東京大学 院試 過去問 解答例
東大 工学系研究科 機械工学専攻 機械工学 専門科目 2023年度 院試 解答例・解説
東京大学 工学系研究科 機械工学専攻 機械工学 専門科目 2023年度の院試 過去問について、設問ごとの解法方針・部分点の置き所を解説。全5問収録の解答・解説PDFと併用できます。問題本文は含みません。
最終更新:
設問ごとの解法方針・部分点の置き所を無料で公開しています。
完全な途中式・最終答は解答・解説PDFに収録しています。問題本文は含まれません。
第1問 — 熱力学と相変化熱伝導
方針
前半は「流れ系の最大仕事」と「閉じた系の最大有効仕事」を区別する問題である。 流れ系では が自然に現れ,閉じた系では周囲圧力による押しのけ仕事を 除くため の形になる。この違いを式だけでなく言葉で説明すると 得点が安定する。
検算
なら初期状態は周囲状態そのものであり,どちらの最大仕事も になる。熱伝導側では の平方根則が出る。相変化を伴う準定常熱伝導では, 界面までの距離が増えるほど熱抵抗が増えるため,界面速度が時間とともに小さくなる。
典型ミス
相界面の熱収支では符号を落としやすい。今回の温度勾配は正なので, は 軸負向きで負である。界面が左へ進むので となることを確認すれば, の符号は自然に決まる。
第2問 — 音速と圧縮性流れの相似
方針
不連続面の問題は,面と同じ速度で動く座標系に移ると衝撃波の Rankine--Hugoniot 条件の微小振幅版になる。圧力・密度・速度の増分は一次の微小量なので, や は捨てる。
検算
質量保存と運動量保存を連立すると だけが残る。 これは音速の熱力学的定義と同じであり,等エントロピーなら に戻る。
典型ミス
無次元運動方程式の圧力勾配項に が残る点が重要である。 を使わずに としてしまうと,状態方程式側の との整合が崩れる。
第3問 — はりの応力と平面トラス
方針
はりでは,点 が中立軸上にあるため曲げ応力が消えることを見抜くと計算が短い。 ただし荷重 は横棒の腕の長さ によりねじりを生むので,せん断応力は 残る。
検算
円環断面では が成り立つ。断面が同心円なので であり, この対称性が崩れていたら計算ミスを疑う。トラスの変位は が大きくなる ほど が小さくなり,剛性が低下して大きくなる。
試験で書くべき点
三角トラスに鉛直材を追加した場合,荷重が鉛直材の中央に入るため,棒3の軸応力は 上半分と下半分で異なる。単に「棒3の応力」と一つだけ書くと,荷重点で軸力が 不連続になる事実を落としてしまう。
第4問 — 回転振動とPD姿勢制御
方針
前半は回転1自由度系として,重力とばねの両方を回転剛性に変換する。 静止姿勢まわりの微小振動なので,ポテンシャルを の係数まで展開すれば よい。
検算
とすると,ばねは微小回転に対して一次の伸縮をしないため,固有角振動数は 重力振り子型の値だけになる。 を大きくすると が増えるので, 設問(5)の答えと式が一致する。
典型ミス
制御問題では一次遅れの分母 を閉ループ特性方程式に残す必要がある。 これを消して二次系として扱うと,安定条件 が出ない。
第5問 — ボール盤機構と工作機械設計
方針
この問題は数式よりも設計意図の言語化が重要である。機構の設問では,作用反作用を 厳密な力の向きだけで書こうとすると図の読み違いに弱い。ピン結合や直動案内のような 拘束関係を明記すると,機械要素としての本質を外しにくい。
試験で書くべき点
動剛性は「剛性を上げる」とだけ書かず,周波数応答・コンプライアンス・びびりとの 関係まで書く。熱変形では,単に冷却と書くより,どの熱源をどこで除去するかを 明示する。主軸発熱は工具先端点に近く,熱変位がそのまま加工誤差になりやすい。
典型ミス
母性原理を「工作機械が母材を加工する原理」のように材料側の話として説明すると 外れる。ここでの母性は,工作機械の運動・形状精度が加工物へ写し取られるという 精度生成の原理である。