大阪大学 院試 過去問 解答例
阪大 理学研究科 物理学専攻・宇宙地球科学専攻 物理学 2025年度 院試 過去問 解答例・解説(全4問)
全4問。量子力学1問・力学1問。テーマタグは8件(固有値・固有ベクトル・調和振動子・分配関数)。2024年度と共通のテーマは固有値・固有ベクトル・調和振動子・分配関数。
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- 解説4問と大問1問の途中式・最終答(全4問)
- 解答PDFに収録
- 途中式と最終答(最終答つき4問)
- 問題本文
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阪大 物理学 2025年度 院試 過去問の出題内容(全4問)
この4問の分野は量子力学1問・力学1問です。
| 大問 | 分野 | 主題 | 解説の小見出し | 最終答 |
|---|---|---|---|---|
| 第1問 | 力学 | 解析力学・制限三体問題 | 回転座標系の符号 / 遠心力と有効ポテンシャル | あり |
| 第2問 | — | 電磁波・表皮効果 | 複素表示の使い方 / 導体中の減衰条件 | あり |
| 第3問 | 量子力学 | 量子調和振動子 | 消滅演算子から微分方程式へ / 規格化と期待値の関係 | あり |
| 第4問 | — | 二次元電子気体の磁性 | 二次元状態密度 / 古典軌道磁化が消える理由 | あり |
この年度の解説には試験で書くべきポイント1件が付いています。
2025年度の出題テーマと、同じテーマを出した他大学・他年度
この年度は4問に8テーマが出ています。
| テーマ | この年度 | 全体の出題実績 | 他大学の直近出題 |
|---|---|---|---|
| 固有値・固有ベクトル | 第3問 | 25大学・544問 | |
| 調和振動子 | 第3問 | 16大学・110問 | |
| 分配関数 | 第4問 | 16大学・88問 | |
| 静電場 | 第2問 | 16大学・81問 | |
| ハミルトン形式 | 第3問 | 15大学・72問 | |
| ラグランジアン | 第1問 | 13大学・68問 | |
| 波動関数 | 第3問 | 15大学・36問 | |
| フェルミ・ボース統計 | 第4問 | 13大学・27問 |
前年度(2024年度)との違い
- 大問数
- 2024年度 4問 → 2025年度 4問
- 両年度に出たテーマ
- 固有値・固有ベクトル・調和振動子・分配関数・ハミルトン形式・ラグランジアン
- 2025年度で新しく出たテーマ
- 静電場・波動関数・フェルミ・ボース統計
第1問 — 解析力学・制限三体問題
回転座標系の符号
本問で最も失点しやすいのは の符号である。 なら であり、速度成分は になる。ここを逆にすると、コリオリ項 , の符号もすべて反転する。
遠心力と有効ポテンシャル
ラグランジアンの最後の項 は、回転座標系での遠心力に対応する。実際、速度がゼロの静止点では となるので、重力が負向きなら がそれを支える形になる。 の式はこのつりあいをそのまま書けばよい。
近似の検算
が軽い天体 の近くにあるとき、距離 が小さいため、 からの重力項だけが と大きくなる。一方で、主星 の重力と遠心力はほぼ打ち消しあい、残りが になる。この構造から が出る。答えの次数が や になる場合は、展開の釣り合いを取り違えている。
試験で書くべきポイント
答案では、無次元化の前に を明記することが重要である。これを書かないと、 と の由来が不明になり、符号ミスと区別できない。数値計算では、求める距離は ではなく である点にも注意する。
解答
慣性系から見た速度を 、回転座標系から見た位置と速度を と書く。回転角速度は である。
- 自由粒子なので、慣性系でのラグランジアンは である。
- 回転座標系では だから よって 展開しておくと である。
- オイラー・ラグランジュ方程式を について適用する。 したがって
- 質量中心を原点にとり、質点間距離を とする。質量比 を用いれば
- 質点 について、遠心力と質点 からの万有引力がつりあうので を代入して
- の位置で第3質点が回転座標系に静止しているとする。このときコリオリ力は消え、 方向では遠心力が正向き、2つの重力が負向きに働く。よって が の位置を決める方程式である。
- とおく。前問の式を , , で無次元化すると したがって空欄に相当する量は である。
- と書くと であり、前問の式は となる。 で最低次だけを残すと だから
- 太陽・地球系では したがって 地球から までの距離は なので
最終答
また であり、
第2問 — 電磁波・表皮効果
複素表示の使い方
を用いると、微分は代数計算に変わる。ただし であるため、アンペールの法則から出る符号を間違えやすい。真空中で となることを確認してから分散関係に進むとよい。
導体中の減衰条件
と書くと である。半無限導体の内部 へ進む波では を選ぶ。平方根の符号を機械的に選ぶのではなく、物理的に発散しない枝を選ぶことが答案上のポイントである。
表皮深さの単位
で、 の次元は になる。したがって は長さの次元をもつ。数値では を使う点に注意する。 をそのまま代入すると 程度ずれる。
ロンドン方程式の意味
ロンドン方程式と静的なアンペールの法則を組み合わせると、磁場は を満たす。境界から内部へ指数関数的に消える解だけが物理的であり、これはマイスナー効果を表している。符号を誤ると三角関数解になり、超伝導体内で磁場が遮蔽されるという物理と合わない。
第3問 — 量子調和振動子
消滅演算子から微分方程式へ
は、基底状態を代数的に決める条件である。座標表示では なので となる。ここで符号を誤ると指数が になり、無限遠で発散して規格化できない。
規格化と期待値の関係
基底状態の確率密度は幅 をもつガウス分布である。ばねが硬い、すなわち が大きいほど幅が狭くなるので、結果の物理的傾向も正しい。
パリティの帰納法
励起状態のパリティは、エルミート多項式を具体的に書かなくても、生成演算子がパリティを反転させることからわかる。答案では を示せば十分である。したがって、基底状態が偶関数で、1回生成するごとに偶奇が入れ替わる。
撃力と長波長近似
は運動量を だけ平行移動する演算子である。遷移しない確率では を評価するが、調和振動子固有状態の はパリティによりゼロである。一次の項が消えることを書かないと、長波長近似の答えがなぜ から始まるのかが不明になる。
厳密解との整合
基底状態の厳密な結果 を小さい で展開すると となり、長波長近似の式と一致する。これは計算全体のよい検算になる。
第4問 — 二次元電子気体の磁性
二次元状態密度
二次元では運動量空間の円の面積が に比例し、 なので、状態数は に比例する。このためスピン磁化は に厳密に比例する。ここで「1スピン自由度あたり」と指定されているため、最初の状態数にスピンの2倍を入れないことが重要である。
古典軌道磁化が消える理由
古典分配関数では、ベクトルポテンシャルは という形でしか現れない。運動量積分の範囲が から までなので、これは積分変数の平行移動で消える。これはボーア・ファン・リューエンの定理の具体例であり、古典統計では軌道磁性が出ない。
大分配関数の分解
フェルミ粒子では各準位の占有数が に限られる。全エネルギーと全粒子数が準位ごとの和で書けるため、大分配関数は に分解する。この積の形を作ることが、問(6)以降のフェルミ分布を導く入口になる。
ランダウ反磁性の符号
オイラーの和公式から出る補正は に対して の項を与える。磁化は なので、軌道磁化は負、つまり外部磁場に反対向きである。これは反磁性の符号と一致する。符号確認のためには、最後に が で増えるかどうかを見るとよい。
近似の適用範囲
最後の展開では により、オイラー補正の高階項を無視している。 は に依存しないため、磁化の先頭項は からだけ生じる。答案では、縮退度 と準位間隔 の積が になることを明示すると、展開次数が読みやすい。
阪大 物理学 院試 過去問の収録6年度
小振動と基準振動 / 電子ビームと電磁波 / 一次元量子井戸と散乱
2025年度(このページ・全4問)
解析力学・制限三体問題 / 電磁波・表皮効果 / 量子調和振動子
拘束条件付き力学 / 電磁場のエネルギー保存 / 環上粒子と摂動
連成振動 / 磁気ミラー / スピンの時間発展
剛体振り子と連成振動 / 円環電荷と磁気双極子 / デルタ関数ポテンシャルの散乱
中心力・散乱・円軌道の安定性 / 回転帯電球殻の磁気双極子場 / 調和振動子・角運動量・磁場中の固有値