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東京大学 院試 過去問 解答例

東大 工学系研究科 機械工学専攻 機械工学 専門科目 2023年度 院試 過去問 解答例・解説(全5問)

全5問。熱・統計力学1問。テーマタグは1件(剛体の回転運動)。2022年度と共通のテーマは剛体の回転運動。

最終更新:

収録6年度分の解答PDF:東京大学 工学系研究科 機械工学専攻 機械工学 専門科目(¥3,200・紙面見本あり)

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解説5問と大問1問の途中式・最終答(全5問)
解答PDFに収録
途中式と最終答(最終答つき5問)
問題本文
非収録

東大 機械工学 専門科目 2023年度 院試 過去問の出題内容(全5問)

この5問の分野は熱・統計力学1問です。

大問分野主題解説の小見出し最終答
第1問熱・統計力学熱力学と相変化熱伝導—あり
第2問—音速と圧縮性流れの相似—あり
第3問—はりの応力と平面トラス試験で書くべき点あり
第4問—回転振動とPD姿勢制御—あり
第5問—ボール盤機構と工作機械設計試験で書くべき点あり

この年度の解説には検算4件・典型ミス4件が付いています。

2023年度の出題テーマと、同じテーマを出した他大学・他年度

この年度は1問に1テーマが出ています。

テーマこの年度全体の出題実績他大学の直近出題
剛体の回転運動第4問16大学・103問

前年度(2022年度)との違い

大問数
2022年度 5問 → 2023年度 5問
両年度に出たテーマ
剛体の回転運動
2022年度のページを見る

第1問 — 熱力学と相変化熱伝導

方針

前半は「流れ系の最大仕事」と「閉じた系の最大有効仕事」を区別する問題である。 流れ系では h=u+pvh=u+pv が自然に現れ,閉じた系では周囲圧力による押しのけ仕事を 除くため u+p0v−T0su+p_0v-T_0s の形になる。この違いを式だけでなく言葉で説明すると 得点が安定する。

検算

rT=1, rp=1r_T=1,\ r_p=1 なら初期状態は周囲状態そのものであり,どちらの最大仕事も 00 になる。熱伝導側では s(t)s(t) の平方根則が出る。相変化を伴う準定常熱伝導では, 界面までの距離が増えるほど熱抵抗が増えるため,界面速度が時間とともに小さくなる。

典型ミス

相界面の熱収支では符号を落としやすい。今回の温度勾配は正なので,qBq_B は xx 軸負向きで負である。界面が左へ進むので ds/dt<0ds/dt<0 となることを確認すれば, ρl(−ds/dt)=−qB\rho l(-ds/dt)=-q_B の符号は自然に決まる。

解答

I. 理想気体の有効仕事

入口状態を 11,出口および周囲と平衡した状態を 00 と書く。 rp=p1/p0, rT=T1/T0r_p=p_1/p_0,\ r_T=T_1/T_0 であり, cp=κRκ−1,cv=Rκ−1 c_p=\frac{\kappa R}{\kappa-1},\qquad c_v=\frac{R}{\kappa-1} である。

単位質量あたりのエンタルピー差は h0−h1=cp(T0−T1)=κRT0κ−1(1−rT). h_0-h_1=c_p(T_0-T_1) =\frac{\kappa R T_0}{\kappa-1}(1-r_T). また理想気体のエントロピー変化 s0−s1=cpln⁡T0T1−Rln⁡p0p1 s_0-s_1=c_p\ln\frac{T_0}{T_1}-R\ln\frac{p_0}{p_1} より, s0−s1=R(ln⁡rp−κκ−1ln⁡rT). s_0-s_1 =R\left(\ln r_p-\frac{\kappa}{\kappa-1}\ln r_T\right).

定常流として入口状態から周囲状態まで可逆に変化させるときの最大仕事は, 流れのエクセルギー wmax⁡flow=(h1−h0)−T0(s1−s0) w_{\max}^{\mathrm{flow}} =(h_1-h_0)-T_0(s_1-s_0) である。したがって wmax⁡flow=RT0{κκ−1(rT−1−ln⁡rT)+ln⁡rp}. w_{\max}^{\mathrm{flow}} =R T_0\left\{ \frac{\kappa}{\kappa-1}(r_T-1-\ln r_T)+\ln r_p \right\}.

一方,同じ初期状態の気体を閉じた系として扱い,周囲圧力 p0p_0 に抗して 行う押しのけ仕事を有効仕事に含めない場合の最大仕事は非流動エクセルギー wmax⁡closed=(u1−u0)+p0(v1−v0)−T0(s1−s0) w_{\max}^{\mathrm{closed}} =(u_1-u_0)+p_0(v_1-v_0)-T_0(s_1-s_0) である。ここで v1=RT1p1=RT0p0rTrp,v0=RT0p0 v_1=\frac{RT_1}{p_1}=\frac{RT_0}{p_0}\frac{r_T}{r_p}, \qquad v_0=\frac{RT_0}{p_0} だから, wmax⁡closed=RT0{rT−1κ−1+(rTrp−1)−κκ−1ln⁡rT+ln⁡rp}. w_{\max}^{\mathrm{closed}} =R T_0\left\{ \frac{r_T-1}{\kappa-1} +\left(\frac{r_T}{r_p}-1\right) -\frac{\kappa}{\kappa-1}\ln r_T+\ln r_p \right\}. 両者の差は wmax⁡flow−wmax⁡closed=RT0rT(1−1rp). w_{\max}^{\mathrm{flow}}-w_{\max}^{\mathrm{closed}} =R T_0 r_T\left(1-\frac{1}{r_p}\right). これは流れ系で入口に持ち込まれる流動仕事のうち,周囲圧力を超える圧力に 由来する可用部分である。

II. 相界面をもつ一次元熱伝導

熱流束は q=−λ∂T/∂xq=-\lambda \partial T/\partial x で与えられる。固相A側では 温度が一定なので qA(t)=0. q_A(t)=0. 固相B側では温度勾配が一定であり, ∂T∂x=δTx0−s(t) \frac{\partial T}{\partial x} =\frac{\delta T}{x_0-s(t)} だから qB(t)=−λδTx0−s(t). q_B(t)=-\lambda\frac{\delta T}{x_0-s(t)}.

相界面は左向きに進み,単位面積・単位時間あたり ρ[−ds(t)/dt]\rho[-ds(t)/dt] だけ固相Aが固相Bへ変化する。潜熱の供給と熱流束の収支は ρl(−dsdt)=−qB(t) \rho l\left(-\frac{ds}{dt}\right)=-q_B(t) すなわち ρldsdt=qB(t)=−λδTx0−s(t). \rho l\frac{ds}{dt}=q_B(t) =-\lambda\frac{\delta T}{x_0-s(t)}. y(t)=x0−s(t)y(t)=x_0-s(t) とおくと dydt=λδTρl1y,y(0)=0. \frac{dy}{dt}=\frac{\lambda\delta T}{\rho l}\frac{1}{y}, \qquad y(0)=0. よって y2=2λδTρlt y^2=\frac{2\lambda\delta T}{\rho l}t であり, s(t)=x0−2λδTρl t. s(t)=x_0-\sqrt{\frac{2\lambda\delta T}{\rho l}\,t}. 表面 x=0x=0 を除いて全体が固相Bとなるのは s(t)=0s(t)=0 のときなので, tend=ρlx022λδT. t_{\mathrm{end}}=\frac{\rho l x_0^2}{2\lambda\delta T}.

最終答

h0−h1=κRT0κ−1(1−rT),s0−s1=R(ln⁡rp−κκ−1ln⁡rT),wmax⁡flow=RT0{κκ−1(rT−1−ln⁡rT)+ln⁡rp},wmax⁡closed=RT0{rT−1κ−1(rTrp−1)−κκ−1ln⁡rT+ln⁡rp},qA=0,qB=−λδTx0−s(t),s(t)=x0−2λδTρlt,tend=ρlx022λδT. \begin{gathered} h_0-h_1=\dfrac{\kappa R T_0}{\kappa-1}(1-r_T),\qquad s_0-s_1=R\left(\ln r_p-\dfrac{\kappa}{\kappa-1}\ln r_T\right),\\ w_{\max}^{\mathrm{flow}} =R T_0\left\{\dfrac{\kappa}{\kappa-1}(r_T-1-\ln r_T)+\ln r_p\right\},\\ w_{\max}^{\mathrm{closed}} =R T_0\left\{\dfrac{r_T-1}{\kappa-1} \left(\dfrac{r_T}{r_p}-1\right) -\dfrac{\kappa}{\kappa-1}\ln r_T+\ln r_p\right\},\\ q_A=0,\qquad q_B=-\dfrac{\lambda\delta T}{x_0-s(t)},\qquad s(t)=x_0-\sqrt{\dfrac{2\lambda\delta T}{\rho l}t},\qquad t_{\mathrm{end}}=\dfrac{\rho l x_0^2}{2\lambda\delta T}. \end{gathered}

第2問 — 音速と圧縮性流れの相似

方針

不連続面の問題は,面と同じ速度で動く座標系に移ると衝撃波の Rankine--Hugoniot 条件の微小振幅版になる。圧力・密度・速度の増分は一次の微小量なので, dρ dud\rho\,du や (du)2(du)^2 は捨てる。

検算

質量保存と運動量保存を連立すると c02=dp/dρc_0^2=dp/d\rho だけが残る。 これは音速の熱力学的定義と同じであり,等エントロピーなら a2=(∂p/∂ρ)s=γp/ρa^2=(\partial p/\partial\rho)_s=\gamma p/\rho に戻る。

典型ミス

無次元運動方程式の圧力勾配項に M∞−2M_\infty^{-2} が残る点が重要である。 p∞/(ρ∞U∞2)=1/(γM∞2)p_\infty/(\rho_\infty U_\infty^2)=1/(\gamma M_\infty^2) を使わずに 1/M∞21/M_\infty^2 としてしまうと,状態方程式側の γ\gamma との整合が崩れる。

音速と圧縮性流れの相似の途中式・最終答をPDFで見る

第3問 — はりの応力と平面トラス

方針

はりでは,点 aa が中立軸上にあるため曲げ応力が消えることを見抜くと計算が短い。 ただし荷重 WW は横棒の腕の長さ L/3L/3 によりねじりを生むので,せん断応力は 残る。

検算

円環断面では Ip=Iy+IzI_p=I_y+I_z が成り立つ。断面が同心円なので Iy=IzI_y=I_z であり, この対称性が崩れていたら計算ミスを疑う。トラスの変位は θ\theta が大きくなる ほど cos⁡θ\cos\theta が小さくなり,剛性が低下して大きくなる。

試験で書くべき点

三角トラスに鉛直材を追加した場合,荷重が鉛直材の中央に入るため,棒3の軸応力は 上半分と下半分で異なる。単に「棒3の応力」と一つだけ書くと,荷重点で軸力が 不連続になる事実を落としてしまう。

はりの応力と平面トラスの途中式・最終答をPDFで見る

第4問 — 回転振動とPD姿勢制御

方針

前半は回転1自由度系として,重力とばねの両方を回転剛性に変換する。 静止姿勢まわりの微小振動なので,ポテンシャルを θ2\theta^2 の係数まで展開すれば よい。

検算

h=0h=0 とすると,ばねは微小回転に対して一次の伸縮をしないため,固有角振動数は 重力振り子型の値だけになる。hh を大きくすると 2kh22kh^2 が増えるので, 設問(5)の答えと式が一致する。

典型ミス

制御問題では一次遅れの分母 1+τs1+\tau s を閉ループ特性方程式に残す必要がある。 これを消して二次系として扱うと,安定条件 kd>τkpk_d>\tau k_p が出ない。

回転振動とPD姿勢制御の途中式・最終答をPDFで見る

第5問 — ボール盤機構と工作機械設計

方針

この問題は数式よりも設計意図の言語化が重要である。機構の設問では,作用反作用を 厳密な力の向きだけで書こうとすると図の読み違いに弱い。ピン結合や直動案内のような 拘束関係を明記すると,機械要素としての本質を外しにくい。

試験で書くべき点

動剛性は「剛性を上げる」とだけ書かず,周波数応答・コンプライアンス・びびりとの 関係まで書く。熱変形では,単に冷却と書くより,どの熱源をどこで除去するかを 明示する。主軸発熱は工具先端点に近く,熱変位がそのまま加工誤差になりやすい。

典型ミス

母性原理を「工作機械が母材を加工する原理」のように材料側の話として説明すると 外れる。ここでの母性は,工作機械の運動・形状精度が加工物へ写し取られるという 精度生成の原理である。

ボール盤機構と工作機械設計の途中式・最終答をPDFで見る

東大 機械工学 専門科目 院試 過去問の収録6年度

  • 2026年度(全5問)

    逆ブレイトン冷凍サイクルと発熱平板 / 非定常粘性拡散 / 熱膨張拘束はり

  • 2025年度(全5問)

    熱力学・熱伝導 / 流体力学 / 材料力学

  • 2024年度(全5問)

    熱機関サイクルと非定常熱伝導 / 風車モデルと傾斜液膜流 / 応力変換と自重を受ける丸棒

  • 2023年度(このページ・全5問)

    熱力学と相変化熱伝導 / 音速と圧縮性流れの相似 / はりの応力と平面トラス

  • 2022年度(全5問)

    熱ポンプサイクルと放射体温計 / 運動量法則と細管内の粘性流れ / はりの曲げと薄肉円筒容器

  • 2021年度(全10問)

    断熱タンクへの充填 / 分子運動論による熱伝導 / 二次元粘性流の減衰