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都立大 理学研究科 数理科学専攻 数学 2023年度 夏季 院試 過去問 解答例・解説(全13問)

全13問の分野は数学13問です。解説はすべて、途中式と最終答は大問1問ぶんを公開しています。残りは解答PDFに収録しています。問題本文は含みません。

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第1問 — 数学I 問題1 微分積分:単調性と広義積分・級数

方針

4小問すべてが置換 u=1+log⁡xu=1+\log x で ∫u−αdu\int u^{-\alpha}du に帰着する。この置換に気づけば (2)(3) は事実上 uu のべき関数の積分であり,(4) は (1) の単調性を根拠に積分判定法へ渡すだけである。 逆に置換を思いつかずに部分積分などに進むと,α\alpha が一般の正数であるために手が止まる。

場合分けを落とさない

∫u−αdu\int u^{-\alpha}du は α=1\alpha=1 のときだけ log⁡\log になる。(2) では α=1\alpha=1 を別扱いにし, (3) では α>1\alpha>1,α=1\alpha=1,0<α<10<\alpha<1 の3通りを書き分ける。 問題文は α\alpha を「正の実数」としか指定していないので,場合分けそのものが採点対象と考えてよい。

検算

(2) の答は α→1\alpha\to1 で 31−α−11−α=e(1−α)log⁡3−11−α⟶log⁡3 \frac{3^{1-\alpha}-1}{1-\alpha}=\frac{e^{(1-\alpha)\log3}-1}{1-\alpha}\longrightarrow\log3 となり,α=1\alpha=1 の値 log⁡3\log3 と連続につながる。(3) も α→1+0\alpha\to1+0 で 1/(α−1)→∞1/(\alpha-1)\to\infty となり, α=1\alpha=1 の発散と整合する。α=2\alpha=2 とすれば (2) は (3−1−1)/(−1)=2/3(3^{-1}-1)/(-1)=2/3, (3) は 11 で,いずれも直接計算と一致する。

(1) が (4) の前提になる

積分判定法は「正で単調減少」という仮定の下でのみ使える。本問では 1/fα1/f_\alpha の単調減少性が (1) からただちに従うので,(4) では「(1) より fαf_\alpha は正で単調増加,よって 1/fα1/f_\alpha は単調減少」 と一言書いてから不等式を立てる。この一言がないと,判定法の適用が無条件になり減点されやすい。

失点しやすい点

0<α<10<\alpha<1 のとき (1+log⁡x)α−1(1+\log x)^{\alpha-1} は指数が負だが,底が 11 以上なので値は 11 以下の正数であり, 符号の議論に影響しない。ここを「負の指数だから符号不明」として場合分けを増やす答案が多い。 また (4) では n=1n=1 の項が 1/fα(1)=11/f_\alpha(1)=1 と有限であることを確認しておく。 級数の収束・発散は先頭有限個の項に依らないが,発散を主張する際に定義域の端を曖昧にしないほうがよい。

解答

(1) 区間 [1,∞)[1,\infty) での単調増加

x≥1x\geq 1 では log⁡x≥0\log x\geq 0 だから 1+log⁡x≥1>0 1+\log x\geq 1>0 であり,fα(x)=x(1+log⁡x)αf_\alpha(x)=x(1+\log x)^\alpha は [1,∞)[1,\infty) で定義されて正の値をとる。積の微分法により fα′(x)=(1+log⁡x)α+x⋅α(1+log⁡x)α−1⋅1x=(1+log⁡x)α−1(1+log⁡x+α). f_\alpha'(x)=(1+\log x)^\alpha+x\cdot\alpha(1+\log x)^{\alpha-1}\cdot\frac1x =(1+\log x)^{\alpha-1}\bigl(1+\log x+\alpha\bigr). ここで底 1+log⁡x≥1>01+\log x\geq 1>0 なので,指数 α−1\alpha-1 の符号によらず (1+log⁡x)α−1≥1>0(1+\log x)^{\alpha-1}\geq 1>0 が成り立つ。また α>0\alpha>0 より 1+log⁡x+α≥1+α>0 1+\log x+\alpha\geq 1+\alpha>0 である。よって fα′(x)>0f_\alpha'(x)>0(x≥1x\geq1)であり,fαf_\alpha は [1,∞)[1,\infty) で狭義単調増加である。

(2) 定積分

u=1+log⁡xu=1+\log x とおくと du=dx/xdu=dx/x であり,x=1x=1 のとき u=1u=1,x=e2x=e^2 のとき u=3u=3 である。 dxfα(x)=dxx(1+log⁡x)α=duuα \frac{dx}{f_\alpha(x)}=\frac{dx}{x(1+\log x)^\alpha}=\frac{du}{u^\alpha} だから ∫1e2dxfα(x)=∫13u−α du. \int_1^{e^2}\frac{dx}{f_\alpha(x)}=\int_1^{3}u^{-\alpha}\,du. α≠1\alpha\neq1 のときは ∫13u−α du=[u1−α1−α]13=31−α−11−α, \int_1^3 u^{-\alpha}\,du=\Bigl[\frac{u^{1-\alpha}}{1-\alpha}\Bigr]_1^3=\frac{3^{1-\alpha}-1}{1-\alpha}, α=1\alpha=1 のときは ∫13duu=log⁡3 \int_1^3\frac{du}{u}=\log 3 である。

(3) 広義積分

R>1R>1 に対し同じ置換を行うと,x=Rx=R のとき u=1+log⁡Ru=1+\log R だから ∫1Rdxfα(x)=∫11+log⁡Ru−α du. \int_1^{R}\frac{dx}{f_\alpha(x)}=\int_1^{1+\log R}u^{-\alpha}\,du . R→∞R\to\infty のとき 1+log⁡R→∞1+\log R\to\infty である。U→∞U\to\infty で ∫1Uu−α du={U1−α−11−α⟶1α−1(α>1),log⁡U⟶∞(α=1),U1−α−11−α⟶∞(0<α<1) \int_1^{U}u^{-\alpha}\,du= \begin{cases} \dfrac{U^{1-\alpha}-1}{1-\alpha}\longrightarrow \dfrac{1}{\alpha-1} & (\alpha>1),\\[2mm] \log U\longrightarrow\infty & (\alpha=1),\\[1mm] \dfrac{U^{1-\alpha}-1}{1-\alpha}\longrightarrow\infty & (0<\alpha<1) \end{cases} であるから,広義積分は α>1\alpha>1 のとき収束して値は 1/(α−1)1/(\alpha-1),0<α≤10<\alpha\leq1 のとき発散する。

(4) 無限級数

(1) より fαf_\alpha は [1,∞)[1,\infty) で正かつ狭義単調増加だから, g(x):=1fα(x)>0 g(x):=\frac{1}{f_\alpha(x)}>0 は [1,∞)[1,\infty) で単調減少である。よって各整数 n≥1n\geq1 と x∈[n,n+1]x\in[n,n+1] に対し g(n+1)≤g(x)≤g(n)g(n+1)\leq g(x)\leq g(n) が成り立ち,[n,n+1][n,n+1] で積分すると g(n+1)≤∫nn+1g(x) dx≤g(n) g(n+1)\leq\int_n^{n+1}g(x)\,dx\leq g(n) を得る。n=1,…,N−1n=1,\dots,N-1 で加えると ∑n=2Ng(n) ≤ ∫1Ng(x) dx ≤ ∑n=1N−1g(n) \sum_{n=2}^{N}g(n)\ \leq\ \int_1^{N}g(x)\,dx\ \leq\ \sum_{n=1}^{N-1}g(n) となる。したがって級数 ∑n≥1g(n)\sum_{n\geq1}g(n) の収束と広義積分 ∫1∞g(x) dx\int_1^\infty g(x)\,dx の収束は同値である。 (3) の結果と合わせて,級数は α>1\alpha>1 のとき収束し,0<α≤10<\alpha\leq1 のとき発散する。

最終答

α≠1\alpha\neq1 のとき 31−α−11−α\dfrac{3^{1-\alpha}-1}{1-\alpha},α=1\alpha=1 のとき log⁡3\log3

α>1\alpha>1 のとき収束し値は 1α−1\dfrac{1}{\alpha-1}。0<α≤10<\alpha\leq1 のとき発散

α>1\alpha>1 のとき収束,0<α≤10<\alpha\leq1 のとき発散

第2問 — 数学I 問題2 微分積分:連続性・重積分・体積

(1)(a) の評価の型

分子の各項を r2r^2 の定数倍で押さえ,分母 rr で割って O(r)O(r) を出すのが定石である。 ∣tan⁡−1s∣<π/2|\tan^{-1}s|<\pi/2 は値域そのものなので追加の議論は要らない。 分子に x2x^2 と y∣y∣y|y| という2次の量しか現れないことが本問の仕掛けで, もし分子に1次の項があれば極限は方向に依存して連続でなくなる。

(1)(b) が本問の山場

連続性と偏微分可能性は独立である。本問はその実例で,xx 方向だけ ∣h∣/h|h|/h が残って極限が存在しない。 一方 yy 方向では 2y∣y∣/∣y∣=2y2y|y|/|y|=2y と ∣y∣|y| が約分されて1次式になり,商が定数になる。 分子に x2x^2 ではなく 2y∣y∣2y|y| を置いた出題意図はここにあり, 「絶対値の付き方で結論が変わる」ことを見抜けるかが問われている。 偏微分係数を求める際に,形式的に ∂f/∂x\partial f/\partial x を計算して (0,0)(0,0) を代入する答案は誤りで, 定義に戻って差商の極限を調べる必要がある。

(2) の別解

累次積分でも計算できる。xx を固定して yy について先に積分すると ∫0(π−mx)/nsin⁡(mx+ny) dy=1+cos⁡mxn \int_0^{(\pi-mx)/n}\sin(mx+ny)\,dy=\frac{1+\cos mx}{n} となり,これを 0≤x≤π/m0\leq x\leq\pi/m で積分して π/(mn)\pi/(mn) を得る。 ただし u=mx, v=nyu=mx,\ v=ny で正規化してから s=u+vs=u+v で切る方が,m,nm,n が最後まで係数として外に出るため計算が短い。

検算

(2) は m=n=1m=n=1 とすると ∫0πssin⁡s ds=π\int_0^\pi s\sin s\,ds=\pi そのもので,値 π\pi と一致する。 (3) は球全体の体積 32π/332\pi/3 から円柱の外側の部分を引いて確かめられる。外側は ∫02π ⁣ ⁣∫3224−r2 r dr dθ=4π⋅13=4π3 \int_0^{2\pi}\!\!\int_{\sqrt3}^{2}2\sqrt{4-r^2}\,r\,dr\,d\theta=4\pi\cdot\frac13=\frac{4\pi}{3} であり,32π/3−4π/3=28π/332\pi/3-4\pi/3=28\pi/3 となって一致する。

失点しやすい点

(3) で円柱の外側を「2つの球冠」と誤認する答案が多い。切り落とされるのは球の上下の冠ではなく 側面のリング状の部分であり,球冠の公式を当てると値が合わない。上の断面図で, 除かれる領域が左右の三日月形であることを確認しておくとよい。

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第3問 — 数学I 問題3 線形代数:固有値と対角化

方針

第3列が t(0,0,1,0){}^t(0,0,1,0) であることに気づけば,固有多項式は3次行列式1つに落ちる。 4次行列式をそのまま展開すると符号ミスが出やすいので, 「0が多い列(行)で展開する」という原則を最初に適用する。 e3\mathrm{e}_3 が固有値 11 の固有ベクトルであることも同時に読み取れる。

実数か複素数かを書く

問題文は係数体を明示していないが,固有多項式が λ2+1\lambda^2+1 を因数にもつ以上, 「複素数の範囲で考える」と宣言してから固有値を 1,i,−i1,i,-i と答えるのが安全である。 (3) では複素数体上で対角化可能,実数体上では不可能,の両方を書く。 どちらか一方だけでは,出題者が用意した場合分けを落としたことになる。

最小多項式の決め方

「固有多項式の約数」「各固有値を根にもつ」の2条件で候補を絞り,残った候補を代入して確かめるのが最短である。 本問では λ=1\lambda=1 の固有空間の次元が重複度 22 と一致するので, (λ−1)(\lambda-1) は1乗しか現れない。この段階で mAm_A は計算せずに決まるから, (A−E)(A2+E)=O(A-E)(A^2+E)=O の確認は答案では検算の位置づけでよい。

検算

固有値の和は 1+1+i+(−i)=21+1+i+(-i)=2 で,tr⁡A=−1−1+1+3=2\operatorname{tr}A=-1-1+1+3=2 と一致する。 積は 1⋅1⋅i⋅(−i)=11\cdot1\cdot i\cdot(-i)=1 で,固有多項式に λ=0\lambda=0 を代入した det⁡A=1\det A=1 と一致する。 固有ベクトルは Av=λvA\mathbf{v}=\lambda\mathbf{v} に代入して1本ずつ確かめられるので, 時間があれば λ=i\lambda=i の1本だけでも検算しておく。

失点しやすい点

λ=1\lambda=1 の固有空間を求めるとき,A−EA-E の第3行が零行になることを見落として x3=0x_3=0 と決めてしまう誤りが多い。第3列が零列であることと第3行が零行であることは別で, 本問では (A−E)(A-E) の第3行が零になるため x3x_3 は自由変数である。 また PP の列の順序と対角行列の並びは必ず対応させる。

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第4問 — 数学I 問題4 線形代数:部分空間と像の和

方針

(1) の WW は,係数 −1/2-1/2 に惑わされなければ Im⁡f+Im⁡g\operatorname{Im}f+\operatorname{Im}g にほかならない。 y\mathbf{y} が V1V_1 全体を動く以上 −12g(y)-\tfrac12g(\mathbf{y}) も Im⁡g\operatorname{Im}g 全体を動くからである。 この読み替えを (2) の冒頭で書いておくと,以降は A,BA,B の4本の列が張る空間についての標準的な問題になる。

(1) の答案の書き方

部分空間の判定は「空でない」「和で閉じる」「スカラー倍で閉じる」の3点を書く。 本問で本質的なのは,2つの元の和が再び f(∗)−12g(∗)f(\ast)-\tfrac12g(\ast) の形に書けることで, そのために x1+x2\mathbf{x}_1+\mathbf{x}_2 と y1+y2\mathbf{y}_1+\mathbf{y}_2 を新しい代表元として取り直す。 「f,gf,g が線形だから」と一言で済ませず,どの性質をどこで使ったかを式で示す。

(a) を1回の掃き出しで済ませる

tt を未知数のまま拡大係数行列に入れて掃き出すと,最終行に t−2t-2 が残り条件が直接読める。 tt を消してから別に階数を数えると2度手間になる。 なお WW は R4\mathbb{R}^4 の3次元部分空間,すなわち超平面なので,法ベクトルを1本求めても同じ結論が出る。 a1,a2,b1\mathbf{a}_1,\mathbf{a}_2,\mathbf{b}_1 に直交するベクトルは t(−7,4,−3,1){}^t(-7,4,-3,1) で, v\mathbf{v} との内積は 7+12−21+t=t−27+12-21+t=t-2 となり,やはり t=2t=2 を得る。

検算

t=2t=2 のとき,掃き出しの結果を戻すと v=3a1+2a2−b1\mathbf{v}=3\mathbf{a}_1+2\mathbf{a}_2-\mathbf{b}_1 である。 これは x=t(3,2)\mathbf{x}={}^t(3,2),y=t(2,0)\mathbf{y}={}^t(2,0) にあたり,実際 f(t(3,2))−12g(t(2,0))=t(1,5,3,−4)−t(2,2,−4,−6)=t(−1,3,7,2)=v f\bigl({}^t(3,2)\bigr)-\tfrac12 g\bigl({}^t(2,0)\bigr) ={}^t(1,5,3,-4)-{}^t(2,2,-4,-6)={}^t(-1,3,7,2)=\mathbf{v} と一致する。答案に具体的な x,y\mathbf{x},\mathbf{y} を1組書いておくと,t=2t=2 の十分性まで示したことになる。

失点しやすい点

WW を Im⁡A\operatorname{Im}A と Im⁡B\operatorname{Im}B の直和と誤って次元を 2+2=42+2=4 とする答案が多い。 本問では b2\mathbf{b}_2 が他の3本の1次結合になるため次元は 33 であり,和は直和でない。 また基底は「1次独立かつ WW を張る」ことが要るので,掃き出し後の行ベクトルではなく, 主成分の位置に対応するもとの列ベクトルを答える。

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第5問 — 数学II 問題1 線形代数:ジョルダン標準形

方針

「必要があれば場合分けせよ」とあるので,まず cc に依存しない部分を確定させる。 本問では固有多項式が cc に依らず λ4\lambda^4 なので,場合分けは最小多項式から先に限られる。 固有多項式を4次行列式の展開で求めようとすると cc が入って煩雑になるが, A4=OA^4=O を示せば「固有値は 00 のみ」がただちに従い,次数から λ4\lambda^4 が確定する。

A4=OA^4=O を楽に示す

第4列が第2列の −1-1 倍であることに気づくと Aw=0A\mathbf{w}=\mathbf{0} が無条件で出る。 さらに A3A^3 が w\mathbf{w} を列にもつ階数1の行列になるので, A4=OA^4=O は A3A^3 の具体形を書いた時点で1行で済む。 A2,A3A^2,A^3 を計算する手間は避けられないが,計算するのは A3A^3 までで十分である。

冪零行列の標準形の決め方

冪零行列では,細胞の個数 =dim⁡ker⁡A=\dim\ker A,最大細胞の大きさ ==冪零指数,細胞の大きさの総和 ==次数, の3つで形が決まる。4次で最大細胞3,個数2なら 3+13+1 しかない,というのが (2) の c=−1c=-1 の議論である。 より一般には rank⁡Ak\operatorname{rank}A^k の列 3,2,1,03,2,1,0(c≠−1c\neq-1)と 2,1,0,02,1,0,0(c=−1c=-1)から 細胞の大きさが読み取れる。

PP の作り方と向き

J=P−1APJ=P^{-1}AP は AP=PJAP=PJ と同値で,JJ の第 jj 列が ej−1\mathbf{e}_{j-1}(j≥2j\geq2)であることから Apj=pj−1A\mathbf{p}_j=\mathbf{p}_{j-1} が出る。したがって鎖は「最後の列から前へ」作る。 p1=A3v\mathbf{p}_1=A^3\mathbf{v} を先に決めて p2\mathbf{p}_2 を Ap2=p1A\mathbf{p}_2=\mathbf{p}_1 から逆算する必要はない。 細胞の 11 を上三角に置くか下三角に置くかで PP の列の並びが逆になるので, 答案では採用した JJ の形を明記する。

検算

tr⁡A=−2+9+3−10=0\operatorname{tr}A=-2+9+3-10=0,tr⁡A2=6+(−2c−11)+(−6)+(2c+11)=0\operatorname{tr}A^2=6+(-2c-11)+(-6)+(2c+11)=0 はいずれも 固有値がすべて 00 であることと整合する。 PP については APAP と PJPJ の第2列(Ap2A\mathbf{p}_2 と p1\mathbf{p}_1)を比べるのが最も速く, A⋅t(−3,−2c−11,−2,−2c−11)=t(0,c+1,0,c+1)A\cdot{}^t(-3,-2c-11,-2,-2c-11)={}^t(0,c+1,0,c+1) を確かめればよい。 det⁡P=−(c+1)\det P=-(c+1) が c=−1c=-1 で 00 になることも,場合分けの境目と一致している。

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第6問 — 数学II 問題2 代数:素イデアルと極大イデアル

定義で落としてはいけない条件

素イデアル・極大イデアルのいずれも「I≠RI\neq R」が定義の一部である。 これを書かないと RR 自身が素イデアルになってしまい,(2) の議論も破綻する。 また素イデアルの条件は「ab∈Iab\in I ならば a∈Ia\in I または b∈Ib\in I」であって, 「a∈Ia\in I かつ b∈Ib\in I」でも「ab∈Iab\in I ならば a∈Ia\in I」でもない。

剰余環に翻訳する

R/IR/I が整域(体)であることを素(極大)の言い換えとして書いておくと, (b) は準同型定理1本で終わる。逆に (a) を剰余環で示すなら, R/f−1(I)R/f^{-1}(I) が S/IS/I に単射に埋め込まれること, および整域の部分環(単位元を共有)が整域であることを使う。 この見方をすると,(a) に全射性が要らない理由も「埋め込みで十分だから」と説明できる。

全射性がどこで効くか

(b) の証明で全射性は φ=π∘f\varphi=\pi\circ f が全射であること, すなわち R/f−1(I)≅S/IR/f^{-1}(I)\cong S/I という同型を得るために使う。 埋め込みだけでは「体の部分環」しか言えず,部分環は体とは限らない。 Q\mathbb{Q} の部分環 Z\mathbb{Z} がその例で,これがそのまま (c) の反例になっている。

(c) の反例の選び方

Q[x]\mathbb{Q}[x] の極大イデアルは既約多項式 gg による (g)(g) の形をしている。 最も簡単な g=xg=x を取れば,引き戻しは「定数項が 00 の整数係数多項式」となり, 剰余環が Z\mathbb{Z} になることがすぐ分かる。 極大でないことを示すには「剰余環が体でない」と述べるか, 真に大きい真イデアル (2,x)(2,x) を1つ挙げればよい。後者を書く場合は (2,x)≠Z[x](2,x)\neq\mathbb{Z}[x](1∉(2,x)1\notin(2,x))の確認まで添える。

この設問が試していること

(a)(b) は教科書どおりの証明だが,(c) は「証明のどの部分が仮定に依存していたか」を 自分で点検できるかを問うている。証明を丸暗記していると, (a) にも全射性が必要だと思い込んで (A) を誤答しやすい。 証明を書いたら仮定の使用箇所に印を付けておく,という習慣が直接得点につながる設問である。

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第7問 — 数学II 問題3 幾何:曲面の基本量と曲率

グラフ曲面の公式に載せる

z=ϕ(x,y)z=\phi(x,y) のグラフは p=t(x,y,ϕ)p={}^t(x,y,\phi) と表され, E=1+ϕx2,F=ϕxϕy,G=1+ϕy2,px×py=t(−ϕx,−ϕy,1), E=1+\phi_x^2,\quad F=\phi_x\phi_y,\quad G=1+\phi_y^2,\quad p_x\times p_y={}^t(-\phi_x,-\phi_y,1), L=ϕxx1+ϕx2+ϕy2,M=ϕxy1+ϕx2+ϕy2,N=ϕyy1+ϕx2+ϕy2 L=\frac{\phi_{xx}}{\sqrt{1+\phi_x^2+\phi_y^2}},\quad M=\frac{\phi_{xy}}{\sqrt{1+\phi_x^2+\phi_y^2}},\quad N=\frac{\phi_{yy}}{\sqrt{1+\phi_x^2+\phi_y^2}} となる。本問では ϕx=−tan⁡x, ϕy=tan⁡y\phi_x=-\tan x,\ \phi_y=\tan y で,ϕ\phi が xx だけの関数と yy だけの関数の和なので ϕxy=0\phi_{xy}=0,すなわち M=0M=0 が最初から分かる。この構造を見抜いておくと計算量が半減する。

EG−F2=W2EG-F^2=W^2 を経由する

EG−F2=∣px×py∣2EG-F^2=|p_x\times p_y|^2 は一般に成り立つ恒等式(ラグランジュの恒等式)である。 本問では W2=1+tan⁡2x+tan⁡2yW^2=1+\tan^2x+\tan^2y を1回計算すれば, (1) の検算にも (4) の分母にも使い回せる。 逆に EG−F2EG-F^2 を展開だけで処理すると,tan⁡2xtan⁡2y\tan^2x\tan^2y の相殺を見落としやすい。

H=0H=0 の意味

M=0M=0 であり,さらに EN=1Wcos⁡2xcos⁡2y=−GL EN=\frac{1}{W\cos^2x\cos^2y}=-GL となって ENEN と GLGL がちょうど打ち消し合う。この曲面は z=log⁡cos⁡xcos⁡y z=\log\frac{\cos x}{\cos y} で与えられるシェルクの極小曲面で,平均曲率が恒等的に 00 になることが知られている。 H=0H=0 が出たら計算ミスを疑うのではなく,むしろ検算が通ったと考えてよい。 一方 K<0K<0 は各点が鞍点型であることを表す。極小曲面では主曲率が κ,−κ\kappa,-\kappa の形になり K=−κ2≤0K=-\kappa^2\leq0 となるので,H=0H=0 と K<0K<0 は互いに整合している。

法線の向きの指定

問題文は nn を px×pyp_x\times p_y と同じ向きと指定している。 向きを逆に取ると L,M,NL,M,N と HH の符号がすべて反転し,KK だけが変わらない。 KK は向きに依らない量,HH は向きに依存する量である,という区別を答案で意識しておくと, 符号の指定を落とす失点を防げる。

検算

x=y=0x=y=0 を代入すると E=G=1, F=0, W=1, L=−1, M=0, N=1E=G=1,\ F=0,\ W=1,\ L=-1,\ M=0,\ N=1 となり, K=−1, H=0K=-1,\ H=0 を得る。閉じた式 K=−cos⁡2xcos⁡2y/(1−sin⁡2xsin⁡2y)2K=-\cos^2x\cos^2y/(1-\sin^2x\sin^2y)^2 も x=y=0x=y=0 で −1-1 を与えるので一致する。 原点付近で z≈(y2−x2)/2z\approx(y^2-x^2)/2 という鞍面になることからも K=−1K=-1 は納得できる。

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第8問 — 数学II 問題4 位相:商位相と写像の連続性

方針

商位相では「X/σX/\sigma の部分集合が開である」ことが,XX の側の条件として定義されている。 したがって商空間についての主張は,逆像を取って XX の位相の問題に翻訳すれば自動的に片づく。 (1) は位相の3公理を逆像で書き換えるだけ,(2) は (∗)(\ast) を書いてから逆像を1回計算するだけである。 逆に X/σX/\sigma の中で直接開集合を構成しようとすると,同値類の扱いで行き詰まる。

(∗)(\ast) を最初に書く

(2) の証明の核心は可換性 f~∘πσ=πρ∘f\tilde f\circ\pi_\sigma=\pi_\rho\circ f である。 これは f~\tilde f の定義そのものだが,答案では代表元 xx を取って両辺が [f(x)]ρ[f(x)]_\rho に等しいことを 1行で確認してから使う。ここを飛ばすと,以降の逆像の変形が根拠のないものになる。 なお f~\tilde f が well-defined であること(x∼σx′⇒f(x)∼ρf(x′)x\sim_\sigma x'\Rightarrow f(x)\sim_\rho f(x'))は 問題文で仮定されているので,証明し直す必要はない。

使う逆像の等式

本問で必要なのは次の3つだけである。 π−1(⋃λUλ)=⋃λπ−1(Uλ),π−1(U1∩U2)=π−1(U1)∩π−1(U2),(g∘h)−1(V)=h−1(g−1(V)). \pi^{-1}\Bigl(\bigcup_\lambda U_\lambda\Bigr)=\bigcup_\lambda\pi^{-1}(U_\lambda),\quad \pi^{-1}(U_1\cap U_2)=\pi^{-1}(U_1)\cap\pi^{-1}(U_2),\quad (g\circ h)^{-1}(V)=h^{-1}\bigl(g^{-1}(V)\bigr). いずれも要素を取って両側の同値性を示せば1行で証明できる。 像 π(⋅)\pi(\cdot) では和集合とは交換するが共通部分とは一般に交換しないので, 「逆像を使う」という方針を最初に決めておくことが大切である。

背景:商位相の普遍性

OX/σ\mathcal{O}_{X/\sigma} は πσ\pi_\sigma を連続にする位相のうち最も強い(開集合が最も多い)ものである。 一般に商空間からの写像 g ⁣:X/σ→Zg\colon X/\sigma\to Z について 「gg が連続   ⟺  \iff g∘πσg\circ\pi_\sigma が連続」が成り立ち,これが商位相の普遍性である。 (2) はこの普遍性を Z=Y/ρZ=Y/\rho,g=f~g=\tilde f に適用したもので, g∘πσ=πρ∘fg\circ\pi_\sigma=\pi_\rho\circ f が連続写像の合成として連続であることから直ちに従う。 答案でこの一般命題を使う場合は,命題の証明(上の逆像計算)も添えておくのが安全である。

失点しやすい点

(1) で「有限個の共通部分」を「任意個の共通部分」と書くのは誤りである。位相の公理は 和集合が任意個,共通部分が有限個であり,この非対称性は逆像の議論とは無関係に押さえておく。 また (2) で f~−1(V)\tilde f^{-1}(V) が X/σX/\sigma の部分集合であることと, その πσ\pi_\sigma による逆像が XX の部分集合であることを混同しないよう, どの空間の部分集合を扱っているかを式ごとに確認する。

数学II 問題4 位相:商位相と写像の連続性の途中式・最終答をPDFで見る

第9問 — 数学II 問題5 解析:回転とストークスの定理

方針

zz 成分が 00 で x,yx,y 成分も zz に依らないので,実質は平面のグリーンの定理である。 rot⁡F\operatorname{rot}\mathbf{F} の第3成分がそのまま被積分関数になり,(1) の答が (2) にそのまま入る。 CC が閉曲線であることは端点をつなげて確認する。ここを確かめずに定理を使うと, そもそも適用条件を満たさない場合があり得る。

向きの確認

ストークスの定理は「曲面の法線の向き」と「境界の向き」が右手系で対応しているときに成り立つ。 本問の CC は (0,0)→(1,0)→(1,1)→(0,0)(0,0)\to(1,0)\to(1,1)\to(0,0) と回るので反時計回り, これに対応する法線は t(0,0,1){}^t(0,0,1) である。もし C3C_3 の向きが逆であれば符号が反転して −5/12-5/12 になる。 向きの確認を1行書いておくと,符号の根拠が採点者に伝わる。

保存的な部分を分ける

F\mathbf{F} は F=t(sinh⁡xsin⁡y, cosh⁡xcos⁡y, 0)+t(y2, x3, 0) \mathbf{F}={}^t\bigl(\sinh x\sin y,\ \cosh x\cos y,\ 0\bigr)+{}^t\bigl(y^2,\ x^3,\ 0\bigr) と分解でき,第1項はスカラー場 Φ(x,y)=cosh⁡xsin⁡y\Phi(x,y)=\cosh x\sin y の勾配である (Φx=sinh⁡xsin⁡y, Φy=cosh⁡xcos⁡y\Phi_x=\sinh x\sin y,\ \Phi_y=\cosh x\cos y)。 保存場の閉曲線に沿う積分は 00 なので,第1項は寄与しない。 実際 (1) の計算でも sinh⁡xcos⁡y\sinh x\cos y が引き算で消えており,同じ事実の別の見え方になっている。 残るのは t(y2,x3,0){}^t(y^2,x^3,0) の周回積分で,これが ∬D(3x2−2y) dx dy\iint_D(3x^2-2y)\,dx\,dy である。

検算:直接計算

定義どおりに3本の積分を足しても確かめられる。C1C_1 上では y=0, dr=t(1,0,0)dty=0,\ d\mathbf{r}={}^t(1,0,0)dt で F⋅dr=0\mathbf{F}\cdot d\mathbf{r}=0。C2C_2 上では x=1x=1 で ∫01(cosh⁡1cos⁡t+1) dt=cosh⁡1sin⁡1+1. \int_0^1(\cosh 1\cos t+1)\,dt=\cosh1\sin1+1 . C3C_3 上では x=y=sx=y=s(ss は 11 から 00 へ)と取り直すと −∫01(sinh⁡ssin⁡s+cosh⁡scos⁡s+s2+s3)ds=−([cosh⁡ssin⁡s]01+13+14)=−cosh⁡1sin⁡1−712. -\int_0^1\bigl(\sinh s\sin s+\cosh s\cos s+s^2+s^3\bigr)ds =-\Bigl(\bigl[\cosh s\sin s\bigr]_0^1+\frac13+\frac14\Bigr)=-\cosh1\sin1-\frac{7}{12}. 合計すると cosh⁡1sin⁡1\cosh1\sin1 が相殺して 1−7/12=5/121-7/12=5/12 となり,ストークスの定理による値と一致する。 超越的な項がきれいに消えることが,向きと計算の正しさの強い証拠になる。

失点しやすい点

rot⁡\operatorname{rot} の第3成分を ∂F1/∂y−∂F2/∂x\partial F_1/\partial y-\partial F_2/\partial x と順序を逆に書く誤りが多い。 定義は ∂F2/∂x−∂F1/∂y\partial F_2/\partial x-\partial F_1/\partial y であり,符号が反転すると答が −5/12-5/12 になる。 また積分領域を 0≤y≤x0\leq y\leq x ではなく 0≤x≤y0\leq x\leq y,すなわち頂点 (0,0),(0,1),(1,1)(0,0),(0,1),(1,1) の三角形と取り違えると ∫01 ⁣ ⁣∫0y(3x2−2y) dx dy=∫01(y3−2y2)dy=−512 \int_0^1\!\!\int_0^{y}\bigl(3x^2-2y\bigr)\,dx\,dy=\int_0^1\bigl(y^3-2y^2\bigr)dy=-\frac{5}{12} となり,符号だけが変わるので誤りに気づきにくい。図を1つ描いて領域を確定させるのが確実である。

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第10問 — 数学II 問題6 複素解析:留数と広義積分

極の絶対値が場合分けの鍵

RR の場合分けが c/a\sqrt{c/a} を境にしているのは,2つの極がどちらも原点からの距離 c/a\sqrt{c/a} にあるからである。これは判別式が負で解が共役なので ∣α∣2=ααˉ=c/a|\alpha|^2=\alpha\bar\alpha=c/a となることから従う。 この一言を書かずに「極は CRC_R の外(内)にある」とだけ書くと,根拠のない主張になる。 なお R=c/aR=\sqrt{c/a} では極が積分路上に乗るため定義できず,問題文もその場合を除いている。

2位の極の留数

kk 位の極では Res⁡z=αf=1(k−1)!lim⁡z→αdk−1dzk−1{(z−α)kf(z)} \operatorname*{Res}_{z=\alpha}f=\frac{1}{(k-1)!}\lim_{z\to\alpha}\frac{d^{k-1}}{dz^{k-1}}\Bigl\{(z-\alpha)^kf(z)\Bigr\} を使う。本問は k=2k=2 なので1回微分するだけだが, a2(z−α)2(z−αˉ)2a^2(z-\alpha)^2(z-\bar\alpha)^2 という因数分解を先に書いておかないと, (az2+bz+c)2(az^2+bz+c)^2 のまま微分して式が膨らむ。 微分後に (z−αˉ)−2z(z−αˉ)3\dfrac{(z-\bar\alpha)-2z}{(z-\bar\alpha)^3} まで約分してから代入するのが最短である。

検算

b=0b=0 とすると被積分関数 x/(ax2+c)2x/(ax^2+c)^2 は奇関数なので広義積分は 00, 公式も −2π⋅0/(4ac)3/2=0-2\pi\cdot0/(4ac)^{3/2}=0 で一致する。 また a=c=1, b=0a=c=1,\ b=0 の近くで bb を小さくすると,答は bb の1次で減少するはずで, 実際 −2πb/(4−b2)3/2≈−πb/4-2\pi b/(4-b^2)^{3/2}\approx-\pi b/4 となる。 a=b=c=1a=b=c=1 では D=3D=3 で公式の値は −2π/(33)-2\pi/(3\sqrt3) である。 一方,平方完成して u=x+1/2u=x+1/2 と置換すると x=u−1/2x=u-1/2,x2+x+1=u2+3/4x^2+x+1=u^2+3/4 で, 奇関数部分が消えて ∫−∞∞x dx(x2+x+1)2=−12∫−∞∞du(u2+3/4)2=−12⋅π2 (3/2)3=−2π33 \int_{-\infty}^{\infty}\frac{x\,dx}{(x^2+x+1)^2} =-\frac12\int_{-\infty}^{\infty}\frac{du}{(u^2+3/4)^2} =-\frac12\cdot\frac{\pi}{2\,(\sqrt3/2)^3}=-\frac{2\pi}{3\sqrt3} となり一致する(∫−∞∞du/(u2+k2)2=π/(2k3)\int_{-\infty}^{\infty}du/(u^2+k^2)^2=\pi/(2k^3) を用いた)。

主値と広義積分の区別

上半平面の半円を使う議論が直接与えるのは対称区間の極限 lim⁡R→∞∫−RR\lim_{R\to\infty}\int_{-R}^{R} すなわちコーシーの主値である。 本問では被積分関数が O(∣x∣−3)O(|x|^{-3}) で絶対収束するので,主値と広義積分は一致する。 分子の次数がもう1つ高い場合(たとえば x2/(ax2+bx+c)2x^2/(ax^2+bx+c)^2 を x/(ax2+bx+c)x/(ax^2+bx+c) に置き換えた形)には 絶対収束しないので,主値であることを断らなければならない。この確認を1行入れておくとよい。

失点しやすい点

(3) の評価で ∣az2+bz+c∣≥aR2−∣b∣R−c|az^2+bz+c|\geq aR^2-|b|R-c の bb に絶対値を付け忘れる誤りが多い。 bb の符号は仮定されていないので,下からの評価には ∣b∣|b| が必要である。 また ∣f∣|f| の分母は2乗されているので,評価も2乗してから使う。 (4) では ∫CR=∫C1,R+∫C2,R\int_{C_R}=\int_{C_{1,R}}+\int_{C_{2,R}} の分解を明示し, どの項が RR に依らない定数でどの項が 00 に収束するかを書き分ける。

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第11問 — 数学II 問題7 解析:ベルヌーイ型初期値問題

方針

y′=P(x)y+Q(x)yny'=P(x)y+Q(x)y^{n} の形をベルヌーイ型といい,u=y1−nu=y^{1-n} で線形方程式に帰着する。 本問は n=2n=2 なので u=y−1u=y^{-1} であり,これは問題文が (1) で指定している。 (1) を計算するだけなら1行だが,y≠0y\neq0 を確認しておかないと u=1/yu=1/y が定義できず, 以降の議論の前提が崩れる。

y≠0y\neq0 をどう書くか

最も短いのは解の一意性を使う議論である。y≡0y\equiv0 は初期値 y(x0)=0y(x_0)=0 をもつ解であり, 右辺は (x,y)(x,y) の近傍で yy についてリプシッツ連続だから, ある点で 00 になる解は恒等的に 00 でなければならない。 y(0)=1/2≠0y(0)=1/2\neq0 なのでそうではない。 一意性定理に触れずに済ませたい場合は,最終的に得た yy が実際に方程式と初期条件を満たすことを 代入で確かめ,「求めた関数が解である」と結論する構成にしてもよい。

積分因子の計算

u′+u=1+cos⁡xu'+u=1+\cos x の積分因子は e∫1 dx=exe^{\int1\,dx}=e^{x} である。 ∫excos⁡x dx\int e^{x}\cos x\,dx は部分積分2回でも出るが, excos⁡x=Re⁡e(1+i)xe^{x}\cos x=\operatorname{Re}e^{(1+i)x} として ∫e(1+i)xdx=e(1+i)x1+i=(1−i)ex(cos⁡x+isin⁡x)2 \int e^{(1+i)x}dx=\frac{e^{(1+i)x}}{1+i}=\frac{(1-i)e^{x}(\cos x+i\sin x)}{2} の実部を取ると ex(cos⁡x+sin⁡x)/2e^{x}(\cos x+\sin x)/2 が一度に出る。 どちらで求めても,答案では微分して戻る確認を1行入れておくと安全である。

検算

x=0x=0 で y(0)=2/(2+0+1+1)=1/2y(0)=2/(2+0+1+1)=1/2 となり初期条件を満たす。 また u=1/yu=1/y が u′+u=1+cos⁡xu'+u=1+\cos x を満たすことは u′=cos⁡x−sin⁡x−e−x2,u′+u=cos⁡x−sin⁡x−e−x2+2+sin⁡x+cos⁡x+e−x2=1+cos⁡x u'=\frac{\cos x-\sin x-e^{-x}}{2},\qquad u'+u=\frac{\cos x-\sin x-e^{-x}}{2}+\frac{2+\sin x+\cos x+e^{-x}}{2}=1+\cos x で確かめられる。sin⁡x\sin x と e−xe^{-x} が消えて cos⁡x\cos x だけが残る形になるので, 符号ミスがあればここで必ず露見する。

解のふるまい

x→+∞x\to+\infty では e−x→0e^{-x}\to0 なので y(x)⟶22+sin⁡x+cos⁡x y(x)\longrightarrow\frac{2}{2+\sin x+\cos x} という周期 2π2\pi の関数に漸近する。強制項 1+cos⁡x1+\cos x の周期性がそのまま解に残る形で, 指数的に減衰する項 e−x/2e^{-x}/2 が初期条件の情報を運んでいる。 逆に x→−∞x\to-\infty では e−x→∞e^{-x}\to\infty となり y(x)→0y(x)\to0 である。 この設問は「非線形方程式でも適切な変換で線形方程式に帰着でき, そこから解の大域的な存在と漸近挙動まで読み取れる」ことを試している。

失点しやすい点

u′=−y′/y2u'=-y'/y^2 の符号を落として u′−u=1+cos⁡xu'-u=1+\cos x としてしまう誤りが多い。 また積分定数を uu の式ではなく exue^{x}u の式に入れる位置を誤ると Ce−xCe^{-x} が CC になり,初期条件を満たす解が得られない。 最後に y=1/uy=1/u へ戻すのを忘れて uu を答えにするのも典型的な失点である。

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第12問 — 数学II 問題8 離散数学:木の隣接行列と彩色

(1) の読み方

隣接行列に未知数が現れる問題では,まず行列そのものが満たすべき制約 (00-11 成分・対称・対角成分 00)を書き出し, 次にグラフの条件(本問では木)を使う,という順序で進める。 aa は行列の性質だけで決まり,b=cb=c も同様,dd と bb の値は木の条件で決まる, という段階を分けて書くと,「理由とともに」という要求を満たしやすい。

木の使い方は2通り

d=0d=0 は「閉路をもたない」から,b=1b=1 は「連結である」から従う。 別解として辺数から攻めることもできる。木の辺数は 44 本, すでに {3,4},{3,5}\{3,4\},\{3,5\} の2本が確定しているので,残りは bb が与える2本({1,2},{2,3}\{1,2\},\{2,3\})と dd が与える1本のうち2本ちょうど。 b=0b=0 では2本足りず,d=1d=1 では1本多いので b=1, d=0b=1,\ d=0 しかない。

(2) の別解:彩色多項式と包除原理

頂点数 nn の木の彩色多項式は P(k)=k(k−1)n−1P(k)=k(k-1)^{n-1} である (根を1つ選び,根から順に色を決めると,各非根頂点は親と異なる k−1k-1 通り)。 本問では P(k)=k(k−1)4P(k)=k(k-1)^4 で P(4)=324,P(3)=48,P(2)=2,P(1)=P(0)=0. P(4)=324,\quad P(3)=48,\quad P(2)=2,\quad P(1)=P(0)=0 . 「ちょうど4色を使う」個数は包除原理により ∑j=04(−1)j(4j)P(4−j)=324−4⋅48+6⋅2=324−192+12=144 \sum_{j=0}^{4}(-1)^j\binom{4}{j}P(4-j)=324-4\cdot48+6\cdot2=324-192+12=144 となり,本文の直接の数え上げと一致する。2通りで同じ値が出ることが最良の検算になる。

(3) の一般化と 88 の意味

同じ議論は「kk 色で真に彩色された頂点数 nn の木」に対して n−1>(k2)n-1>\binom{k}{2} のときに通用する。k=4k=4 では (42)=6\binom42=6 なので n≥8n\geq8 が条件で, 問題の 88 はこの不等式が成り立つ最小の値である。 実際 n=7n=7 では反例がある。中心の頂点を赤に塗り,その3つの隣接点を青・白・黒に塗り, さらに青の頂点に白,白の頂点に黒,黒の頂点に青の隣接点を1つずつ付けると, 7頂点6辺の木ができて,6本の辺の色の組はすべて相異なる。 したがって 88 という数は最良(これ以上小さくできない)である。

失点しやすい点

(2) で「4色以下で塗る場合の数」324324 をそのまま答える誤りが最も多い。 問題は「どの色も少なくとも一つの頂点に付く」を要求しているので,全射性の条件が要る。 また直接数える方針を取る場合,同色の頂点対が隣接していないことの確認と, 「彩色から同色対が一意に決まる」ことによる重複のなさの確認を書く。 (3) では辺の色の組を非順序対として数えることが要点で, 順序対と考えると 4×3=124\times3=12 通りになり,鳩の巣が働かなくなる。

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第13問 — 数学II 問題9 情報数学:有限オートマトン

定義で落としてはいけない点

決定性であることは「δ\delta が Q×ΣQ\times\Sigma の全体で定義された写像である」に集約される。 遷移先が複数ある,あるいは未定義の組がある,というのは非決定性・部分的の話であり別物である。 また初期状態はただ1つ,受理状態は集合(0個でも全部でもよい)である点も定義の一部である。 δ^\hat\delta の定義を書かずに「ww を読んで FF に入る」とだけ書くと, 受理の定義が曖昧になるので,帰納的定義まで書くのが安全である。

状態の取り方が本問の核心

オートマトンを設計するときは「何を覚えておけば判定できるか」を決めることがすべてである。 本問では最後まで必要な情報は「Aがオンか」「Bがオンか」の2ビットだけで, 語の長さも順序も覚える必要がない。この2ビットが状態そのものになり, aa は第1ビット,bb は第2ビットを反転させる。 逆にいえば,2ビットで区別される4通りの配置は互いに区別しなければならないので, 状態数を3以下にはできない。

図の描き方

問題文が「初期状態にはどこからともなく入ってくる矢印」「受理状態は二重丸」と指定しているので, その2点は必ず守る。さらに Σ={a,b}\Sigma=\{a,b\} の各文字について, どの状態からもちょうど1本ずつ矢印が出ていることを確認する。 本問では4状態それぞれから aa と bb の矢印が1本ずつ,計8本の辺がある。 矢印の総数が ∣Q∣×∣Σ∣|Q|\times|\Sigma| になっているかどうかは,決定性の簡単な検算になる。

(3) の答え方

「成り立つ」と結論したうえで,構成を1行で示すのが最短である。 γ\gamma ごとにオートマトンを作り直す必要はなく,受理状態集合だけを取り替えればよい, という点が答えの中身である。命題 γ\gamma は {0,1}2\{0,1\}^2 上の真理値関数を定めるので, 論理的に異なる γ\gamma は高々 24=162^{4}=16 個しかなく, それぞれが Fγ⊂QF_\gamma\subset Q の 24=162^4=16 通りの選び方と1対1に対応する。 (2) の LL は γ=¬α∨¬β\gamma=\lnot\alpha\lor\lnot\beta の場合にあたる。

背景

一般に,正規言語の族は補集合・共通部分・和集合について閉じている。 (3) はその特別な場合で,同じ状態集合の上で受理状態を 補集合・共通部分・和集合に取り替えるだけで済んでいる。 状態を「必要な情報の同値類」として取る見方は, 最小オートマトンを与えるマイヒル・ネロードの定理につながる考え方である。

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年度別の解答例(10年度)

  • 2026年度冬季(全4問)

    同時対角化 / 行列式 / 関数項級数

  • 2026年度夏季(全13問)

    線形写像 / 固有値 / 極値

  • 2025年度冬季(全4問)

    線形写像 / 固有値と対角化 / 広義積分

  • 2025年度夏季(全13問)

    線形代数 / 線形写像 / 多変数微分積分

  • 2024年度冬季(全4問)

    広義積分 / 関数項級数 / 線形代数

  • 2024年度夏季(全13問)

    微分積分 / 多変数積分 / 線形写像

  • 2023年度 冬季(全4問)

    線形代数:一般化固有ベクトルと表現行列 / 線形代数:転置による線形写像と対角化 / 微分積分:双曲線関数のテイラー展開と剰余項

  • 2023年度 夏季(このページ・全13問)

    数学I 問題1 微分積分:単調性と広義積分・級数 / 数学I 問題2 微分積分:連続性・重積分・体積 / 数学I 問題3 線形代数:固有値と対角化

  • 2022年度 冬季(全4問)

    線形代数:媒介変数を含む行列の像・固有値・対角化 / 線形代数:多項式空間から \mathbb{R}^3 への評価写像 / 微分積分:コーシー列と関数項級数の一様収束

  • 2022年度 夏季(全13問)

    線形代数:線形写像の像と2つの像の一致 / 線形代数:直交補空間と直交分解 / 微分積分:有理関数の不定積分と広義重積分

2023年度 夏季の出題内容

全13問

この13問の分野は数学13問です。

大問分野主題解説の小見出し最終答
第1問数学単調性と広義積分・級数場合分けを落とさない / (1) が (4) の前提になるあり
第2問数学連続性・重積分・体積(1)(a) の評価の型 / (1)(b) が本問の山場あり
第3問数学固有値と対角化実数か複素数かを書く / 最小多項式の決め方あり
第4問数学部分空間と像の和(1) の答案の書き方 / (a) を1回の掃き出しで済ませるあり
第5問数学ジョルダン標準形A^4=O を楽に示す / 冪零行列の標準形の決め方あり
第6問数学素イデアルと極大イデアル定義で落としてはいけない条件 / 剰余環に翻訳するあり
第7問数学曲面の基本量と曲率グラフ曲面の公式に載せる / EG-F^2=W^2 を経由するあり
第8問数学商位相と写像の連続性(\ast) を最初に書く / 使う逆像の等式—
第9問数学回転とストークスの定理向きの確認 / 保存的な部分を分けるあり
第10問数学留数と広義積分極の絶対値が場合分けの鍵 / 2位の極の留数あり
第11問数学ベルヌーイ型初期値問題y≠0 をどう書くか / 積分因子の計算あり
第12問数学木の隣接行列と彩色(1) の読み方 / 木の使い方は2通りあり
第13問数学有限オートマトン定義で落としてはいけない点 / 状態の取り方が本問の核心あり

2023年度 夏季の解説には失点しやすい点9件・検算8件が付いています。

前年度(2022年度 冬季)との違い

大問数
2022年度 冬季 4問 → 2023年度 夏季 13問
2022年度 冬季の解答例

東京都立大学の公式過去問

公開年度範囲
直近数年度(春・冬入学)
公式の解答例
非公開(問題冊子のみ)
英語の扱い
TOEFL/TOEIC スコア提出。
院試hubの最終確認
2026-06-03
東京都立大学の公式過去問PDF