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都立大 理学研究科 数理科学専攻 数学 2022年度 冬季 院試 過去問 解答例・解説(全4問)

全4問の分野は線形代数2問、微分積分・解析2問です。解説はすべて、途中式と最終答は大問1問ぶんを公開しています。残りは解答PDFに収録しています。問題本文は含みません。

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第1問 — 線形代数:媒介変数を含む行列の像・固有値・対角化

方針

3つの小問は「像 →\to 固有値 →\to 対角化」と一本につながっている。鍵は a1,a2,a3\boldsymbol a_1,\boldsymbol a_2,\boldsymbol a_3 がすべて平面 x+y−z=0x+y-z=0 に乗ること、言い換えれば行ベクトル (1,1,−1)(1,1,-1) が (1,1,−1)A=0(1,1,-1)A=\boldsymbol 0 を満たすことである。ここから im⁡f=W\operatorname{im}f=W、WW は AA で不変、C3/W\mathbb{C}^3/W 上の誘導写像は 00、という構造が出て、固有多項式が λ\lambda と 2×22\times2 行列の固有多項式の積に分解する。3×33\times3 の行列式を aa について展開する必要がなくなる。

別解(固有多項式を直接計算する)

33 次の場合の公式 ΦA(λ)=λ3−(tr⁡A)λ2+(2次の主小行列式の和)λ−det⁡A \Phi_A(\lambda)=\lambda^3-(\operatorname{tr}A)\lambda^2+(\text{$2$次の主小行列式の和})\lambda-\det A を使ってもよい。tr⁡A=(a−2)+(−a+5)+(−9)=−6\operatorname{tr}A=(a-2)+(-a+5)+(-9)=-6、22次の主小行列式は (1,2)(1,2) 成分の組から 18a18a、(1,3)(1,3) の組から −9a+18-9a+18、(2,3)(2,3) の組から −9a−9-9a-9 で、和は 99 になる。また rank⁡A=2\operatorname{rank}A=2 より det⁡A=0\det A=0。したがって ΦA(λ)=λ3+6λ2+9λ=λ(λ+3)2 \Phi_A(\lambda)=\lambda^3+6\lambda^2+9\lambda=\lambda(\lambda+3)^2 となり、本解と一致する。aa を含む項が主小行列式の和で相殺されることが、そのまま検算になっている。

検算

a=0a=0 とすると B=(−2−11−4)B=\begin{pmatrix}-2&-1\\1&-4\end{pmatrix} で、tr⁡B=−6\operatorname{tr}B=-6、det⁡B=8+1=9\det B=8+1=9 となり一般の計算と合う。このとき B+3E2=(1−11−1)B+3E_2=\begin{pmatrix}1&-1\\1&-1\end{pmatrix} の階数は 11 なので固有空間は1次元にとどまり、a=0a=0 では対角化できない。a=−1a=-1 でだけ階数が 00 に落ちる、という結論と整合する。

失点しやすい点

(1) の「aa に依らない」は、部分空間として一致するという意味である。列ベクトル自身は aa に依存するので、「像のベクトルが aa を含まない」と書くと誤りになる。示すべきことは im⁡f⊆W\operatorname{im}f\subseteq W と dim⁡im⁡f≥2\dim\operatorname{im}f\ge2 の2つで、包含だけでは像が WW の真部分空間である可能性を排除できない。(3) では、固有多項式が λ(λ+3)2\lambda(\lambda+3)^2 と重根をもつことだけからは対角化可能とも不可能とも言えない。dim⁡ker⁡(A+3E3)\dim\ker(A+3E_3) を計算し、それが 22 になる条件として a=−1a=-1 を出す論理を書く必要がある。

この設問が試していること

基底を取り替えて行列を扱いやすい形にする力である。像 WW とその補空間に合わせた基底を選ぶだけで、媒介変数つきの 3×33\times3 固有多項式の展開が 2×22\times2 のトレースと行列式の計算に落ちる。答が aa に依らない理由も、この構造から見える。

解答

与えられた行列を AA、その第 jj 列を aj\boldsymbol a_j と書く。すなわち a1=(a−2a+102a+8),a2=(−a−1−a+5−2a+4),a3=(0−9−9) \boldsymbol a_1=\begin{pmatrix}a-2\\a+10\\2a+8\end{pmatrix},\qquad \boldsymbol a_2=\begin{pmatrix}-a-1\\-a+5\\-2a+4\end{pmatrix},\qquad \boldsymbol a_3=\begin{pmatrix}0\\-9\\-9\end{pmatrix} であり、im⁡f=AC3=span⁡{a1,a2,a3}\operatorname{im}f=A\mathbb{C}^3=\operatorname{span}\{\boldsymbol a_1,\boldsymbol a_2,\boldsymbol a_3\} である。

(1) 像が aa に依らないこと

C3\mathbb{C}^3 の部分空間 W={ t(x,y,z)∈C3  ∣  x+y−z=0 } W=\bigl\{\,{}^t(x,y,z)\in\mathbb{C}^3 \;\bigm|\; x+y-z=0\,\bigr\} をとる。WW は1本の非自明な線形方程式で定まるので dim⁡W=2\dim W=2 である。各列について (a−2)+(a+10)−(2a+8)=0,(−a−1)+(−a+5)−(−2a+4)=0,0+(−9)−(−9)=0\begin{align*} (a-2)+(a+10)-(2a+8)&=0,\\ (-a-1)+(-a+5)-(-2a+4)&=0,\\ 0+(-9)-(-9)&=0 \end{align*} が aa に関する恒等式として成り立つから、a1,a2,a3∈W\boldsymbol a_1,\boldsymbol a_2,\boldsymbol a_3\in W、したがって im⁡f⊆W. \operatorname{im}f\subseteq W .

一方、 a1+a2=(−31512),a3=(0−9−9) \boldsymbol a_1+\boldsymbol a_2=\begin{pmatrix}-3\\15\\12\end{pmatrix},\qquad \boldsymbol a_3=\begin{pmatrix}0\\-9\\-9\end{pmatrix} はいずれも im⁡f\operatorname{im}f の元である。a3\boldsymbol a_3 の第1成分は 00、a1+a2\boldsymbol a_1+\boldsymbol a_2 の第1成分は −3≠0-3\ne0 で、どちらも零ベクトルでないから、この2本は一次独立である。よって dim⁡im⁡f≥2\dim\operatorname{im}f\ge2。im⁡f⊆W\operatorname{im}f\subseteq W と dim⁡W=2\dim W=2 を合わせて im⁡f=W \operatorname{im}f=W を得る。右辺は aa を含まないので、im⁡f\operatorname{im}f は aa に依らない。

WW の基底としては、方程式 x+y−z=0x+y-z=0 の解を x,yx,y で表して w1=t(1,0,1),w2=t(0,1,1) \boldsymbol w_1={}^t(1,0,1),\qquad \boldsymbol w_2={}^t(0,1,1) がとれる(実際 a1+a2=−3 t(1,−5,−4)\boldsymbol a_1+\boldsymbol a_2=-3\,{}^t(1,-5,-4)、a3=−9w2\boldsymbol a_3=-9\boldsymbol w_2 であり、t(1,−5,−4)+5w2=w1{}^t(1,-5,-4)+5\boldsymbol w_2=\boldsymbol w_1 なので、これらは im⁡f\operatorname{im}f の元の一次結合になっている)。

(2) 固有値

u=t(1,0,0)\boldsymbol u={}^t(1,0,0) とおくと、w1,w2,u\boldsymbol w_1,\boldsymbol w_2,\boldsymbol u を列にもつ行列の行列式は det⁡(101010110)=−1≠0 \det\begin{pmatrix}1&0&1\\0&1&0\\1&1&0\end{pmatrix}=-1\ne0 なので、(w1,w2,u)(\boldsymbol w_1,\boldsymbol w_2,\boldsymbol u) は C3\mathbb{C}^3 の基底である。(1) より AC3=W=span⁡{w1,w2}A\mathbb{C}^3=W=\operatorname{span}\{\boldsymbol w_1,\boldsymbol w_2\} だから、3本すべての像が w1,w2\boldsymbol w_1,\boldsymbol w_2 の一次結合で書ける。実際 Aw1=a1+a3=t(a−2,  a+1,  2a−1)=(a−2)w1+(a+1)w2,Aw2=a2+a3=t(−a−1,  −a−4,  −2a−5)=(−a−1)w1+(−a−4)w2,Au=a1=t(a−2,  a+10,  2a+8)=(a−2)w1+(a+10)w2\begin{align*} A\boldsymbol w_1&=\boldsymbol a_1+\boldsymbol a_3={}^t(a-2,\;a+1,\;2a-1)=(a-2)\boldsymbol w_1+(a+1)\boldsymbol w_2,\\ A\boldsymbol w_2&=\boldsymbol a_2+\boldsymbol a_3={}^t(-a-1,\;-a-4,\;-2a-5)=(-a-1)\boldsymbol w_1+(-a-4)\boldsymbol w_2,\\ A\boldsymbol u&=\boldsymbol a_1={}^t(a-2,\;a+10,\;2a+8)=(a-2)\boldsymbol w_1+(a+10)\boldsymbol w_2 \end{align*} である(t(α,β,α+β)=αw1+βw2{}^t(\alpha,\beta,\alpha+\beta)=\alpha\boldsymbol w_1+\beta\boldsymbol w_2 を使った)。よってこの基底に関する ff の表現行列は (a−2−a−1a−2a+1−a−4a+10000)=(B∗00),B=(a−2−a−1a+1−a−4) \begin{pmatrix} a-2 & -a-1 & a-2\\ a+1 & -a-4 & a+10\\ 0 & 0 & 0 \end{pmatrix} =\begin{pmatrix} B & * \\ \boldsymbol 0 & 0\end{pmatrix}, \qquad B=\begin{pmatrix}a-2&-a-1\\a+1&-a-4\end{pmatrix} というブロック上三角の形になる。したがって固有多項式は ΦA(λ)=λ⋅det⁡(λE2−B) \Phi_A(\lambda)=\lambda\cdot\det(\lambda E_2-B) である。ここで tr⁡B=(a−2)+(−a−4)=−6,det⁡B=(a−2)(−a−4)−(−a−1)(a+1)=(−a2−2a+8)+(a+1)2=9\begin{align*} \operatorname{tr}B&=(a-2)+(-a-4)=-6,\\ \det B&=(a-2)(-a-4)-(-a-1)(a+1)=(-a^2-2a+8)+(a+1)^2=9 \end{align*} なので det⁡(λE2−B)=λ2−(tr⁡B)λ+det⁡B=λ2+6λ+9=(λ+3)2. \det(\lambda E_2-B)=\lambda^2-(\operatorname{tr}B)\lambda+\det B=\lambda^2+6\lambda+9=(\lambda+3)^2 . よって ΦA(λ)=λ(λ+3)2. \Phi_A(\lambda)=\lambda(\lambda+3)^2 .

(3) 対角化可能となる aa と基底

固有値 00 の固有空間 ker⁡A\ker A は、(1) の rank⁡A=dim⁡im⁡f=2\operatorname{rank}A=\dim\operatorname{im}f=2 と次元定理から常に1次元である。よって ff が対角化可能であることは dim⁡ker⁡(A+3E3)=2 \dim\ker(A+3E_3)=2 と同値である。

v≠0\boldsymbol v\ne\boldsymbol 0 が Av=−3vA\boldsymbol v=-3\boldsymbol v を満たせば v=−13Av∈im⁡f=W\boldsymbol v=-\tfrac13A\boldsymbol v\in\operatorname{im}f=W である。すなわち固有値 −3-3 の固有空間は WW に含まれ、WW 上の座標 (x,y)(x,y)(v=xw1+yw2\boldsymbol v=x\boldsymbol w_1+y\boldsymbol w_2)で書けば ker⁡(B+3E2)\ker(B+3E_2) と同一視される。ここで B+3E2=(a+1−a−1a+1−a−1)=(a+1)(1−11−1) B+3E_2=\begin{pmatrix}a+1&-a-1\\a+1&-a-1\end{pmatrix} =(a+1)\begin{pmatrix}1&-1\\1&-1\end{pmatrix} であるから、rank⁡(B+3E2)\operatorname{rank}(B+3E_2) は a=−1a=-1 のとき 00、a≠−1a\ne-1 のとき 11 である。したがって dim⁡ker⁡(A+3E3)=2−rank⁡(B+3E2)=2  ⟺  a=−1. \dim\ker(A+3E_3)=2-\operatorname{rank}(B+3E_2)=2 \iff a=-1 .

a=−1a=-1 のとき B=−3E2B=-3E_2、すなわち WW のすべてのベクトルが固有値 −3-3 の固有ベクトルであり、w1,w2\boldsymbol w_1,\boldsymbol w_2 をその2本にとればよい。残る固有値 00 の固有ベクトルは、a=−1a=-1 での Au=(a−2)w1+(a+10)w2=−3w1+9w2 A\boldsymbol u=(a-2)\boldsymbol w_1+(a+10)\boldsymbol w_2=-3\boldsymbol w_1+9\boldsymbol w_2 から求まる。v3=xw1+yw2+zu\boldsymbol v_3=x\boldsymbol w_1+y\boldsymbol w_2+z\boldsymbol u とすると Av3=(−3x−3z)w1+(−3y+9z)w2 A\boldsymbol v_3=(-3x-3z)\boldsymbol w_1+(-3y+9z)\boldsymbol w_2 で、Av3=0A\boldsymbol v_3=\boldsymbol 0 は x=−z, y=3zx=-z,\ y=3z と同値である。z=1z=1 として v3=−w1+3w2+u=t(0,3,2). \boldsymbol v_3=-\boldsymbol w_1+3\boldsymbol w_2+\boldsymbol u={}^t(0,3,2). 実際 a=−1a=-1 では a2=t(0,6,6)\boldsymbol a_2={}^t(0,6,6)、a3=t(0,−9,−9)\boldsymbol a_3={}^t(0,-9,-9) なので A t(0,3,2)=3a2+2a3=t(0,18−18,18−18)=0 A\,{}^t(0,3,2)=3\boldsymbol a_2+2\boldsymbol a_3={}^t(0,18-18,18-18)=\boldsymbol 0 である。以上より、基底 t(1,0,1), t(0,1,1), t(0,3,2){}^t(1,0,1),\ {}^t(0,1,1),\ {}^t(0,3,2) に関する ff の表現行列は対角行列 diag⁡(−3,−3,0)\operatorname{diag}(-3,-3,0) になる。

最終答

im⁡f={t(x,y,z)∈C3∣x+y−z=0}\operatorname{im}f=\{{}^t(x,y,z)\in\mathbb{C}^3\mid x+y-z=0\} で aa に依らない。 基底の一例は t(1,0,1), t(0,1,1){}^t(1,0,1),\ {}^t(0,1,1)。

固有値は 00(重複度 11)と −3-3(重複度 22)。いずれも aa に依らない。

a=−1a=-1。基底の一例 t(1,0,1), t(0,1,1), t(0,3,2){}^t(1,0,1),\ {}^t(0,1,1),\ {}^t(0,3,2) に関する表現行列は diag⁡(−3,−3,0)\operatorname{diag}(-3,-3,0)。

第2問 — 線形代数:多項式空間から \mathbb{R}^3 への評価写像

別解(行列式を使わない)

核を直接調べてもよい。 ker⁡Ft={f∈V∣f(1)=f(2)=f(t)=0}. \ker F_t=\{f\in V \mid f(1)=f(2)=f(t)=0\}. t∉{1,2}t\notin\{1,2\} なら 1,2,t1,2,t は相異なる3点であり、f∈ker⁡Ftf\in\ker F_t は 22 次以下でありながら相異なる 33 個の根をもつので f=0f=0 である。よって FtF_t は単射で、dim⁡V=dim⁡R3\dim V=\dim\mathbb{R}^3 より同型になる。逆に t=1t=1 または t=2t=2 のときは、f(x)=(x−1)(x−2)∈Vf(x)=(x-1)(x-2)\in V が f≠0f\ne0 かつ f(1)=f(2)=f(t)=0f(1)=f(2)=f(t)=0 を満たすので ker⁡Ft≠{0}\ker F_t\ne\{0\} となり、同型でない。t=1t=1 と t=2t=2 のどちらでも同じ多項式が反例になる点が面白い。

行列式の意味

MtM_t は節点 1,2,t1,2,t のヴァンデルモンド行列で、一般に節点 x1,x2,x3x_1,x_2,x_3 に対して det⁡(1x1x121x2x221x3x32)=∏i<j(xj−xi) \det\begin{pmatrix}1&x_1&x_1^2\\1&x_2&x_2^2\\1&x_3&x_3^2\end{pmatrix}=\prod_{i<j}(x_j-x_i) である。ここでは (2−1)(t−1)(t−2)=(t−1)(t−2)(2-1)(t-1)(t-2)=(t-1)(t-2) となり、上の計算と一致する。行列式が測っているのは「節点が相異なるかどうか」であり、その背後にあるのは、22 次以下の多項式は相異なる 33 点での値によって一意に決まるというラグランジュ補間の事実である。FtF_t が同型であるとは、任意の値の組 t(c1,c2,c3){}^t(c_1,c_2,c_3) に対して補間多項式がただ一つ存在することにほかならない。

検算

t=0t=0 とすると公式は (0−1)(0−2)=2(0-1)(0-2)=2 を与える。一方 M0=(111124100) M_0=\begin{pmatrix}1&1&1\\1&2&4\\1&0&0\end{pmatrix} を第3行で展開すると 1⋅(1⋅4−1⋅2)=21\cdot(1\cdot4-1\cdot2)=2 で一致する。t=1t=1 では MtM_t の第1行と第3行が、t=2t=2 では第2行と第3行が一致するので、いずれも行列式は 00 になる。この2つの退化が、3つの節点のうち2つが重なる状況に対応している。

失点しやすい点

(1) を「値の代入は明らかに線形」で済ませない。加法性とスカラー倍の保存の2条件を、成分ごとの等式として書く。f+gf+g や cfcf が再び VV の元であること(次数が上がらないこと)にも一言触れておくとよい。(2) は「基底の像を列に並べる」規約を守る。行に並べると転置した行列になり、行列式は同じでも FtF_t の作用とは合わなくなる。(3) は行列式の計算だけでは説明として弱い。dim⁡V=dim⁡R3=3\dim V=\dim\mathbb{R}^3=3 を書いてはじめて「正則   ⟺  \iff 同型」が使えるので、この一文を落とさない。

この設問が試していること

抽象ベクトル空間と数ベクトル空間を表現行列で結ぶ操作である。VV は多項式の空間だが、基底 1,x,x21,x,x^2 を固定した瞬間に R3\mathbb{R}^3 と同一視でき、写像に関する問いはすべて行列の問いに翻訳される。翻訳の規約(列に像を並べる)と、翻訳後に使える定理(正則性と同型の同値)を正確に運用できるかが問われている。

線形代数:多項式空間から \mathbb{R}^3 への評価写像の途中式・最終答をPDFで見る

第3問 — 微分積分:コーシー列と関数項級数の一様収束

(1) の要点

コーシー列を示すのに「隣接項の差が 00 に収束する」だけでは足りず、差の和が抑えられる必要がある。ここでは差が等比数列 rkr^k で押さえられているので、尾部の和 ∑k≥nrk=rn/(1−r)\sum_{k\ge n}r^k=r^n/(1-r) が nn とともに 00 に近づく。本質は、この上界が mm を含まないことである。答案では「mm に依らない上界を作る →\to それが ε\varepsilon 未満になるよう NN をとる」という順に書くと、論理の飛びがなくなる。

(2) の作り方

R\mathbb{R} は完備なので「コーシー列   ⟺  \iff 収束列」である。したがって、隣接項の差が 00 に収束しながら収束しない数列、つまり発散する数列を作ればよい。n\sqrt n のほか log⁡n\log n や調和級数の部分和 ∑k≤n1/k\sum_{k\le n}1/k が定番である。調和和を使うなら ∣a2n−an∣=∑k=n+12n1k≥n⋅12n=12 |a_{2n}-a_n|=\sum_{k=n+1}^{2n}\frac1k\ge n\cdot\frac{1}{2n}=\frac12 となるので、ε=1/2\varepsilon=1/2 でただちにコーシー列でないことが言える。いずれの例でも、「差が 00 に収束すること」と「コーシー列でないこと」の両方を式で示さなければ答案として完結しない。

(3) が (4) で果たす役割

(4) の各項は nn と xx の両方を含むが、s=nxs=nx とまとめると s3e−s/n2s^3e^{-s}/n^2 となり、xx への依存が ss に押し込められて nn 依存は 1/n21/n^2 だけになる。(3) はその ss についての一様な上界を与えるためにある。(3/e)3(3/e)^3 という具体的な値そのものは重要ではなく、「nn にも xx にも依らない定数で抑えられる」ことが効いている。

失点しやすい点

(4) で e−nx≤1e^{-nx}\le1 と粗く抑えると un(x)≤nx3u_n(x)\le nx^3 となり、xx について有界でないので優級数にならない。また (3) を xx にそのまま当てて、n≥1n\ge1 より e−nx≤e−xe^{-nx}\le e^{-x} を使い nx3e−nx≤nx3e−x≤n(3e)3 nx^3e^{-nx}\le nx^3e^{-x}\le n\left(\frac{3}{e}\right)^3 としてしまうと、上界が nn に比例して ∑Mn\sum M_n が発散する。s=nxs=nx と置いてから (3) を使うことが要点である。各点収束を確かめただけで一様収束と書くのも典型的な誤りで、xx に依らない上界を明示する必要がある。

検算

unu_n の最大値は x=3/nx=3/n でとり、値は (3/e)3/n2≈1.34/n2(3/e)^3/n^2\approx1.34/n^2 である。n=1n=1 では max⁡u1=27e−3≈1.34\max u_1=27e^{-3}\approx1.34、n=2n=2 ではおよそ 0.340.34、n=3n=3 ではおよそ 0.150.15 と減っていく。ピークの位置 x=3/nx=3/n が原点に近づきながら高さが n−2n^{-2} の速さで下がるので、区間全体で一様に小さくなるという結論と矛盾しない。なお x=0x=0 ではすべての項が 00 なので、端点で困ることもない。

微分積分:コーシー列と関数項級数の一様収束の途中式・最終答をPDFで見る

第4問 — 微分積分:三角関数の定積分と円板上の重積分の極限

方針

(1) と (2) は独立した問いではなく、(2) の θ\theta 積分が (1) そのものになる。したがって、(2) を極座標に直して rr 積分を先に実行し、残った θ\theta 積分に (1) を代入する、という流れが出題の意図である。(2) から逆算して (1) の形を眺めると、1+4n2cos⁡2θ1+4n^2\cos^2\theta が 1+(2ncos⁡θ)21+(2n\cos\theta)^2、すなわち「境界までの距離の 22 乗を 11 に足したもの」であることが読み取れる。

(1) の置換の扱い

u=tan⁡θu=\tan\theta は開区間 (−π/2,π/2)(-\pi/2,\pi/2) で狭義単調増加、値域は R\mathbb{R} 全体なので、置換した後の積分は (−∞,∞)(-\infty,\infty) 上の広義積分になる。もとの積分は有界な連続関数の有限区間上の積分であって広義積分ではなく、広義になるのは置換の結果である点に注意する。被積分関数が偶関数であることを使い、2∫0π/22\int_0^{\pi/2} としてから u=tan⁡θu=\tan\theta で ∫0∞\int_0^{\infty} に直しても、2c⋅π2=πc\frac2c\cdot\frac{\pi}{2}=\frac{\pi}{c} で同じ結果になる。

別解(極限だけを求める)

(2) は極限のみを問うているので、閉じた式を経由しない道もある。x>0x>0 ならば n≥(x2+y2)/(2x)n\ge(x^2+y^2)/(2x) で (x,y)∈Dn(x,y)\in D_n となり、また Dn⊆Dn′D_n\subseteq D_{n'} (n≤n′)(n\le n') なので、DnD_n は増大列で ⋃n>0Dn={(x,y)∈R2∣x>0} \bigcup_{n>0}D_n=\{(x,y)\in\mathbb{R}^2\mid x>0\} である。被積分関数は正だから単調収束定理が使えて lim⁡n→∞Jn=∬x>0dx dy(1+x2+y2)2=∫−π/2π/2 ⁣ ⁣∫0∞r dr(1+r2)2 dθ=π⋅12=π2 \lim_{n\to\infty}J_n =\iint_{x>0}\frac{dx\,dy}{(1+x^2+y^2)^2} =\int_{-\pi/2}^{\pi/2}\!\!\int_{0}^{\infty}\frac{r\,dr}{(1+r^2)^2}\,d\theta =\pi\cdot\frac12=\frac{\pi}{2} となる。本解で得た閉じた式の極限と一致しており、答の確認に使える。

検算

n→0+n\to0+ とすると DnD_n は原点に潰れるが、閉じた式も π2(1−1/1)=0\frac{\pi}{2}(1-1/\sqrt{1})=0 を与える。また (1) の値は n→0+n\to0+ で π\pi に近づき、これは被積分関数が 11 に近づくことと積分区間の長さ π\pi から見て正しい。大きい nn では 1/1+4n2≈1/(2n)1/\sqrt{1+4n^2}\approx1/(2n) なので Jn≈π2(1−12n) J_n\approx\frac{\pi}{2}\left(1-\frac{1}{2n}\right) であり、半平面での値 π/2\pi/2 に 1/n1/n の速さで近づく。JnJ_n が nn について単調増加であることも、DnD_n が増大列であることと整合する。

失点しやすい点

極座標で θ\theta を 00 から 2π2\pi まで動かすと、cos⁡θ<0\cos\theta<0 の範囲で上限 2ncos⁡θ2n\cos\theta が負になり、そのまま計算すると誤る。DnD_n は原点を通る円板なので、原点から見える方向は右半平面に限られる、と図で確認しておく。ヤコビアン rr を落とすと内側の積分が arctan⁡\arctan 型になり、(1) と噛み合わなくなるので、そこでも気づける。平方完成 (x−n)2+y2≤n2(x-n)^2+y^2\le n^2 を書かずに進めると、領域の形そのものを取り違えやすい。

この設問が試していること

「領域を極座標で書き直す」「置換で初等的な積分に落とす」という2つの標準操作である。誘導が明確なので、(1) の結果を (2) にそのまま差し込めると気づけば計算量は多くない。逆に、極座標の θ\theta の範囲や原点を通る円の扱いを普段から意識していないと、方針は立っても値が合わない。

微分積分:三角関数の定積分と円板上の重積分の極限の途中式・最終答をPDFで見る

年度別の解答例(10年度)

  • 2026年度冬季(全4問)

    同時対角化 / 行列式 / 関数項級数

  • 2026年度夏季(全13問)

    線形写像 / 固有値 / 極値

  • 2025年度冬季(全4問)

    線形写像 / 固有値と対角化 / 広義積分

  • 2025年度夏季(全13問)

    線形代数 / 線形写像 / 多変数微分積分

  • 2024年度冬季(全4問)

    広義積分 / 関数項級数 / 線形代数

  • 2024年度夏季(全13問)

    微分積分 / 多変数積分 / 線形写像

  • 2023年度 冬季(全4問)

    線形代数:一般化固有ベクトルと表現行列 / 線形代数:転置による線形写像と対角化 / 微分積分:双曲線関数のテイラー展開と剰余項

  • 2023年度 夏季(全13問)

    数学I 問題1 微分積分:単調性と広義積分・級数 / 数学I 問題2 微分積分:連続性・重積分・体積 / 数学I 問題3 線形代数:固有値と対角化

  • 2022年度 冬季(このページ・全4問)

    線形代数:媒介変数を含む行列の像・固有値・対角化 / 線形代数:多項式空間から \mathbb{R}^3 への評価写像 / 微分積分:コーシー列と関数項級数の一様収束

  • 2022年度 夏季(全13問)

    線形代数:線形写像の像と2つの像の一致 / 線形代数:直交補空間と直交分解 / 微分積分:有理関数の不定積分と広義重積分

2022年度 冬季の出題内容

全4問

この4問の分野は線形代数2問・微分積分・解析2問です。

大問分野主題解説の小見出し最終答
第1問線形代数媒介変数を含む行列の像・固有値・対角化別解(固有多項式を直接計算する) / この設問が試していることあり
第2問線形代数多項式空間から \mathbb{R}^3 への評価写像別解(行列式を使わない) / 行列式の意味あり
第3問微分積分・解析コーシー列と関数項級数の一様収束(1) の要点 / (2) の作り方あり
第4問微分積分・解析三角関数の定積分と円板上の重積分の極限(1) の置換の扱い / 別解(極限だけを求める)あり

2022年度 冬季の解説には検算4件・失点しやすい点4件が付いています。

前年度(2022年度 夏季)との違い

大問数
2022年度 夏季 13問 → 2022年度 冬季 4問
2022年度 夏季の解答例

東京都立大学の公式過去問

公開年度範囲
直近数年度(春・冬入学)
公式の解答例
非公開(問題冊子のみ)
英語の扱い
TOEFL/TOEIC スコア提出。
院試hubの最終確認
2026-06-03
東京都立大学の公式過去問PDF