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大阪大学 院試 過去問 解答例

阪大 理学研究科 物理学専攻・宇宙地球科学専攻 物理学 2024年度 院試 過去問 解答例・解説(全4問)

全4問。熱・統計力学1問・力学1問。テーマタグは8件(ラグランジアン・固有値・固有ベクトル・調和振動子)。2023年度と共通のテーマはラグランジアン・固有値・固有ベクトル・調和振動子。

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解説4問と大問1問の途中式・最終答(全4問)
解答PDFに収録
途中式と最終答(最終答つき4問)
問題本文
非収録

阪大 物理学 2024年度 院試 過去問の出題内容(全4問)

この4問の分野は熱・統計力学1問・力学1問です。

大問分野主題解説の小見出し最終答
第1問力学拘束条件付き力学符号の確認 / 未定乗数の読み方あり
第2問—電磁場のエネルギー保存平面波の検算 / 導線表面でのエネルギー流あり
第3問—環上粒子と摂動ベクトルポテンシャルの意味 / 縮退が起こる条件あり
第4問熱・統計力学調和振動子の統計力学ゼロ点エネルギーの扱い / 高温極限の検算あり

2024年度の出題テーマと、同じテーマを出した他大学・他年度

この年度は4問に8テーマが出ています。

前年度(2023年度)との違い

大問数
2023年度 4問 → 2024年度 4問
2024年度で新しく出たテーマ
剛体の回転運動・電磁波・摂動論
2023年度のページを見る

第1問 — 拘束条件付き力学

方針

この問題は、拘束条件を式で書いた後に、微分して加速度の関係へ落とすのが最短である。未定乗数は抽象的に見えるが、各座標の運動方程式に現れる拘束力の成分を表している。したがって、最後にニュートンの運動方程式と比較すると物理的意味がはっきりする。

符号の確認

座標を下向き正にしたため、ラグランジアンには +mgy+mgy が入る。ここを通常の上向き座標の感覚で −mgy-mgy としてしまうと、加速度の符号が逆になる。m1>m2m_1>m_2 なら質点1は下向きに加速するので、y¨1>0\ddot{y}_1>0 になることが検算になる。

未定乗数の読み方

質点1について m1y¨1=m1g+λ m_1\ddot{y}_1=m_1g+\lambda と出る一方、力学的には m1y¨1=m1g−T m_1\ddot{y}_1=m_1g-T である。よって λ=−T\lambda=-T である。滑車に慣性モーメントがある場合は左右の張力が等しくないため、λ2\lambda_2 が張力差を担う。M→0M\to0 とすると λ2→0\lambda_2\to0 となり、質量のない滑車では張力差が消えることもよい検算である。

試験で書くべき点

拘束条件には定数項を含めても含めなくても、微分後の運動には同じ情報が残る。ただし本問では糸が滑車に接しているので、長さの定数部分として πa\pi a を書いておくと設定を正しく読んだことが伝わる。すべりなし条件は符号規約を明記してから y1−aθ=0y_1-a\theta=0 と書くのが安全である。

解答

鉛直下向きを正にとる。重力ポテンシャルは Ui=−migyi U_i=-m_i g y_i であるから、糸を考えないときのラグランジアンは L1=12m1y˙12+12m2y˙22+m1gy1+m2gy2. L_1=\frac{1}{2}m_1\dot{y}_1^2+\frac{1}{2}m_2\dot{y}_2^2 +m_1gy_1+m_2gy_2 .

糸の長さは、二つの鉛直部分と滑車に接する円弧部分の和で一定である。したがって C1(y1,y2)=y1+y2+πa−l=0 C_1(y_1,y_2)=y_1+y_2+\pi a-l=0 とおける。円弧部分の長さは定数なので、以後の運動方程式では y¨1+y¨2=0\ddot{y}_1+\ddot{y}_2=0 だけが効く。

未定乗数を用いて L1′=L1+λC1 L'_1=L_1+\lambda C_1 とすると、 m1y¨1=m1g+λ,m2y¨2=m2g+λ m_1\ddot{y}_1=m_1g+\lambda,\qquad m_2\ddot{y}_2=m_2g+\lambda を得る。拘束条件を2回微分して y¨2=−y¨1\ddot{y}_2=-\ddot{y}_1 を代入すれば、 y¨1=m1−m2m1+m2g,y¨2=−m1−m2m1+m2g. \ddot{y}_1= \frac{m_1-m_2}{m_1+m_2}g,\qquad \ddot{y}_2= -\frac{m_1-m_2}{m_1+m_2}g . また λ=m1y¨1−m1g=−2m1m2m1+m2g. \lambda =m_1\ddot{y}_1-m_1g =-\frac{2m_1m_2}{m_1+m_2}g . 質点1の運動方程式は m1y¨1=m1g−Tm_1\ddot{y}_1=m_1g-T と書けるので、 T=−λ=2m1m2m1+m2g T=-\lambda=\frac{2m_1m_2}{m_1+m_2}g であり、λ\lambda は張力の負符号に相当する一般化拘束力である。

次に滑車が質量をもつ場合を考える。一様円盤の面密度を σ\sigma とすると M=σπa2,I=∫0aR2 σ 2πR dR=12Ma2. M=\sigma\pi a^2,\qquad I=\int_0^a R^2\,\sigma\,2\pi R\,dR =\frac{1}{2}Ma^2 . したがって滑車の回転運動エネルギーは Krot=12Iθ˙2=14Ma2θ˙2. K_{\mathrm{rot}}=\frac{1}{2}I\dot{\theta}^2 =\frac{1}{4}Ma^2\dot{\theta}^2 . 拘束のないラグランジアンを L2=L1+14Ma2θ˙2 L_2=L_1+\frac{1}{4}Ma^2\dot{\theta}^2 とする。

ここでは θ\theta の正方向を、質点1が下がるときに θ\theta が増える向きに選ぶ。この符号規約で、すべりなし条件は C2(y1,θ)=y1−aθ=0 C_2(y_1,\theta)=y_1-a\theta=0 である。よって L2′=L2+λ1C1+λ2C2 L'_2=L_2+\lambda_1 C_1+\lambda_2 C_2 から m1y¨1=m1g+λ1+λ2,m2y¨2=m2g+λ1,12Ma2θ¨=−aλ2 \begin{aligned} m_1\ddot{y}_1&=m_1g+\lambda_1+\lambda_2,\\ m_2\ddot{y}_2&=m_2g+\lambda_1,\\ \frac{1}{2}Ma^2\ddot{\theta}&=-a\lambda_2 \end{aligned} を得る。拘束条件より y¨2=−y¨1,θ¨=y¨1a \ddot{y}_2=-\ddot{y}_1,\qquad \ddot{\theta}=\frac{\ddot{y}_1}{a} であるから、 y¨1=m1−m2m1+m2+M/2g. \ddot{y}_1= \frac{m_1-m_2}{m_1+m_2+M/2}g . したがって λ2=−M2y¨1=−M(m1−m2)2(m1+m2+M/2)g, \lambda_2 =-\frac{M}{2}\ddot{y}_1 =-\frac{M(m_1-m_2)}{2(m_1+m_2+M/2)}g, λ1=−m2g−m2y¨1=−m2(2m1+M/2)m1+m2+M/2g. \lambda_1 =-m_2g-m_2\ddot{y}_1 =-\frac{m_2(2m_1+M/2)}{m_1+m_2+M/2}g . ここで T2=−λ1,T1=−(λ1+λ2) T_2=-\lambda_1,\qquad T_1=-(\lambda_1+\lambda_2) と読める。すなわち λ1\lambda_1 は質点2側の張力の負符号、λ2=T2−T1\lambda_2=T_2-T_1 は滑車を回転させる張力差に対応する。

最終答

L1=12m1y˙12+12m2y˙22+m1gy1+m2gy2,C1=y1+y2+πa−l=0,y¨1=m1−m2m1+m2g,λ=−2m1m2m1+m2g,I=12Ma2,Krot=14Ma2θ˙2,C2=y1−aθ=0,y¨1=m1−m2m1+m2+M/2g,λ1=−m2(2m1+M/2)m1+m2+M/2g,λ2=−M(m1−m2)2(m1+m2+M/2)g. \begin{gathered} L_1=\frac{1}{2}m_1\dot{y}_1^2+\frac{1}{2}m_2\dot{y}_2^2+m_1gy_1+m_2gy_2,\quad C_1=y_1+y_2+\pi a-l=0,\\ \ddot{y}_1=\frac{m_1-m_2}{m_1+m_2}g,\quad \lambda=-\frac{2m_1m_2}{m_1+m_2}g,\\ I=\frac{1}{2}Ma^2,\quad K_{\mathrm{rot}}=\frac{1}{4}Ma^2\dot{\theta}^2,\quad C_2=y_1-a\theta=0,\\ \ddot{y}_1=\frac{m_1-m_2}{m_1+m_2+M/2}g,\\ \lambda_1=-\frac{m_2(2m_1+M/2)}{m_1+m_2+M/2}g,\quad \lambda_2=-\frac{M(m_1-m_2)}{2(m_1+m_2+M/2)}g . \end{gathered}

第2問 — 電磁場のエネルギー保存

方針

前半はポインティングの定理の導出であり、核心は E⋅(∇×H) \boldsymbol{E}\cdot(\nabla\times\boldsymbol{H}) をベクトル公式で発散項と H⋅(∇×E)\boldsymbol{H}\cdot(\nabla\times\boldsymbol{E}) に分けることである。磁場によるローレンツ力は速度に垂直なので、粒子の運動エネルギーを直接変えるのは電場だけである。

平面波の検算

E\boldsymbol{E} が xx 方向で +z+z に進む波なら、H\boldsymbol{H} は yy 方向でなければならない。そうすると E×H\boldsymbol{E}\times\boldsymbol{H} が +z+z 方向になる。向きを間違えるとポインティングベクトルが進行方向と逆になり、物理的に不自然である。

導線表面でのエネルギー流

導線内の電流にエネルギーを供給しているのは、導線の軸方向から入る流れではなく、表面から半径方向に入るポインティング流である。表面で ez×eθ=−er \boldsymbol{e}_z\times\boldsymbol{e}_\theta=-\boldsymbol{e}_r となるため、S\boldsymbol{S} は内向きになる。ここは符号を落としやすい。

試験で書くべき点

エネルギー保存式の第3項は体積積分のまま計算せず、ガウスの定理で表面積分に直すと短い。端面の寄与がゼロであること、側面の法線が er\boldsymbol{e}_r であることを明記すると、−IΔϕ-I\Delta\phi の符号まで説明できる。

電磁場のエネルギー保存の途中式・最終答をPDFで見る

第3問 — 環上粒子と摂動

方針

前半は円周上の自由粒子であり、自由度は角度 ϕ\phi だけである。量子化後は一価性が量子数 n∈Zn\in\mathbb{Z} を決める。後半の磁場は粒子の位置ではゼロでも、内部磁束がベクトルポテンシャルの線積分として効く点が本質である。

ベクトルポテンシャルの意味

円周上で A=(a/r)eϕ\boldsymbol{A}=(a/r)\boldsymbol{e}_\phi なら ∮A⋅dℓ=2πa \oint\boldsymbol{A}\cdot d\boldsymbol{\ell}=2\pi a である。これを磁束 Φ=πℓ2B\Phi=\pi\ell^2B と等置する。磁場のある領域に粒子が入っていないから A=0A=0 としてしまうのは典型的な誤りである。

縮退が起こる条件

エネルギーは放物線 En(a)=(ℏn−qa)22I E_n(a)=\frac{(\hbar n-qa)^2}{2I} の族である。a=0a=0 近くの基底状態は n=0n=0 で、正の aa を増やすと次に n=1n=1 の放物線と交差する。したがって最初の縮退は qa=ℏ/2qa=\hbar/2 である。

摂動計算のポイント

縮退摂動では、元の e±iϕe^{\pm i\phi} 基底のまま対角成分だけを見ると不十分である。偶ポテンシャルではパリティがよい量子数になるので、cos⁡ϕ\cos\phi と sin⁡ϕ\sin\phi の基底に移ると摂動行列が対角になる。差に cos⁡2ϕ\cos2\phi が現れるのは cos⁡2ϕ−sin⁡2ϕ=cos⁡2ϕ\cos^2\phi-\sin^2\phi=\cos2\phi のためである。

環上粒子と摂動の途中式・最終答をPDFで見る

第4問 — 調和振動子の統計力学

方針

前半は同じ物理量をミクロカノニカルとカノニカルの二通りで求める構成である。ミクロカノニカルでは状態数の対数を微分し、カノニカルでは log⁡Z\log Z を微分する。どちらも最終的には E=Nℏω(12+1eℏω/(kBT)−1) E=N\hbar\omega\left(\frac12+\frac{1}{e^{\hbar\omega/(k_BT)}-1}\right) という同じ関係に対応している。

ゼロ点エネルギーの扱い

分配関数には e−βℏω/2e^{-\beta\hbar\omega/2} が入るため、エネルギーには Nℏω/2N\hbar\omega/2 が残る。一方、比熱は温度微分なのでゼロ点エネルギーは寄与しない。ここを混同すると低温極限で余分な項を残してしまう。

高温極限の検算

x=ℏω/(kBT)≪1x=\hbar\omega/(k_BT)\ll1 では 1ex−1≃1x \frac{1}{e^x-1}\simeq \frac{1}{x} なので、1個あたりのエネルギーは kBTk_BT に近づく。これは古典的な等分配則の結果であり、比熱 C→NkBC\to Nk_B の検算になる。

低温比熱のべき

低温では、積分の主な寄与は ℏω∼kBT\hbar\omega\sim k_BT の低周波モードから来る。したがって状態密度の低周波べきだけを見れば比熱の温度べきが決まる。g(ω)∝ωpg(\omega)\propto\omega^p なら UT∝Tp+2,C∝Tp+1. U_T\propto T^{p+2},\qquad C\propto T^{p+1}. 本問の p=2p=2 で T3T^3、分散 ω∝kn\omega\propto k^n では p=3/n−1p=3/n-1 で T3/nT^{3/n} となる。

試験で書くべき点

状態数の式では、振動子は区別できる箱であることを明記する。カノニカル計算では Z=Z1NZ=Z_1^N としてから −∂βlog⁡Z-\partial_\beta\log Z を取ると、不要な和を避けられる。最後のべき乗問題では比例定数を求める必要はなく、変数変換で温度のべきだけを示せば十分である。

調和振動子の統計力学の途中式・最終答をPDFで見る

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