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大阪大学 院試 過去問 解答例

阪大 理学研究科 物理学専攻・宇宙地球科学専攻 物理学 2021年度 院試 過去問 解答例・解説(全4問)

全4問。熱・統計力学1問。テーマタグは5件(固有値・固有ベクトル・調和振動子・分配関数)。

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解説4問と大問1問の途中式・最終答(全4問)
解答PDFに収録
途中式と最終答(最終答つき0問)
問題本文
非収録

阪大 物理学 2021年度 院試 過去問の出題内容(全4問)

この4問の分野は熱・統計力学1問です。

大問分野主題解説の小見出し最終答
第1問—中心力・散乱・円軌道の安定性——
第2問—回転帯電球殻の磁気双極子場——
第3問—調和振動子・角運動量・磁場中の固有値——
第4問熱・統計力学常磁性体の熱力学と二準位スピン系——

この年度の解説には検算4件・典型ミス4件が付いています。

2021年度の出題テーマと、同じテーマを出した他大学・他年度

この年度は2問に5テーマが出ています。

第1問 — 中心力・散乱・円軌道の安定性

方針

中心力では、まず角運動量保存を出してから u=1/ru=1/r に移るのが最短である。散乱角は、軌道式そのものよりも無限遠での幾何と動径速度から cos⁡θ1,sin⁡θ1\cos\theta_1,\sin\theta_1 を求めると計算が崩れにくい。

検算

α\alpha が小さい極限では tan⁡(ϕs/2)→0\tan(\phi_s/2)\to 0 となり、散乱角も小さくなる。衝突パラメータ bb や入射エネルギー mv02/2mv_0^2/2 が大きいほど曲がりにくいことも式と合っている。

典型ミス

U=α/rU=\alpha/r は斥力であり、力は +αr−2er+\alpha r^{-2}\mathbf e_r 向きである。ここで符号を引力型と取り違えると、Binet 方程式の定数項と散乱角の式が同時に反転する。また、安定条件では力の式を直接線形化するより、有効ポテンシャルの二階微分で判定する方が安全である。

解答

I. 斥力型 1/r1/r ポテンシャル

極座標で T=m2(r˙2+r2θ˙2),U(r)=αr T=\frac{m}{2}\left(\dot r^2+r^2\dot\theta^2\right),\qquad U(r)=\frac{\alpha}{r} であるから Llag=m2(r˙2+r2θ˙2)−αr. L_{\mathrm{lag}}=\frac{m}{2}\left(\dot r^2+r^2\dot\theta^2\right)-\frac{\alpha}{r}. Euler--Lagrange 方程式は m(r¨−rθ˙2)=αr2,ddt(mr2θ˙)=0. m\left(\ddot r-r\dot\theta^2\right)=\frac{\alpha}{r^2},\qquad \frac{d}{dt}\left(mr^2\dot\theta\right)=0. したがって角運動量の大きさを ℓ=mr2θ˙ \ell=mr^2\dot\theta とおくと ℓ\ell は保存する。問題文で角運動量を LL と書く流儀に合わせるなら、以下の ℓ\ell を LL と読めばよい。

u=1/ru=1/r とおく。標準的な Binet の式から d2udθ2+u=−mαℓ2 \frac{d^2u}{d\theta^2}+u=-\frac{m\alpha}{\ell^2} を得るので、 u=Acos⁡(θ−θ0)−mαℓ2. u=A\cos(\theta-\theta_0)-\frac{m\alpha}{\ell^2}. よって軌道は r=1Acos⁡(θ−θ0)−mα/ℓ2 r=\frac{1}{A\cos(\theta-\theta_0)-m\alpha/\ell^2} である。

散乱では、入射側の無限遠で角運動量は ℓ=mbv0 \ell=mbv_0 である。最接近方向を θ=0\theta=0 にとると、無限遠では u=0u=0 だから cos⁡θ1=mαAℓ2. \cos\theta_1=\frac{m\alpha}{A\ell^2}. また r˙=−1u2dudθθ˙=−ℓmdudθ=ℓAmsin⁡θ \dot r=-\frac{1}{u^2}\frac{du}{d\theta}\dot\theta =-\frac{\ell}{m}\frac{du}{d\theta} =\frac{\ell A}{m}\sin\theta であり、無限遠で速さが v0v_0 になるため sin⁡θ1=mv0Aℓ. \sin\theta_1=\frac{mv_0}{A\ell}. 散乱角を ϕs=π−2θ1\phi_s=\pi-2\theta_1 とすれば tan⁡ϕs2=cot⁡θ1=cos⁡θ1sin⁡θ1=αℓv0=αmbv02. \tan\frac{\phi_s}{2}=\cot\theta_1 =\frac{\cos\theta_1}{\sin\theta_1} =\frac{\alpha}{\ell v_0} =\frac{\alpha}{mbv_0^2}.

II. 引力型 r−nr^{-n} ポテンシャル

U(r)=−βrn,Llag=m2(r˙2+r2θ˙2)+βrn. U(r)=-\frac{\beta}{r^n},\qquad L_{\mathrm{lag}}=\frac{m}{2}\left(\dot r^2+r^2\dot\theta^2\right)+\frac{\beta}{r^n}. 運動方程式は m(r¨−rθ˙2)=−nβrn+1,ddt(mr2θ˙)=0. m(\ddot r-r\dot\theta^2)=-\frac{n\beta}{r^{n+1}},\qquad \frac{d}{dt}(mr^2\dot\theta)=0. 半径 r0r_0、角速度 ω0\omega_0 の等速円運動では mr0ω02=nβr0n+1,mω02r0n+2=nβ. m r_0\omega_0^2=\frac{n\beta}{r_0^{n+1}}, \qquad m\omega_0^2r_0^{n+2}=n\beta.

角運動量を固定して動径の安定性を調べるには、有効ポテンシャル Ueff(r)=ℓ22mr2−βrn U_{\mathrm{eff}}(r)=\frac{\ell^2}{2mr^2}-\frac{\beta}{r^n} を使う。円軌道条件 Ueff′(r0)=0U_{\mathrm{eff}}'(r_0)=0 より ℓ2m=nβr02−n. \frac{\ell^2}{m}=n\beta r_0^{2-n}. 二階微分は Ueff′′(r0)=3ℓ2mr04−n(n+1)βr0n+2=nβ(2−n)r0n+2. U_{\mathrm{eff}}''(r_0) =\frac{3\ell^2}{mr_0^4}-\frac{n(n+1)\beta}{r_0^{n+2}} =\frac{n\beta(2-n)}{r_0^{n+2}}. したがって微小動径振動が可能なのは Ueff′′(r0)>0 U_{\mathrm{eff}}''(r_0)>0 のとき、すなわち 0<n<2 0<n<2 である。このとき動径振動の角振動数は ωr=ω02−n\omega_r=\omega_0\sqrt{2-n} である。

最終答

% Llag=m2(r˙2+r2θ˙2)−αr,m(r¨−rθ˙2)=αr2,ddt(mr2θ˙)=0, L_{\mathrm{lag}}=\frac{m}{2}\left(\dot r^2+r^2\dot\theta^2\right)-\frac{\alpha}{r},\quad m(\ddot r-r\dot\theta^2)=\frac{\alpha}{r^2},\quad \frac{d}{dt}(mr^2\dot\theta)=0, r=1Acos⁡(θ−θ0)−mα/ℓ2,ℓ=mbv0,tan⁡ϕs2=αmbv02. r=\frac{1}{A\cos(\theta-\theta_0)-m\alpha/\ell^2},\qquad \ell=mbv_0,\qquad \tan\frac{\phi_s}{2}=\frac{\alpha}{mbv_0^2}. %

% Llag=m2(r˙2+r2θ˙2)+βrn,m(r¨−rθ˙2)=−nβrn+1,ddt(mr2θ˙)=0, L_{\mathrm{lag}}=\frac{m}{2}(\dot r^2+r^2\dot\theta^2)+\frac{\beta}{r^n}, \quad m(\ddot r-r\dot\theta^2)=-\frac{n\beta}{r^{n+1}}, \quad \frac{d}{dt}(mr^2\dot\theta)=0, mω02r0n+2=nβ,安定な動径振動の条件は 0<n<2. m\omega_0^2r_0^{n+2}=n\beta,\qquad \text{安定な動径振動の条件は }0<n<2. %

第2問 — 回転帯電球殻の磁気双極子場

方針

回転する帯電球殻は、表面電流を直接積分してもよいが、一様磁化球との対応を見抜くと後半が大幅に短くなる。鍵は K=σωRsin⁡θ eϕ \mathbf K=\sigma\omega R\sin\theta\,\mathbf e_\phi が Kb=M×n\mathbf K_b=\mathbf M\times\mathbf n と同じ形をしていることである。

検算

全電荷 Q=4πR2σQ=4\pi R^2\sigma を用いると m=13QωR2 m=\frac{1}{3}Q\omega R^2 であり、回転する一様帯電球殻の既知公式と一致する。また ω=0\omega=0 または σ=0\sigma=0 で磁場が消える。

典型ミス

帯の面積に sin⁡θ\sin\theta が一つ、ループ面積に sin⁡2θ\sin^2\theta が入るため、dmdm は sin⁡3θ\sin^3\theta に比例する。ここを sin⁡2θ\sin^2\theta で止めると全双極子モーメントがずれる。磁荷面密度は η\eta そのものではなく法線成分 ηcos⁡θ\eta\cos\theta である。

回転帯電球殻の磁気双極子場の途中式・最終答をPDFで見る

第3問 — 調和振動子・角運動量・磁場中の固有値

方針

一次元は昇降演算子、二次元は x,yx,y 方向の独立な振動子として処理する。縮重した第一励起状態では、実基底 Φx,Φy\Phi_x,\Phi_y のままだと角運動量が対角化されないので、複素線形結合に取り替える。

検算

BB が微小なとき E1,±(B)=2ℏω±eℏB2m+O(B2) E_{1,\pm}(B)=2\hbar\omega\pm\frac{e\hbar B}{2m}+O(B^2) であり、一次摂動 W1=(e/2m)LzW_1=(e/2m)L_z と一致する。基底状態は角運動量を持たないため一次の Zeeman 分裂を受けない。

典型ミス

電子の電荷を −e-e としつつ、問題では (p+eA)(p+eA) の形で書かれている。ここで符号を勝手に (p−eA)(p-eA) に変えると磁気モーメントの符号が逆になる。また、ω→0\omega\to0 極限では Ω=e∣B∣/(2m)\Omega=e|B|/(2m) となるため、BB の符号と絶対値を区別する。

調和振動子・角運動量・磁場中の固有値の途中式・最終答をPDFで見る

第4問 — 常磁性体の熱力学と二準位スピン系

方針

前半は通常の dU=T dS−p dVdU=T\,dS-p\,dV と符号が違うため、与えられた熱力学第一法則から機械的に Legendre 変換するのが安全である。後半は独立な二準位系なので、分配関数からエネルギーを出してから TT で微分する。

検算

CM=CH−Tα2/χC_M=C_H-T\alpha^2/\chi は、通常の Cp−CVC_p-C_V 型の関係と同じ構造を持つ。安定な常磁性体では χ>0\chi>0 なので、磁化を固定すると磁場一定より熱容量が小さくなる。

典型ミス

G=U−TS−HMG=U-TS-HM の微分で H dMH\,dM が相殺されることを確認しないまま符号を暗記すると、Maxwell 関係式の符号を誤る。統計力学では β=1/(kT)\beta=1/(kT) の TT 微分で負号が出るが、エネルギー全体にも負号があるため熱容量は正になる。

常磁性体の熱力学と二準位スピン系の途中式・最終答をPDFで見る

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  • 2021年度(このページ・全4問)

    中心力・散乱・円軌道の安定性 / 回転帯電球殻の磁気双極子場 / 調和振動子・角運動量・磁場中の固有値