都立大 理学研究科 数理科学専攻 数学 2023年度 夏季 院試 過去問 解答例・解説(全13問)
全13問の分野は数学13問です。解説はすべて、途中式と最終答は大問1問ぶんを公開しています。残りは解答PDFに収録しています。問題本文は含みません。
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第1問 — 数学I 問題1 微分積分:単調性と広義積分・級数
方針
4小問すべてが置換 で に帰着する。この置換に気づけば (2)(3) は事実上 のべき関数の積分であり,(4) は (1) の単調性を根拠に積分判定法へ渡すだけである。 逆に置換を思いつかずに部分積分などに進むと, が一般の正数であるために手が止まる。
場合分けを落とさない
は のときだけ になる。(2) では を別扱いにし, (3) では ,, の3通りを書き分ける。 問題文は を「正の実数」としか指定していないので,場合分けそのものが採点対象と考えてよい。
検算
(2) の答は で となり, の値 と連続につながる。(3) も で となり, の発散と整合する。 とすれば (2) は , (3) は で,いずれも直接計算と一致する。
(1) が (4) の前提になる
積分判定法は「正で単調減少」という仮定の下でのみ使える。本問では の単調減少性が (1) からただちに従うので,(4) では「(1) より は正で単調増加,よって は単調減少」 と一言書いてから不等式を立てる。この一言がないと,判定法の適用が無条件になり減点されやすい。
失点しやすい点
のとき は指数が負だが,底が 以上なので値は 以下の正数であり, 符号の議論に影響しない。ここを「負の指数だから符号不明」として場合分けを増やす答案が多い。 また (4) では の項が と有限であることを確認しておく。 級数の収束・発散は先頭有限個の項に依らないが,発散を主張する際に定義域の端を曖昧にしないほうがよい。
解答
(1) 区間 での単調増加
では だから であり, は で定義されて正の値をとる。積の微分法により ここで底 なので,指数 の符号によらず が成り立つ。また より である。よって ()であり, は で狭義単調増加である。
(2) 定積分
とおくと であり, のとき , のとき である。 だから のときは のときは である。
(3) 広義積分
に対し同じ置換を行うと, のとき だから のとき である。 で であるから,広義積分は のとき収束して値は , のとき発散する。
(4) 無限級数
(1) より は で正かつ狭義単調増加だから, は で単調減少である。よって各整数 と に対し が成り立ち, で積分すると を得る。 で加えると となる。したがって級数 の収束と広義積分 の収束は同値である。 (3) の結果と合わせて,級数は のとき収束し, のとき発散する。
最終答
のとき , のとき
のとき収束し値は 。 のとき発散
のとき収束, のとき発散
第2問 — 数学I 問題2 微分積分:連続性・重積分・体積
(1)(a) の評価の型
分子の各項を の定数倍で押さえ,分母 で割って を出すのが定石である。 は値域そのものなので追加の議論は要らない。 分子に と という2次の量しか現れないことが本問の仕掛けで, もし分子に1次の項があれば極限は方向に依存して連続でなくなる。
(1)(b) が本問の山場
連続性と偏微分可能性は独立である。本問はその実例で, 方向だけ が残って極限が存在しない。 一方 方向では と が約分されて1次式になり,商が定数になる。 分子に ではなく を置いた出題意図はここにあり, 「絶対値の付き方で結論が変わる」ことを見抜けるかが問われている。 偏微分係数を求める際に,形式的に を計算して を代入する答案は誤りで, 定義に戻って差商の極限を調べる必要がある。
(2) の別解
累次積分でも計算できる。 を固定して について先に積分すると となり,これを で積分して を得る。 ただし で正規化してから で切る方が, が最後まで係数として外に出るため計算が短い。
検算
(2) は とすると そのもので,値 と一致する。 (3) は球全体の体積 から円柱の外側の部分を引いて確かめられる。外側は であり, となって一致する。
失点しやすい点
(3) で円柱の外側を「2つの球冠」と誤認する答案が多い。切り落とされるのは球の上下の冠ではなく 側面のリング状の部分であり,球冠の公式を当てると値が合わない。上の断面図で, 除かれる領域が左右の三日月形であることを確認しておくとよい。
第3問 — 数学I 問題3 線形代数:固有値と対角化
方針
第3列が であることに気づけば,固有多項式は3次行列式1つに落ちる。 4次行列式をそのまま展開すると符号ミスが出やすいので, 「0が多い列(行)で展開する」という原則を最初に適用する。 が固有値 の固有ベクトルであることも同時に読み取れる。
実数か複素数かを書く
問題文は係数体を明示していないが,固有多項式が を因数にもつ以上, 「複素数の範囲で考える」と宣言してから固有値を と答えるのが安全である。 (3) では複素数体上で対角化可能,実数体上では不可能,の両方を書く。 どちらか一方だけでは,出題者が用意した場合分けを落としたことになる。
最小多項式の決め方
「固有多項式の約数」「各固有値を根にもつ」の2条件で候補を絞り,残った候補を代入して確かめるのが最短である。 本問では の固有空間の次元が重複度 と一致するので, は1乗しか現れない。この段階で は計算せずに決まるから, の確認は答案では検算の位置づけでよい。
検算
固有値の和は で, と一致する。 積は で,固有多項式に を代入した と一致する。 固有ベクトルは に代入して1本ずつ確かめられるので, 時間があれば の1本だけでも検算しておく。
失点しやすい点
の固有空間を求めるとき, の第3行が零行になることを見落として と決めてしまう誤りが多い。第3列が零列であることと第3行が零行であることは別で, 本問では の第3行が零になるため は自由変数である。 また の列の順序と対角行列の並びは必ず対応させる。
第4問 — 数学I 問題4 線形代数:部分空間と像の和
方針
(1) の は,係数 に惑わされなければ にほかならない。 が 全体を動く以上 も 全体を動くからである。 この読み替えを (2) の冒頭で書いておくと,以降は の4本の列が張る空間についての標準的な問題になる。
(1) の答案の書き方
部分空間の判定は「空でない」「和で閉じる」「スカラー倍で閉じる」の3点を書く。 本問で本質的なのは,2つの元の和が再び の形に書けることで, そのために と を新しい代表元として取り直す。 「 が線形だから」と一言で済ませず,どの性質をどこで使ったかを式で示す。
(a) を1回の掃き出しで済ませる
を未知数のまま拡大係数行列に入れて掃き出すと,最終行に が残り条件が直接読める。 を消してから別に階数を数えると2度手間になる。 なお は の3次元部分空間,すなわち超平面なので,法ベクトルを1本求めても同じ結論が出る。 に直交するベクトルは で, との内積は となり,やはり を得る。
検算
のとき,掃き出しの結果を戻すと である。 これは , にあたり,実際 と一致する。答案に具体的な を1組書いておくと, の十分性まで示したことになる。
失点しやすい点
を と の直和と誤って次元を とする答案が多い。 本問では が他の3本の1次結合になるため次元は であり,和は直和でない。 また基底は「1次独立かつ を張る」ことが要るので,掃き出し後の行ベクトルではなく, 主成分の位置に対応するもとの列ベクトルを答える。
第5問 — 数学II 問題1 線形代数:ジョルダン標準形
方針
「必要があれば場合分けせよ」とあるので,まず に依存しない部分を確定させる。 本問では固有多項式が に依らず なので,場合分けは最小多項式から先に限られる。 固有多項式を4次行列式の展開で求めようとすると が入って煩雑になるが, を示せば「固有値は のみ」がただちに従い,次数から が確定する。
を楽に示す
第4列が第2列の 倍であることに気づくと が無条件で出る。 さらに が を列にもつ階数1の行列になるので, は の具体形を書いた時点で1行で済む。 を計算する手間は避けられないが,計算するのは までで十分である。
冪零行列の標準形の決め方
冪零行列では,細胞の個数 ,最大細胞の大きさ 冪零指数,細胞の大きさの総和 次数, の3つで形が決まる。4次で最大細胞3,個数2なら しかない,というのが (2) の の議論である。 より一般には の列 ()と ()から 細胞の大きさが読み取れる。
の作り方と向き
は と同値で, の第 列が ()であることから が出る。したがって鎖は「最後の列から前へ」作る。 を先に決めて を から逆算する必要はない。 細胞の を上三角に置くか下三角に置くかで の列の並びが逆になるので, 答案では採用した の形を明記する。
検算
, はいずれも 固有値がすべて であることと整合する。 については と の第2列( と )を比べるのが最も速く, を確かめればよい。 が で になることも,場合分けの境目と一致している。
第6問 — 数学II 問題2 代数:素イデアルと極大イデアル
定義で落としてはいけない条件
素イデアル・極大イデアルのいずれも「」が定義の一部である。 これを書かないと 自身が素イデアルになってしまい,(2) の議論も破綻する。 また素イデアルの条件は「 ならば または 」であって, 「 かつ 」でも「 ならば 」でもない。
剰余環に翻訳する
が整域(体)であることを素(極大)の言い換えとして書いておくと, (b) は準同型定理1本で終わる。逆に (a) を剰余環で示すなら, が に単射に埋め込まれること, および整域の部分環(単位元を共有)が整域であることを使う。 この見方をすると,(a) に全射性が要らない理由も「埋め込みで十分だから」と説明できる。
全射性がどこで効くか
(b) の証明で全射性は が全射であること, すなわち という同型を得るために使う。 埋め込みだけでは「体の部分環」しか言えず,部分環は体とは限らない。 の部分環 がその例で,これがそのまま (c) の反例になっている。
(c) の反例の選び方
の極大イデアルは既約多項式 による の形をしている。 最も簡単な を取れば,引き戻しは「定数項が の整数係数多項式」となり, 剰余環が になることがすぐ分かる。 極大でないことを示すには「剰余環が体でない」と述べるか, 真に大きい真イデアル を1つ挙げればよい。後者を書く場合は ()の確認まで添える。
この設問が試していること
(a)(b) は教科書どおりの証明だが,(c) は「証明のどの部分が仮定に依存していたか」を 自分で点検できるかを問うている。証明を丸暗記していると, (a) にも全射性が必要だと思い込んで (A) を誤答しやすい。 証明を書いたら仮定の使用箇所に印を付けておく,という習慣が直接得点につながる設問である。
第7問 — 数学II 問題3 幾何:曲面の基本量と曲率
グラフ曲面の公式に載せる
のグラフは と表され, となる。本問では で, が だけの関数と だけの関数の和なので ,すなわち が最初から分かる。この構造を見抜いておくと計算量が半減する。
を経由する
は一般に成り立つ恒等式(ラグランジュの恒等式)である。 本問では を1回計算すれば, (1) の検算にも (4) の分母にも使い回せる。 逆に を展開だけで処理すると, の相殺を見落としやすい。
の意味
であり,さらに となって と がちょうど打ち消し合う。この曲面は で与えられるシェルクの極小曲面で,平均曲率が恒等的に になることが知られている。 が出たら計算ミスを疑うのではなく,むしろ検算が通ったと考えてよい。 一方 は各点が鞍点型であることを表す。極小曲面では主曲率が の形になり となるので, と は互いに整合している。
法線の向きの指定
問題文は を と同じ向きと指定している。 向きを逆に取ると と の符号がすべて反転し, だけが変わらない。 は向きに依らない量, は向きに依存する量である,という区別を答案で意識しておくと, 符号の指定を落とす失点を防げる。
検算
を代入すると となり, を得る。閉じた式 も で を与えるので一致する。 原点付近で という鞍面になることからも は納得できる。
第8問 — 数学II 問題4 位相:商位相と写像の連続性
方針
商位相では「 の部分集合が開である」ことが, の側の条件として定義されている。 したがって商空間についての主張は,逆像を取って の位相の問題に翻訳すれば自動的に片づく。 (1) は位相の3公理を逆像で書き換えるだけ,(2) は を書いてから逆像を1回計算するだけである。 逆に の中で直接開集合を構成しようとすると,同値類の扱いで行き詰まる。
を最初に書く
(2) の証明の核心は可換性 である。 これは の定義そのものだが,答案では代表元 を取って両辺が に等しいことを 1行で確認してから使う。ここを飛ばすと,以降の逆像の変形が根拠のないものになる。 なお が well-defined であること()は 問題文で仮定されているので,証明し直す必要はない。
使う逆像の等式
本問で必要なのは次の3つだけである。 いずれも要素を取って両側の同値性を示せば1行で証明できる。 像 では和集合とは交換するが共通部分とは一般に交換しないので, 「逆像を使う」という方針を最初に決めておくことが大切である。
背景:商位相の普遍性
は を連続にする位相のうち最も強い(開集合が最も多い)ものである。 一般に商空間からの写像 について 「 が連続 が連続」が成り立ち,これが商位相の普遍性である。 (2) はこの普遍性を , に適用したもので, が連続写像の合成として連続であることから直ちに従う。 答案でこの一般命題を使う場合は,命題の証明(上の逆像計算)も添えておくのが安全である。
失点しやすい点
(1) で「有限個の共通部分」を「任意個の共通部分」と書くのは誤りである。位相の公理は 和集合が任意個,共通部分が有限個であり,この非対称性は逆像の議論とは無関係に押さえておく。 また (2) で が の部分集合であることと, その による逆像が の部分集合であることを混同しないよう, どの空間の部分集合を扱っているかを式ごとに確認する。
第9問 — 数学II 問題5 解析:回転とストークスの定理
方針
成分が で 成分も に依らないので,実質は平面のグリーンの定理である。 の第3成分がそのまま被積分関数になり,(1) の答が (2) にそのまま入る。 が閉曲線であることは端点をつなげて確認する。ここを確かめずに定理を使うと, そもそも適用条件を満たさない場合があり得る。
向きの確認
ストークスの定理は「曲面の法線の向き」と「境界の向き」が右手系で対応しているときに成り立つ。 本問の は と回るので反時計回り, これに対応する法線は である。もし の向きが逆であれば符号が反転して になる。 向きの確認を1行書いておくと,符号の根拠が採点者に伝わる。
保存的な部分を分ける
は と分解でき,第1項はスカラー場 の勾配である ()。 保存場の閉曲線に沿う積分は なので,第1項は寄与しない。 実際 (1) の計算でも が引き算で消えており,同じ事実の別の見え方になっている。 残るのは の周回積分で,これが である。
検算:直接計算
定義どおりに3本の積分を足しても確かめられる。 上では で 。 上では で 上では ( は から へ)と取り直すと 合計すると が相殺して となり,ストークスの定理による値と一致する。 超越的な項がきれいに消えることが,向きと計算の正しさの強い証拠になる。
失点しやすい点
の第3成分を と順序を逆に書く誤りが多い。 定義は であり,符号が反転すると答が になる。 また積分領域を ではなく ,すなわち頂点 の三角形と取り違えると となり,符号だけが変わるので誤りに気づきにくい。図を1つ描いて領域を確定させるのが確実である。
第10問 — 数学II 問題6 複素解析:留数と広義積分
極の絶対値が場合分けの鍵
の場合分けが を境にしているのは,2つの極がどちらも原点からの距離 にあるからである。これは判別式が負で解が共役なので となることから従う。 この一言を書かずに「極は の外(内)にある」とだけ書くと,根拠のない主張になる。 なお では極が積分路上に乗るため定義できず,問題文もその場合を除いている。
2位の極の留数
位の極では を使う。本問は なので1回微分するだけだが, という因数分解を先に書いておかないと, のまま微分して式が膨らむ。 微分後に まで約分してから代入するのが最短である。
検算
とすると被積分関数 は奇関数なので広義積分は , 公式も で一致する。 また の近くで を小さくすると,答は の1次で減少するはずで, 実際 となる。 では で公式の値は である。 一方,平方完成して と置換すると , で, 奇関数部分が消えて となり一致する( を用いた)。
主値と広義積分の区別
上半平面の半円を使う議論が直接与えるのは対称区間の極限 すなわちコーシーの主値である。 本問では被積分関数が で絶対収束するので,主値と広義積分は一致する。 分子の次数がもう1つ高い場合(たとえば を に置き換えた形)には 絶対収束しないので,主値であることを断らなければならない。この確認を1行入れておくとよい。
失点しやすい点
(3) の評価で の に絶対値を付け忘れる誤りが多い。 の符号は仮定されていないので,下からの評価には が必要である。 また の分母は2乗されているので,評価も2乗してから使う。 (4) では の分解を明示し, どの項が に依らない定数でどの項が に収束するかを書き分ける。
第11問 — 数学II 問題7 解析:ベルヌーイ型初期値問題
方針
の形をベルヌーイ型といい, で線形方程式に帰着する。 本問は なので であり,これは問題文が (1) で指定している。 (1) を計算するだけなら1行だが, を確認しておかないと が定義できず, 以降の議論の前提が崩れる。
をどう書くか
最も短いのは解の一意性を使う議論である。 は初期値 をもつ解であり, 右辺は の近傍で についてリプシッツ連続だから, ある点で になる解は恒等的に でなければならない。 なのでそうではない。 一意性定理に触れずに済ませたい場合は,最終的に得た が実際に方程式と初期条件を満たすことを 代入で確かめ,「求めた関数が解である」と結論する構成にしてもよい。
積分因子の計算
の積分因子は である。 は部分積分2回でも出るが, として の実部を取ると が一度に出る。 どちらで求めても,答案では微分して戻る確認を1行入れておくと安全である。
検算
で となり初期条件を満たす。 また が を満たすことは で確かめられる。 と が消えて だけが残る形になるので, 符号ミスがあればここで必ず露見する。
解のふるまい
では なので という周期 の関数に漸近する。強制項 の周期性がそのまま解に残る形で, 指数的に減衰する項 が初期条件の情報を運んでいる。 逆に では となり である。 この設問は「非線形方程式でも適切な変換で線形方程式に帰着でき, そこから解の大域的な存在と漸近挙動まで読み取れる」ことを試している。
失点しやすい点
の符号を落として としてしまう誤りが多い。 また積分定数を の式ではなく の式に入れる位置を誤ると が になり,初期条件を満たす解が得られない。 最後に へ戻すのを忘れて を答えにするのも典型的な失点である。
第12問 — 数学II 問題8 離散数学:木の隣接行列と彩色
(1) の読み方
隣接行列に未知数が現れる問題では,まず行列そのものが満たすべき制約 (- 成分・対称・対角成分 )を書き出し, 次にグラフの条件(本問では木)を使う,という順序で進める。 は行列の性質だけで決まり, も同様, と の値は木の条件で決まる, という段階を分けて書くと,「理由とともに」という要求を満たしやすい。
木の使い方は2通り
は「閉路をもたない」から, は「連結である」から従う。 別解として辺数から攻めることもできる。木の辺数は 本, すでに の2本が確定しているので,残りは が与える2本()と が与える1本のうち2本ちょうど。 では2本足りず, では1本多いので しかない。
(2) の別解:彩色多項式と包除原理
頂点数 の木の彩色多項式は である (根を1つ選び,根から順に色を決めると,各非根頂点は親と異なる 通り)。 本問では で 「ちょうど4色を使う」個数は包除原理により となり,本文の直接の数え上げと一致する。2通りで同じ値が出ることが最良の検算になる。
(3) の一般化と の意味
同じ議論は「 色で真に彩色された頂点数 の木」に対して のときに通用する。 では なので が条件で, 問題の はこの不等式が成り立つ最小の値である。 実際 では反例がある。中心の頂点を赤に塗り,その3つの隣接点を青・白・黒に塗り, さらに青の頂点に白,白の頂点に黒,黒の頂点に青の隣接点を1つずつ付けると, 7頂点6辺の木ができて,6本の辺の色の組はすべて相異なる。 したがって という数は最良(これ以上小さくできない)である。
失点しやすい点
(2) で「4色以下で塗る場合の数」 をそのまま答える誤りが最も多い。 問題は「どの色も少なくとも一つの頂点に付く」を要求しているので,全射性の条件が要る。 また直接数える方針を取る場合,同色の頂点対が隣接していないことの確認と, 「彩色から同色対が一意に決まる」ことによる重複のなさの確認を書く。 (3) では辺の色の組を非順序対として数えることが要点で, 順序対と考えると 通りになり,鳩の巣が働かなくなる。
第13問 — 数学II 問題9 情報数学:有限オートマトン
定義で落としてはいけない点
決定性であることは「 が の全体で定義された写像である」に集約される。 遷移先が複数ある,あるいは未定義の組がある,というのは非決定性・部分的の話であり別物である。 また初期状態はただ1つ,受理状態は集合(0個でも全部でもよい)である点も定義の一部である。 の定義を書かずに「 を読んで に入る」とだけ書くと, 受理の定義が曖昧になるので,帰納的定義まで書くのが安全である。
状態の取り方が本問の核心
オートマトンを設計するときは「何を覚えておけば判定できるか」を決めることがすべてである。 本問では最後まで必要な情報は「Aがオンか」「Bがオンか」の2ビットだけで, 語の長さも順序も覚える必要がない。この2ビットが状態そのものになり, は第1ビット, は第2ビットを反転させる。 逆にいえば,2ビットで区別される4通りの配置は互いに区別しなければならないので, 状態数を3以下にはできない。
図の描き方
問題文が「初期状態にはどこからともなく入ってくる矢印」「受理状態は二重丸」と指定しているので, その2点は必ず守る。さらに の各文字について, どの状態からもちょうど1本ずつ矢印が出ていることを確認する。 本問では4状態それぞれから と の矢印が1本ずつ,計8本の辺がある。 矢印の総数が になっているかどうかは,決定性の簡単な検算になる。
(3) の答え方
「成り立つ」と結論したうえで,構成を1行で示すのが最短である。 ごとにオートマトンを作り直す必要はなく,受理状態集合だけを取り替えればよい, という点が答えの中身である。命題 は 上の真理値関数を定めるので, 論理的に異なる は高々 個しかなく, それぞれが の 通りの選び方と1対1に対応する。 (2) の は の場合にあたる。
背景
一般に,正規言語の族は補集合・共通部分・和集合について閉じている。 (3) はその特別な場合で,同じ状態集合の上で受理状態を 補集合・共通部分・和集合に取り替えるだけで済んでいる。 状態を「必要な情報の同値類」として取る見方は, 最小オートマトンを与えるマイヒル・ネロードの定理につながる考え方である。
年度別の解答例(10年度)
同時対角化 / 行列式 / 関数項級数
線形写像 / 固有値 / 極値
線形写像 / 固有値と対角化 / 広義積分
線形代数 / 線形写像 / 多変数微分積分
広義積分 / 関数項級数 / 線形代数
微分積分 / 多変数積分 / 線形写像
線形代数:一般化固有ベクトルと表現行列 / 線形代数:転置による線形写像と対角化 / 微分積分:双曲線関数のテイラー展開と剰余項
2023年度 夏季(このページ・全13問)
数学I 問題1 微分積分:単調性と広義積分・級数 / 数学I 問題2 微分積分:連続性・重積分・体積 / 数学I 問題3 線形代数:固有値と対角化
線形代数:媒介変数を含む行列の像・固有値・対角化 / 線形代数:多項式空間から \mathbb{R}^3 への評価写像 / 微分積分:コーシー列と関数項級数の一様収束
線形代数:線形写像の像と2つの像の一致 / 線形代数:直交補空間と直交分解 / 微分積分:有理関数の不定積分と広義重積分
2023年度 夏季の出題内容
全13問
この13問の分野は数学13問です。
| 大問 | 分野 | 主題 | 解説の小見出し | 最終答 |
|---|---|---|---|---|
| 第1問 | 数学 | 単調性と広義積分・級数 | 場合分けを落とさない / (1) が (4) の前提になる | あり |
| 第2問 | 数学 | 連続性・重積分・体積 | (1)(a) の評価の型 / (1)(b) が本問の山場 | あり |
| 第3問 | 数学 | 固有値と対角化 | 実数か複素数かを書く / 最小多項式の決め方 | あり |
| 第4問 | 数学 | 部分空間と像の和 | (1) の答案の書き方 / (a) を1回の掃き出しで済ませる | あり |
| 第5問 | 数学 | ジョルダン標準形 | A^4=O を楽に示す / 冪零行列の標準形の決め方 | あり |
| 第6問 | 数学 | 素イデアルと極大イデアル | 定義で落としてはいけない条件 / 剰余環に翻訳する | あり |
| 第7問 | 数学 | 曲面の基本量と曲率 | グラフ曲面の公式に載せる / EG-F^2=W^2 を経由する | あり |
| 第8問 | 数学 | 商位相と写像の連続性 | (\ast) を最初に書く / 使う逆像の等式 | — |
| 第9問 | 数学 | 回転とストークスの定理 | 向きの確認 / 保存的な部分を分ける | あり |
| 第10問 | 数学 | 留数と広義積分 | 極の絶対値が場合分けの鍵 / 2位の極の留数 | あり |
| 第11問 | 数学 | ベルヌーイ型初期値問題 | y≠0 をどう書くか / 積分因子の計算 | あり |
| 第12問 | 数学 | 木の隣接行列と彩色 | (1) の読み方 / 木の使い方は2通り | あり |
| 第13問 | 数学 | 有限オートマトン | 定義で落としてはいけない点 / 状態の取り方が本問の核心 | あり |
2023年度 夏季の解説には失点しやすい点9件・検算8件が付いています。
前年度(2022年度 冬季)との違い
- 大問数
- 2022年度 冬季 4問 → 2023年度 夏季 13問
東京都立大学の公式過去問
- 公開年度範囲
- 直近数年度(春・冬入学)
- 公式の解答例
- 非公開(問題冊子のみ)
- 英語の扱い
- TOEFL/TOEIC スコア提出。
- 院試hubの最終確認
- 2026-06-03