1問の途中式・最終答(全10問)
解答PDFに収録
途中式と最終答(最終答つき10問)
問題本文
非収録

東大 機械工学 専門科目 2021年度 院試 過去問の出題内容(全10問)

この10問の分野は力学1問です。

大問分野主題解説の小見出し最終答
第1問—断熱タンクへの充填—あり
第2問—分子運動論による熱伝導重要な解釈 / 試験で書くべき点あり
第3問—二次元粘性流の減衰—あり
第4問—ランキン渦境界での仕事の符号あり
第5問—段付き棒と並列棒ひずみゲージの注意 / 温度上昇の考え方あり
第6問—組合せはりの曲げ中立面の位置あり
第7問力学剛体棒の回転振動軸受をずらした場合 / 試験で書くべき点あり
第8問—一自由度マニピュレータ可制御・可観測あり
第9問—平ベルト伝動とプーリ加工加工順序の要点あり
第10問—ベルト摩擦の推定張力比の注意 / 実験上のポイントあり

この年度の解説には典型ミス5件・検算3件が付いています。

2021年度の出題テーマと、同じテーマを出した他大学・他年度

この年度は4問に8テーマが出ています。

第1問 — 断熱タンクへの充填

方針

非定常の開いた系なので、タンクを検査体積にとるのが最短である。タンクは剛体かつ断熱で、軸仕事もないため、エネルギー収支は「内部エネルギーの増加 = 流入エンタルピー」だけになる。

検算

等エンタルピーの場合、p1→p0p_1\to p_0 なら min→0m_{\mathrm{in}}\to0 となる。等エントロピーの場合も同じ極限で min→0m_{\mathrm{in}}\to0 であり、どちらの式も圧力差がないとき流入質量を生じない。

典型ミス

最終状態の質量を最初から p0V/(RT0)p_0V/(RT_0) と置くと誤りである。タンク内の最終温度は一般に T0T_0 ではない。また、等エントロピー流入では流入気体の温度がタンク圧力の上昇に応じて変わるため、微分形で積分する必要がある。

解答

タンク容積を VV と書く。初期状態を (p1,T1)(p_1,T_1)、周囲を (p0,T0)(p_0,T_0) とする。理想気体で cv=Rκ−1,cp=κRκ−1 c_v=\frac{R}{\kappa-1},\qquad c_p=\frac{\kappa R}{\kappa-1} である。

  1. エントロピー増加を伴う不可逆過程としては、バルブ内の有限圧力差による絞り、タンク内での流入気体と既存気体の混合が挙げられる。流入に伴う非定常流れの粘性散逸も同じ性質を持つ。
  2. 等エンタルピー変化では、理想気体のエンタルピーが温度だけの関数なので、バルブを出た気体のエンタルピーは h0=cpT0h_0=c_pT_0 である。タンクを検査体積にとると、剛体容器・断熱であるから U2−U1=minh0 U_2-U_1=m_{\mathrm{in}}h_0 である。ここで m1=p1VRT1,m2=p0VRT2,min=m2−m1. m_1=\frac{p_1V}{RT_1},\qquad m_2=\frac{p_0V}{RT_2},\qquad m_{\mathrm{in}}=m_2-m_1 . よって cv(m2T2−m1T1)=cpT0(m2−m1) c_v(m_2T_2-m_1T_1)=c_pT_0(m_2-m_1) となる。左辺は cvV(p0−p1)/Rc_vV(p_0-p_1)/R なので、 min=V(p0−p1)κRT0. m_{\mathrm{in}} =\frac{V(p_0-p_1)}{\kappa RT_0}. したがって最終温度は T2=p0VR(m1+min)=p0p1T1+p0−p1κT0. T_2 =\frac{p_0V}{R(m_1+m_{\mathrm{in}})} =\frac{p_0}{ \displaystyle \frac{p_1}{T_1} +\frac{p_0-p_1}{\kappa T_0}} .
  3. 発生熱量を T0SgenT_0S_{\mathrm{gen}} として評価する。タンクについてのエントロピー収支は Sgen=m2s2−m1s1−mins0 S_{\mathrm{gen}}=m_2s_2-m_1s_1-m_{\mathrm{in}}s_0 である。ただし s0=s(T0,p0)s_0=s(T_0,p_0)、si=s(Ti,pi)s_i=s(T_i,p_i) とし、 s(T,p)=cpln⁡T−Rln⁡p+const. s(T,p)=c_p\ln T-R\ln p+\text{const.} を用いる。したがって Qgen=T0[m2{cpln⁡T2−Rln⁡p0}−m1{cpln⁡T1−Rln⁡p1}−min{cpln⁡T0−Rln⁡p0}], Q_{\mathrm{gen}} =T_0\left[ m_2\{c_p\ln T_2-R\ln p_0\} -m_1\{c_p\ln T_1-R\ln p_1\} -m_{\mathrm{in}}\{c_p\ln T_0-R\ln p_0\} \right], ただし定数項は m2−m1−min=0m_2-m_1-m_{\mathrm{in}}=0 により相殺される。
  4. 等エントロピー変化では、瞬間的なタンク圧を pp とすると、流入直前の気体温度は Te=T0(pp0)(κ−1)/κ T_e=T_0\left(\frac{p}{p_0}\right)^{(\kappa-1)/\kappa} である。微小流入について cvVR dp=cpTe dm \frac{c_vV}{R}\,dp=c_pT_e\,dm だから、 dm=VκRT0(p0p)(κ−1)/κdp. dm=\frac{V}{\kappa RT_0} \left(\frac{p_0}{p}\right)^{(\kappa-1)/\kappa}dp . p1p_1 から p0p_0 まで積分して min=p0VRT0{1−(p1p0)1/κ}. m_{\mathrm{in}} =\frac{p_0V}{RT_0} \left\{1-\left(\frac{p_1}{p_0}\right)^{1/\kappa}\right\}. 最終温度は T2=p0p1T1+p0T0{1−(p1p0)1/κ}. T_2 =\frac{p_0}{ \displaystyle \frac{p_1}{T_1} +\frac{p_0}{T_0} \left\{1-\left(\frac{p_1}{p_0}\right)^{1/\kappa}\right\}} .

最終答

等エンタルピーでは min=V(p0−p1)κRT0,T2=p0p1/T1+(p0−p1)/(κT0). m_{\mathrm{in}}=\frac{V(p_0-p_1)}{\kappa RT_0},\quad T_2=\frac{p_0}{p_1/T_1+(p_0-p_1)/(\kappa T_0)} . 等エントロピーでは min=p0VRT0{1−(p1p0)1/κ},T2=p0p1/T1+(p0/T0){1−(p1/p0)1/κ}. m_{\mathrm{in}}=\frac{p_0V}{RT_0}\left\{1-\left(\frac{p_1}{p_0}\right)^{1/\kappa}\right\},\quad T_2=\frac{p_0}{p_1/T_1+(p_0/T_0)\{1-(p_1/p_0)^{1/\kappa}\}} .

第2問 — 分子運動論による熱伝導

方針

平面を通過する分子数は、単なる半数ではなく速度成分 uu で重みづける。速い分子ほど同じ時間に遠くから平面へ到達するためである。

重要な解釈

N˙+=nc‾/4\dot N_+=n\overline c/4 は気体分子運動論の基本結果である。一方、通過分子が運ぶ平均エネルギーは通常の平均並進エネルギー 3kT/23kT/2 ではなく 2kT2kT になる。これは uu が大きい分子ほど平面通過に多く寄与するためである。

試験で書くべき点

最後の熱伝導率では、左右の面の温度を T∓(l/2)dT/dxT\mp(l/2)dT/dx と置き、1次までテイラー展開する。この符号を明示すると、熱が高温側から低温側へ流れることも同時に説明できる。

分子運動論による熱伝導の途中式・最終答をPDFで見る

第3問 — 二次元粘性流の減衰

方針

これはテイラー--グリーン渦型の速度場である。連続の式から vv を決め、粘性応力で検査体積の運動量が減ることを使えば、振幅の指数減衰まで一気に出せる。

検算

ナビエ--ストークス方程式の粘性項だけを見ると、∇2u=−2k2u\nabla^2u=-2k^2u である。したがって ∂u/∂t=(μ/ρ)∇2u\partial u/\partial t=(\mu/\rho)\nabla^2u からも AA の減衰率は 2μk2/ρ2\mu k^2/\rho と分かる。

典型ミス

渦度の符号は流れ関数の定義に依存する。ここでは u=ψy, v=−ψxu=\psi_y,\ v=-\psi_x を採用しているので、ωz=vx−uy\omega_z=v_x-u_y と合わせて符号をそろえることが重要である。

二次元粘性流の減衰の途中式・最終答をPDFで見る

第4問 — ランキン渦

方針

ランキン渦は、内側が剛体回転、外側が自由渦である。圧力は遠心力との半径方向つり合いから、エネルギーと散逸は円筒座標の面積要素 2πr dr2\pi r\,dr を使って求める。

境界での仕事の符号

自由渦側のせん断応力は負であるため、粘性コアは仕事を失い、自由渦領域は同じ大きさの仕事を受ける。その受け取った仕事が自由渦領域内で粘性散逸する、と見ると符号を間違えにくい。

検算

Γ0\Gamma_0 一定なら v0∝1/r0v_0\propto 1/r_0 である。時間とともにコア半径が広がると散逸率は 1/r021/r_0^2 で小さくなるため、r02r_0^2 が時間に比例して増える結果は物理的にも自然である。

ランキン渦の途中式・最終答をPDFで見る

第5問 — 段付き棒と並列棒

方針

段付き棒は断面積が異なる直列ばねであり、図5-3の系は段付き棒と棒2の並列ばねである。この直列・並列の見分けができれば計算は短い。

ひずみゲージの注意

中央部は一軸応力状態だが、横ひずみ εx=−νεy\varepsilon_x=-\nu\varepsilon_y は存在する。45度ゲージではこの横ひずみも半分だけ入るため、(1−ν)/2(1-\nu)/2 が付く。

温度上昇の考え方

加熱された段付き棒の自由膨張量は αΔT l\alpha\Delta T\,l である。剛体がその全量だけ動けるわけではなく、並列の棒2が抵抗するため、剛性比 k1/(k1+k2)k_1/(k_1+k_2) だけが実際の変位になる。

段付き棒と並列棒の途中式・最終答をPDFで見る

第6問 — 組合せはりの曲げ

方針

組合せはりでは、ひずみ分布は材料によらず直線である。一方、応力は σ=Eiε\sigma=E_i\varepsilon なので材料ごとに傾きが変わる。これを分けて書くのが重要である。

中立面の位置

二層はりでは下側の材料のヤング率が大きいため、中立面は接合面より下側に移る。計算結果 h0=h/6h_0=h/6 はこの物理的な見通しと一致する。

典型ミス

断面の図心と中立面を混同しないこと。均質はりなら一致するが、異材の組合せはりでは、軸力ゼロ条件 ∫E(y)ε dA=0\int E(y)\varepsilon\,dA=0 から中立面を求める。

組合せはりの曲げの途中式・最終答をPDFで見る

第7問 — 剛体棒の回転振動

方針

小振動では、回転中心から距離 rr のばね取付点の鉛直変位は rθr\theta である。したがって、そのばねが作る回転剛性は kr2kr^2 になる。

軸受をずらした場合

軸受を重心からずらすと、復元剛性だけでなく慣性モーメントも I+mb2I+mb^2 に変わる。固有振動数の増減はこの2つの効果の競争で決まり、単純に「ばね腕が長くなるから増える」とは限らない。

試験で書くべき点

減衰の設問では、臨界減衰と過減衰の違いを言葉だけでなく、過渡応答の形として示すと答案が明確になる。どちらも振動しないが、臨界減衰は最速、過減衰は遅い戻りである。

剛体棒の回転振動の途中式・最終答をPDFで見る

第8問 — 一自由度マニピュレータ

方針

重力を無視するので、非線形項は現れない。端まわり慣性 J=4mL2/3J=4mL^2/3 を正しく置けば、以後は標準的な2次系とPID閉ループの問題である。

可制御・可観測

入力トルクは角加速度に直接入るため可制御である。また出力が角度で、状態に角速度も含めているため、角度の時間変化から角速度を観測できる。この直感は行列の階数計算と一致する。

典型ミス

PIDの微分項では、目標角が定数なので θ˙r=0\dot\theta_r=0 である。したがって微分ゲインは有効減衰を C+kdC+k_d に増やす形で現れる。

一自由度マニピュレータの途中式・最終答をPDFで見る

第9問 — 平ベルト伝動とプーリ加工

方針

前半は機械要素としての平ベルトの特徴、後半は加工順序の問題である。設計では「滑りは欠点にも保護機能にもなる」と整理すると答えやすい。

加工順序の要点

プーリでは軸穴とベルト接触外周の同軸度が重要である。したがって、軸穴を基準化し、外周と端面をできるだけ同一段取りで仕上げるのが合理的である。段取り替え後は内径基準で保持し、基準の取り直しによる偏心を抑える。

典型ミス

表面処理名だけを書くと説明不足になりやすい。高周波焼入れなら「表面加熱と急冷」、浸炭焼入れなら「炭素拡散と焼入れ」という硬化メカニズムまで短く添える。

平ベルト伝動とプーリ加工の途中式・最終答をPDFで見る

第10問 — ベルト摩擦の推定

方針

ベルト摩擦はキャプスタンの式である。微小要素の半径方向つり合いから dN=T dθdN=T\,d\theta、接線方向つり合いから dT=μdNdT=\mu dN を作り、積分する。

張力比の注意

式に入れるのは常に「大きい張力/小さい張力」である。回転方向やロードセルの取付側によって LL が大きい側か小さい側か変わるため、符号ではなく張力比で考えるとミスを避けられる。

実験上のポイント

静止摩擦係数を推定するには、完全に滑った後ではなく、滑り始め直前の張力比を読む。滑走中の値を使うと動摩擦係数に近い値になり、推定目的とずれる。

ベルト摩擦の推定の途中式・最終答をPDFで見る

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    断熱タンクへの充填 / 分子運動論による熱伝導 / 二次元粘性流の減衰