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東北大学 院試 過去問 解答例

東北大 情報科学研究科 6群 心理・哲学 専門科目 2022年度 院試 解答例・解説

東北大学 情報科学研究科 6群 心理・哲学 専門科目 2022年度の院試 過去問について、設問ごとの解法方針・部分点の置き所を解説。全12問収録の解答・解説PDFと併用できます。問題本文は含みません。

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設問ごとの解法方針・部分点の置き所を無料で公開しています。

完全な途中式・最終答は解答・解説PDFに収録しています。問題本文は含まれません。

1 — 心理群I: 周辺視とパターン認識

答案例

  1. 実験では、アイトラッカーで現在の注視点を測り、その周囲だけ原画像を表示し、それ以外をマスク、ぼかし、ノイズ化する。窓半径を複数段階にし、画像カテゴリ、物体の有無、人物表情、場面の意味などを判断させる。
  2. 認識精度は正答率、信号検出理論の感度 dd'、反応時間、視線停留数で評価できる。各窓半径で複数試行を行い、参加者内要因として比較する。
  3. 予想グラフは、横軸を窓半径、縦軸を正答率とし、小さい窓では低成績、窓が広がるにつれて上昇、一定以上で天井効果に近づく形である。反応時間は逆に低下して漸近する。
  4. 得られる視野特性は、中心窩付近は高空間周波数・細部認識に強く、周辺視は解像度が低いが、低空間周波数、場面の大域構造、物体の候補位置、次のサッカード目標の選択に役立つという分業である。
  5. 周辺部を完全に無視しているわけではない。中心視だけでは画像全体の文脈やレイアウトを把握しにくく、周辺視がトップダウン予測や探索方略を支える。

採点観点

視線追跡、gaze-contingent window、窓サイズ操作、正答率グラフ、中心視と周辺視の役割分担をそろえる。グラフの形を文章で説明するだけでもよいが、単調上昇して漸近することを明示する。

典型ミス

周辺視は役に立たないと断定する、視線位置を固定しただけの実験にする、精度の測定方法を書かない、という答案は不十分である。

完全な解答(途中式・最終答)はPDFに収録

2 — 心理群II: 水平両眼視差

答案例

  1. 近似式からわかるように、水平両眼視差 η\eta は眼間距離 aa、奥行き差 dd、絶対距離 DD に依存する。aa は個人差があるものの比較的安定だが、DD が不明なら dd は一意に決まらない。
  2. したがって問題点は、視差が相対奥行きの強い手がかりではあるが、絶対奥行きの尺度を直接与えないことである。遠くの物体では同じ視差がより大きな奥行き差を意味する。
  3. 解決手がかりの第一は輻輳角である。両眼がどれだけ内向きになるかは注視距離を反映する。近距離ではとくに有効であり、視差のスケール補正に使える。
  4. 第二に、調節、運動視差、垂直視差、網膜像サイズ、既知サイズ、線遠近、肌理勾配などがある。これらを統合すると注視距離や物体距離の推定が安定する。
  5. 多手がかり統合の観点では、視覚系は信頼度に応じて手がかりを重みづける。暗所や単眼条件では両眼視差の利用が制限され、別の手がかりの重みが増える。

採点観点

視差と奥行き差の式から、絶対距離が必要であることを読み取る。輻輳だけでなく、複数の距離手がかりとその統合を説明すると高得点になる。

典型ミス

視差が大きいほど必ず遠いと書く、DD の役割を落とす、両眼視差だけで絶対距離が完全に分かるとする、という答案は誤りである。

完全な解答(途中式・最終答)はPDFに収録

3 — 心理群III: トランザクティブメモリー

答案例

  1. Wegnerのトランザクティブメモリーは、個人内記憶ではなく、複数人の相互作用によって成立する記憶である。重要なのは、情報そのものだけでなく、情報の所在に関するメタ知識である。
  2. 典型例は、夫婦や研究チームで、一方が日程、他方が技術情報をよく覚え、必要な時に相手に問い合わせる関係である。符号化時点から「これは誰が担当するか」が決まり、検索時にはその人を手がかりにする。
  3. 集団にトランザクティブメモリーが形成されると、専門性の分化、信頼、調整が進み、問題解決が効率化する。ただし成員交代や信頼低下があるとシステムが崩れる。
  4. 現代的意義として、ソーシャルメディアは誰がどの情報・経験を持つかを可視化し、弱いつながりから知識を得る手段を増やした。検索エンジンやクラウドは「内容を覚える」より「どこで見つけるかを覚える」傾向を強める。
  5. 課題は、誤情報の拡散、専門性の見誤り、アルゴリズムによる偏り、外部システムへの過度な依存、プライバシーである。したがって情報源の信頼性評価も現代的トランザクティブメモリーの一部になる。

採点観点

「誰が何を知っているか」というメタ知識、集団内分業、符号化・保存・検索、ソーシャルメディアによる拡張と問題点を入れる。単なる集合知や外部記憶の説明だけでは足りない。

典型ミス

トランザクティブを「取引記憶」と直訳して経済取引の話にする、全員が同じ情報を共有することと誤解する、ソーシャルメディア礼賛だけで終える、という答案は弱い。

完全な解答(途中式・最終答)はPDFに収録

4 — 心理群IV: リモート講義評価の研究計画

答案例

  1. 研究計画では、同一科目・同一教材・同一教員または教員効果を均等化した複数クラスを用意する。無作為割付が難しい場合は、事前テスト、GPA、学年、通信環境、出席可能時間を測り、統計的に調整する。
  2. 条件群は、対面授業、ライブ配信授業、録画視聴授業、対面とオンラインの混合などに設定できる。リモートの一語でまとめず、相互作用や質問機会の有無を区別する。
  3. 教育効果は、直後の理解テストだけでなく、数週間後の保持テスト、応用問題、レポート評価、授業中の小テスト、ログイン時間、発言数、自己効力感で測る。主観満足度だけでは教育効果の指標として弱い。
  4. 統計手法は、事前・事後・遅延の時点を含む混合分散分析、事前得点を共変量にするANCOVA、学生がクラスにネストされる場合の階層線形モデルが適切である。
  5. 注意点として、通信環境、家庭学習環境、通学時間、出席率、録画の反復視聴、グループワークの有無が交絡しやすい。倫理的には評価が成績に不当に影響しないよう説明し、同意と代替参加を用意する。

採点観点

条件群、評価指標、比較手法、交絡統制を具体的に書く。対面とリモートの優劣を先に決めるのではなく、検証可能な設計に落とすことが重要である。

典型ミス

満足度アンケートだけで結論する、受講者の自己選択を放置する、授業内容や教員差を統制しない、統計手法を書かない、という答案は弱い。

完全な解答(途中式・最終答)はPDFに収録

5 — 心理群V: 自己スキーマ

答案例

  1. スキーマは、経験を整理し予測を可能にする知識構造である。自己スキーマは、その中でも「私はどのような人間か」に関する構造で、特性、役割、価値観、身体像を含む。
  2. 自己スキーマは情報処理を速める。自分に関係する語や出来事は注意を引きやすく、自己に関連づけた材料は意味処理が深くなり記憶に残りやすい。
  3. 研究例として、参加者を独立性や依存性などの特性でスキーマあり・なしに分類し、形容詞が自分に当てはまるか判断させる課題がある。スキーマに一致する語では反応が速く、後の再認・再生も高くなる。
  4. 自己参照効果では、単語を自分に当てはまるか判断した条件が、意味判断や音韻判断よりも記憶成績を高める。これは自己が強力な符号化枠組みになるためである。
  5. 一方で、自己スキーマは一致情報を選択的に受け入れ、不一致情報を無視・再解釈するため、自己概念の維持や抑うつ的バイアスにも関わる。

採点観点

定義、情報処理への影響、具体的研究例、記憶への影響、バイアスを入れる。自己概念と自己スキーマを完全に同一視せず、情報処理を方向づける構造として書く。

典型ミス

自己スキーマを性格そのものとする、研究例を挙げない、記憶への影響を感想で説明する、という答案は不十分である。

完全な解答(途中式・最終答)はPDFに収録

6 — 心理群VI: 質問作成と文章理解

答案例

  1. 基本設計は、質問作成群、要約群、通常読解群を置き、同じ文章を読ませる。質問作成群には、内容確認質問と推論質問を一定数作らせる。対照群にも作業時間をそろえる。
  2. 取り上げる要因として、読み手の既有知識が高い・低い、テキストが説明文・物語文、難度が高い・低い、時間制限あり・なしを選べる。すべてを網羅せず、二要因または三要因に絞ると分析しやすい。
  3. 従属変数は、逐語的理解、推論理解、主旨把握、遅延テスト、作成質問の質、読解時間、主観的負荷である。質問の数だけでなく質を評価する点が重要である。
  4. 仮説は、既有知識が高い読者や中程度難度の説明文では質問作成が深い処理を促し効果が大きい、既有知識が低く難度が高い場合は質問作成に認知資源を取られ効果が弱まる、という交互作用で書ける。
  5. 統計的には、条件と要因の分散分析または混合効果モデルを用い、事前読解力を共変量に入れる。実験後には、質問作成が理解を助けた理由を主観報告で補足してもよい。

採点観点

実験条件、要因、従属変数、仮説、交互作用を具体化する。質問作成が常に有効と決めつけず、負荷と既有知識の条件依存性を述べる。

典型ミス

授業実践の感想で終える、理解テストを設定しない、複数要因を挙げるだけで交互作用仮説がない、という答案は弱い。

完全な解答(途中式・最終答)はPDFに収録

7 — 哲学群I: 古代ギリシアのコスモス

答案例

  1. コスモスは、混沌であるカオスと対比される秩序ある全体である。美しい装いという語感もあり、世界の整然性を含意する。
  2. 初期自然哲学者は、万物の根源を水、無限定なもの、空気、火などとして問うた。これは神々の物語から、自然を一貫した原理で説明する思考への転換である。
  3. ピタゴラス派では、数と比例による調和が宇宙の構造をなすと考えられた。天体の秩序や音階の比率は、世界が数学的秩序をもつことの例とされた。
  4. プラトンの『ティマイオス』では、デミウルゴスがイデアを範型として世界を秩序づける。アリストテレスでは、自然物は目的をもつ運動をし、天界と地上界の秩序が論じられる。
  5. この世界観では、人間もコスモスの一部であり、倫理や政治は宇宙の秩序と無関係ではない。よく生きることは秩序に即して生きることと結びつく。

採点観点

コスモスを秩序ある世界として説明し、初期自然哲学、ピタゴラス、プラトン、アリストテレスのいずれかを具体的に入れる。近代的な宇宙空間だけの説明では足りない。

典型ミス

コスモスを「宇宙」の単純訳だけで済ませる、ギリシア神話の紹介だけにする、秩序やロゴスへの言及がない、という答案は弱い。

完全な解答(途中式・最終答)はPDFに収録

8 — 哲学群II: 悲劇のカタルシス

答案例

  1. アリストテレスは悲劇を、一定の大きさをもつ行為の模倣であり、恐れと憐れみを通じて情念のカタルシスを達成するものと定義する。
  2. 憐れみは不当な不幸に対して生じ、恐れは同じような不幸が自分にも起こりうると感じることから生じる。悲劇はこの二つの情念を喚起するよう、筋、性格、認知、逆転を構成する。
  3. カタルシスの解釈には、情念の排出、浄化、教育的調整、知的明晰化などがある。単に泣いてすっきりするだけではなく、情念が適切な対象と程度を得ることが重要である。
  4. これにより、悲劇は不快な出来事を描きながらも快を与える。観客は模倣の中で人間の行為、運命、過ちを理解し、情念を秩序ある形で経験する。
  5. プラトンが詩を情念を乱すものとして警戒したのに対し、アリストテレスは悲劇に認識的・情動的な価値を認めた、と比較するとよい。

採点観点

恐れ、憐れみ、模倣、情念の処理という四点を入れる。カタルシスの訳語にこだわるだけでなく、悲劇の構造と観客経験を結びつける。

典型ミス

カタルシスを現代語のストレス発散だけで説明する、喜劇や日常会話の意味にずらす、アリストテレスとの関係を落とす、という答案は不十分である。

完全な解答(途中式・最終答)はPDFに収録

9 — 哲学群III: フマニタス

答案例

  1. フマニタスは、粗野さや野蛮さと対比される人間らしさを指す。感受性、寛容、礼節、教育を含む広い語である。
  2. ローマでは、ギリシア文化の受容を通じて、文法、修辞、哲学、歴史、詩が市民的教養として重視された。これらは公的討論や政治判断の能力と結びついた。
  3. キケロにおいて、教養は個人の趣味ではなく、共和国の市民として公共善に奉仕する能力である。弁論術は単なる説得技術ではなく、徳と知恵を伴うべきものとされた。
  4. 後のルネサンス人文主義は、このフマニタスを継承し、古典教養による人間形成を重視した。したがって、古代ローマのフマニタスは西洋人文教育の源流としても重要である。

採点観点

人間らしさ、教養、市民性、キケロ、ギリシア文化の受容を結びつける。現代語の「ヒューマニティ」だけで説明しない。

典型ミス

フマニタスを人道支援の意味だけにする、教養を暗記知識として扱う、ローマの市民的文脈を落とす、という答案は弱い。

完全な解答(途中式・最終答)はPDFに収録

10 — 哲学群IV: 信ずることと知ること

答案例

  1. 信念は、ある命題を受け入れる態度である。人は根拠が弱くても信じることができ、また信じている内容が偽であることもある。
  2. 知識は、単なる信念より強い条件をもつ。少なくとも、主体がpを知るならpは真であり、主体はpを信じ、さらにその信念に正当化や根拠がある、と考えられる。
  3. この三条件をまとめたものが、知識を正当化された真なる信念とする古典的分析である。知るためには、偶然の当たりではなく、証拠、推論、知覚、証言などによる正当化が必要である。
  4. ゲティア問題は、三条件を満たしても、偶然性が強い場合には知識とは言いにくい例を示した。これにより、信念と知識の差は真理と正当化だけで足りるのかが問題になった。
  5. 宗教的信仰や実践的信頼では、信ずることは証拠命題の受容以上の意味をもつことがある。答案では認識論的信念と信頼・信仰を区別するとよい。

採点観点

信念、真理、正当化、知識、ゲティア問題を使って対比する。信じることを低級、知ることを高級と価値判断だけで済ませない。

典型ミス

「信じる」は根拠なし、「知る」は根拠あり、と単純化しすぎる、真理条件を書かない、ゲティア問題を知らないまま三条件で完結させる、という答案は浅い。

完全な解答(途中式・最終答)はPDFに収録

11 — 哲学群V: デカルトの思考と延長

答案例

  1. デカルトは方法的懐疑を通じて、身体や外界の存在は疑えても、疑っている自分の思考は疑えないと考えた。ここから「我思う、ゆえに我あり」が出る。
  2. 精神の本質は思考である。思考には推論だけでなく、疑い、肯定、否定、欲求、想像、感覚意識も含まれる。精神は空間的広がりを本質としない。
  3. 物体の本質は延長である。物体は空間内に広がり、幾何学的に測定でき、運動法則に従う。色や味などの感覚的性質より、形・大きさ・運動が基礎的である。
  4. この区別により、精神と身体は異なる実体とされる。精神は不可分で、物体は分割可能という対比も使える。
  5. しかし人間の感覚、運動、情念では精神と身体が密接に結びつくため、心身相互作用の説明が問題になる。松果腺説などを挙げてもよいが、問題の所在を押さえることが重要である。

採点観点

思考と延長をそれぞれ本質属性として説明し、心身二元論と相互作用問題につなげる。デカルトを単なる「考える人」として紹介するだけでは足りない。

典型ミス

思考を論理計算だけに限定する、延長を時間の長さと誤解する、精神と物体の区別から身体不要論だけに飛ぶ、という答案は不十分である。

完全な解答(途中式・最終答)はPDFに収録

12 — 哲学群VI: 科学革命

答案例

  1. 中世から近世にかけて支配的だったアリストテレス的自然学では、天上界と地上界、自然な場所、目的論的説明が重視された。科学革命はこの枠組みを大きく組み替えた。
  2. コペルニクスの地動説は宇宙の中心をめぐる見方を変え、ケプラーは惑星運動を数学的法則で記述した。ガリレオは実験と数学を結び、落体運動や慣性の考えを発展させた。
  3. デカルトは自然を延長する物体として機械論的に説明し、ニュートンは運動法則と万有引力により天上と地上を同じ法則で統一した。
  4. 方法論的には、観察、実験、測定、数学的モデル、再現可能性が重視されるようになった。自然は質的意味の体系から、数量化され操作可能な対象へと見られるようになる。
  5. 哲学的意義は、近代的主体、自然支配、技術、宗教的世界観との緊張、啓蒙思想に広がる。近年の科学史では、連続性や社会制度の役割も重視され、単純な「暗黒から理性へ」という図式は避ける。

採点観点

人物名を列挙するだけでなく、自然観、方法、数学化、制度的・哲学的影響をまとめる。科学革命が近代の出来事であることと、長期的過程であることを両方押さえる。

典型ミス

科学革命を産業革命と混同する、地動説だけで終える、宗教との単純な対立物語にする、という答案は弱い。

完全な解答(途中式・最終答)はPDFに収録

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